千葉県知事選挙に見る民主主義の光景

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千葉県知事選挙2025@NHKより

さて千葉県知事選挙が終わりました。結果は現職熊谷知事が85%もの得票率、2位小倉候補が所謂供託金ラインの10%得票すらできないレベルの圧勝となりました。

熊谷知事~圧勝で見逃されるもの~
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熊谷知事の政策

さて圧勝した熊谷知事、政策を見ると一見各分野網羅的に抑えられているように見えます。

大網白里の住宅街で水噴出 未明に高さ10メートル、地中の水道管破損か 窓ガラス壊れる@千葉日報2025/2/11
物価高に更新費の増加も 水道料金20%値上げ方針 老朽化で漏水事故相次ぐ 【2025千葉県知事選 県民の暮らし ちばの現場から】(1)@千葉日報2025/3/12

しかし意外だったのは水道を中心とした老朽インフラ対策、例えば1月に三郷市での陥没事故がありましたが千葉県でも大網白里市で水道管破損事故がある中、知事が公約として項目を上げなかったのは意外と言えば意外でした。

半島性を克服する交通インフラの充実@熊谷俊人公式WEBより
JR線の複線化や利便性向上に向けて期成同盟などを通じ、要望活動
京葉線の快速廃止に対して沿線市町村・経済界と連携し、JR東に対して強く抗議、一部復活を実現
北総鉄道の大幅値下げが実現
2023年の豪雨災害で被害を受けた小湊鐡道・いすみ鉄道の復旧支援
バス路線の維持に向けた市町村への補助
ドライバー確保に向けた事業者支援の創設など、地域の足の確保に全力で取り組む
JR久留里線(久留里・上総亀山間)沿線地域交通検討会議 検討結果報告書@千葉県より
主に通勤通学や観光客など、平日の朝夕や休日の日中をピークとした一定のまとまった移動需要は、バスを中心とした定時定路線型の交通手段で対応し、買物や通院など時間帯やエリアが散発的な移動需要は、デマンド型の交通手段で対応することが考えられる。


もう1つ引っかかったのは知事の公約の上の部分、当blogでも取り上げた北総鉄道の運賃値下げ、京葉線快速列車廃止に対する反応、災害で被害を受けた小湊鉄道・いすみ鉄道の復旧支援など頑張ってはいるのですが、新しい交通モードへの転換が決まった久留里線末端区間に関して触れられていないのは気になりました。正直な所久留里線末端区間に関してはネットワークが弱い所謂盲腸線であり、関係する自治体が君津市、千葉県しかなく、大きな貨物輸送も期待できず、対象区間に需要減となりうる学校がなく、豊富な観光資源があるとはいえ、県内屈指とまでは言えないなど、輸送密度の数字以前に廃止を避けるのは難しいので多分芸備線をはじめとする有名路線以上に存続は難しく思っていたので決定自体は悲しいが、仕方ないものは感じていたのですが、ただ建前かもしれませんが決定に関しては「鉄道の廃止は悲しいが地域にとってより良い選択となった」と言うのを示す必要はあると思います。その視点からすると久留里線に関して政策にあげられないというのはそこに自信がないのかと思わざるを得ません。

公共交通 人口減や運転手不足深刻 「地域の足」確保へ方策は 【2025千葉県知事選 県政の課題】@千葉日報2025/3/5
令和の大きな宿題その15 バス転換と言う贅沢が許されない時代に~赤字鉄道路線廃止問題に思う
北総鉄道の祝うべき出来事

確かに熊谷知事の圧勝は妥当性はあるとは思いますが、こういった検証が行われなかったとすれば千葉県民にとって不幸だなと思わざるを得ません

小倉正行候補~対抗候補として頑張ったが…~
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小倉正行HPより

さて現職熊谷知事に主要政党が相乗りしてしまったため対抗馬的なポジションに立った小倉候補、熊谷知事と同じ8分野の政策を掲げつつ水道料金を前面に出すことで対立軸と知事の政策にない水道の話を論点にあげる工夫は頑張ったと思います。

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千葉県知事選挙2025 出口調査結果 水道料金・宿泊税の賛否 現職への評価は 千葉市長選挙も@NHK2025/3/16より

しかし結果は厳しいものがありました。得票率が低いだけでなく、支持母体と言える共産党の支持者の得票すら得られなかったのです。共産党と言うと公明党と共に固い固定票が印象的でしたがそれが崩れてきているのかもしれません。

立花孝志~支持拡大に奔走した結果民主主義を守る努力をしている男~
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立花孝志選挙公報

