寒の入りになってから、ようやく冬らしい天候が多くなり、本日は大雪。
今までの春のような温かさで、我が家の白梅(甲州野梅)も満開になってしまった。
ロウバイも咲き出している。
少しくらい寒い日があっても、膨らみかけた蕾は止めようもなく、陽をいっぱいに受ければ咲き出してしまう。
早咲きで有名な熱海の梅林(この庭は横浜の豪商・模擬惣兵衛が残したものだ)や、赤城山麓のロウバイの名所も一か月近く早く咲き始めていることだろう。
ひょっとして、秩父・西神のセツブンソウも咲き出したかもしれない。
ブログをさぼっているうちに季節はどんどん進む。
年末、大晦日にかけて熊野詣ででの旅をしたので、忘れぬうちに少し書き留めておきたい。

近鉄の大和八木駅を始点として奈良県の最南端、現在では「日本一面積の広い村」となった十津川村に入る「日本一長い路線バス」は、大水害を起こした熊野川沿いの狭い道を対向車に注意しながら(大型トラックとのすれ違いは、かなり困難となる)、旧道のバス停をもらさず停車して行かねばならない。

熊野川

大規模な新道工事や新トンネルによるバイパスなども一部できてはいるが、この路線バスでは使えない。
十津川村までは約4時間、途中谷瀬の吊り橋(観光用ではなく生活用の吊り橋としては「日本最大級」297メートルの長さ)では、20分の休憩時間も用意されていて観光バス対策も取っている。

吊り橋

乗客のほとんどが観光客なのだから、当然とも言えるが…。
バスは十津川温泉から熊野本宮、そして日本最古の湯(ツボ湯・世界遺産)や冬の風物詩・河原の仙人風呂も見ながら終点新宮駅に向かう。
温泉好きにもたまらないコースをたどる。
この辺りは完全に観光バスになっていて、「このツボ湯は彼の小栗半官がこの湯に入り蘇生したという伝説がある日本最古の温泉です」という調子。
この一日七回色を変えるという小さな名湯は、今でも営業している公衆浴場としては、唯一の世界遺産だという。

さて温泉のことはさておき、最終日、大晦日の早朝のお詣になった神倉神社のことを先に書いて今回は終えたい。

神倉神社パンフレット

新宮駅、山寄りの権現山中腹に赤い社殿と背後の巨石(磐座(いわくら))が望まれる。
この磐座こそ、熊野速玉大社の大元となったものだ。

神倉神社遠景


熊野三山が成立し、熊野詣が始まる以前の古代の自然崇拝が、この一帯に色濃く残っている。
那智大社は瀧を御神体としているが、巨岩や岩山を神とする古代の磐座信仰は、ここ新宮から熊野市一帯の伊勢路に特に多い。
熊野市の七里御浜にある「花の窟神社」。
ここは浜を見下ろす70メートルの一枚岩が御神体となり、社殿もない。
この山側の奥には「大丹倉」と呼ばれる巨大な岩壁があり、(高さ300メートル、幅500メートル)鉄分による朱色が露出した岩山自体が神のおわす磐座とされている。(未見)
ここの丹倉(あかくら)神社には、巨大な球状の磐座が祀られている。
ここにも社殿はない。

巨岩を御神体とする神倉神社の石段(源頼朝の寄進と伝わる)こそ圧巻で、生易しい気持ちで登ろうとする人たちを拒絶するかのように立ちはだかっている。

石段上り口石段上り


傾斜度30度を超え、急なところは45度をも超えるほどの幅広い石段が500段以上続く。
それも形も大きさも不規則な石の組み合わせや、神の技ともいうべき自然階段が覆いかぶさるように高く続いている。
急な場所では両手をついてハイハイ状態になりかねない。
どうにか登っても、降りられるだろうか不安になるほどだ。
(危ない人たちには女坂も一応用意されている)
これでは陽が落ちて、暗くなれば危険になるわけだ。
前日4時近くに着いた新宮駅で、その足で急いで神倉神社に行こうとするのを観光案内所の女性が慌てて止めた理由が分かった。
しかし、この危険極まりない500段の石段を闇夜に駆け下りるのが毎年2月6日の「御燈まつり」だ。
白装束の腰に縄をまき、草鞋履きの千数百人の若者たちが松明を手にして。
写真で見ると、入り口の鳥居を燃やさんばかりに炎が舞い上がり、火の河が流れ落ちていく。
「那智の火祭り」とは異なって、狂気を感じさせる原初の祭りがここにはある。
一人足を踏み外せば、大惨事になりかねないが、その恐怖をはねのけ八咫(やた)烏(がらす)となって駆け下りる。
精神が高揚する祭りだからこそできる技だ。
長野県諏訪の御柱祭りも近いものがある。

この石段を登りつめると、巨大な一枚岩が参道のように社殿に続いている。

神倉神社

そして赤い社殿の上に覆いかぶさる御神体のゴトビキ岩が目に飛び込んでくる。
ゴトビキはヒキガエルのことらしいが、立派な注連縄(しめなわ)で飾られているこの磐座は古代熊野信仰のシンボルと言える。
熊野の神々は最初にこの巨岩に降臨したことになっている。
この社殿の石垣には、よほど暖かいのか野生のツツジが花をつけているのも珍しい。
巨石ツツジ



そして急すぎる石段を登り終えたご褒美は、新宮の街並みと熊野灘の美しい眺望だ。

神倉神社からの遠望


新しい年にふさわしい熊野三山のお守りを載せ、ちょっと遅いが新年のご挨拶としたい。本宮大社の88羽の烏文字。

熊野牛王神符


それと、速玉大社の平清盛お手植えと伝わる梛の葉をつけた正月飾り。

梛速玉大社お飾り