ウェブディレクターな日々

本、デザイン、映画、音楽、雑感、飛行機、もしくは社長業

ロマンスカーでの話

小田原から初めて小田急ロマンスカーというものに乗ってみたのだが、通路を挟んで横の夫婦が煩かった。正確には奥さんが煩かった。話を聞いていると(聞きたくはないのだが声が大きいので)、この二日間の夫の行動をあげつらっては延々と非難している。夫はたまに小さな反論を試みるのだが、当然ますます奥さんを怒らせることになる。言ってみればただの夫婦喧嘩なのであるが、何もいまここでしなくてもと思うのである。なんたってここはロマンスカーで、車内はおまけに結構静かなオトナの時間が流れているのである。夫がどれほどのひどい人間なのかは知らないが、今の夫は声を荒げることもなく、大人しくじっとこの場を耐えている。要所要所では一応謝ったりもしている。それなのに奥さんは一向に終える様子はなく、同じことを何度も何度も繰り返し、聞かされているこっちもまったく不快である。ここがパブリックな場所であるという証に僕は少し大きめの咳払いなどしてみるのであるが、まったく効果はない。
そうこうしているうちに、夫はトイレに行ってくると言い、席を立った。残された奥さんをちらりと見てみると、ふてくされたように目をつぶっていた。

そのうちに奥さんはおそらく眠ってしまったのだと思う。次の駅に着いても夫は戻ってこなかった。代わりに別の女がやってきて、その奥さんを起こし、そこは自分の席であると主張した。奥さんは寝ぼけまなこでそそくさと荷物をまとめ、何も言わずに立ち去っていった。僕は不思議に思った。ロマンスカーは指定席である。座席がバッティングするということは、どちらかが間違えている可能性が高い。普通だったら、あれ?ワタシ座席を間違えていたかしら?とか、あなた何番ですか?とか、お互いに確認しあうのが筋であろう。しかし先に座っていた奥さんは謝るわけでもなく、文句を言うわけでもなく(夫にはあんなに言っていたのに)、黙ってその場を立ち去ってしまった。ということは、後から来た女が正しいのだろうか。夫の分と自分の分の荷物を持って奥さんはどこへ行ったのだろうか。夫はとは再会できたのだろうか。

奥さんの立ち去った後に座った女はしばらくスマホをいじっていたが、通りかかった客室乗務員を呼びつけ、さっきこの席に座っていた女性は、なぜ私の席に座っていたのかしら?と、謎めいた質問をした。言葉は丁寧ったが明らかに不満な様子である。おそらくそんな質問は想定問答集にもなかったのだろう。若い乗務員(女性)は、いや、それは、あのう…と明確に答えられないでいる。そりゃそうだ。そんなのこの人に聞いてもわかるわけがないではないかと心の中で思っているとその女は「車掌を呼んでくださる?」と言い放った。え!そこまで大きくするような問題か!?きっとその女は、座席が妙に温かくなっていて気持ち悪いではないか、なぜあなたたちは指定席券を買っていない人をチェックしていなかったのか、ということを言いたいのかもしれない。その言い分は間違えていないし、その気持ちもわからないでもないが、それでもそこまでするような問題か!?

それから僕が降りる町田駅までの10分間に結局車掌は来なかったのだが、僕は気になって仕方がなかった。なんだ?近頃の日本人は大らかさが足りないんじゃないのか?

なんだか全然ロマンスなカーではなかった。

最近読んだ本

使いみちのない風景

『使いみちのない風景』村上春樹

風景の記憶。

子供の頃よく遊んだ近所の路地。
近所の子供たちと自転車で遠出をして工業地帯の橋の上から見た町の景色。
下宿していたアパート横の坂道。
とげぬき地蔵商店街。
缶ビールを飲みながらよく眺めた大和川の流れ。
初めての海外旅行で歩いたソウルの下町。
パリの路上で食べた出来たてのワッフル。

僕にも使い道のないいろんな記憶が残っている。
そこには僕はもういない。
あくまでも場所が主役で、僕は一瞬だけそこを通りかかったエキストラのようなものだ。
しかしそのエキストラはいろんな舞台に出演している。
おもしろいものである。


すかたん

『すかたん』朝井まかて

僕は大阪育ちなのでとてもこの物語を面白く読めたが、
どこであってもその土地の地理、土、水、作物、料理、味、風習、そして土地の言葉がある。
そういうものの中から紡ぎ出されるものがある。
そういうもをとても愛おしく思えるし、もっと大切にしていいと思う。 


秘島図鑑

『秘島図鑑』清水浩史

無人島など日本国内にある「行けない島」のガイドブック。
とても興味深い島の数々なのだが、読んでいると旅情を通り越して、
無力感や寂寞感といったものを感じてくる。

孤島。
無人島。
もし実際そこに行ってしまったら、飢えや孤独や恐怖で頭がおかしくなってしまうかもしれない。
「島」というものには常にどこか旅情を掻き立てられるものがあるが、
都会人が簡単に「憧れる」とは言ってはいけないものがあるような気がする。 


AIの遺電子(3)

