ぼたにか
2011年05月10日 20:31

山本昇雲『今すがた』より 「高砂や」
「江戸の浮世絵と明治大正の木版画展」
〜2011.6.5(日)まで (水曜休み)
10:00〜17:00

主催・会場 ギャラリーぼたにか(土佐和紙工芸村)
「最後の浮世絵師」とも呼ばれる山本昇雲は、高知県出身の画家です。
明治3年(1870)南国市御免町生まれ。
河田小龍らに師事した後、大阪を経て上京
25歳の時、当時人気のあった東陽堂発行の雑誌『風俗画報』に
「土佐国早乙女図」(今も続く「どろんこ祭り」を描く)を投稿して認められ
東陽堂の絵画部員となります。
編集長山下重民に気に入られた昇雲は、以後30年にわたり、
同誌の表紙や挿絵、口絵などを石版画で多数制作しました。
内容は、日清日露の戦争、事件、風景、風俗など。
事実を克明に表現する報道画家として歩む一方、日本画家としても文展、帝展などに
風景や花鳥、美人画を出品し続けています。
そして大黒屋松木平吉との出会い。
浮世絵版元の老舗大黒屋の4代目松木平吉は
小林清親の「光線画」を売り出して知られる人です。
昇雲は大黒屋に請われ、多色摺り木版画『今すがた』(明治39〜42)シリーズを刊行しました。
江戸の浮世絵に連なる美しい大首絵美人画の誕生です。
昇雲の美人画は、“江戸浮世絵の余香を放って”、あえかに繊細で上品
同郷の洋画家石川寅治いわく
「あの人は神様のような人だったから、汚れた水には棲めなかった」
そんな清廉な人柄は画風からもしのばれるような気がします。
昭和に入って昇雲は画壇の表舞台を去り、昭和40年96歳で静かに没しました。
『今すがた』は昇雲の代表作として評価が高いシリーズ。
肉眼でしか伝わらないものを、会場でぜひ味わっていただきたいと思います。
参考:図録「浮世美人と懐かしき日本の情景ー山本昇雲展」
(2005 高知県立美術館発行)