さて続いては立花孝志氏、千葉県知事選挙なのに活動の大半が兵庫県と言う事で話題になったり、批判されたりしました。個人的には立花氏が考えていたのは今年行われる参院選に向けて支持の維持・拡大で、それを考えると変則的ながら昨年活躍した兵庫県を重視するのは分からなくはないです。そして批判する人には不思議な感覚になります。確かに彼のやっている事は褒められる事ではないですが、ただ褒められる事をしない人が支持を集められるわけなく、実際彼の政治勢力は国会議員2人と地方議員がいるだけで決して大きいものではないです。それを考えると目くじら立てる所ではないのではと感じてしまうのです。立ち話を問題と思う人がやるべきなのは立花氏の批判ではなく立花氏以外の候補の話題を増やす事なのではなかろうかと思います。

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立花氏が5%以上の得票を得た自治体(千葉県知事選挙2025@NHKより)

個人的に興味深かったのは立花氏がどこから得票しているかです。上はNHKのサイトから立花氏が5%以上の得票をしている市町村を調べたものなのですが東京都に隣接する市川・松戸・浦安と言った地域がある反面、都心から距離がある木更津、東金などの自治体も見られます。さすがに銚子や南房総の名前はないですが都市部の浮動票頼みと言うよりも都心への通勤者の少ない地域にも一定レベルで浸透しているのが見て取れます。

NHKから国民を守る党 立花党首 財務省前で襲われけが 男は逮捕@NHK2025/3/14より
14日夕方、東京・霞が関の財務省の前で行われていたデモのそばで、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏がいきなり刃物で襲われ、けがをしました。その場で逮捕された30歳の男の容疑者は「立花氏を殺そうと思った」などと供述していて、警視庁は殺人未遂の疑いで捜査しています。


もう1つ興味深かったのは上の事件、事件自体はやはり言論に対し暴力で対抗するのは許されない事ではあります。ただこの財務省デモに対してある意味で現場で観察する政治家と井野がぱっと浮かばなかったのでそこが興味深いと感じました。



個のデモに関しては立憲民主党の米山議員をはじめ様々な人たちが懸念を表明しています。ただこの財務省デモに限らずデモの参加者に共通しているのは
・現状の政治家に不満を持っている
・そしてわざわざ時間と交通費をかけてデモに参加する行動力がある
そう考えると政治家としてやるべきことは懸念を表明するよりもこの不満と行動力を持つ人たちを取り込む努力をする事なのではないでしょうか?実際この不満と行動力のある人たちを放置し暴走させるのは危険で、立花氏は刃物で襲われています。故に暴走する前に取り込み自らの勢力拡大するというのは政治家としての役割ではなかろうかと思います。そして参院選へ向けて少しでも支持拡大したいと必死になっている立花氏が「既存政治家たちが取りこぼした連中を取り込もう」と行動したのは政治家としての当然あるべきミッションであり健全な民主主義の為の努力なのだろうかと思います。

まとめ

如何だったでしょうか?確かに結果だけを見ると現職知事の横綱相撲、信任投票に見えますが、少なくとも対案を出し論争を起こそうとした小倉候補、参院選に向け支持拡大に奔走する中で既存政党が取りこぼした不満と行動力のあるデモ参加者に近づいた立花氏も民主主義を支える一因となっているのだなと感じました。果たして皆様はどうでしょうか?


令和の大きな宿題外伝その10~さす九にみる「共感」の恐ろしさ~

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鉄ヲタ版さす九

男尊女卑やゆ「さす九」SNSで拡散 性別による無意識の思い込み調査、九州の傾向は@西日本新聞2025/3/9より
 さす九-。今、交流サイト(SNS)で広まっている言葉だ。「さすが九州」の略語で、他地域より男尊女卑の意識が根強いといわれる九州をやゆする。九州といえば「九州男児」のイメージが強いものの、地元からは「地域差別だ」と批判的な声が上がる。


さて「さす九」なる言葉が楽しいツイッターランドで流行り九州新聞界のドン西日本新聞に嘆かれているようです。



実際楽しいツイッターランドではまぁひどい感じで言われています。正直な所それは九州と言う地域以上に個々の家庭の事情ではと思わざるを得ません。九州生まれ関東育ちの人間としては確かに癖はあるけど男尊女卑と言うのは少し違うのではと感じます。そこで色々書いてみようと思います。

平成の美人シンガーの経歴が語るもの




さてそんな九州の女性事情を考えるのにあたり興味深い人物がいます。「SilentEve」等のヒットで知られるシンガーソングライター辛島美登里さんです。

辛島美登里@Wikipediaより
1961年、鹿児島県鹿児島市に生まれる。父は公務員(鹿児島県庁の技術職)[1]。家族は両親と兄。 鹿児島市立中郡小学校[2]、鹿児島大学教育学部附属中学校を卒業後、1年予備校生活を送り(中3次に鹿児島県立甲南高等学校を受験するも不合格となり浪人[3])、鹿児島県立鶴丸高等学校に進学。同校を卒業後、奈良女子大学家政学部生活経営学科に入学。在学中は寮生活を送りながら、音楽部で活動する。
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県立鶴丸高校@みんなの高校情報より
鹿児島県立鶴丸高等学校@Wikipediaより
前身である一中、一高女の校旗が現存している。一中校旗は、前身の「鹿児島県立尋常中学校」の頃に製作されたもので、上部にはえんじ色の線が引かれている。これが後に改称されて「第一鹿児島中学校」となり、この線が略称の「一中」の「一」に見えたのは、全くの偶然であるが、引き立つことになった。


