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びん博士通信

ガラスびんの詩 

戦争とガラスびん


     ガラスびんは口をつぐんで転がっていたよ

     人と人、国と国との憎しみ合いがあり

     どこかで戦争の狼煙(のろし)が上がっても

     目のまえを銃弾が飛びかい爆風が吹こうとも

     ガラスびんは口をつぐんだまま転がっていたよ

     ガラスびんは民族のことや政治の駆け引きについて

     何も知らないようであったし

     ただ無垢なままにぼうっとしていた

     ガラスびんはこの世の信じられない悲惨なことも

     何も知らないようであったし

     どんな問いかけやどんな叫びに対しても

     何ら答える術などなかった

     嘆くことも涙すら流すこともなく、

     動揺のそぶりさえ見せることもなかった

     ガラスびんはまるで無力な子供のようであったよ

     ガラスびんは爆風と血の海に投げ出された

     無力な子供のようであったよ

     だからといってガラスびんは

     けっして憎しみを抱くことはなかったし

     奢(おご)ったり威張りちらしたり

     侮蔑したり嘲笑したり

     人の心を傷つけることなどなかった

     けれどもそれは美徳というわけでなく

     ただ無力であるということだけだった

     ガラスびんは何のことはない

     当たり前のように転がっているだけだった

     ガラスびんははたしてそんな自分を

     許すことができただろうか

     硝煙と血に塗られた戦場で

     哀れな兵士や民衆のかわきを

     癒すことができただろうか

     彼らと同じ痛みを感じ

     戦いが終わりを告げ

     自分も粉々に砕け散る最後まで

     この世界を優しい目で

     見詰めつづけることができただろうか

     ガラスびんははたしてそんな中

     そんな自分を愛することができただろうか

     果てしない青い空を見上げ

     この世界をしずかに

     受け入れることができただろうか


びん博士bottletheatre  at 01:18コメント(3)トラックバック(0) この記事をクリップ!