BCI/BMI特集

新着のJournal of Physiologyで、「脳−機械インターフェース」の特集が組まれている。概説がこちら

FetzSchwartzDonoghueWolpaw、この分野のパイオニアが総説を寄稿している。

直接神経細胞の活動を計測するBMI(brain-machine interface)と、マクロレベルの神経活動を計測する侵襲性がない・低いBCI(brain-computer interface)
その話をバランスよく3つずつ取り上げている。

他にはNicolelis、Andersenがこの分野のパイオニアになるか。
その二人の代表的な論文は、こちらこちら

ちなみに、Nicolelisはスイスの心脳研究所のPIとしても名を連ねている。こちら

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以下、つぶやき的エントリーを、、、

この分野がなぜ重要か?なぜ面白いか?

脳信号を使って義肢を動かしたり、新しい発想のリハビリにつながるかもしれない、という臨床応用。
脳の情報処理をより深く理解できるかもしれない、という基礎研究の側面。
その両方のポテンシャルを兼ね備えているから重要。

将来、ロボットがホントに「ザ・マトリックス」を作ってしまう、というマッドな要素もなくはないが。。。

それはともかく、BMI/BCI研究で、計測技術・データ解析に要求される超えるべきハードルは低くない。

例えば、臨床応用を謳った研究で気をつけなければいけないのは、「リアルタイム性」があるかないか。

被験者・動物に何度も同じ事をやってもらってデータをたくさん取って、それで初めて脳の信号を解読できました、という研究は、BCI/BMIの応用には直接はつながらない。

一回思っただけで、義肢が動いてもらわないと困るから。

一方で、まず個々人ごとのグーグル的神経活動データベースを作って、それに基づいて一回性の壁を克服するというストラテジーがうまくいくのか、実用的なのか、自分にはよくわからない。

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それから、BMIを目指した研究で本気で応用を目指すなら、オンライン、つまりリアルタイムでニューロン活動の情報を抽出しないといけない。

今でも多くの研究でやってるオフライン解析と、BMIで要求されるリアルタイムとのギャップをどう埋めるか、真剣に考えないといけない。

その点、Nicolelisが、単一細胞レベルの信号分離にはある程度目を瞑ったのはある意味正解だったと思われる。けど、基礎研究という点では、非常に不満が残るのも確か。書き方に気をつけないと、論文を通すときに、簡単にクレームをつけられるリスクもありそう。

だからといって、テトロードといった電極を使って、スパーコンピューターで数日かけてようやくニューロン活動を抽出しているようでは、実用上話にならない。。。

さらに、現状では、テトロード対応の高精度な完全自動スパイク分離ソフトすらこの世には存在していない。(と思われる)

ましてや、それをリアルタイムかつ高精度でできるソフトは。。。

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そもそも、数年が限度であろう電極を、患者さんの脳に埋め込むのには、かなり抵抗がある。高速イメージングで代替できる時代が到来しても、脳に色素を注入したり、ウイルスを感染させたり、エレポレで遺伝子導入したり、、、現時点ではあまり想像したくない。。。

臨床応用と基礎研究、それぞれから要求されるハードルそのものが異なる。

現時点では両者のトレードオフがある。

つまり、臨床応用に即つなげようと思うと、計測・解析の粗さには目を瞑らざるを得ない。結果として、粗い出力、短命BMIにならざるを得ない。脳の情報処理の深い理解につながるのかよくわからない。

その戦略がいつか限界を迎えてしまうのか、少々粗くてもこの調子で進めれば臨床と基礎両立できるのか、誰も知らない。

基礎研究重視なら、即応用、ということをある程度犠牲にして、地道に手間暇かけて一歩一歩進めないといけない。計測法から解析法、一つ一つしっかり検討しながら進めないといけない。

けど、いつ本当の意味で、実用レベルになるのか、それも誰も知らない。

BCIベースのゲーム機が出ようが、BMI研究が本当に目指しているゴールはそこではない。臨床応用と脳の深い理解。

計測・解析に要求される超えるべきハードルは低くない。

基礎と臨床、両方のポテンシャルがあると言いつつ、ホントに両立できるのか、実のところ、具体的には見えていない気がする。

だから、この分野は面白い。