彼女の経歴を見ると高校進学時に浪人をしているのが目立ちますが浪人して進学したのは県立鶴丸高校、所謂旧制一中、東大京大合わせて10名を超える堂々たる地域一の公立名門校になります。これを見て驚く人は驚くのではないでしょうか?「男尊女卑」のはずの九州・鹿児島で旧制一中に女性が進学できるのかと。

公教育に見る「優秀な女性の活躍を後押しする」九州の土壌と関東
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関東・九州の旧制一中の男女共学比較

旧制一中に関しては地域によって男女共学化、別学は地域によって分かれます。関東地方1都6県と九州島内7県の旧制一中の共学に関する状況を比較すると上の表の様になります。驚くことに九州の旧制一中がすべて共学なのに対し都会の関東では埼玉・群馬・栃木の3県が男女別学になっているのが見て取れます

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旧制一中(浦和高校)と旧制一高女(浦和第一女子高校)との進学実績比較

そして重要なのは女性の進学を考えた際別学だと女子高側の進学実績が大きく劣ってしまう点です。上は男女別学の埼玉県における旧制一中だった浦和高校と旧制一高女だった浦和第一女子高校との進学実績の比較です。受験偏差値的には1しか変わりませんが浦和第一女子高校の進学実績が大きく劣るのが見て取れます。そういった意味で言えば九州の方が関東よりも「地域として優秀な女性の活躍を後押しする」土壌があるとすらいえるのかもしれません。

福岡女子大学@Wikipediaより
日本で最初の公立女子専門学校である福岡県女子専門学校を起源とし、学制改革を経た1950年に、県立の女子大学として設立。公立の女子大学は、他には群馬県立女子大学のみである。


そしてそれは高校だけでなく大学でも同じことが言えるようです。上は福岡県にある公立大学福岡女子大学に関するもの、国立のお茶の水女子大学、辛島美登里さんの母校でもある奈良女子大学は有名ですが、福岡女子大学は前身の福岡県女子専門学校も含め公立の女性向け高等教育機関の走りであり、また今でも他に群馬県の群馬県立女子大しかないなどここでも「地域として優秀な女性の活躍を後押しする」土壌を感じさせます。

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管理的職業従事者(会社役員、管理的公務員等)に占める女性の割合(都道府県別)@内閣府男女共同参画局より

そうして「地域として優秀な女性の活躍を後押しする」土壌で育った九州の女性達は仕事でも活躍しているようです。上は管理的職業従事者(会社役員、管理的公務員等)に占める女性の割合(都道府県別)の資料、関東では東京以外割合が15%未満なのに対し九州は全県15%以上と女性たちの活躍が目立ちます。

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都道府県「幸福度」ランキング2024【47都道府県・完全版】@Diamond2024/8/30より

そしてそんな九州の幸福度は関東よりも高そうです。上はDiamond誌の都道府県別の幸福度のランキング、上位10都道府県のうち3県を九州の県が占め、関東の都県がないのに対し、下位10都道府県のうち3都県を関東のと言え県が占めるのは何か象徴的です。

さす九で盛り上がる「共感」の恐ろしさ


さて綺麗にまとめようと思ったのですが西日本の記事の後「鹿児島では男性は具のあるカレー、女性は具無しカレーが当たり前で女性は栄養不足で体格が貧弱」みたいな漫画が出て来て物議をかもしているようです。さすがにとんでもで女性の慎重に関する統計まで出してコミュニティノートが掛かれたようですが正直この手の「共感」の怖さを感じました。「共感」は手間が掛からず気持ちは良いかもしれませんが、大手メディアの衰退を見ると「裏を取る」事の大切さは意識する必要があるのではと感じますがいかがでしょうか?


