6層ニューロンの多様性

最近、新皮質の6層が気になるので、6層のことを。
萌え度、高いです。。。(6層、と言いだした時点で萌えてるか)

出力先に基づく細胞種の分類
J Neurosci. 1997 Aug 15;17(16):6365-79.
Intracortical axonal projections of lamina VI cells of the primary somatosensory cortex in the rat: a single-cell labeling study.
Zhang ZW, Deschênes M.

ラット体性感覚野、第6層(VIa)のニューロンをjuxtacellular記録でラベル。
ラベルされた細胞の形態(軸策)を調べている。

投射先の違いを元に3つに分類
1.皮質→視床細胞(corticothalamic cell)
2.皮質→皮質細胞(corticocortical cell)
3.局所回路細胞(local circuit cell)

割合は、1が46%、2が44%、3が10%。

細胞形態的に多様なのは2のタイプ。
尖端樹状突起が皮質表面に対して平行に伸ばす錐体細胞や、双極型の細胞もいる。
3のタイプはバスケット細胞で、おそらくギャバ作動性介在ニューロン(GABAergic interneuron)

1のタイプには2種類いる。
1a.VPM(一次視床)だけへ投射
1b.VPMとPOへ投射

前者は6層の上部にいる傾向があり、尖端樹状突起は4層まで、軸策が分枝して4層へ届いている。

後者は6層の下半分にいて、尖端樹状突起は5層まで、分枝の程度は1aよりも大きく特に5層で分枝。

なお、神経活動に関しては一切言及していない。
Materials and Methodsで、麻酔(KX)によって活動が低下、という記述があることはある。が、データも引用文献もないので、信用して良いかは不明。

それから、1個体から複数個の細胞をラベルしているようなので、複数の細胞の軸策をしっかり区別できたのか、若干疑問が残る。(視床や反対側まで軸策を伸ばしているという形態データは提示していない。)

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細胞形態と入力元の関係
J Neurophysiol. 2006 Mar;95(3):1751-61. Epub 2005 Nov 30.
Local connections to specific types of layer 6 neurons in the rat visual cortex.
Zarrinpar A, Callaway EM.

ラット視覚野スライス、第6層(こちらもVIa層)のニューロンの入力先をケージグルタミン酸を使った光刺激の系で調べ、細胞形態との関係を探っている。

樹状突起の形態を元に6つに分類
1.非錐体細胞(スパインがない)(抑制性細胞)
2.双極型の興奮性細胞(尖端樹状突起が上下に伸びている)
3.転回?型の錐体細胞(尖端樹状突起が皮質表面方向へ向いていない)
4.タイプ1房状錐体細胞(尖端の房部分が4層まで届いていない)
5.タイプ2房状錐体細胞(尖端の房部分が4層まで届いている)
6.非房状錐体細胞(尖端樹状突起が深いところで枝分かれしている)

入力に関しては、タイプ1,2の房状錐体細胞について詳しく調べている。
違いは図7にまとめられている。

タイプ1は6層からの入力を受けている「割合」が多い。
が、もともと樹状突起の長さが違っているわけで、割合で比較してどれくらい意味のある数値なのかは不明。

それよりも重要なデータは、ラット視覚野6層の錐体細胞、上層からの入力をほとんど受けていない、ということ。

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何を学ぶ?

まず上のラット体性感覚野の研究との対応は
1a→5
1b→4
2→2,3,6
3→1の一部
ということになりそう。

つまり、ラットに関しては、視覚野と体性感覚野で6層細胞の多様性は一貫していそうだ。(少なくとも興奮性細胞)

この対応を考慮に入れると、
タイプ1房状錐体細胞は、一次・高次の視床へフィードバック
タイプ2は、一次のみへフィードバック
していると考えられる。(実際、論文でもそういう主張)

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モダリティー間の共通性は良いとして、別の次元の違い、つまり種間の違いを見ると、かなり大きな問題を提示する。

簡単に言うと、
6層への入力は、ラットとネコは似てる。
けど、サルは違う。
ということ。

少し掘り下げる。

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歴史的にはGilbertのネコでの研究が先行している。
彼の研究では、6層への入力は主に5層からで、6層は最後に活動する細胞だというイメージを与えた。(いわゆるcanonical circuitというやつか)
Annu Rev Neurosci. 1983;6:217-47.
Microcircuitry of the visual cortex.
Gilbert CD.

6層に関して、その見方の変更を求めたのがCallway研の
J Neurosci. 2001 May 15;21(10):3600-8.
Layer-specific input to distinct cell types in layer 6 of monkey primary visual cortex.
Briggs F, Callaway EM.
という論文。

光刺激マッピングの系で、サルの6層では、2/3層、4層からの入力が5層より大きいことを明らかにした。

つまり、全く同じラボからの研究なのに、種が違うと全然違う結果が得られた、ことになる。

Callawayたちの解釈によると、2つのポイントを挙げている。
第一に、高次視床と一次視覚野6層との関係
第二に、視覚機能の種間差

後者に関しては、ラットとサルの違いは良いとして、サルとネコの違いの説明になるのかは納得いかず。

Callawayたちは、後者に関して、齧歯類バレル皮質の6層はどうか?という将来の研究課題を挙げている。(Svobodaの研究をチェックする必要がありそう)

個人的には、ネコかフェレットで光刺激マッピングをしたらどうなるか調べると、実はラット(齧歯類)の視覚野だけが違うということで、実はあっさり解決する問題かもしれない。

それから、実験者の技術の違いで、スライス作成時に上層からの入力繊維を切ったかどうか、という違いもあるかもしれない。

とにかく、6層は多くの研究者が無視している存在だけに、今後いろんな問題を提起してくれるトピックかも。