2013年06月

2013年06月13日 20:48


清親考
「最後の浮世絵師 小林清親」(小林哥津・永井荷風・木下杢太郎・金子光晴ほか 
蝸牛社 1977)


数行読み進んで、おや?と思う。

これは、ただものではない文章。

綴れ織りのようにコクがあり、絵画的で滋味豊か。

稀にしか出会えない、優れた随筆であることが分かってきました。

小林哥津さん。 

遅く生まれてきた清親の五女。

若い時には「青鞜」に参加して、小説を書いていたといいます。

清親の傍らにいた幼い日々のこと、

娘の目から見た父、清親

そして伝記としての画家清親の考察。

哥津さんの「清親考」に巡り会っただけでも

この企画をしてよかったと思いました。

萩の花を美しく散らした表紙の、私家版も出ているようだから

いつか古書で見つけたい。

まだまだこの世は知らないことばかり。



2013年06月05日 11:04


清親浅草田甫太郎稲荷
清親『東京名所図』浅草田甫太郎稲荷(明治10)


次回は、三週間の小さな企画展です。

でも、店主の心に叶った好きな企画です。


「荷風の愛した風景画〜小林清親の木版・織田一磨の石版〜」
2013.6.8(土)〜6.30(日)
10:00〜17:00 水曜休み
会場 ギャラリーぼたにか(土佐和紙工芸村内の蔵)


一磨 日本ばし
織田一磨『東京風景』日本ばし(大正5)

昨年、お客様のいない時間に永井荷風の日記『断腸亭日乗』を読みました。

岩波文庫の摘録で、読みさしては読み、読みさしては読み、

長くかかりましたが、荷風にこんなにも惹かれるとは

と、自分でも不思議なくらい。 

今まで小説は読んでいたはずなのに、それほどには思っていませんでした。

日記や随筆のほうが、私には合っていたのでしょう。

自邸につけた名前が断腸亭。 断腸とは「秋海棠」のこと、

意外にも荷風は、草花にも心を止める人でした。

それから、すっかり荷風浸りとなり、

その線上に小林清親と織田一磨が現れました。

ぜひ、ご覧いただきたい催しです。


荷風の日記には、移りゆく街、東京の路地や裏町まで

歩き回る様子が記されています。 それは随筆『日和下駄』となりました。

この中で明治10年代の東京を描いた清親の東京名所図を、荷風は

「一時代の感情を表現し得たる点において甚だ価値ある美術」と、

敬慕をこめて紹介しています。



一方、織田一磨については、大正6年に刊行された処女石版画集『東京風景』に

序文を寄せたのが荷風でした。

「余、年来市井の散策を好み、其の風景版画を愛す。然るに許して逸品となすべきもの

 明治に至って独り小林清親翁の東京名所あるのみ。ここに図らず織田君の製作を得て

 欣喜措く能わず・・・」


二人の画家を繋ぐ荷風・・・。

沈潜した色調で、静かに語りかける都市の風景を

その変貌もふくめて、会場でゆっくりご覧になってください。

6月8日(土)からスタートです。



2013年06月04日 20:19


美人画

「面影の美人画〜伊東深水・山本昇雲・浮世絵〜」
終了しました。

ご覧いただいた皆様に厚くお礼申し上げます。

一興までに、会場に箱を置いて、美人画の投票をしていただいていました。

さて、その結果です。

1位  伊東深水 「追羽根」(圧倒的、ダントツの1位でした)

2位  伊東深水 「おぼろ」

3位  伊東深水 「岐阜提灯」

4位  伊東深水 「大和なでしこ」

     山本昇雲 掛け軸「美人図」

     山本昇雲 「今すがた 花のかんばせ」

     山本昇雲 「今すがた つるし柿」

5位  伊東深水 「蚊帳」

      同    「黒襟」

      同    「髪」

      同    「十五夜」

      同    「娘道成寺」

      同    「雪の夜」

     山本昇雲 「今すがた 小蝶」

6位   山本昇雲 「今すがた ゆり園」

      同    「四季のながめ おはなし」

      同    「四季のながめ ふみ読む夢」

      同    「四季のながめ 夕すず」

     伊東深水 「浴後」

      同    「浴衣」

      同    「口紅」

      同    「紅梅」

 

「追羽根」は動きがあって、色彩も豊か

後ろ向きの姿を描いた作品なのに、圧倒的な1位でした。

なかなか、みな様お目が高いですね。

伊東深水、山本昇雲とも、しばらくギャラリーに置いてあります。

見逃した方は、まだ間に合います。

ご覧になってください。


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