令和の大きな宿題その31 中流社会のラットレースが終わるとき~トランプ円安是正発言と長期金利1.5%超えに思う~

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長期金利 10年もの国債利回り1.5%台に 2009年以来の高い水準@NHK2025/3/6より
国内の債券市場では長期金利の急上昇が続いていて、6日もアメリカの金利上昇や日銀がこの先も利上げを継続するといった見方などから、代表的な指標となっている10年ものの国債の利回りが1.515%に上昇し、2009年以来の高い水準となっています。
長期金利は、日本国債が売られて価格が下がると上昇するという関係にあり、住宅ローンの固定金利のほか、定期預金の利息などにも影響します。


さてこれまで注目してきた金利ですがとうとう長期金利が2009年以来の1.5%超えをしたそうです。 kinri202503_1
個人向け国債@財務省より

また個人向け国債では税引き前とは言えとうとう5年固定国債の金利が1%を超えました。

トランプ大統領 “日本と中国 通貨安を誘導 解決に関税必要”@NHK2025/3/4より
アメリカのトランプ大統領は3日、中国とともに日本が通貨安を誘導してきたと主張し、こうした問題を解決する手段として関税の発動が必要になるという認識を示しました
トランプ大統領は3日、記者団に対し、「日本の円であれ中国の通貨であれドルに対して通貨を下落させるとアメリカにとって非常に不公平で不利な状況をもたらす」と述べました。
そして中国の習近平国家主席や日本の指導者たちに電話して、「通貨を下落させ続けることはできない」と伝えたことを明らかにしました。


これまでの金利上昇時と違うのはアメリカトランプ大統領が通貨安誘導への懸念と懲罰関税の導入を表明している事で、通貨安の大きな原因となっている日米金利差の解消=政策金利上昇への政治的な追い風になっている事だと思います。私自身の予測としては欧米の金融緩和基調から金利上昇は年内であと1回、0.25%程度とみていましたがもしかしたらそのペースや上昇幅が上がる可能性は高まったとみています。そして住宅ローンがその影響先の筆頭に上がります。それを考えるとこの金利上昇は平成時代維持されて来た「中流社会」に止めを刺すのではと感じます。ここではその事について書こうと思います。

低金利と長期ローンが招いた平成中流社会のラットレースと金利上昇が意味する事
夫から「もし俺の両親から、近くに住むなら住宅資金の半分出すって言われたら…どうする?」って言われて食い気味に「一生賃貸でいいかな」って声が出た→結婚って大変なんだな…@popsiより


こんなツイートが少し前に話題になりました。このツイートを見て「親世代からの援助なしに家を持てる社会」と言うのがある意味で平成の「中流社会」の光景だったのだなと言うのを改めて感じました。

2010年代中産と下流の時代~プロローグ1980年代に始まった非婚化・草食化が語るもの~その3より
  生産手段 労働 投資 消費 属性
上流 ◎   Ⅹ  ◎  ◎  大企業の大株主、大地主等
中産 〇   〇  〇  〇  中小企業のオーナー社長、商店主、自作農等
中流 Ⅹ   ◎  Ⅹ  〇  サラリーマン等
下層 Ⅹ   〇  Ⅹ  △  工員、小作農等


これは10年以上に書いた記事からの引用ですがホワイトカラーのサラリーマンに象徴される中流階級と言うのは言って見ればその労働の生産性の圧倒的な高さから実は生産手段と言う意味の資産がない中でも中産階級並みの経済生活を送れている層と考えると平成時代、特に後半は中国をはじめとするその圧倒的な生産性が揺さぶられた時代だったと思います。

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令和初期と昭和末期の住宅ローン比較(昭和末の金利は昭和50年~平成10年の旧公庫融資基準金利の推移(単位:%)より)

実際昭和末期のと金利上昇前の令和初期の住宅ローンを比較すると上の様になると思います。昭和末期では5%以上の金利も珍しくなく、期間も今のように35年と言う長期のものは一般的ではなかったと思います。そして同じ3500万円のローンで見ても月当たりの返済額はかつて23万円だったのが9万円、支払利息の合計も2100万円強だったのが400万円弱と大きく減っています。更に住宅ローン控除の存在などを考えると給与が減ったと言われる反面、それ以上に金利が低下した事による負担減で「親世代からの援助なしに家を持てる社会」=「平成の中流社会」は維持されてきたように思います。

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金利上昇時の住宅ローン返済額試算

さて金利が上がる事でどこまで返済額があがるのかシミュレートしてみました。最大の3%は可能性自体は低いものの、現状のアメリカの政策金利が4.25~4.5%と考えるとアメリカの政策金利低下のスピードが遅ければあり得るラインとして考えています。仮に今の0.5%が3%に上がったとすると月々の返済額は13万5千円と現状0.5%時の9万1千円の1.5倍近く、総返済額は昭和想定の5%、20年間のものよりも大きくなります。また利息額の2201万円は0.5%時の324万円の凡そ6.7倍と金利が高くなると複利の関係でそれに正比例ではなく正比例よりも支払うトータルの利息額が増えるというのも注目したいところです。

