10月中旬の満月大潮を境に、季節が大きく変化していく。


長野では、時折10℃近くまで早朝の気温が低下する。
山々の木々が徐々に色づき始め、秋の気配が濃厚となってくる。
同時に、冬型の気圧配置が形成され、物理的に海に出られない日が続く。




10月下旬。

数日続いた荒天の合間の晴れた日。
海況は比較的落ち着く(波高50-100m)。
仕事が終わり、子供たちの世話と寝かしつけ。
ふと気が付くと時刻は22時30分、僕も寝ていたようだ。
急いでタックル一式を車に放り込み、一路近場の上越へ向かう。


ポイントに入る時、先行者が丁度帰られるところだった。
『こんばんわ。今日はどうですか。』挨拶をして状況を教えてもらう。
数名のAnglerに声をかけるも、一応に『今日は駄目だよ。』とのお答え。

『お疲れ様です。』と声をかけて、立ち位置に入る。

風は少しだけ強く背後から吹く。
波高は予想どうり~50㎝で、ウネリはない。
水色は悪くは無く、潮も見える範囲では強く動いている。
状況としては全く悪くはないのだが、サビキAnglerのウキが沈まない。
風下にも関わらず、足元には泡の集塊があり、その周囲で夜光虫がキラキラ輝く。


アオリイカの定位しているであろうポイントを想定し、潮に乗せて餌木を落としこんでいく。更には、潮の更に先を探して餌木に潮の面を探らせる。反応が無いため、餌木を強く、大きく、素早く動かすも反応は無い。


結局、数時間粘るもアオリイカからの反応は無い。
朝マズメにかけてエリアを大きく移動しながら打って行くが、ダメ。
西へ西へと向かい、いつものポイントでサビキをしているおじさんに挨拶。

『お疲れ様です。鯵はどうですか?』

どうやらマズメに小さな回遊があったようだが、20-25㎝の鯵が数匹。

少し考える事があったため、他のエリアで釣りをしていたGさんに電話を入れる。

激渋 :『釣れた?』
Gさん :『全く釣れん、なんか潮の色がおかしい。潮が動いているのに鯵がいない。』


そうか。
エリア全域で状況が良くない。
更に、昨晩入ったポイントでの状況。


"風下にも関わらず、足元には泡の集塊があり、その周囲で夜光虫がキラキラ輝く。"







フォール・ターンオーバー(Fall turnover)


ネットで調べれば色々出ているけれど、最も本質的な記事はこれ
GOGIさんのブログ"西中国の沢と海『海を読む』"シリーズ。
GOGIさんのブログ記事と、津田さんの星空キャスティングは、いつ読んでも新たな発見があると感じるのは僕だけでしょうか。


で、Fall turnoverを僕の通うポイントに当てはめて考える。





①秋の高気圧による日本晴れに起因した海水温の局地的な上昇と、冬型の気圧配置による局地的な海水面温度の低下によって、表面海水温度の変化が生じる。温度の変化により、これまで均一に安定していた海の中で、強い対流が生じる(温度変化だけではなく、それ以外に因子があるが、ここでは割愛)。

②強い対流と同時に、ボトムの汚泥が全層に分布した結果、濁りに加え海中の溶存酸素濃度が低下。"消えない泡"の存在と、"キラキラ光る夜光虫"の存在が、対流の存在を示唆している。
(注;蛍烏賊パターンでは、深場の水が上昇していることが条件の一つになる事があるので、逆に夜行虫存在下で黒鯛が爆発したこともあります。おそらく、ターンオーバーが良い方向へ回っている一つの条件のように感じております。同じ富栄養化でも、初夏、晩秋、初春では意味合いが違うと考えられます。強い澄み潮が続く真冬の時期を超えた後に生じる富栄養化は、魚が寄る条件になる事は容易に想像できます。)

③さらに、本来状況が良いとされているシャローエリアは、強まる冬型気圧配置により海況が安定しない。ただ単に底荒れした状況であれば、荒れの影響の少ないポイントで釣りをすれば良いが、ターンオーバーは、こういった荒れの影響の少ないポイントにまで深く影響を与える。結果的に、安定しないシャローエリアと、ディープエリアの溶存酸素濃度の低下により、エリア全体で魚/烏賊の生息が難しい環境となる。

