図書館のねずみ

南アルプスの伏流水を使った香り高い珈琲を啜りながら、じっくりお気に入りの本が選べる本好きのためのささやかなサロン、ブックギャラリー&カフェ風信。現在は店舗移転の為、日々奮闘しております。書店では扱っていないような古書、絶版文庫を集めています。

2014年12月

貝殻浜

心配していた「ホッコータルマエ」が、完全復活してターフに戻ってきた。
今年の3月ドバイで「ワールドカップ」ドンジリの16着に敗れた後、体調を崩して休んでいた「ホッコータルマエ」については、以前触れたことがある。
この鹿毛のダート王者は、すでに12月7日のG1「チャンピオンS」で勝ってはいたが、年末最後のG1「東京大賞典」でのぶっちぎりの勝利が完全復活となるだろう。
その姿をこの目で確かめたいと大井競馬場を覗いてきた。
12月29日、雨が上がったゴール前、2か月前の復帰戦で、新王者「コパノリッキー」に0.8秒の差をつけられ4着に敗れたこの馬が、今度はリッキーに4馬身の差をつけてゴールを駆け抜けるのを目撃した。
昨年に続いて2連覇の圧勝。
G1・7勝!
その黒い馬体も自信にあふれているようだ。


閑話休題、横浜は運河の街であったが、大きな川がないのがいささか寂しい。
市中を流れるのは大岡川と帷子(かたびら)川という小さな川くらいしかない。
少し大きな川と言えば鶴見川だが、昔の市電の路線図では市の一番東の終点となる生麦〜鶴見が河口で、海に流れ込んでいる。
鶴見、生麦は港町ヨコハマにとっては完全に郊外だろう。
旧東海道を生麦事件碑を過ぎて上がっていくと、国道駅の手前に魚介を扱う店が並んで朝市が立つ。
海沿いの生麦の魚市は昔から貝類が多く集まり、朝早くから店頭で貝をむく人たちの光景を見ることができたが…今はあまり見かけなくなった。
その貝殻は浜に積み重ねられ、いつしか貝殻浜と呼ばれる白い浜が出来上がった。
今、運河が整備された後も、貝殻浜だけはそのまま残され、昔の面影を伝えている。
川向うは新しくできた人気校・横浜市立サイエンスフロント高校だ。
貝殻浜 (2)貝殻浜








魚釣り用の船が何艘も舫ってある。
舫い船
その静かな澱みに冬の水鳥たちが浮かんでいる。
マガモ・クロガモ・キンクロハジロ・スズガモ…。
舫った網には、セグロカモメが並んでいる。
パンの切れ端でも投げれば、大変なことになる。
たちまちカモメの大群に付きまとわれるだろう。


この浜の近くでヤマブドウが穫れると言ったら、信じてもらえるだろうか。
この浜にも一株あるが、近くのフェンズに絡む2.3株はアスファルトとコンクリートの壁のわずかな隙間から下の土に根を張っている。

山ブドウ

9月末だっただろうか、このフェンスに絡む株には、天然のヤマブドウのまだ青い実がいくつも実っていて、1か月〜2か月後の収穫が楽しみだった。
こんなに実をつけてのは、今年が初めてだっただろう。
栽培したヤマブドウのように充実して大きな葉を広げていた。
ところが、1か月後、ここには何もなかった。
ツルのかけらもなく、フェンスにかかる枝、ツル、葉は完全に消滅して、フェンス奥の根元だけが残っていた。
雑草取りにしてはきれいにし過ぎと思っていたら、その後白いペンキが塗られていた。
何年かに一度のペンキの塗り替えが行われたのだ。
あと、1か月、いや40日後、朝晩が冷え込む時期になっていたなら、ボトル1本分くらいのヤマブドウが穫れたのに…。
多分、このヤマブドウは総持寺の花月園の森からヒヨドリが運んできたものだろう。
人の手が入らない崖や墓地には、まだヤマブドウが生き残っているところがある。
しかしそういうところも、崖崩れなどがあるとキレイにコンクリートで固められる運命にある。

