感覚野の層と機能〜2/3層への入力特異性〜

Nat Neurosci. 2000 Jul;3(7):701-7.
Laminar sources of synaptic input to cortical inhibitory interneurons and pyramidal neurons.
Dantzker JL, Callaway EM.

2/3層では、興奮性入力をどこから受けとるかは、細胞種によって異なる、ことを明らかにしている。

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何をやった?
ラット視覚野2/3層への興奮性・抑制性入力と細胞種特異性の関係を、ケージグルタミン酸&レーザースキャン刺激&ホールセル記録で調べている。

この方法のオリジナル論文はこちら。
Proc Natl Acad Sci U S A. 1993 Aug 15;90(16):7661-5.
Photostimulation using caged glutamate reveals functional circuitry in living brain slices.
Callaway EM, Katz LC.

サンプルはP26−30で400um厚。
2/3層の60個の細胞からサンプリング。

細胞種は、錐体細胞FS(fast-spiking)細胞AD(adapting)細胞の3種。
AD細胞を、さらに2つに分類している。
そのAD細胞、形態的には、small basketとbituftedで、AD1が前者、AD2が後者の傾向があったとのこと。

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何がわかった?

図2が今回の論文の象徴的なデータ。
4種類の細胞の興奮性入力のソースを調べている。

錐体細胞では、4層からの入力が最も強い。
FS細胞も似ている。
AD1細胞では、5層からの入力が、他のタイプと比べて強い。
AD2細胞では、2/3層からの入力がほとんど。

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図4がその定量データ。

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図5では抑制入力について調べている。
これといった細胞種特異性は見えていないが、ほとんど2/3層、4層から来ている。

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まとめると、2/3層では、細胞種によって興奮性入力のソースが異なる、ということになる。

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何を考える?
まず5b層から2/3層錐体細胞への興奮性入力は非常に弱い。自明かもしれないが、個人的には、これにまず注目したい。

一方で、AD1細胞には相対的に大きな入力が来ている
この選択性は面白い。

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Discussionは、非常に示唆に富んでいて面白い。
特に、抑制性インターニューロンへの入力特異性に関する考察が面白い。

視床からの入力は4層に入って、FSと錐体細胞へ流れる。
フィードフォワード的な抑制回路がありそう。(2005年の論文はそれを裏付けている。以下参照)

さらに、カルレチニン陽性細胞と推測されるAD2細胞の興奮性入力は、主に2/3層から来る。つまり、今回調べている錐体細胞から。抑制性細胞に優先的に出力している可能性があるらしい。

Discussionで述べているように、部分的には、
PAD2FS
という脱抑制的なポジティブフィードバック回路があるかもしれない。(Pは錐体細胞、は興奮性、は抑制性)

だとすると、、、
視床からの入力だけではフィードフォワード抑制が働いて活動しにくい2/3層錐体細胞。けど、一旦活動できるとなると、抑制の呪縛を振り払って信号を増幅できる?

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一方、AD1は5b層からの入力が強い。が、出力がどうなっているのか、この論文だけからはよくわからない。small basketもFS細胞と同じと考えて良いのなら、錐体細胞ということか。

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とそのあたりの疑問を少しすっきりさせる論文が、Yoshimuraさんの以下の論文。
Nature. 2005 Feb 24;433(7028):868-73.
Excitatory cortical neurons form fine-scale functional networks.
Yoshimura Y, Dantzker JL, Callaway EM.

Nat Neurosci. 2005 Nov;8(11):1552-9. Epub 2005 Oct 9.
Fine-scale specificity of cortical networks depends on inhibitory cell type and connectivity.
Yoshimura Y, Callaway EM.

前者では、4層興奮性細胞から2/3層錐体細胞への結合に選択性があることを明らかにしている。
2/3層錐体細胞同士がつながってる細胞には、共通入力があって、つながってないとそうでない。
一方、5層錐体細胞、抑制性細胞から2/3層錐体細胞には、選択性はない。最後の図がわかりやすくて良い。

後者では、それをさらに発展させている。
2/3層錐体細胞と双方向結合しているFS細胞にも、4層細胞は選択的に入力を送っていることを明らかにしている。

フィードフォワード、フィードバック抑制がどのようなタイミングで使い分けられるのか・共存するのか、興味があるところ。

ちなみに、こちらがその二つの論文をまとめた図になる。

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この一連の研究は、非常に示唆的で面白いし、いろんなことをあれこれ考えさせてくれる。

AD細胞の出力先と抑制性細胞同士の結合性はどうなっているのだろう?

それから、Ohkiさんの論文を考慮に入れると、YoshimuraさんのNature論文は、齧歯類だから、という批判もでるかもしれない。つまり、ネコなら、隣接した錐体細胞は共通した4層からの入力が入っていて、2/3層のクラスターが明確に分かれている。けど、ラットはゴチャゴチャした中に選択性がある。(実際にそういう議論があるかしらないけど)

それから、もっと成熟したラットでも同じモチーフは保たれているのか、かなり気になるところではある。