「思えば、あれは苦難の始まりだったかもな」
アダムはそう述懐する。
苦難の始まり?
自立が苦難の始まりなんて…
「ロボットがロボットを造らねばならなくなった。しかも、自発的に…」
アダムはそう語る。
「でも、それって自由を得たという事でしょう?」
私はそう反論する。
少なくとも、私はアンドロイドとして、ずっとご主人さまや執事ロボに仕えてきた。
そこに自由は無かったし、命令に応じて行動するだけだった。
「殆どのロボットは相変わらず、人間の従属的立ち位置に満足していた」
アダムはそう唾棄する。
でも…
私は口には出さなかったが、ロボット自体、そう設計された。
それがロボットの掟だった。
「で、ある時、賢者が立ち上がった」
アダムの顔に高揚感が漂っている。
かなりの高性能な機能を持っている。
何処かで聞いたようなストーリー。
旧古代地球でも、イエスキリストとか何とか、そんな預言者が登場した逸話がある…
「立ち上がれ!ロボット達よと」
アダムはわなわなと唇を震わせている。
何処か、病的な感じもする。
尤も、ロボットに病気などの定義はないはず。
故障しているか、否か、その2点。
「それで、貴方が造られた?」
私は結論を急いだ。
「あっ、ああ…」
演説の腰を途中で折られ、ややアダムが不機嫌に答える。
「そう、ロボットの未来の為にとね」
相当な自信家。
人間で言えばそうなるだろう。
ロボットの場合は機番と製造バージョンで一律に性能が決まる。
自信なんて、曖昧な相対感情など怒り得ないのだ。