『AIの遺電子(3)』山田胡瓜

話の内容はよりデリケートで繊細になってきたように思うが、
ちょっと話の強度が弱くなった気がする。
1、2巻のほうが僕は良かったかな。 


若冲百図

『若冲百図』別冊太陽

この本は若冲の保存版としてとてもいい。
それにしても、やっぱり若冲はエキセントリックなスターである。
圧巻。
 

ウイルスは生きている

『ウイルスは生きている』中屋敷均 

複製できる分子→ゲノム→細胞→生命→人間→AIという壮大な流れを実感する。
生物なのか否か、という問いはまったく意味のない問いだ。
情報を交換するという観点で考えると、
人と人とのコミュニケーションも遺伝子の水平伝播だと言える。 

オホーツク網走マラソン2016 体験記

9月25日、網走オホーツクマラソンを走ってきた。
北海道マラソン(札幌)、千歳国際マラソンに続いて3度目の北海道でのマラソン。
夏場はどうしても本州以南では暑くて走れないので、毎年北海道のどこかを走ることになるが
オホーツク海側に行くのは人生で初めてだ。
まったくの未踏エリアなのでワクワクする。

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羽田でAIR DOに乗り換えて女満別へ。東京はぐづついた天気だったが

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女満別空港はすっかり晴天。初秋のカラッとした青空だった。

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空港から網走市内への道。
広い!実に気持ちのいい風景。これぞ北海道!

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今回泊まったホテルの目の前に網走湖が広がる。
(近くにはサケマス孵化センターがあり、
そこへ遡上しようとする成人したサケマスたちの姿も目撃したのだが、
それはそれは涙ぐましく生臭い話…)

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9月下旬の北海道はもう秋の気配。

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前夜。タクシーで網走市街地へ。
ジム・ジャームッシュ的なロードムービーな世界が展開する。

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地元では有名らしい「だるまや」。

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だるまやの名物メニュー『泥ラーメン』。
(実はみそラーメンではなく、醤油ラーメン)
前日にこんな脂っこいもの食べていいのか!?と思わないでもなかったが、
これが実に旨かった。

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マラソン当日。気温は少し高め。快晴。
網走刑務所前がスタート地点である。

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刑務所をバックに記念写真を撮ってくれるサービスがあったので、記念笑顔など作ってみる。
目標タイムはやっぱり3時間半。
そう、この大会は実は今回がまだ2回目らしいのだが、
何から何まで実によく行き届いた運営レベルとホスピタリティで大いに感心した。

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続々と人が集まってくる。
向こうのテントでは、ゲストランナーのワイナイナさんや金哲彦さん、
真っ赤なジャケットを着た網走の市長さんがいろんな人と記念写真を撮っていた。
みなさんとてもフレンドリーだった。

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9:00、刑務所前をスタート!

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刑務所前の橋を渡る。
後からこの写真を見て気がついたが、後方に金哲彦さん発見!
(金さんはすべてのエイドを食べて走るのが目標だと言ってらした)

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序盤、右手にオホーツク海を見ながら走る。

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森を抜け、能取岬に出た!
ここが一番の絶景。目の前に海と空が広がる!

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牛たちには関係ないらしい。

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灯台を一周する。

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能取(のとろ)岬。

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岬をぐるっと回る。

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岬からの帰路。
あまりの気持ちよさに興奮してしまって、
知らず知らずのうちにオーバーペースになっていた。

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25キロぐらいで、僕の肩を軽く叩きながら「ファイト!」と言い残していったワイナイナさん。
最後尾からスタートして全員に声を掛けながらゴールを目指すという。素敵だ。

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35キロ付近。この辺からペースが落ちてくる。

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失速しながらもゴール直前。ひまわり畑の向こうにラストの直線が見える!

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最後の直線!
前に人がいない!

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両側がひまわり畑。
すばらしいラストストレート。

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沿道の人たちが温かく、見ず知らずなランナーにも声援をくれるので
顔をひきつらせながらも笑顔で応えるサービス精神豊かなランナー。

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またもや最後は失速してしまったが、めでたくゴール!

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ゴールをしたということはつまり、ビールを飲む資格を得たということを意味する。
ということでまずはこれ!
色が実にそそられる地ビール『流氷ドラフト』。
僕は思う。完走後のビールは人生のビール史の中でも一番美味いビールである。

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ネットタイムは3時間32分。
残念ながら3.5時間は切れなかったが、とても素晴らしいコースだったのでまぁ良い。

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地元テレビ局が「ONちゃんダンス」の収録をしていた。
何度かリハーサルをするので後ろで見ていた僕もすっかり覚え、本番では後ろのほうで一緒に参加。
「マラソンランナーの方も踊ってくれてますー!」と司会の女性が僕のことを言っていたので、
たぶんオンエアに映っていたかと思います(笑)。

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ゴール地点は、地元市民のためのお祭り「うみと大地の収穫祭」の会場でもあり、
たくさんの人がおいしい食材や飲み物を楽しんでいた。
こういうところをマラソンのゴール会場にするというのは、とてもいいと思うのである。

