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感覚野の層と機能〜Hirsch et al. Nat Neurosci 2003〜

Hirschたちの論文、シリーズ第4弾。(第一弾第二弾第三弾

今回は、ネコ一次視覚野4層のsmooth cellにも単純・複雑細胞がいて、前者は方位選択性があるけど、後者はないことを明らかにした論文。(smooth cellというのは、スパインを持たない細胞)

Nat Neurosci. 2003 Dec;6(12):1300-8. Epub 2003 Nov 16. 
Functionally distinct inhibitory neurons at the first stage of visual cortical processing.
Hirsch JA, Martinez LM, Pillai C, Alonso JM, Wang Q, Sommer FT.

何をやった?
これまでと同じ。ネコ一次視覚野からホールセル記録して、smooth cellについて解析している。smooth cellなので、おそらく抑制性細胞。(生化学、電気生理的な検証はしていない)

11個からサンプリングして、10個が4層で、1個は6層の上部。

何がわかった?
1.興奮性細胞のように、単純細胞、複雑細胞を明確に分けることができた。(10個中6個が単純、4個は複雑細胞。)

2.単純細胞は明確な方位選択性を、複雑細胞はブロードもしくは選択性を持たない。

何を学ぶ?
まず、in vivoで抑制性細胞の機能と形態を調べた点がすごい。特に目をひいたのは図1のcの細胞。長距離抑制細胞と言って良いと思う(参考:こちら)。ただ、受容野特性を見ると、他の局所抑制細胞と違いはなさそうだ。

単純細胞と複雑細胞、軸策の分岐程度が違う印象を受けるが、特に言及していなかったと思う。彼らは一貫して形態と機能とを結びつけようとしていない。(そのうち論文として出るのかもしれないけど)

discussionでは、最後が面白かった。
Swadlowの研究との対比、体性感覚野との対比について議論している。

そのSwadlowの論文として引用されているのはこちら。
Nat Neurosci. 2002 May;5(5):403-4. 
Erratum in: Nat Neurosci 2002 Jul;5(7):704.
Receptive-field construction in cortical inhibitory interneurons.
Swadlow HA, Gusev AG.

Cereb Cortex. 2003 Jan;13(1):25-32.  
Fast-spike interneurons and feedforward inhibition in awake sensory neocortex.
Swadlow HA.

Swadlowは、80年代から覚醒下のウサギで精力的な研究を一貫して続けている人。

ポイントは、体性感覚野の抑制細胞(細胞外記録なのでsuspected inhibitory neurons,  SINsと呼んでいる)は広い選択性しかもたない、という点。つまり、視覚野と体性感覚野の抑制細胞は、解剖と機能が異なるかもしれない。

Hirschたちはどうも「別に一緒である必要ないやん」と開き直っているようである。

個人的には、まず、麻酔の効果、記録方法の違い(細胞外か細胞内記録か)を議論しないと、同じ土俵では深い議論はできない気がする。

そもそも異なるタイプの抑制細胞を調べているのだったら、結果がかみ合わないのも当然。Swadlowは、スパイクが幅狭のFS細胞を見ているだろうから、今回のHirschたちのタイプと違ってる可能性がある。このあたり、たくさん掘り下げるべきネタが転がっている。

ちなみに、この論文では、受容野特性を定量している。いわゆるpushとpullの領域がどれくらい重なっているかを定量するoverlap indexを使っている。この指標のソースはこちら。
J Neurophysiol. 1976 Nov;39(6):1288-319.  
Quantitative studies of single-cell properties in monkey striate cortex. I. Spatiotemporal organization of receptive fields.
Schiller PH, Finlay BL, Volman SF.

pubMedで知ったけど、この人たち、JNPに5連報出してて、約100ページを独占している。この論文はその第一報目。