冬の訪れと同時に本業が忙しくなってしまい、放ったらかし状態で申し訳ありません。ようやく仕事がひと山越えたので、今後もゆる~く、なが~く、適当に更新を続けたいと思っています。

1/14(水)~19(月)、1/25(日)~28(水)、2/3(火)~10(火)と中国出張が相次いで、心身共に落ち着かない日々でした。オッサンの本業は 『釣り師』 じゃなく、台湾や中国からウナギやハモ、アナゴ、ドジョウなど、魚市場で 『長物』 と呼ばれる魚を輸入して販売しています。その年の市況によって魚種の比率は変化しますが、活(=LIVE、生きているもの) と加工品が半々の扱いです。
仕上げ前
年始早々、hidamariさんのブログ 『ひだまり日記』 にウツボの記事がアップされています。
ひだまり日記 「(釣行記) 2015年初釣行。念願のあのお魚を・・・(後編)」
ひだまり日記 「そしてウツボを食してみました」

立派なウツボを、息子さんが見事に捌いて、とても美味しそうです。

平リーマンだった15年ほど前まで、オッサンの売上は100%ウナギでした。でも、残留薬物問題や中国産餃子など中国産バッシングが相次いで、一気に需要が低下。『このままじゃ出向させるゾッ!』 と体育会のノリで脅かされ、必死に扱い魚種を増やしてきました。その結果、冒頭の魚種に加え、 2002年から 『ウツボ』 も輸入しています。

ハモやアナゴなど、比較的メジャーな魚種にはそれぞれ専門業者がいて、中国側にも日本側にも 『ハモ屋』 さんや 『アナゴ屋』 さんがいらっしゃいます。ただ、ウツボはマイナーなので先駆者がおらず、当初は非常に苦労しました。
アナゴ
中国南部にある魚市場を見て回ると、ウツボは非常にポピュラーな魚で、数種のウツボが販売されています。このウツボについてまとめてみました。

『ウナギ』 と 『タウナギ』
20数年前、オッサンが初めて中国に行った頃は、俗に言う 『ウナギ』 は対日輸出用で、現地ではあまり食べませんでした。まぁ、食べるより売っちゃえ!というのもあるんですが、歴史的な言い伝えで 『ウナギは食べてはいけない…』 と言われてました。『四脚で食べないのはイスだけ』 なんて言われる中国南部でも、ヘビはポピュラーなのにウナギは食べませんでした。

その代り、現地で盛んに食べられていたウナギは 『タウナギ』。“田” のウナギと言う名の通り、日本でも昔は田んぼや用水路などで普通に見られた魚です。最近はドジョウやザリガニ同様、農薬等環境の変化で生息数は激減しています。
タウナギ
中国では各地で養殖されており、価格も安く、滋養強壮効果の高いスタミナ食として日々の家庭料理にも登場する食材です。
タウナギ料理
つまり、タウナギは昔から慣れ親しんだ伝統食材、ウナギは食べちゃダメ!と言われてきたけど、日本人が高い値段で買い漁っていく、ちょっと不思議で馴染みのない食材… という位置づけでした。

中文名
中国では馴染みの薄いウナギ。中国語の正式名称は 『鰻魚』 と表記し、川のウナギであることから、市場では 『河鰻』 とも呼ばれます。

逆に、“海の鰻” という意味合いでハモは 『海鰻』、アナゴは側線が星のように並んでいるので 『星鰻』 と表記します。ハモもアナゴも、中国人にとっては近年食べ始めた魚です。比較的馴染みが薄く、近代になって食べ始めた長~い魚には、 “鰻” という漢字を使っています。

一方の日常食材、タウナギ。中国語の正式名称は 『鱔魚』、お腹が真っ黄色になるので、市場やスーパーなどでは 『黄鱔』 とも呼びます。この由緒正しき、正統派タウナギの海水版… という意味合いで、ウツボは 『海鱔』 と表記されています。名前を見ても、ハモやアナゴに比べて、ウツボが古くからポピュラーな食材であることが分かります。
ウツボ

漁場と漁法
古くから親しまれてきたウツボですから、中国南部の港町にはウツボ専門の漁師がいます。小船で岩礁帯を探り釣る小規模なものから、大型船の延縄で獲るものまで、規模は様々です。

漁場として有名なのは中国最南端の島、海南島エリアと広東省の汕頭~東山付近、福建省の厦門~霞浦にかけての沿岸域です。この3ポイントは、岩ダコの漁場としても有名で、砂地に岩礁が点在する地形に潜む岩ダコを狙って、ウツボも多い海域です。

