GO-WIlD


…キュッ…キキュ……




軽くステップからのフットワークをしつつ歩は様子を伺っていた…




…体格的にもそうだが、一旦見離したら露美緒さんには追いつけない…



露美緒との身長差は、頭一つ分位あり、体格やリーチは歩が有利だが、ことスピードに関しては露美緒が圧倒的に有利であった。


「フフッ……」



……タンッ!!




ズパンッ!!!


「……グフゥッ……」



軽く笑みを浮かべた露美緒からのいきなりの強襲


踏み込んでのアッパーカットであったが、歩は間一髪バックステップが間に合い、やや食らってはいたが、クリーンヒットは免れた……

「カモン、歩ちゃん!!」


……構えた左手で誘うような手招きをする露美緒……



目を離さなくても追いつけない露美緒のステップワークに歩は直感で考え直した。



「……久々に名前で呼んでくれましたね……そうっスね……小賢しいのは抜きにしましょうか……」




バンッ……


ズバーーン!!!



直線的に踏み込んでの歩のジャブからのショートアッパーが、以外にも露美緒にクリーンヒットし、露美緒は一メートルほど離れたリングロープに背中を打ち付けられ、反動で前のめりに倒れそうになったが踏みとどまった……


「露美緒さん……今わざと……」


……食らいましたねと言いかけた瞬間、微笑を浮かべる露美緒に凄まじい圧力、恐怖にも似た感情が押し上げてきた……



「……良いよ、歩……良い感じ……」



……フッ……ズバーーーン!!!




「グッハアァァ……」



踏み込みが全く見えなかったわけではなかった……


……が、体が反応出来ないほどの動きから露美緒の左のボディをフェイクに反動をつけた右の打ち下ろしが顔面にクリーンヒットし、歩はそのまま前のめりに倒れ、歩は意識を失った…………





……近くのコンビニで絆創膏を買って軽い手当てをした露美緒はそのまま、ジムまで走り、着いた頃には、歩はヘトヘトになっていた……




「……ハァ…ハァ……露美緒さん……いつもこんなに走ってんですか……」


「ぅうん、時間があれば岩槻位は走るよ」


「ハァ?!」


ここから岩槻まで往復で50キロ位はゆうにある、それを20キロ走った後にさも当然に言われると、疑うどころか呆れてものが言えなくなる……



……ガラガラ~




「親方~今帰りました……て居ないな、ヨッシャ♪」




居たら、この頬の傷から真っ先に拳骨と説教二時間のワンツーパンチである


露美緒はガッツポーズを決めながら言い訳を考えていた……


「でも、誰も居ないなぁ……何でだろ?」



「そらいないっしょ、ジム生はみんな平日は仕事だし、会長は多分パチンコだし!」



平日に来ていた二人は、歩は宅配業のオフ日だし、露美緒に至ってはサボりである……鍵が開けっ広げなのは会長が大雑把だからである。



「やっり~あの馬鹿親父が帰って来ない間何しようかな?」


「練習に決まってっしょ……」

歩は、いつも通りにロープスキッピングを始めようと縄跳びに手をかけようとしたら、背中を露美緒につつかれ、後ろを振り向く。


「せっかくだからさ、親方いないうちにノーギアでスパーリングしようよ!責任は持つからさ♪」


「……」

その言葉に眉をしかめた歩だが、少し考えた後、頷きグローブをはめた。



「…露美緒さん……せっかくだからこっちからも言わせてくれ…今回は手加減抜きでお願いしますよ…」

「…え?私はいつでも本気だよ……」



何時になく真剣な表情の歩は左拳を露美緒に突き出した……



「あんたはいつもそうだ、いつも自分に優しかった……リングですら、相手を気遣ってんのかなかなか本気にはなってなかった……本気になったあんたに勝つ事を考えるようになったんですよ……」


「……なるほどね…君も本気なんだ……じゃあ、私からもひとつ言わせて……負けたら……私…ボクシング…引退します……」



……ボクシング引退……

その言葉を放った瞬間、歩の背筋に冷たいものが走った……




「…やっとその気になりましたね……始めましょうか!」




歩はタイムベルをセットし、静かに構えた…




……今度こそ、あんたを越える……







…ビーーーー…………

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