自分自身との対話(5)

老人のイメージと女性像によって、無意識との対話が支えられたことから、普遍的なイメージを生み出す「元型」があると想定した。

無意識との対話から独自の理論へ

無意識との対話を続けるなかで、ユングはしだいに自分独自の理論を作りあげていった。彼は、前項に述べたような老人のイメージや女性像との対話を繰り返すうちに自分のイメージの中に老人と少女がペアになって出てくることに気づいた。

それを不思議に思ったユングは、いろいろと調べるうちに世界中のいろいろな神話や伝説の中にこのような老人と少女のペアが重要な意味を持ってび場していることを知った。それは知恵(老人)と情愛(少女)の結合と言うこともできるし、知恵(老人)とたましい(少女)の結合、さらには論理(老人)と精念(少女)の結合をも意味しているとユングは考えた。

つまりこのようなイメージは、ユング個人が勝手に生み出したイメージではなく、人類が古くから持っているイメージであり、それがユングを通じて現れたと言うべきものであると考えたのである。

そして内容的にも、この老人は特定の個人的な老人ではなく、より普遍的な「老賢人」と呼ぶべきイメージであり、女性や少女は深層の世界への導き手となるような女性イメージなのだと気づいていったのである。

このような体験から、ユングは前に述べたような、個人を超えた普遍的なイメージパターンを生み出す元である「元型」を想定し、「母なるもの」(母親元型)、「父なるもの」(父親元型もしくは老賢人)、「内なる異性」(アニマ・アニムス)などの元型を特定していくようになったのである。

このような考え方は、フロイトと別れて以来宙ぶらりんの感覚をユングにもたらした「自分独自のもののなさ」からユングを救ってくれることになっていった。