★注意事項
日本海(特に上越糸魚川)は、瀬戸内海と比較し圧倒的にShallowだけれど、富山側には深海長谷があり、水深200-700mに生息する蛍烏賊が接岸することを考慮すれば、かなり深い層(低温層)との対流がある可能性がある。ただし、今回の検討に関して言えば、深層の水との対流はあまり関係ないかもしれない。おそらく、汚泥はせいぜい水深数十メートルまでのエリアでしか存在しないだろう(要検証)。



10/27
ShallowではTurn over続行中。
夜光虫はそこら中で湧いているが、ベイトの気配がない。


11/2
Shallow~DeepまでTurn over続行中。
いつものサビキおじさんと話しをすると、鯵も釣れていないようだ。
勿論、僕にも何も釣れない。
と思っていたのだけれど、カベ男さんが某ポイントでしっかりと結果を出されていた。

エリアを考えよう。


11/4
41歳の誕生日。
子供たちが(ケーキ目当てで)お祝いしてくれた後に、上越へ。
目先を変えてHappyFishing直江津へ向かうも、長い車の列に萎える。
結局、近傍の堤防で鯵やアオリイカを狙うも、Human pressuerでこちらも萎える。
★入ったポイントでは、やはりターンオーバーの影響が強い印象があったが、距離にして200m沖合にあるHappyFishing直江津では、鯵が大量に釣れており、更にイナダやサゴシ等が揚がっているらしい。Deepポイントは、悪い状況も長続きする印象があったが、更に深場へ行けば安定しているのかもしれない。


4連続ボウズ釣行。


心が折れた。

"黙然と処るも、また動なり"
少し落ち着いて、海が回復するのを待とう。
そう思いながら、リンクさせていただいているarakayanさんのブログ記事に目を通していると。


ある記事が目に留まる。


そして、そこには心が打たれる言葉がある。


そもそも11月の島根半島はアジングが成立しにくいのかもしれない
⇒もしかすると、日本海に共通する問題なのか。

週末の夜、子どもたちに夕飯を食べさせ、風呂に入れて寝かせるのは、今の僕にとって最も大切な任務
⇒耳が痛いです。

シーズンインとアウトが年によって2〜4週間くらいずれることがめずらしくない
⇒海の状況に起因すると思ってます。鯵が接岸しやすい条件を鯵自身が選択しているのだろう。そして、今の上越糸魚川の状況は、おそらくターンオーバー。

現時点では、地道に釣行を重ねデータを蓄積していくしかない、という答えしか出せない
⇒この点こそ、僕が見習うべき最も重要な姿勢だとおもいました。




釣れなくても良い(半分負け惜しみ)。
釣れない状況を経験して、それを糧にすれば良い。
海へ行かなければ何も分からないし、そもそもデーターを積み重ねられない。
僕が真に目指しているのは、Experienceに基づいたEvidenceを構築していく事。
そして、更にExperienceとEvidenceに基づいて、上越糸魚川の海を読んでいく事。


よし、行こう。

釣れなくても、何かを得ればよい。



11/8
早朝2時に長野を出発。
朝マズメ3時間の短時間勝負。
狙いは、一応アオリイカ、鯵、メバル。
海の色とターンオーバーを確認できれば良い。
レンジとエリアを効率よく探れるポイントを選択する。

メインタックルは、Cayen(CA-85L)とし、バックにはエギングケースとスーパーボールフロートw/JH、メタルジグを持参。暗いうちはメバル&鯵、マズメはアオリイカ&鯵という、3兎を追う釣行計画を立てる(まあ、3兎を追う者1兎も得ずというのはよくある事)。

まず、深いエリアを確認するが、これまでの釣行と大きくは変わらない。打ち寄せる波とサラシによって形成された泡と夜行虫の存在。さらに、暗い中、視認出来る範囲で海全体がうっすらと白く濁っている。やはり、水深が比較的あるエリアは、まだ悪い状態で安定している。

