間もなくフレッチャースクールでの2年間の生活も終わりに差し掛かっているため、最後に在学生及び読者の皆様のご要望に応えてフレッチャースクール特集を組みたいと思います。4月30日(月)にキャップストーンとレポート2つが〆切ですので、ゆっくりと更新していきたいと思います。今回の第1弾は、フレッチャースクールで身に着く将来に活きる能力です。

フレッチャースクールにおける2年間で得られる能力は各種各様ですが、英語力のなかで学校側が最重視するのは、ライティング能力/レポート執筆能力です。これはフレッチャースクールの卒業生が国際機関、国務省、国防省に行く割合が高いことが関係しています(詳しくはコチラになります)。
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日本の民間企業や役所でも幹部になるための必須能力ではありますが、学生の時に大学側が鍛えようと意識しているようには見えません。

というわけで、博士課程を有する、学問重視の国際関係大学院として、ある程度長文のペーパーを執筆することを求める授業の割合が多くなります。

私が2年間で書いた授業で課されたペーパーの枚数は、160ページを超えます。修士論文と合わせると250ページを超えます。サマースクールのサラ・ドレズナーさんの教えで初めの学期にペーパーを課させるクラスを多くとってしまったため時間的な余裕がなくなり非常に苦労しました。フレッチャースクールの素晴らしいところは、ライティングセンターというレポートの論理構成や表現の相談を気軽にできる無料相談所があることです(ライティング能力の高いフレッチャー生がバイトで担当していて1回あたり1時間も指導を受けることができます)。私は初めの1年間は相当利用していて、全部で20回以上は利用しました。授業料の元をこんなところで取り返そうとする貧乏庶民精神の発露です。普通の大学院であればお金を取るサービスですが、我々International Studentのためにも学校の無料サービスとして提供されています。こんなところにも、論文やレポートに気合を入れるフレッチャースクールの方針が表れています。

4学期分の授業を終えてある程度長いペーパーでも論旨を一貫させて完成させることができるようになりました。また、10ページのレポートぐらいであれば、リサーチ時間も含めて平日2~3日間で完成できるスピードが身に付きました。

 

ライティングの課題を授業別に挙げると下記の通りです。

Fall 2016(67ページ)

D217 Global Political Economy: 中間ペーパー10枚+期末ペーパー25枚

E213 Econometrics: ポリシーメモ12枚

B200: Foundations in Financial Accounting and Corporate Finance: グループレポート5枚x3+ファイナルプロジェクトペーパー5枚


Spring 2017(32ページ)

D233 Digital Approaches Development: 期末ペーパー6枚

E272 Econ & Business Environment Of China: ペーパー5枚

E212 Macroeconomics: 中間ペーパー3枚(私の担当分)

HKS233 Political Economy after Crisis: 期末ペーパー18枚


Fall 2017(20ページ)

L220 Processes of Int'l Negotiation: 中間レポート9枚、期末レポート5枚(期末レポートはコチラ

E214 Int'l Economic Policy Analysis: ポリシーメモ2枚x3

 

Spring 2018(45ページ)

D271 China's Frontiers: 期末レポート30枚

B223 Informal & Underground Finance:期末レポート10枚

B232 International Investment Law: グループレポート5枚

 

Capstone Thesis

90-100枚

 

これだけ多くを書かされる中で、ライティング能力は必然的に身に付きます。こういう積み重ねが最後の卒業論文Capstoneに繋がっていく自然な流れに流れになります。最初の学期はこれだけ長いペーパーを数多く書くことに能力的にも時間的にもついていけず、困ったらすぐにライティングセンターに駆け込んで藁をもすがる気持ちでアドバイスを求めていました(時間管理のためにライティングセンターをうまく活用していた面もあります)。しかし、かなり余裕を持ってレポートを完成されることが出来るようになりました。その理由は、テーマ設定→コンテンツ及びフロー決定→文献選定→関係箇所リーディング→Zoteroに文献保存→サマリー、ボディ、コンクルージョンという一定の作業に慣れて、あまり作業工程自体はあまり考えずに自動的に出来るようになったためです。

 

論文の有用性について書かれている本がありましたので、少しだけ抜粋します(この本自体は、MBAを不要と言っているわけではなく、改善点を示した提言書という立ち位置です)。

私はこの論文こそが、ビジネススクールで学生たちを鍛える最良のメソッドの1つであると思っている。自分でテーマ設定し、専門書を読み込み、フィールドワークを行い、数十ページから100ページを超える論文を執筆する。その過程で、論理的にものを考える、自分の主張を練り上げ、事実で証明する、自分の言葉で明晰に表現するなどの力が磨かれる。明確な問題意識をもち、自らの主張を実証的に整理し、説得力ある流れをつくり、論理展開していく。役に立たない知識を詰め込むだけの授業では得ることができない「思考のトレーニング」だ。(中略)論文執筆は「深く考える」ことの疑似体験にほかならない。データ分析で現状を理解したり、フレームワークを使って情報を整理するなど、ビジネススクールで学んでいることは、「深く考える」ための「前作業」にすぎない。「深く考える」訓練こそが、次世代リーダーには不可欠なのである。(「結論を言おう、日本人にMBAはいらない」 遠藤功)

 

そういう意味では、フレッチャースクールのMIB(Master of International Business)はバランスが取れているのだと思います。ビジネスカリキュラムをこなすだけではなく、卒業論文も課せられるため、どちらもこなそうとするとかなり多忙になってしまいますが、次世代リーダーの育成にはいいコースなのかも(MIB生でないので不確かですが(´・ω・))です。ここにきてアカデミックMIB生が最強説が出てきました。確かに、きちんとキャップストーンを書く機会があるので、それがジャーナルに乗るレベルになれば、マッキンゼーやボスコンも余裕のアカデミックMIB生になりますね♪気づきませんでした。。。

フレッチャースクールのみだとアカデミック要素が強くなり過ぎてしまう場合は、MIBの授業やハーバードビジネススクールの授業を取ることで、プレゼンテーションスキルや他のスキル鍛えることが可能です。

 

確かに周りを見回してみると、能力ある学生は、いまの卒業間際の時期に、フレッチャーの授業、ハーバードの授業、卒業論文、就職活動を全てバランス良く猛烈にこなしている気がします。私だったら、就職活動をするのであれば、アカデミックキャリアを追求することは無いので、卒業論文はバッサリと切り捨てますが、能力のある生徒ほど、意外と卒業論文を書いていることに今更ながら気づきました。

そうか、確かに、就職先の国際連合でも求められる力だし、経歴でPRできるので卒業論文を書くことに対するモチベーションが高いのでしょうかね?
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(世界の官僚機構の頂点に君臨するUNdでは、英語での高度な文書執筆能力が求められます。フランス語やスペイン語等の第二外国語は不要ですが、高度な英語ライティング能力が必須)

See you soon.