海南島のウツボ
現地駐在員とウツボを求めて探し回った結果、最も漁獲量が多く安定しているのが中国最南端・海南島でした。行ってみると、図鑑や水族館で見たウツボとは似ても似つかぬ、赤に青にオレンジと 『カラフルウツボ』 のオンパレード。漁師も市場も種を分けて販売せず、混獲のままひと山いくらで販売していました。
2種
サンプル用に買い付けてウナギの加工場へ搬送。模様や色目から種類を分けて、それぞれ加工し試食しますが、確かに種による味の差が分かりません。調べ出したらキリがなさそうなので、単に 『ウツボ』 でいいでしょ?と適当な仕事をしていました。

厚生労働省の見解
数尾のサンプルを持ち帰り、厚生労働省の輸入検疫に相談すると、『輸入するウツボの種を特定し、証明書を添付して下さい』 との見解が出ました。ハモでもアナゴでも、そんな面倒な手続きは求められません。理由を確認すると、『南方海域のウツボには、シガテラ毒を持つ種がいるので』 とのことでした。

???それまでウナギ専門だったオッサンには、初めて聞く単語でした。シ・ガ・テ・ラ???

種の特定
水産資源として価値の低い日本で、ウツボを研究している大学や機関は少なく、むしろ台湾や中国、東南アジアに研究者が多いことが分かりました。シガテラ毒を持たない種である証明を付けなければ輸入できませんから、色々な伝手から研究者を探します。
 
そうすると、ウナギで良く訪れる福建省厦門市にある廈門大学に、ウツボの権威がいることが分かり、鑑定を依頼。すると、提出した検体の脊椎骨数から種が判明しました。なんと、海南島のサンプルのうち、10%程度が 『ドクウツボ』 。そう、シガテラ毒のある種です。サンプル食べちゃいましたよ!どうしよう…。
Gymnothorax javanicus

シガテラ毒がないドクウツボ
ドクウツボと種が判明した個体を検査しますが、シガテラ毒は検出されません。???。どういう意味ですか?

シガテラ毒は食物連鎖によって発生する毒素で、フグ毒やゴンズイの毒棘のように、どの個体でも等しく有する毒素ではなく、毒を持つ個体と持たない個体がいるそうです。食べるエサや育った水質、その個体の年齢など、決まった方法論がなく、まさに 『丁半博打』。

平リーマンにはリスク高過ぎです。もう、ウツボはやめましょう… と、やめる理由の報告書を書いた記憶が残っています。

シガテラ毒とは?
数年前、外房産のイシガキダイで事故が起こり、大きく報道されました。厚生労働省からもこんな注意喚起が出ています。
自然毒のリスクプロファイル/魚類のシガテラ毒(厚生労働省)

厚労省が特定している種はイシガキダイ、ヒラマサ、ドクウツボ、キツネフエフキ、オニカマス、バラフエダイ、イッテンフエダイ、バラハタ、マダラハタ、アカマダラハタ、アオノメハタ。ハタ類やフエフキ、フエダイに加え、ヒラマサもリスクあるんですね。
シガテラ中毒について (沖縄県衛生環境研究所)

結局、中国産ウツボについては、ドクウツボの判別方法を確立して加工場で選別する事と、シガテラ毒の検査を行う事で、無事輸入できるようになり、今日まで問題は出ていません。商品化の問題以前に、シガテラ毒の問題が大きく、輸入に際しては非常に負担が大きい魚です。

このシガテラ毒が厄介なのは、肉や内臓が変色や異臭を呈する訳ではないので、見ても分かりません。加熱しても、冷凍しても、毒素は消えません。毒素を有する個体と、無毒の個体の判別は、化学的な検査以外に不可能。水産業界関係者にとって、本当に厄介な相手です。

ドクウツボが混獲される中国南部では、『大きすぎる個体は食べない』 と言われています。ただ、乱獲で大きな個体自体が珍しく、結果としてシガテラによる被害が防げているようです。

フグのように死亡事例こそありませんが、加熱してもダメとなると 『イシガキダイは売らない』 という、少々乱暴で極端な方法でしかリスクを減らせません。

ヒョウモンダコ
昨年夏、代々木公園で大騒ぎになった 『デング熱』。貨物に紛れて日本に上陸し、ベイエリアで多数発見されて問題になっている毒グモ 『セアカゴケグモ』。
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本来は熱帯や亜熱帯地域の生物が、関東周辺でも越冬して繁殖しています。海の生物では、昨年騒がれた 『ヒョウモンダコ』 もその一つ。大型船舶のバラスト水や海流で関東周辺にたどり着いたとしても、越冬できないというのが定説でした。でも、温暖化の影響でしょうか、確実に生息地域が北上しています。
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食物連鎖によって発生するジガテラ毒。サンゴ礁地域の魚にリスクが高く、逆に言えば関東周辺では気にする必要が無かったのですが、近年は太平洋側沿岸で事故が相次いでいます。
シガテラ食中毒にご注意ください(大阪府堺市)

