飼い主さんとイヌ・ネコのための防災対策
「いつか」ではなく「いつも」万全の備えを
突然起こる災害、そのとき、人だけでなくイヌもネコもパニック状態になります。非常時を乗り切るためには、各家庭で普段からの備えを十分にしておくほか、「自助」「共助」「公助」の3つのシステムの連携で支え合うことが重要です。
「公助…行政や獣医師会などの支援」は、医療等の専門的な支援や保護シェルターの設置など、長期的な支援が行われますが、災害時に組織が動いて支援が始まるまでには数日間を要します。それまでの間、わたしたちは「自助…飼い主自身の備え」や「共助…飼い主同士・近隣住民の協力」によって乗り切らなければなりません。
では、「自助」や「共助」とは何かを具体的に見てまいりましょう。
「自助…飼い主自身の備え」
◆ 家の中でできる備え
◇ペットにも人にも安全な住まいづくり
・家具の固定やモノが落下しづらい工夫
・ガラスに飛散防止シートを貼る
・高い所の棚は扉が開かないようにストッパーを取り付ける
・火災防止のために、コンセント近くに水のかかるものを置かない
・ケージなど、イヌやネコが安心して逃げ込める安全地帯を
・不要な荷物を貯めずに処分し、部屋をスッキリ整理
・水の汲み置きや備蓄
◇人とペットの避難グッズ
・寝具のそばに懐中電灯、スニーカー、着替え
・取り出しやすい所に人とネコの避難用具一式
キャリー(ポータブルケージ)、トイレ用具、バスタオル、フード、水、食器、おもちゃ、ブラシ、ゴミ袋、ハーネス、リード、エリザベスカラー、救急用品、ガムテープ、ペットの写真、持病があれば薬、お薬手帳、療法食など(人の避難用具は割愛)
◇ペットフードやお薬・療養食の備蓄
・避難所では人の支援物資が優先されるため、ペットフードはもちろん、薬、療養食は手に入りません。持病のあるペットの場合、常に多めにストックしておくように心がけましょう。
◇ケージやキャリー、リードやハーネスに慣らす
・避難所にケージが届くまでの間や、キャリーからイヌやネコを出さざるを得ない状況になったとき、リードやハーネスは逃亡防止に有効です。はじめは嫌がっても、日頃からの訓練で慣らすことができます。
・避難所で狭いケージやキャリーに入ったまま数日間過ごすことを想定して、普段からケージが安心できる場所になるよう、ケージの中でフードを与えたり、トイレを設置して慣れさせましょう。
◇避難場所の確認・家族の役割分担
・電話が不通になった場合の連絡手段を確認。
・あらかじめ家族で非常時の役割分担を決めておく。
◆ 問題回避の為にしておきたいこと
◇ペットの迷子対策
ペットとはぐれてしまった場合は、ペット用迷子掲示板に写真を張り出せるよう、ペット写真をプリントして避難用具の中に入れておく。
◇迷子札とマイクロチップの併用
首輪にペットの名前や連絡先を記していても、非常時に外れてしまう場合があります。
阪神淡路大震災を経験した兵庫県では他県よりもマイクロチップの普及率が高く、東日本大震災や熊本地震では、マイクロチップを装着していたペットほど早く飼い主の元に戻れたそうです。
動物病院でのマイクロチップ装着は、生後4週間から可能で、約30年間機能します。登録用紙への記入や手続きは動物病院の指示に従いましょう。
全国の動物保護センター・保健所・動物病院に配備されている専用のリーダーで読み取ると、15桁の数字から飼い主さんを特定できます。
日本獣医師会(AIPO事務局)への登録を忘れずに。
◇ワクチン接種
避難所では伝染病がペット間で蔓延します。1年に1回の定期的なワクチン接種で予防しましょう。
ノミやダニ、内部寄生虫も日頃からチェックをして、避難所での発生を未然に防ぎましょう。
◇去勢・避妊
災害時に発情期に入ると、ほかのイヌやネコたちに影響が出るばかりでなく、大きな鳴き声が避難所全体に響き渡り、避難者の方々に迷惑がかかります。繁殖を希望しない場合は早期に去勢や避妊をしておくことが望ましいです。
◇避難所での心構え
・動物が苦手な避難者の方もおられることを念頭におく。
・ペットの清潔を心がけ、衛生状態に気を配る。
「共助…飼い主同士・近隣住民の協力」
◆ 近所の飼い主さんとのつながりを育む
◇ご近所の方と積極的に家族やペットの話をして、イヌやネコのネットワークを築く
・災害時に帰宅困難になった場合や避難所でも助け合える仲間となる。
◆ ペット関連のイベントに参加
◇地域のコミュニティで開催されるペット関連の催し物に参加して、情報を共有したりペット仲間と交流する。
◆ 行政が開催する防災訓練に参加
◇地域の避難訓練に参加し、避難所までの経路/迂回路、所要時間を確認
・非常用の荷物を持参して、持ち歩きが可能な量/重さかどうかを実体験。
◇自治体のペット同行避難への対応策を確認
・東日本大震災以降、各自治体では防災計画の見直しが進んでいます。
同行避難が可能か、避難先でのペット受け入れ体勢があるか等に関しては自治体ごとに対応が異なりますので、自ら情報収集をして心構えをしておきましょう。
*** 地震が起きたその時に!***
◇人だけでなく、イヌもネコもパニック
・飼い主の不安はそのままペットの不安になります。普段からの備えをもとに、落ち着いて行動しましょう。
◇落ち着いて状況判断
・避難が必要か冷静に判断。
・避難所以外の手段も検討・・・キャンプ用のテントを使用、車中泊、家屋の被害に遭われなかった地域の方にケージに入れて預かってもらうなど。(ただし、いずれも安全への十分な配慮が必要です。)
◇避難所での心得
・イヌやネコを落ち着かせる為の工夫(ケージを覆う布など)も避難グッズの中に。
・清潔を心がけ、衛生状態に気を配る
・ペット人口は約3割、動物に興味がない人も大勢いることを自覚し、周りに迷惑をかけないよう謙虚な気持ちで。
◇もしもペットとはぐれてしまったら
・室内飼いの場合、それほど遠くへは行かないケースが多いので、自宅近くの植え込みや室外機裏などを捜索。
・迷子のペット掲示板利用
参考書籍
■「動物防災の3R」
発行:特定非営利活動法人アナイス
■「ねことわたしの防災ハンドブック」
ねこの防災を考える会・著(PARCO出版)
■「いっしょに逃げてもいいのかな?ペット防災の基本BOOK」
発行:株式会社ドリーム