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感覚野の層と機能〜2/3層 Brecht, Roth, and Sakmann, JP 2003〜

前回の4層に引き続き、2/3層を調べた研究について。

J Physiol. 2003 Nov 15;553(Pt 1):243-65. Epub 2003 Aug 29.  
Dynamic receptive fields of reconstructed pyramidal cells in layers 3 and 2 of rat somatosensory barrel cortex.
Brecht M, Roth A, Sakmann B.

予備知識などは、前回のエントリーを参照。

2/3層の位置づけ、教科書的には、視床から入力を受けた4層の細胞が、2/3層へ出力を送っている。(4層の細胞は、5層、6層にも出力を送っている。)

つまり、2/3層の細胞は4層の情報の受け手。4層から2/3層へ進むとどのように情報が変化するか?というのがトピックとなる。

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何をやった?
方法は前回と全く同じ。2/3層の錐体細胞を調べたのが違うだけ。
今回は、2層か3層か、バレル上かセプタ上に細胞があるか、という観点で錐体細胞を区別している。なので、4種類の錐体細胞を調べている。

調べた性質は以下の通り。
0.発火頻度
1.受容野と形態
2.ヒゲ刺激の方向選択性
3.一本vs複数本刺激の応答
4.応答性の時間的変動
5.繰り返し刺激に対する応答

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何がわかった?
3層は19個からサンプリングして、うち15個を解析。15個のうち13個はバレル上、2個はセプタ上。

2層は11個からサンプリングして、うち11個を解析。11個のうち3個はバレル上、6個はセプタ上。

層間でサンプリングした領域に偏りがあるが、これは統計的に有意だったらしい。

0.発火頻度
自発発火頻度は、0.068±0.21 Hz(4層は0.053Hzでほぼ同じ)
誘発発火頻度は、200msの刺激あたり0.031±0.05 Hz発、0.16Hz (4層は0.14Hz 0.7 Hz。統計検定はしていないが、図11の雰囲気からして、4層が高いかも?)

1.受容野と形態
図6〜8がまとめ。
セプタ上の細胞と比べ、バレル上で約2倍くらいの大きな反応が得られる。スパイク活動に関しては、閾値以下の反応に比べたら選択性が増しているような雰囲気。

セプタについては、ほとんど発火しなかったため、あまりまともな解析になっていない。4層と比較すると、2/3層は多くのヒゲからの情報を受けている。(選択性が広がる感じ)

形態に関しては、バレル上の細胞の樹状突起は、コラム内にほぼおさまっているが、軸策の広がりが顕著。特に前回の論文の4層と比べると大きな違いがある。

2.ヒゲ刺激の方向選択性
図9。バレル上とセプタ上での選択性の違いはない。

3.一本vs複数本刺激の応答
図10。バレル上の細胞の反応が大きいが、複数本刺激によって反応が増強されたり、抑制されたりする傾向は、どちらも似た感じ。4層では、バレル内のspiny stellate細胞は抑制傾向にあった。


4.応答性の時間的変動
図11〜14。
反応潜時は、2層より3層が早く、セプタ上よりバレル上が早い

図14を前回の論文の図14と比較すると最も面白い。2/3層は反応の立ち上がりが4層より数ミリ秒遅い。4層は80msあたりでほとんど反応がおさまっていたが、2/3層(バレル上)では、その80msの時点で広い範囲のヒゲからの刺激に対して応答している。

セプタ上の細胞がバレル上より遅い。

5.繰り返し刺激に対する応答
全体的に反応が抑圧されていく。ただ、3層は比較的ハイパス的な反応が得られているのに対し、2層は反応が鈍っている。


結果をまとめると
バレル対セプタ・・・バレルでは潜時が早く、大きな反応を示す。
2層対3層・・・2層では潜時が若干遅い。
4層対2/3層・・・2/3層では、潜時が若干遅く、閾値以下の受容野が広い。繰り返し刺激に対する応答は、すべて抑圧的。スパイク発生はよりスパース。

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何を学ぶ?
データとして気になったのは、いわゆる「典型例」として出しているはずのバレル上2、3層のデータ(図2,3)と、ポピュレーションレベルのデータ(図8)の印象があまりにも違うところ。

その典型例では、かなり広いチューニングなのに、ポピュレーションで見ると、PWへの反応が顕著になっている。。。このあたり、多様性を含めたデータ表示というのが求められてしかるべきのような気がした。(数少ないんだし。。。)

それから、発火頻度の低さは、前回の論文同様、非常に気になる。このことについては、Discussionの多くを割いている。whole cell記録のアーティファクトでないという言い訳は仕方ない。

発火頻度で面白いのは、自発発火より、ヒゲ刺激によって誘発される発火頻度が低かったということ。(追記:2/3層の発火頻度の低さについて、)Shadlen&Newsomeのhigh input regimeとの対比をしていて、これは面白かった。

2/3層は、よりスパースな情報表現をしている、という見方をしているようだ。


それから面白いのは、2層と3層の違いが若干見えている点。2層の潜時が遅い

解剖学的に考えてみよう。こちらのエントリーで紹介した論文、マウスの研究だが、ラットにも当てはめられるなら、
VPM→L4/5B/6A→L3
POm→L5A→L2
という二つの経路がバレルコラム内にもあるはず。

次回の論文をちょっと先取りすると、5層は3層より若干遅く反応が立ち上がる感じ。とすると、2層の潜時が若干遅めなのは納得できる気がする。

今回の論文、2層からのサンプリングが少なくて、受容野の比較をまともにできていないのは残念。

地味だが良い研究だ。