4/30 20:30。




後ろ髪を引かれる思いで、ポイントを後にする。
"もう少しこのポイントにとどまりたい"という気持ちもあった。
しかし、シーズンを通して打ってきたいくつかの場所も調査したい。



『今日は最終日だ。来季へつながる釣りをしよう。』



そう考え、車を西へ向ける。



途中、Bocky君とカベ男さんが某ポイントで鰺を釣っているという情報を得る。
メバルを見ていただきたいと思い、彼らがいらっしゃるポイントで少し足を止める。


Bocky君にメバルを見ていただき、そして釣れたポイント状況を元に意見を交換する。


『あそこですか!?』


僕はそのポイントで尺メバルが過去に出たという情報を知っていたのだけれど、やはりBocky君もご存じだった。それと同時に、ああいったポイントで大型メバルが出てくる理由をお互いに探る。


『立ち位置はあのあたりですか?・・ああ、やっぱりそこですか。』


そこはやはり34.1㎝という超級記録保持者だ。
意見を交わす過程で、僕の立ち位置をほぼ正確に予測される。
僕が今回釣行で気付いた"メバルが出る条件"を、彼は既に理解しているのだ。

凄いAnglerだ。

彼のブログ記事には多くの鰺が掲載されている。今季だけでもその釣果は300匹を超え、さらに伸びている。最近Bocky君と話をするときに、彼自身が持つ風格を感じる事が多い。メバルならば34.1㎝、鰺ならば400匹等、釣った人間にしか見れない"景色"があるのだろう。


連日の爆釣モードでお疲れのBocky君に別れを告げ、カベ男さんの元へ。




カベ男さんと僕は、LINE Group内で様々なDiscussionを行っている。

特に今シーズン、僕が個人的に"熱い"と感じた議論が2点。


一つは"          "に関する議論。

この議論ははとても勉強になった。
エリア一帯に〇〇が出たとしても、それが果たしてマイナスなのか。逆に、プラスに作用する可能性とそうなるための条件。一般的に語られている"難しい"と考えられている条件下においても、釣りを成立させるために考えるべきこと。

この議論が出てくる背景は、やはり"海を理解しよう"とするAnglerに共通する探究心なのだろうと思う。恐らく、海釣りを深く楽しむことは、海を深く理解することと同義なのだろう。そして、一つの対象魚(かべおさんの場合は特に蛍烏賊)に絡めて深く海を理解することは、他の対象魚に対しても深い考察となりうる。




もう一つは、"勝ち組メバルと負け組メバル"に関する議論。

そもそもメバルに勝ち負けは無いが、論点を整理するため便宜的に分類。

僕は、『"より大型化するメバル群(=勝ち組)"は小型フィッシュベイトを好んで捕食し、"マイクロベイトを偏食する個体群(=負け組)"は大型化しにくい。』という仮説を立てている。最初のポイントで出た尺個体は、マイクロベイトしか捕食していなかった(注;後述予定です)ため、まだまだ仮定の域を出る事が出来ない。

残念ながら、大前提としてメバルの主捕食対象物はマイクロベイトであり、小型フィッシュベイトもマイクロベイトを捕食する。負け組メバルも、普段マイクロベイトを捕食していたとしても、たまたま小型フィッシュベイトが近くにやってくれば、積極的にフィッシュベイトを捕食するかもしれない。つまり、上記仮説を実証する手段がない。

ただし、より大型のメバルをターゲットにしたとき、僕のポイント選択はよりセレクティブになる。

こういったポイント選択で、より大型のメバルを一匹ずつ積み上げることが出来れば、上記仮説を実証するための一つの傍証にはなるかもしれない。

この議論をする中で、カベ男さんからご教示いただいた、『陸封型のヤマメと、降海型のサクラマス。』の知識。一般的に、ヤマメは河川において、河畔林からの落下昆虫は水生昆虫、底性生物やプランクトンを捕食するのに対し、サクラマスは海洋において、イカナゴやイワシ等の小魚やプランクトンを捕食。一概にヤマメとメバルを比較することは出来ないが、回遊性が強く、魚食性の強い魚ほど大型化するというのは必然かもしれない。