であれば。

数分歩いて、エリアを効率よく探れるポイントへと移動。
レンジを探るポイントと異なり、海の濁りは幾分改善しているが、秋の走りの時期や、冬のメバルの時期と比較すれば、白濁している。ただし、ウィンディーサイドとなっているため足元にはゴミがあるが、泡は全く無く、夜光虫も足元に僅か存在するのみ。

そうか。全層で循環を始めたとしても、やはり改善するのはShallowからなんだ。


徐々にマズメの時間は熟していき、明るくなるが、アオリイカからの反応は皆無なため、6:00に竿を納める。


帰宅準備をし、DeepとShallowを見比べながら歩いていると、やはり水色は圧倒的にShallowで改善している。ふと何気なく海を凝視していると、水面で何かが跳ねる。ベイトの群れが何かに追われている。急いでメタルジグ(BiSlider 7g)をセット。キャストし、ボトムをとって、ブルブル震わせながらリフト。その後、テンションフォール中に、魚からの反応がある。

鯵だ。


すごく綺麗な紫がかった金色。体高もある。

嬉しい!

数匹かかるが、抜き上げで悉くばらしてしまう。
Strangeを持参していれば、ワインドでおそらく獲れたであろう。
残念。

時計を見ると6:20。帰宅する。

1478560851629[201]

一匹だけど、アジフライにしました。
子供たちが『美味しいよ。また釣って来てね。』と言ってくれました。






この貢のまとめとして。


僕のように場当たり的に釣れればよいという姿勢ではなく、arakayanさんの実直にアジを追い続けるスタイルを、僕はとてもRespectしている。ブログ記事は淡々としているが、より重要な点、おそらくそれは"続けていくことの重要性"を垣間見ることが出来る。

彼のブログ記事へ、半ばReaction biteしてしまった。その中でのやり取り。
『この現象(注釈;ターンオーバー)が日本海でどのように起きて、魚にどのような影響を与えると考えておられるのか、もしよろしければ激渋さんのご意見を教えていただければ幸いです。』

このarakayanさんからのご質問に答えたいと思い本稿を書いたのだが、あまり良く纏まらない。
一つには、文才のなさ。
一つには、海に対する理解の中途半端さ。

ここで、事実だけ挙げていく。
①10月末以降北よりの気圧配置が徐々に増えていった。
⇒気温の低下+海域の底荒れ
②Shallow Semi-Deep Deepが良くない。
③水深10mを超えるラインでは鯵が釣れている。
④11月中旬になって、上越地区でカタクチイワシの接岸。
⇒Shallowが良くなってきている
⑤徐々に季節が進めば、全体的に落ち着くと考えられるが、海が荒れる日が増える。

これを踏まえて、僕が考えるArakayanさんへの答え。

『日本海でどのようにターンオーバーが起きているのか』
・北よりの気圧配置により、海が時化て底荒れが生じる。更に、気温の低下に引っ張られてた水温の変化が海水の循環を引き起こし、ボトムの栄養塩(≒赤潮プランクトン)を全層に噴き上げた状態がしばらく持続。結果的に全層での貧酸素化が生じる。
元来干満差の少ない日本海では、この現象がしばらく持続する。
しかし、季節が進むにつれ、Shallowからターンオーバーが完了し、全域が落ち着いて冬の海へ向かっていく。

『魚にどのような影響を与える』
ターンオーバー最中は、上述したように、プランクトンによる富栄養化と、それに伴う溶存酸素濃度の低下により魚が海域に寄りにくい状況だと考えられる。ただし、悪い状況はShallowから改善されるため、荒れの落ち着いたタイミングでのShallowではベイトフィッシュの寄りがある。その後、全域で海が冬へと向かっていく。
★ターンオーバーが完了したのち、海が安定して冬へと向かっている結果、arakayanさんの書かれていた13~16℃の海水温帯が、鯵がShallowへやってきやすい(おそらくベイトマター)状況になるのでは。



さて。
季節はゆっくりと動いている。
そろそろ"胸がクッ"っと痛くなる季節だ。