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5層錐体細胞の分類〜Chagnac-Amitai, et al., JCN 1990〜

5層錐体細胞を分類した論文、シリーズ第三弾。
Chagnac-Amitai, et al., JCN 1990

シリーズ第一弾第二弾で紹介したLarkman, Masonの
論文と並んで、5層錐体細胞を分類した論文として
非常によく引用されている論文だ。

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この研究では、ラットのsomatosensoryとvisual cortexの5b層の
錐体細胞からサンプルし、まず電気生理実験からバーストするか
しないかで2種類の細胞に分類している。

そして、その2種類の錐体細胞の形態を調べたところ、電気生理的
特性だけではなく、形態的にも異なる細胞種であることを
明らかにしている。

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この論文での「バースト」の定義だが、Materials and Methodsに
記述があり、3つの立て続けに起こるスパイクとDAPsが観察される
こと、らしい。

ダブレットに関しては排除している。
(Fig.12 C&Dでこの定義の問題が出ているようだ)

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この論文では73個のIB細胞と28個のRS細胞からサンプル。
IB細胞にバイアスをかけてサンプルしたため、RS細胞の数は
結果的に少なくなったらしい。

また、重要なポイントとして、サンプリングはすべて5b層から
行ったという点だ。

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著者らの見積もりによるとS1では50〜60%でIB細胞に
出会い、VCでは約30%だったらしい。

ちなみに、table 1に電気生理実験のパラメータがまとめられて
いて、IB細胞は少しだけスパイクのピーク値が低かったらしい。
細胞外記録では、電極と細胞との距離の方がかなり影響してしまう
からあまり参考にはならないが、IB細胞は大きいのにスパイクは
小さいということになる。

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さて、IB細胞の特徴をかなり詳細に記述している。

IB細胞の大きな特徴の一つはDAPで、例え1発しかスパイクが
でなくても、このDAPが見えるらしい。(Fig.1B2)

ちなみに、今回RS細胞と分類した50%(!)でもDAPが
見え、30%のケースで「ダブレット」が見れたらしい。

ということは、「バースト」の定義によっては、IB細胞と
RS細胞の境界がかなりぶれる気がする。

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さらにバーストの多様性について詳細な記述があり、基本的には
バーストするとスパイクの振幅が小さくなっていくが、「some cases」
では、幅広になったり、最後の一発の振幅が大きかったりする
らしい。

これはかなりやっかいで、細胞外で単にスパイク振幅の減衰だけ
見てても、バーストかどうかしっかり判断できない可能性がある。

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バーストの後に最大100msのafterhyperが見られるらしい。
これは、自分的にはかなり心強いデータだ。

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さらに、最近ホットなUP & DOWN stateと絡む記述もあって、
1.過分極気味でも、十分な脱分極パルスがあれば、バーストは起きる。
2.a few casesで、-60mVくらいにホールドしていると、バースト
がブロックされたらしい。

しかも、2の現象は、4−5a層のIB細胞でもいくつか
観察されるらしい。

これを解釈すると、UPでバーストを起こせないIB細胞が
少しだけいそうということ。逆にいえば、他の大多数はUPでも
もちろんバーストする。

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IB細胞の10%は繰り返しバーストを起こせたらしい。
つまり、afterhyperが見れないIB細胞もいることになる。

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Fig.6では、orthodromicな刺激を入れた時のバーストについて調べている。
これは重要だが、IB細胞はIPSP成分が観察されないということ。

Discussionでも触れているが、もともと抑制性入力そのものが
RS細胞に比べて少ないことが主な原因であると見ている。
このあたりは、最近の光刺激の実験系でも確かめられているので、
確かな説だと思われる。

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続いて形態について。

25個のIB細胞の形態について調べている。
1.somataはpyramidal shapeをしていて、Nisslのデータと比較しても、
最も大きい細胞体を持っている細胞種。

2.細胞体とapical dendriteの境界の区別が難しい。

3.apical dendriteは5層内で多くのoblique dendriteが
出ていて、2/3層で大きく枝分かれして、末端がtuft状態に
なっている。

4.basal dendriteは最大600um広がっている。

5.axonは5/6層で分岐していて、その枝は水平方向に
最大1.5〜2mmくらいのびて、メインのaxonは白質へ
のびている。(例外がFig12A)

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RS細胞については9個の形態を調べている。
1.細胞体はIB細胞と比べると球状に近い。

2.apical dendriteは細くて、細胞体との区別が明瞭。

3.ほとんどの細胞で、apical dendriteは1層に到達して
いたが、枝が少ない。

4.basal dendriteは比較的限局したパターンで、最大
400umの範囲をもっている。

5.axonはより多くの枝をもっていて、上層にも到達している。

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Table2が形態の定量的な比較で、
1.細胞体の最大半径
2.細胞体の面積
3.apical dendriteの幅(細胞体中心から80um)
で有意な大きな差が見れている。
これは比較的簡単にできそうな定量だ!

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以上がデータ。
さて、Larkman、Masonの論文と同じ年に発表されているので、
お互いを引用するということはしていないが、いくつかの点で
結果が異なる。気になる点を議論してみよう。

1.IB細胞が存在する場所
Larkmanたちは5a層に多く存在するといっているが、この論文
では5b層を解析している。

おそらく、Discussionでも議論しているように、IB細胞には
2種類あって、一つは4〜5a層のIB細胞、もう一つは5b層、
ということになりそうだ。

2.RS細胞の形態
Larkmanたちはapical dendriteが1層に到達していない細胞を
slender細胞と定義して、その電気生理特性を調べたら、RS細胞
だった、ということを言っている。

が、この論文ではほとんどのRS細胞のapical dendriteは1層
に到達していた、と記述している。

おそらく、この論文の方が正しいと思う。Larkmanたちのスライス
では、apical dendriteが多くのケースで切れてしまっていた
可能性が高い。

ちなみに、somaとapical dendriteの境界の明瞭さについては
一致した記述をしているので、この点を基準にして細胞種を
分類すると良いかもしれない。

3.basal dendriteの多様性
LarkmanたちはRS細胞のbasal dendriteの多様性について
記述しているが、この論文では、どちらかというと、IB細胞より
「ショボい」ということを言っている。

もちろん、食い違うデータというわけではないが、basal dendrite
については、グレーゾーンが残っている印象を受ける。

4.細胞種内の多様性
上述したが、バーストといっても、かなり多様なバーストが
ありそうで、おそらくCaチャンネルの発現などと組み合わせて
調べると、IB細胞はクリアに少なくとも2タイプに分けられたり
する印象だ。

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この論文は、5b層の錐体細胞をIB細胞とRS細胞という
2種類に分けられると言うことを主張しいる一方で、
多様性についての記述をふんだんにとりいれており、
discussionの質も高い。

個人的には、このPrince研の論文の方が好きだ。

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