ただし、回遊性の強いクロメバル(=blue back)よりシロメバルの方が、上越糸魚川エリアでは大型化するというペティグリーチャム師匠の仮説や、上越糸魚川において最大サイズで34.1㎝という本来漁礁定着性の強いはずのアカメバルが確認されている。

これらの仮説に関しては、先入観を持たず、今後も一匹一匹獲っていく中で検討していきたい。



・・・

上記内容について僕が意見を投げかけている中でも、カベ男さんのリールは、時折チリチリと小気味良いドラグ音を出しながら、コンスタントに鰺を積み上げていく。一方僕は、フロート+0.3gJHw/ウェーブテールで一匹かけたが取り込みでバレる。圧倒的な差がそこにはあったが、全然めげない。フロートの釣りをやる土俵ではないし、そもそもフロートでやるっていう覚悟が出来ているので。覚悟という名の負け惜しみですが(笑)。







22:30 カベ男さんに挨拶をして、次のポイントへ。


今シーズン幾度となく通った、思い入れの強いポイント。
明かりの落ちる先には、ライズを確認。

鰺か、メバルか。

そんなことを考えながらフロート+ユーリーをキャスト。
小さい当たりはあるが、うまく乗らないためJHワームへと変更。

"トン"という感覚は鰺。

この場所でも数匹の鰺を捕獲し移動。




移動を繰り返すが、なかなか反応がないところに、一匹のメバル。


1

撮影中に動いてしまい、少しずれているが27㎝のBlue back。


この一匹を獲りたいとおもい、冬の海を駆けずり回っていた。
確実に進んでいく季節が、どことなく口惜しい。
写真を撮影し、急いでリリース。




時間は26:00近く。



さすがに、眠くなってくる。
夜間の最後のポイントとして、どこに入るか。
幽霊テトラか、先日SeabassAnglerとお会いした場所か。



それとも・・・。



26:30 新規ポイント。


全くの新規ポイントを選択する(結果的に今シーズン最後のポイント)。


幽霊テトラも検討したが、今となってはhuman pressureが高く、様々な"残念な噂"も耳にする。そもそも僕は幽霊テトラを十分堪能したし、潮の入り具合が変化している今の状況では『ここではない』というのが正直な印象だ。さらに、先日Seabass Anglerとお会いした場所も魅力的ではあったが、あの場所は僕のポイントではない。失礼に値すると考え今回は遠慮した。

新規ポイント。

先日某ポイントでお会いした上記Seabass Anglerにヒントを得て、目を皿のようにしてGoogle earthと格闘した結果、いつか入ってみようと考えていたポイント。Structure、oooo、ベイト、底質、砂礫の入り方等某ポイントと非常に似ているシチュエーションではあった。"メバルだとすると少し雰囲気が違うかなぁ"などと思いながらも、いくつかのメバルが釣れるための条件は兼ね備えている。

・β
・γ
・δ
・(ζ)
・蛍烏賊

この新規ポイントでは、蛍烏賊がメインベイトになっていたであろうと想定していたため、僕のリグセッティングは、フロート+Zequid。ざっと歩きながらポイントを浅く広く探ろうと思っていた一投目。

""と何かがリグを触った違和感。

蛍烏賊がリグに触ったのかなと思い、リールを巻いてプラグを回収するが、勿論ホタルイカはスレがかりしていない。再度同じようにキャストしても、同様の違和感。Zquidをユーリーマグナムに変更しても、同様の違和感。ユーリーマグナムをFireFly又はFireFly miniへ変更しても同様。


思い切って、フロート+0.75gJH+ゼツリンダートミニへ変更。


数回のキャストで理解できたこと。
潮は左から流れているが、潮流は強くない。更に、足元から少し沖の潮に楔入し、合流してていく離岸流。恐らく合流地点には潮のヨレや反転流が形成され、ここに魚がプールされているように感じる。更に、比較的礫の多いワンド、砂の多い馬の背とスロープという地形がメリハリを持っている。