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金利上昇時の住宅ローン元金残額試算

またもう1つ注意したいのは金利が高いとなかなか元金が減らないという点です。上のグラフは同じ3500万円、返済期間35年、元利均等のローンでの元金残額の推移ですが3%時と0.5%では最大370万円もの残額に差が付きます。これは仮に収入減などでローン返済が難しくなった際に売却で返済を行って残る残債がそれだけ増える事を意味します。

「贅沢」「普通」が語る中流社会の本質
女さん「年収1200万で子供3人育てられない人は?自分に相応な生活を理解していない人」→『税金が高すぎる』『子供3人大学はかなりの経済力がいる』@posfiより


あまり注目されませんでしたが楽しいツイッターランドではこんな議論がありました。確かに子育て支援の所得制限に理不尽を感じるというのは分からなくないもののそれでも「1200万って人口の4%しかいない実際、日本人の中でも相当優秀な人間だよ。その4%の人間ですら贅沢出来ない日本って普通におかしくないか??」と言うメンタリティの人にとっては厳しい時代になっていくのではと感じます。

改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学 [ ロバート・キヨサキ ]より
「たいていの人には値段がある。それは人間誰しも恐怖と欲望という感情を持ち合わせているからだ。まず、お金を持たずにいる事が怖いから必死に働く、そして給料を受け取ると欲張り心が頭をもたげ、もっとお金があればあれも買えるこれも買えると考え始める。その時に人生のパターンが決まる。そのパターンとは、朝起きて、仕事に行き、請求書を支払う、また朝起きて、仕事に行き、請求書を支払う…この繰り返しだ。その後の彼らの人生はずっと恐怖と欲望という二つの感情に走らされ続ける。そういう人はたとえお金を多くもらえることになっても、支出が増えるだけでパターンは決して変わらない。これが、私が『ラットレース』と呼んでいるものなんだ


「人より稼いでいるからその分贅沢できる」と言う発想は一見最もですが、ただ少なくない人が感じるのは「キリがない」と言う事ではないかと思います。上はベストセラーの「金持ち父さん貧乏父さん」からのものですが、このラットレースの下りは多くの人の共感を示したものではないかと思います。

改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学 [ ロバート・キヨサキ ]より
資産は私のポケットにお金を入れてくれる
負債は私のポケットからお金を取っていく


逆にラットレースから抜けるのに大切な考えは上の様なものではないかと思います。例えば「贅沢」と言う言葉から浮かぶのは極端に言えば1月単位の収支を考えるお小遣い帖の様なお金へのスタンスをではないかと思います。しかし資産と負債と言うと単なる収支でなく企業会計の様な損益(PL)と資産・資本(BS)の複式になりより詳細になります。具体的に言うと
資産→収入が給与だけでなく配当・利子等の資産からの収入が可視化される
負債→何もしなくても出て行くお金が可視化される

こうすると視点が長期的になるのも重要ではないかと思います。言うまでも無く中長期的に安定して豊かな生活を送るとするなら負債を減らし、資産を増やすという明確な目標が見て取れると思います。

2010年代中産と下流の時代~プロローグ1980年代に始まった非婚化・草食化が語るもの~その3より
  生産手段 労働 投資 消費 属性
中産 〇   〇  〇  〇  中小企業のオーナー社長、商店主、自作農等
中流 Ⅹ   ◎  Ⅹ  〇  サラリーマン等
下層 Ⅹ   〇  Ⅹ  △  工員、小作農等


それは前に書いた記事の表で言えば中産階級に近づけるという事になるのではないでしょうか?そして最初の引用の「もし俺の両親から、近くに住むなら住宅資金の半分出すって言われたら…どうする?」に代表される家族との距離感で言えば極力近く良い距離感をすると言う部分も含みます。単純に親世代の遺産みたいな部分の他に、親など身内が身を持ち崩してその影響が来る確率を減らすという事も意味します。逆に「贅沢(多分「普通」も)」と言う言葉を言う人はそれが出来ず下層に落ちこぼれる恐怖の中ラットレースを続ける事になります。そして金利の復活した世界はこのラットレースで生き残れる確率がどんどん低下していく社会になると思われます。

50年ローンで平成中流社会の延長線を戦う人が語るもの
住信SBI、住宅ローン最長50年に 住宅価格高騰に対応@日経新聞2023/8/3より
住信SBIネット銀行は住宅ローンの最長返済期間を従来の35年から50年に伸ばす。住宅価格の高騰を受け、毎月の返済額を減らして若い消費者を取り込む狙いだ。50年ローンは一部の地銀で提供していたが、ネット銀や大手銀では初めて。ネット銀は適用金利の低さで住宅ローン競争を主導してきたが、新たな局面に入る。
ローン4930万円で返済月7万7千円と言う事はボーナス払いありか・・・


さて金利上昇をきっかけに最近スタートした50年の超長期ローンが2~30代の間である意味流行っているらしいです。返済金額が低いのが理由で、ある意味で金利低下で返済額が低下した平成中流生活の延長戦を令和でやろうとしているのかなと感じます。