山麓にも実の付くほど充実した株はなかなか見ることはできない。
深い森や高地のヤマブドウはクマのものだ。
富士山麓や奥日光などではヤマブドウが樹を覆っているのをよく見るが、これもサルやクマ、野鳥のものだろう。
優秀な株から一年枝を取り、挿し木か接ぎ木で育てた方が早道かも知れない。
陽のよく当たる土面かベランダがあればよし。

もう今年もあとわずか、新しい年を祈念してヨコハマから眺めた「夕陽の富士」(少々ピントが甘いが)をお目にかけたい。
富士山

城下町・岸和田自慢いろいろ

火曜日に降った雪が溶けない。
日が当たる昼間でも1℃〜2℃くらいにしかならないから、そのまま氷の塊となって、落ち葉の斜面に積もっているから恐ろしい。
スキー場にスケートリンクが乗っているようなものだ。
へっぴり腰で恐る恐る歩いている。
冷え切った室内で線香に火をつける。
スミレの香りが部屋中に拡がっていく。
気分が落ち着いて、何となく寒さも和んだような気がするが、やはり明日は灯油を買いに行こう。
これは先週のこと。

この線香は堺の薫主堂で買ったものだ。
南蛮交易(ほとんどが中国船)で入って来た東南アジアの香木や天然漢方薬などを使って作った線香の発祥地は、400年以上前の堺だ。
今でも手作りで調合される高級線香はこの街で作られている。
それにしても、紹鷗や利休を生んだ自治都市「堺の町衆」たちの文化度の高さには恐れ入る。
茶道を洗練させた目利きはこの二人が代表だが、名のある茶人たちはことごとく堺の数寄者出身だ。
堺の富の蓄積がどれほど大きかったかがわかる。

堺ほど大きな町ではないがその南の岸和田も、秀吉が大阪の南の守りとして重要拠点となった。
城下町としての岸和田の天守が(現在の天守は昭和29年の再建)作られたのもこの頃だ。
しかし城下町・岸和田が栄えたのはもう少し後、江戸時代13代、明治維新までつづいた岡部氏の五万三千石の時代だ。
岸和田と言えばダンジリだが、この祭りも300年の歴史をもつ。

ダンジリ (2)ダンジリ
岸和田だけではない泉州すべてが、9月、10月はダンジリ祭り一色となる。
無論堺百町と言われる堺の町も、ダンジリとフトン太鼓で賑わう。

現在の岸和田の人口20万人と言うのは、町としては一番まとまり合える、ほど良い数字ではなかろうか。
街中はどこでも歩いて行ける範囲に、漁港もあり、工場もあり、賑わいのある街並みがあり、住宅地が囲んでいる。
開港時の横浜も港町として整備され、一番活気が出たときはこのくらいの人口だったはずだ。

岸和田には現在11の商店街があり、活気がある。
ここに82のダンジリを持っている。
祭りは自主運営・自主規制・自主警備が基本だ。
町内ごとの法被やたすきや手拭いなどがあり、町紋グッズやミニダンジリなど祭礼用品の店も多い。
ダンジリ産業が立派に成立している。
祭り時以外でも、立派なダンジリ会館がありいつでも祭りの迫力・活気を味わえる。
ダンジリの大屋根に乗って憧れの大工方体験もできる。

城下町には特有の「鍵曲り」の道があるが、ここを全速で通り抜けるダンジリ(YARIMAWASHI)の迫力を目の前で見るには、試験引きの日を狙うのが良い。
それも前日ではなく1週間前の日曜日。
本祭りでは近寄れない迫力シーンを見られるだろう。
運が良ければ、お隣堺の海に守り神「開口(あぐち)神社」の祭りも始まっているかもしれない。
ここのフトン太鼓も見ものだ。
ダンジリの屋台が城の石垣前を曳航されるのを見ていると、つくづく城を持つ町の幸せを感じて、うらやましい。