離岸流は強くないため、潮に乗せてBack driftというわけにはいかないが、それでも、南風を背負いフルキャスト後、ラインスラッグを回収しゆっくりとフロートをなじませながら、目的の地点(反転流によって形成されるヨレ)方向へテンションをかけていく。

7


テンションが最初に緩むポイント。
恐らく、離岸流本流からフロートが出たタイミングで。

"トン"

今度は比較的大きな魚信がある。
竿をあおると、めばるとは全く異なる重量感。
その場で留まるというよりは、トルクをもって縦横無尽に。
メバルの引きはとても滑らかだけど、この魚の引きは暴力的。

シーバスだろう。

いつもならラインテンションを抜いてばらそうと思う所だが、今日はシーズン最終日。
大物を釣り上げ、家に持ってて帰り、家族でシーバスの大葉チーズはさみフライを食べたい。

ドラグを少し緩め、ラインテンションを抜かないよう丁寧にやり取りをすることにする。


ーーーーーーーーーーー

使用していたリーダーは、対メバル用6lb。
JHはがまかつスイミングコブラ0.75g、勿論バーブレス。

6


僕はがまかつのスイミングコブラが好きなので、GRF-TR85PEspecial+フロート+0.75gスイミングコブラ+ワームというセッティングを多用する。バーブレスはバレるというイメージを依然僕は持っているのだけれど、適切なテンションをかけ続けることが出来るこの竿との相性はとても良い。正直言うと、メバルであれ黒鯛であれシーバスであれ、このセッティングで魚をばらしたことはほぼ皆無と言っていい。

ーーーーーーーーーーー

対象魚がより大型化したとしても、GRF-TR85PEspecialは十分に仕事をする。

ティップからベリーが魚の泳力に対してしなやかに追従し、バットは反作用をかけ続ける。ブレイクで大きく鰓洗いするが、例えバーブレスであっても(バーブレスだからこそ?)バレない。対尺メバル用に少し強めにセッティングしているにもかかわらず、ドラグはどんどん滑り出していく。それでも徐々に力尽き、浪打際の1st.Breakで鰓洗いを見せた後、寄る波に併せてランディング。

4

僕にとってはgood proportionのシーバス。


更に同じアプローチでもう一匹。

5

余り大きくはないけれど、体高のあるナイスなシーバス。

とても楽しい時間だったけれど、僕が釣りたいのは君たちではない。






オープンにエリアを狙ったとき、おそらく最も条件の良い場所にはシーバスがいる。

ではメバルは?

おそらくシーバスの存在を嫌がっているはず。

ただし、ヨレの辺縁において、時々蛍烏賊の捕食発光は確認できる。

時間は3:00。
予報では4:00頃から風が変わり雷雨となるため、残り時間は少ない。

条件を一つだけ外そう。

ヨレの近辺を"最も条件の良い捕食場所"と想定し、その場所にはより大型の魚種(今回の場合はシーバス)が存在している。だとすれば、より下位にいるメバルは、最も条件の良いポイントの周囲に定位しているかもしれない。

アプローチはほとんど変わらない。変わるのは、カウントだけ。

立ち位置を少しだけ馬の背方面へ変え、離岸流流芯方向へとUpstreamにフロートをキャスト。強い潮流の影響を受け、フロートはかなり左へ流される。反転流の最も外縁を形成する潮に乗せてリグをドリフトさせるイメージ。


8


じっくりと潮にフロートを掴ませ、反転流外縁を丁寧に流していく。フロートが僕の正面を通過し、さらに垂直方向に30度くらいでテンションをかけていく。テンションをかけると、竿先が支点となり、ゆっくりとフロートとリグが圧力を受けながら角度を変える。

そんな圧力を感じていると。

"トン"

再度大きな魚信。
ドラグが一瞬大きくなり、慌てて右手をスプールに添える。少しだけドラグを締め、魚の反応を竿に吸収させる。最初はシーバスかと思ったが、それほど重量感がない。ただしメバルであったとすれば、トルクがあり滑らかだ。大きいかもしれない。