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50年住宅ローン返済額試算

と言う事で試算をしてみました。50年ローンは35年ローンに比べて金利が高いと聞いたことがあるので試算は1%からにしています。流石に1%では返済額が7万4千円で35年0.5%の返済額よりも更に1万7千円低く、2%で35年0.5%で同等とこの返済額であればもし給料が減っても返済が滞る事はなさそうです。しかし1%でも35年0.5%のケースに比べて支払利子が3倍近く多く、2%だと支払利子が昭和の20年5%と同等になります。

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50年住宅ローン返済ペース試算

元金の減少に関してもやはり50年だと減りも遅いです。35年0.5%では10年で900万円以上元本が減少するのに対し50年1%では570万円、50年3%ではわずか385万円、20年後に残る残金はそれぞれ1575万円、2304万円、2666万円となります。余程立地が良ければ別ですが仮に20年後売却する際は頭金500万円で4000万円の住宅として元本割れとなるリスクは高いと言えるのではないかと思います。また50年ものローンとなると仮に25歳で住宅を購入しても繰り上げ返済をしない場合は75歳まで返済するというのも大きなリスクと言えます。



ただ一方で返済額が低いのを生かして積み立て投資を行い住宅ローンとの金利差を生かし資産形成を行うという考え方を提案する住宅ローン評論家もいます。私だったらお薦めは出来ませんがこれはこれで一つの考え方ではないかと思います。言うなれば給料だけでなく資産にも稼いでもらうという意味でこれも中産階級的な考えではあります。

ラットレースから抜け出る人たち


ただあくまで50年ローンをしてまで家を買うのはあくまで「子育て中の家族構成員が最も多い時期に家族皆が住める住宅を購入する」と言うのが大きな理由です。逆に言えば15~20年程度の子育て期間中を避けて夫婦2人だけで面積的にも期間的にも多くを求めない例えば老後の時期に住宅を購入すれば費用も大きく抑えられやりようによってはローンに頼らず、現金で購入する事も可能になる可能性もあります。上は職場の独身男性が皆老後に激安中古マンションを現金で購入して終の棲家にすると言っているのを感心する人のツイッターですが、住居にかかる費用を負債と考え、最小化するというのなら理に適った考え方であり、今の段階で独身者を中心に一定数いて、今後も独身者を中心に増えそうな気がします。

義両親との同居生活、満足度で最多は50%。同居はメリットとデメリットが混在?! 専門家に聞く@たまひよ2022/6/22より
今回は世間ではダークなイメージが強い「義実家同居」についてのコメントを紹介します。すると意外にも(!?)「デメリットばかりじゃなく、メリットはある」という声が...。
背景には共働き夫婦が増え「子育てと家事をフォローしてもらえる」という、義実家への期待があるようです。
ペアローンで返済期間40年!それでも若い層が「賢いマンション購入」と考える納得の理由より
マイホームを買う際、「ペアローン」が増えていることがリクルートの調査で明らかになった。調査によると、首都圏・新築分譲マンションにおいて「世帯主と配偶者のペアローン」の割合は33.9%になったと報じられた。


ただ住宅が資産だと考えるとした場合、その有効活用は親世代との同居になります。これは平成時代を通じて独身者に関してはパラサイトシングル、子供部屋おじさん・おばさんと言った言葉が流行ってきたように独身者に関しては拡大してきましたが、既婚者に関しては特に女性に義実家との同居は特に介護の関係で嫌われてきたのですが、もしかしたら少しずつ変わりつつあるのかもしれません。それは共働きが標準となり義両親による子育てや家事のフォローが期待され、実際に保育などでは「じいじ」「ばあば」の存在感が増してきたこと、また平成期はローンの返済者として存在感の低かった女性が共働きが当たり前である以上相応に働いて稼いだ給与から返済を行うケースが増えてきたことにより「住宅ローン返済者」の責任と負担の重さを実感するケースが増えてきたことがあります。

氷河期世代以降も下がってますよ、持ち家率@noteより
その一方で、ぎりぎり就職氷河期世代にはいっていない(むしろバブル入社世代?)、1964年~68年生まれ世代と氷河期世代の差は小さいです。~中略~
さらに、25歳~29歳、30歳~34歳に注目すると、氷河期以降に生まれた世代の方が持ち家世帯率が低くなっています。より昔にさかのぼってみれば、1949~53年生まれ(調査年に80~84歳)からの持ち家世帯率の低下傾向が直近まで続いているようにも見えます。