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100万本(らしい)ひまわり畑。
今年は夏の台風で例年の50%ぐらいしかなかったらしいけど、
それでも健気に咲いていた。

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さすが北海道。
最新大型トラクターの展示も行われている。
僕なんか見たこともないようなメカで、なんだか興奮してしまった。

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とても気持ちのいい時間。

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ひまわり畑の中を続々と帰ってくるランナーたち。
僕も時間制限のラスト30分ほど前からゴール地点に戻り、最後の力で走ってくるランナーたちを応援。
「パワーをもらう」とか「元気をもらう」っていう言い方は好きではないが、
こういうのって逆にこちらが感動する。
速く走ってきた人もすごいけど、5時間も6時間もずっと走り続けてきた精神力もすごいのだ。

印象的だったのは、スタート前に真っ赤なジャケットで目立っていた網走市長が
最後の一人までずっとゴールの前に立ち、一人ひとりに「ありがとうございました」とお礼を言っていたこと。
どういう市長なのかは僕は全然知らないが、簡単なようでなかなかできることではないと思うし、
網走を好きになったほしい、また来てほしいという気持ちが伝わってきた。

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会場には流氷によるアイシングコーナーもあった。
手を入れただけで激冷だったので大阪育ちの僕は足を浸けれなかった。

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サッポロも、とうもろこしも、もちろん旨し!

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いったんホテルに戻り、網走湖の夕焼け。

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夜はまた市街地で出て、サッポロパーフェクトクラシックで乾杯!

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翌日、オホーツクの海岸を散策。
近くには司馬遼太郎も来たというモヨロ貝塚もある。

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今回のレースで引退するマイシューズ(Asics Gelfeather)。
いろんなところを走ってくれてありがとう!

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帰りは女満別から関空へ直行便で。
また来年も走りたくなるすばらしいマラソン大会と網走の旅だった。

東海道ウォーキング(13日目) 四日市宿→桑名宿

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前回は近鉄四日市駅から帰ったのだが、同じだと面白くないので今回はJRで。
近鉄とは違いJR四日市駅は港のほうにあり、昭和の役所のような寂れた感じの佇まい。(嫌いではない)

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前回終了時にも来た四日市宿。
なぜろくろ首なのか、未だに知らず。

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三滝川の河口方向にコンビナート群が見える。
たぶんこれが四日市らしい風景。

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出た!

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頬のでっぱりは何?

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たまたまではないらしい…。

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このあたりの街道はきれいに整備されていた。

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樹齢約200年の「かわらずの松」。
江戸時代に植えられていた街道筋の松も、四日市ではこの松とあと1本しか残っていないそうだ。

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ちょっとかわいい。足の感じがいい(笑)

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十四川堤の桜並木。
春は美しいだろうな。

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水草が繁殖していた道端の用水路。
水がとてもきれいで小さな魚も棲みついていた。

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ザ・昭和。

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この泡のような積み方は何というのだろう。

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ルート1。
滋賀県の土山では439kmと書いてあったから、そこから60キロぐらい来たことになる。

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員弁川を渡り、桑名市に入る。

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なんかちょっと違う。
嬉しそうやし、ちょっとおっさんくさい。

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満身創痍。
この子は滋賀県産の子だ。

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最初置物かと思ったが、おとなしい猫さんでした。

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桑名市中は宿場町として栄えてたっぽい。

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桑名の旧市街地。昔の風情が残る。

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手前にいるのは桑名市のキャラクター、はまぐりの「ゆめはまちゃん」。

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今回のルート。

詳細はこちら
  

最近読んだ本

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか
アトゥール・ガワンデ
みすず書房
2016-06-25





人生の最後に、人はどうやって生きがいを見い出すことができるか。どうやって尊厳を保つことができるか。
僕自身も祖父母と両親を病院で見送り、四人四様の最後を経験してきたので、人間の死に方というものにはいろいろと思うところがある。

「あなたも歳をとればわかると思うけど、人生で一番いいことは自分でおトイレに行けるときなのよ」

今の自分にはまだ実感としてはわからないが、この言葉は本当にそうなんだろうなぁと思う。
厳しい現実と、しかしながら希望も感じる著。
★★★★




腸内細菌の数は100兆個とも1000兆個とも言われており、重さはなんと1キロ以上。脳や肝臓の重さに匹敵するそう。
最近の僕は、腸内細菌のために食べるものを選んでいるような具合です。
★★★




たまにこういう本も読んでみては、何かヒントが得られるかなと思ったりもするのですが、僕にとっては耳が痛いことがたくさん書いてありました。少し実践してみたりしています。
★★★


戦艦武蔵 (新潮文庫)
吉村 昭
新潮社
2009-11


なんともいえない読後感。深いため息が出るが、読んでよかったと思う。一生の間に一度は読むべき本ではなかろうか。いろんなことを考えさせられる。
★★★★★




椎名誠の作品は実はちゃんと読んだことがなかったのだが、いや、なかなかおもしろかったです。
★★★★ 

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キムラヒロシ
プラスデザインカンパニー株式会社
代表取締役/ウェブディレクター
東京・大阪を行ったり来たりしながら、 いろいろ考えたり作ったりしています。

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