ここ白州の50年前、甲斐駒と八ヶ岳の山麓にはよく手入れされた雑木林が広がっていた。
釜無川から八ヶ岳寄りには、コナラやクヌギの雑木林にエノキが多く交り、オオムラサキの国内有数の繁殖地となっている。
やがて別荘地開発が進み、ゴルフ場の工事が始まると、放置される雑木林が目立つようになる。
小川に下る急斜面に群生していたヤマブキソウも消えてしまった。
あかるい草原も少なくなり、ユウスゲやキキョウの花もめっきり少なくなった。
それでも、早春にはシュンランの花が目立ち、林床にはイチヤクソウやササバギンランの可愛い花はまだ見ることができる。


最後までよく手入れされていたアカマツ林はススキやササの下草が刈られ、枯れ枝は焼かれてワラビが勢いよく生えてきた。
ここは、春はスミレの種類が多い。
秋は、リンドウやセンブリの小さな花を見ることが出来た。
ところが、この2、3年ススキは刈られず、ツル草がはびこり始めたと思っていたら、ある日突然、アカマツ林は伐採された。

皆伐

すると、明るくなった切り株の周りには、消えていた山野草が復活するかと思われたが、そうはいかなかった。
全面にヒノキの苗が植えられた。

苗林

明るい草原は4、5年が限度だろう。
この辺りでは、荒れた山林が皆伐されるとほとんどヒノキの植林になってしまう。
道路沿いのわずかな土地にもヒノキが植えられる。

こんなところにも植林

川や地下水があるところは、スギが植えられる。
日本の森の40%以上が杉やヒノキの植林といわれるが、もうこれ以上モヤシのようなヒノキ林を見たくない。
(森林学者・四手井綱英さんは、人工林は25%位が適正といっているほど。)


災害に弱い植林は集中豪雨で明らかになっている。
不在地主はとりあえずヒノキの苗を植えて、動植物の住めない暗い場所を作るだけで、林業家とはとても言えないだろう。
健全なヒノキ林は木曽の赤沢で見ることができるが、少し手入れをして間引きしたヒノキの樹形は貧相ではない。

ヒノキ



灯油など燃料が恐ろしく高騰している現在、もう少し多様な生物の住処ともなっている雑木林の重要性を再認識しても良いのではないだろうか。
集中豪雨にも強いのが、雑木林だ。
人気の出てきた薪ストーブの薪や、ペレットストーブの燃料として、シイタケのホダ木や炭焼きの復活にも、水源の森としても、また雑木林は大きな価値を持っているのだから。
手入れをするつもりのない不在地主たちは、皆伐したまま何も植えないことだ。
この地は、やがてアカマツを上部にした雑木林になって行く。
もう、切り株の横には、アカマツが発芽している。

発芽

林緑の南斜面に、この立春、寒波にも負けず早くもホトケノザの花が咲いていた。