090ed67a.jpg 私のここ数年のメインスピーカーは、Sonus FaberのAmati Homageです。オーディオ的な満足感を充分に与えてくれつつ、むやみにハードを感じさせないバランス感覚と何よりもその美しい音に惚れ込んでいます。そして言い訳を全く必要としない美しい姿も。

 Sonus Faberと私が出会ったのは今から十年前。今は妻となった女性とレンタカーでイタリアを旅行していた私は、ローマから当時従兄弟が住んでいたミラノに行く途中、マラネロとクレモナに立ち寄りました。マラネロはもちろんフェラーリの街。あまり多くない道標を頼りに、ミュージアムのある本社に辿り着いたときは3時間の昼休みがはじまったばかり。何も走っていないフィオラノのテストコースを眺めたり、エンツォの息子、夭折の天才ディーノの銅像と記念写真を撮ったり、ジル・ヴィルヌーブの写真が大きく飾ってあるカフェでエスプレッソを飲んだり、とそれなりに楽しく過ごしましたが、おかげでクレモナに寄る時間が遅くなってしまいました。

 クレモナの市街中心部の駐車場に車を停めた時はすでに夕暮れが迫ってきていました。ヴァイオリン博物館がある市役所を探そうと歩き出したそのとき、聞きなれた言葉で話しかけてくる人がいました。ヴァイオリン作りの修行に来ていると言う日本人の方で、親切にも市役所まで連れて行ってくれました。着いた時は閉館寸前でしたが、案内役の女性はぎりぎりで飛び込んできた私たちに嫌な顔ひとつせず、熱心に展示されている歴史的な楽器の説明をしてくれました。