梅花むらさめ

堺も横浜も大都市になったが、城(石垣で良い)がない。

石垣石垣と町並み







岸和田の魅力はダンジリや城だけではない。
この街には篠笛の専門店がある。
城の隣には原三渓ほどではないが、寺田財閥の寺田利吉(紡績・銀行業・レンガ製造などで財を成した岸和田の実業家)が残した五風荘の庭や茶室がある。
古い町屋の家並みを残した紀州街道が町中を通っている。

紀州街道

ここには昭和初期の建築も、幾つか大切に守られている。

旧和泉銀行街角






タコ地蔵の近くには大正時代の十六軒長屋が、まだ現役で使われている。
コシノ3姉妹の「カーネーション」で描かれた昭和の街の雰囲気を残した商店街もある。

コシノ洋裁店

都市化されても、二つの漁港がまだ活躍している。
アナゴ・ワタリガニ・シャコ・イカナゴ・ハモ・タコ・ガッチョ(ネズミゴチ)…みな岸和田の名物だ。
農作物も、泉州タマネギ・イチジク・モモ・泉州ミカンなどもあるが、何といっても泉州のミズナスにとどめを刺す。
郊外の一番奥には温泉や天然ブナ林まで残しているのが岸和田の魅力。
岸和田とは何の関係もない小生の岸和田自慢は、このくらいにしておく。

古墳・鉄砲・利休から包丁・自転車と和菓子の町へ

気になる日本の古い街をできるだけ歩いてみたい。
大都市近郊にもいくつか気になるところがある。
また、観光地ではない地方の小さな城下町や街道沿いの宿場町などにも、思わぬ魅力が潜んではいないかと気になってしまう。

例えば、今はもう大阪と言う大都市に呑み込まれてしまっている堺や岸和田だが、400年前、濠をめぐらして独自の繁栄を誇った自由都市“SAKAI”の残影が少しでも感じられる場所があるのだろうか。
また、同じころ、岸和田城を中心に泉州一帯を治め、秀吉以後も岸和田藩五万三千石として13代続いた岡部氏の城下町や、紀州街道沿いの街並みは今でも残っているのだろうか。


境は二度の大火によって古い街並みのほとんどを失っている。
最初は大坂夏の陣(1620年)の兵火で、町全体が焼き払われ壊滅的被害を受けた。
その後徳川幕府によって復興され、幕府の直轄地になり、近代化もいち早く導入して発展した町も、第二次大戦の空襲(1945年)により中心市街地を焼かれてしまった。
堺の「建て倒れ」と言われる贅を尽くした建物はほとんど失われてしまった。
しかし、ただ一軒、400年前(江戸初期)の町屋「山口家住宅」が残っているのは奇蹟のようだ。

山口家

山口家 (3)山口家 (2)






日本最古級の民家がここに在る。
この近くに「鉄砲鍛冶屋敷」が残されているのも、もう一つの奇跡と言える。

鉄砲鍛冶屋敷

種子島伝来の鉄砲もここ堺でいち早く国産化が進み、戦国時代のこの街は日本一の鉄砲生産地であった。
その江戸時代の工房が唯一、ここにそのまま残されている。
(内部非公開だが、年1回だけ、多分年末だと思うが特別公開があるようだ)

刃物の街として、堺は今でもその伝統を伝えている。
この周辺を歩くと刃を研ぐ音がいたるところから聞こえてくるのも、「和包丁の聖地」らしくて心地よい。
日本料理の料理人のほとんどはここの包丁を使っていると聞く。
また、ついでに言えば、堺は自転車の生産でも有名、日本唯一の自転車博物館も世界最大級の墓・仁徳天皇陵古墳のすぐ近くにある。
この古墳の金属工人から自転車までつながっている伝統が堺の魅力だ。
今、堺この前方後円墳を中心にした「百舌鳥古墳群」の世界遺産化に力を入れているが、下界からはその形も大きさもよくわからないのが難点だろう。
市役所21階の展望ロビーから見ても、その規模はわかるが、形や全貌は良く伝わらない。