住宅を負債に見るにせよ資産に見るにせよ上の世代が人生をかけて参加した住宅を所有するためのラットレースからの脱却の動きが静かに起こり始めているのかもしれません。上は所謂就職氷河期世代の持ち家比率が下がっと言う日経新聞記事に対する神奈川大学飯塚教授の反論記事の内容ですが持ち家率が高かった団塊の世代から中長期的に持ち家比率が低下傾向にあるものの就職氷河期世代1969~1983年生まれの世代はバブル世代と言える1964~1968年生まれとそれほど差が無く、むしろ氷河期世代以降の持ち家率の低下幅の方が大きいのではと言う問題提起になっています。バブル~氷河期世代を平成中流社会のメイン世代と考えれば令和のメイン世代は平成のメイン世代以上に持ち家率が下がるという予測で根拠の統計からも見て取れます。

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NISA口座開設・利用状況調査結果(2023年9月30日現在)について@日本証券業協会より
Choose or Loose課題多き参院選2022その1平成女子に見る少子化対策の曲がり角より
合計特殊出生率を世代別にみて見ると当時20代後半だった1991~1995年生まれの世代は上の1976~1990年生まれ世代に比べて20代までの出生率が0.55と0.07~0.09も落ち込んでいて、1990年以前生まれの世代の出生率が1.4以上だったのに比べて今後落ち込んでいく事が予想されています


そしてラットレースから離れ余裕のできたリソースは資産形成に行っているのではと感じます。日本証券業協会が2023年に調べたデータでは旧NISA+積み立てNISAの口座開設数は氷河期以降で氷河期世代よりも人数自体は少ない30代が最も多いです。20代は減っているように思えますが、実際学生時代や社会人1~2年目で投資を始める人は多くない事を考えると20代も30代以降ではより口座数を増やす可能性は高いです。一方この世代の出生率は氷河期世代よりも大きく落ち込みここ最近の出生率低下の原因となっている事を考えると子供を産んだ人そのものが減っている事で子供の教育へ行くお金は増えていないと思われます。

まとめ

まとめます。
・中流階級とは労働者階級の中で圧倒的な生産性を持つものが給与所得によって中産並みの消費を行えるようになって生じた階級である
・そして一億総中流と呼ばれた昭和末期中流層は中産階級並みの持ち家を給与所得で取得していた
・中国などの新興国の成長で中流の基盤である圧倒的な基盤は揺らいでいたが0に近い金利と35年の長期ローンで平成時代も中流社会、ロバートキヨサキの言葉を借りると家を巡るラットレースは維持された
・しかし令和の入っての金利復活と今回のトランプの円安是正要求により0に近い金利が失われ平成の中流社会の基盤も崩れ始めた
・ポスト中流の流れで投資による金融資産、親世代の持つ不動産資産を生かすことで労働(給与)→資産+労働の新しい中産化の流れが起こり始めている
・特に氷河期以降の世代ではNISAの開設数の多さなどでそれが顕著である
本来なら中流社会から零れ落ちる人について書く必要があるかもしれませんが、それは今後の課題とさせてください。


人気記事ランキング202502

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住宅を持つ人が問われる時代

さて2025年2月のランキングです。今月は珍しく当月リリース記事が1位、2位を占めています。

1.平成の終わりに考える外伝7:20年前の宿題にどう解答するのか~フジテレビ騒動に思う~
2.令和の大きな宿題その30 玉木雄一郎は令和の小泉純一郎となってしまうのか~たかまつなな炎上に思う~
3.令和の大きな宿題その22 令和のイエはどうなるのか~負動産、限界ニュータウンが語るもの~
4.若者の人生を食らいつくす怪物~平田オリザ発言に思う~
5.お金の話その5~復活する金利が問うもの~
5.令和の大きな宿題その15 バス転換と言う贅沢が許されない時代に~赤字鉄道路線廃止問題に思う


フジテレビの社長にこの映像を見てどう思うか聞いてみたい。

1位には平成の終わりに考える外伝7:20年前の宿題にどう解答するのか~フジテレビ騒動に思う~が入りました。1月に起こったフジテレビ騒動を取り上げた記事です。

米ファンド、日枝久氏のフジHD取締役など辞任を要求@日経新聞2025/2/5

さて先月クローズアップされたのはフジテレビのキーパーソンだった日枝取締役の去就問題、2005年ホリエモンLivedoorによる買収時も黒幕だった彼が20年経って90歳近くなった今でもキーパーソンになっている事、2005年には最終的にホリエモンが捕まる事でいったん解決したものの、この時期に代わる事が出来ず徐々に衰退の道を歩んだことを考えると様々なことを言われながらも時代の転換点としてこの事件を受け入れた人が多い印象があります。日枝氏と言う平成衰退を続けたテレビ局が象徴していたのは「良いもの、特に若いものに受けるものを作る事がすべて」とでも言うべき価値観で、ホリエモンが突きつけたある意味でネットの時代にいかに豊富な資産をいかにマネタイズしていくかと言う問いにどうこたえていくのか注目したいところです。