陸上も、海中も、南方生物の生息限界が北上しており、ドクウツボの生息域も北上傾向にあるようです。また、これまで報告事例のないウツボも、温暖化によって食物連鎖の輪に入ってしまう可能性も否定できません。

加工品
そんな苦労の末に輸入販売しているウツボですが、旨味の強い身質を生かすには、少しコツが必要な魚です。

ウナギの加工場に搬入したウツボは、塩で体表のヌメリを取り除いて洗浄。背開きにして頭を落とします。洗浄方法や開き方には、試行錯誤の末にたどり着いた加工ノウハウが満載ですが、企業秘密なのでご紹介できませんが、今回は一つだけご覧にいれます。
テンダライザー
中央部のローラーに、ハリネズミのような針がついていて、皮に細かな穴が空きます。これで、ウツボの厚い皮が簡単に歯で噛み切れるようになりました。今では、ハモやウナギにも利用しています。

家庭なら、生け花用の 『剣山』 でガシガシッ!と穴を開けるといいですね。

ウツボは腹部と尾部で脂の入り方、身質、皮の厚さ、骨の入りがまったく違い、別の魚のようです。そのため、頭に近い部分約1/3と、尾に向かう2/3とに切り分け、それぞれ別の加工を行っています。これがポイントです。

腹部の身は①開いてそのまま凍結 ②両面を軽く炙る(=タタキ) ③完全に火を通して蒸す(=白焼) ④③にタレを塗って蒲焼 の4種類に加工しています。

これは②タタキ。1尾ずつ真空パックにして輸入しています。
ウツボ真空
半割にしたタタキの皮目です。ただ炙っただけじゃなく、実は皮目や肉面に色々手を加えています。
ウツボたたき(ロイン)
スライスすると、こんな感じ。オッサンはもっと薄くスライスした方が好きですが、高知の方はカツオもブリもウツボも、ぶ厚く切ってたたくのがお好きなようです。
ウツボたたき(スライス)
タマネギを薄くスライスして水にさらした後、水分を良く切って大皿に敷き詰めます。スライスしたウツボを並べたらニンニク、紅葉おろし、ミョウガ、貝割大根、大葉、生姜など、色とりどりの薬味をこれでもかっ!と大量に乗っけたら、ポン酢をかけて、ウツボのタタキの完成です。
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高知に行くと、カツオのたたき、ウツボのたたき以外に 『シイラのたたき』 もあります。春の初鰹、夏のシイラ、秋の戻り鰹、冬のウツボって感じで、シイラのたたきも美味しかったです。

一方、尾に近い肉は筋肉の塊で、遊泳力の源となる良質のタンパク質で占められています。ただ、小骨が異常に多いので、加工技術が重要です。

ハモの骨切り機で細かな切れ目を入れますが、このカット方法にちょっとした企業秘密があって、これがオッサンの生きる道なので詳しくはお教えできません。このカットを入れると小骨がまったく気にならず、ウツボの旨味だけが楽しめます。

切れ目を入れた後、顧客のリクエストに応じた幅にカットし、IQF凍結(=バラバラに凍結すること)します。この写真は唐揚げや中華の炒め物に使われるもので、幅が広めです。
生唐揚げ用

こちらは片栗粉や小麦粉をまぶして唐揚げ用として販売されたり、佃煮にされます。
短冊
下の写真は、和歌山の顧客がこの短冊カットを油で揚げ、醤油ベースのタレに漬けて販売しているものです。パッケージを写すと問題があるので、商品だけです。
唐揚げ
道の駅や空港、旅館やホテルなどで販売されていますが、結構人気があって販売量もなかなかです。パリパリして、ビールに最高です。

こちらは佃煮。これ、美味いんですが、ウツボって言われないと分からないんで、イマイチかと。
ウツボの佃煮
尾の身を家庭で処理する場合は、骨切りした後軽く天日干しすると、小骨の水分が抜けて口に当たりにくくなります。

南房~外房のウツボは、和歌山や高知などウツボ消費量の高い地域でも評価が高く、高値で取り引きされています。幸か不幸か、ウツボをゲットされたら、是非色々試してみて下さい。房総ウツボは、ブランド品ですよ。

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