パンフレット


もう一つ、堺は千利休の生誕地であり、茶の湯の街でもある。
南宗寺には利休好みの茶室「実相庵」があり、仁徳陵の隣、大仙公園には今井宗久ゆかりの「黄梅庵」がある。
この茶室は松永安左衛門(耳庵)が小田原で使っていたものだ。
利休屋敷跡は井戸が残され、その師・武野紹鴎もすぐご近所だったことがわかる。
茶の湯に欠かせない和菓子の老舗が多いのも、堺の街歩きの楽しみの一つなのは間違いない。

和菓子屋

クルミモチ、ケシモチ、ニッケイモチ、クリクルミ、コンペイトウ、ショウロダンゴ、オーデラモチ、ナマフマンジュウ、トウダイモナカ…もう、紙幅が尽きた。

最中

八ヶ岳山麓・新ソバの季節

ただ、4・5日空けただけだが、帰ってきた白州はすっかり冬の景色になっている。
庭一面にカシワの大きな葉の白茶色で埋まっていた。
落葉樹でも、カシワだけは春先までかなりの枯れ葉が枝にしがみついているのが普通だが、今年はもう半分以上が葉を落とした。
カエデもエノキもネムノキもすべて葉を落とし、冬の姿だ。
きれいな紅葉を残しているのは、ブルーベリーくらいだろうか。
庭の落ち葉も茶色に変わって寒々しい。
甲斐駒も八ヶ岳も雪を見せている。
快晴になったが、冷たい風が止むことはない。
北国では、雪嵐で仙山線は、山寺付近で列車が止まっているらしい。
風よけに線路わきに植えられた杉が、雪の重みで架線にかかって停電となったようだ。

サザンカの花も散り、最後の花はと言うと、ススキの枯れ葉の陰に生き残っていたアワコガネギクの小さな黄色のだった。
葉を落とした梅の枝には、もう来春の小さな蕾が用意されている。
最低温度は0℃、昼間でも10℃にならない。
こんなに良い天気だが、冷たい風が止まらないから、6,7℃と言ったところだろう。
パリ並みの寒さだ。
12月らしく、完全に冬日となった。

新ソバの季節になっている。
当地でも、スタンプラリー「八ヶ岳新ソバ祭り」が10月末から始まっている。

新ソバ祭りパンフレット

(焼失した「神田藪蕎麦」もビルにはならず、元の雰囲気を残しながら復活したのがうれしい。)
八ヶ岳山麓は長野の高原と共に、昔からソバの産地として知られていた。
標高の高い比較的やせた土壌には、香りのよい甘みのあるソバが穫れ、手打ちソバが古くから伝承されている。
馬の産地はソバの名産地ともなる。
岩手も福島も北海道も同様だ。
北杜市も富士見町や原村(長野県)でも、8〜10月頃まで、ソバ畑の白い花を見ることができる。
八ヶ岳南麓の高原は有数の湧き水地帯でもあるから、水が重要なソバ打ちには最適な場所ということになる。
特に新ソバ、香りのよい、緑色がかったソバは10〜12月の晩秋・初冬の大きな喜びの一つだ。

我が家の近くにも何軒かの手打ちそば店があるが、一番知られているのは白樺美術館近くの「翁」だろう。
ここはソバ打ち名人・高橋邦弘さんの店だったが、今はお弟子さんがそのまま引き継いでいる。
高橋さんは広島に帰られたが、日本全国を廻り、「ソバの伝道師」のように飛び回っている。
その著「そば屋翁」(文春文庫)は、「我は如何にしてそば屋になったか、そして八ヶ岳山麓までやって来たのか」の書だ。

そば屋翁


ここまで書いてきて、新ソバが無性に食べたくなった。
ソバ屋に急ごう。
「今日のソバ打ち分は終了しました」の声は聞きたくない。
プロフィール
ウェブサイト
お店のウェブサイト
http://home.netyou.jp/33/fushin/
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