期待に胸が弾むと同時に、背中に汗が噴き出てくるのを感じる。

メバルだという予測は十分していたが、僕の知っているメバルの引きとは少し違う。瞬間的な突っ込みは、まるでシーバスのように暴力的なのだけれど、暴力的な突っ込みの後には滑らかに泳いでいく。耐えようと思ってロッドで耐えていると、ドラグの逆回転によるPEラインのリリースで、魚が限りなく泳いでいくように感じる。

少し強引にやり取りをすることにする。

ドラグを再度締め、メバルの反応が弱まった瞬間、強制的にリールを巻く。魚が外部から加わった力に反発しようと力をためようとしている雰囲気があったが、その"一瞬の間"を利用して、どんどんリールを巻く。結局外力にかなわないと思ったのか、その後比較的簡単にメバルを獲り込む。

3

31㎝の。
まるでスポーニング個体。



2

少し移動し、同様のアプローチで29㎝。


不思議なことに、このポイントで釣れたメバルは二匹とも体色が赤茶色であった。なぜこのメバルが釣れたのか、理由は良く分からない。少なくとも僕が今までに釣ったことのない種類のメバルだった。


シーズンの最終日に。
高活性な魚、一発でバイトしてくる魚がプールしているポイントを選択することが出来た。更に、潮流にフロートを流すといった、僕が今までやってきた釣りを推し進めた結果、メバルの居場所を突き詰めることが出来た。ただ単に運が良かっただけかもしれない。だとしても、ベイトを考え、潮流を読み、メバルの居場所を予測し、そして予測どうりの場所で釣ることが出来た満足できる大型個体。

釣りは本当に、"趣深い"。

そして釣り人の数だけ"趣深さ"があるのだろう。

もう少しこの空間と時間を楽しんでいたかったのだが、雷が近づき雨が降り始めたため、いったん車に戻る。



車に戻る道すがら、既に意識は朝マズメの鰺へと向かっていた。しかし、車に乗った瞬間、素晴らしい尺メバルと嬉しいゲストに恵まれた達成感は、心地よい疲労感をもたらし、車を叩く雨音も気にならず僕は意識を失っていく。

・・・
・・


リズミカルに車の屋根を叩く雨音に目が覚める。
辺りはマズメの明るさをはらんでいたものの、雨脚は予想以上に強い。

とてもじゃないが、釣りが出来る状況ではない。



車のエンジンをかけ、時計を見ると4:45。

ここで、緊張感が緩む。

同時に僕のシーズンが終了。

『ありがとうございました。最後の最後で、本当にありがとございました。』

心の中で、海に向かって感謝の意を伝え、長野へ。






帰宅後、まだ眠っていた子供たちと妻を起こす。


1

2

3


長男:『わー、おとーちゃん、凄い!』
次男:『がおー、がおー(意訳:大きい魚が沢山いる)!』

奥様:『お疲れ様、沢山釣れたね。楽しかった?』

妻に左手を差し出して、握手。

激渋:『ほんとうにありがとう。とても満足です。』
激渋:『これからは、家事・育児に頑張ります。本当にありがとうございました。』

子供達とも握手。





5月中旬。

上越糸魚川エリアのメバルシーズンは既に本格化しているだろう。

Wead jungle、5月6月の蛍烏賊パターン、そして"僕だけのメバル"。

更に広大なエリアを達観した時に、まだまだ多くの可能性が残されている。



でも、ひとまず僕のシーズンは終了。



今季初冬のスポーニング時期には、尺個体がなかなかでなかった。
それでも、何とか出た一匹の尺メバルは格別だった。

真冬の一匹を出すのに苦しむ過程で得た、特別なBlack Rock fish。
シーマン君に教わったRock Fishの食性への認識の再評価。

二回の激渋佐渡釣行。
その中で得ることができたであろう、精神的な成長。

そして、シーズン最終日の楽しい釣果。


名残は尽きないが・・。





最後に釣友の皆様。
いつも色々とご教示いただき大変ありがとうございました。
皆様の釣果とブログ更新を楽しみに、日々の育児を頑張ります。



激渋Rocker!  拝

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