2位には令和の大きな宿題その30 玉木雄一郎は令和の小泉純一郎となってしまうのか~たかまつなな炎上に思う~が入りました。タレントたかまつなな氏の炎上騒動に思った事を書いた記事が月末リリースに関わらず入りました。実際厚生年金保険料の負担増と呼ばれますが制度上、平均月給の倍額辺りを基準に決まっていた上限額を平均月給があがった為あげるという話で、制度上高所得者の保険料率が低くなる事への改善と言う側面もある施策で、そもそも論として平成期を通じて所得・住民税の減税と累進課税の緩和で高所得者の負担はむしろ軽減されていて負担増が年収1000万円以下の層に集中していたのを考えると玉木氏本人に関してはこれまで議論をしてきたことの中で「手取り増加」と言う意味で有効な施策に関して取り上げている日と言う印象で、賛否はあるものの、彼を支持し、世代間対立を煽る連中に関してどうだかなと感じたので書いた記事です。

自民「れいわ新選組ショック」30代支持率で逆転、公明と対応協議へ「30代の意見大事」@産経新聞2025/2/25

さてそんな中、れいわ新撰組の30代の支持率が自民党を逆転し急伸している事が話題になっています。個人的に国民民主党と競合するのは実質的に河村たかし氏率いる減税日本全国版と言える日本保守党とは思っているのですが、ある意味で国民民主党の方向性が「高所得者に優しい」平成体制の維持あるいは微調整と考えると「消費税廃止」を掲げるれいわ新選組は「高所得者に優しい」平成体制の解消に見えてきます。今年行われる参院選でこういった視点で見ていくと面白いのかもしれません。

3位には令和の大きな宿題その22 令和のイエはどうなるのか~負動産、限界ニュータウンが語るもの~が入りました。1月は実はギリギリランクインできなかったのでリベンジした感じでしょうか?

住宅ローン固定金利 大手銀行で引き上げ相次ぐ 変動型も可能性@NHK2025/1/31

日銀の政策金利が上がる事で住宅ローンへの影響が出て来ています。

2010年代中産と下流の時代~プロローグ1980年代に始まった非婚化・草食化が語るもの~その3

正直な所平成時代所謂中流社会がほころびを見せながら維持されてきた背景にはやはりこの0に近い金利があったと思いますが、それが緩和・解消される中で中流社会の重要ワード「普通」をどこまで引きずるかが重要になってきそうな気がします。この辺はもう1度纏めて行こうかと思います。

4位には若者の人生を食らいつくす怪物~平田オリザ発言に思う~が昨年8月以来久々にランクインしました。

平田オリザ氏が青森県立美術館の新館長就任へ 「非常にポテンシャルがある」@河北新報2025/2/25

さてと言う事で久しぶりに平田オリザ氏の動向を調べて見たら今度は青森県で美術館長になるとの事です。何と言うか平成37年の光景感が強いです。

2024年度入学式 学長式辞@芸術文化観光専門職大学より
また、開学四年目を迎えます本学について、日頃より多大なるご支援、ご協力をいただいております斎藤元彦兵庫県知事、國井総一郎兵庫県公立大学法人理事長、内藤兵衛県議会議長はじめ県議会の皆様、兄弟校である兵庫県立大学の皆様、周辺自治体の市長、町長様、議員の皆様、そしてなにより但馬の地域のすべての住民の皆様に、あらためて心から感謝申し上げます。ここまでのご支援、ありがとうございました。


個人的に興味深いのは昨年の芸術文化観光専門職大学の学長式辞、県立大学無償化の恩恵を受けただけにその立役者である斎藤元彦知事への感謝を述べ、豊岡市長関貫久仁郎氏に関しては周辺自治体の市長、町長様と豊岡市の名前すら出てこないのは興味深くさすが平成36年を生きる男感があります。

5位にはお金の話その5~復活する金利が問うもの~が入りました。

10年ものの国債利回り 一時 1.385%まで上昇@NHK2025/2/17
3メガバンク、普通預金金利0.2%に 日銀利上げ受け@日経新聞2025/1/24

2月中旬に10年ものの国債利回りが1.385%となり話題になりました。現状他国で利下げが進んでいる事を考えると3~4%以上の金利はないと個人的に見ているのですが、それでも金利が復活する事で資産のある人を中心に選択肢が増えて来るんだろうなと思うのと同時に「資産」の存在感が増してくるのではと感じます。

所得税は働く人の給与からの税金と言えない時代を迎えつつある

実際源泉所得税に関して調べると2018年段階で40%は労働でなく株の配当を中心とした分離課税によるものとなっていて、資産所得の存在が高まっています。令和になって人口のボリュームゾーンが50代になる中、「労働」の存在感が落ち、「資産」の存在感が増す時代になっていくのかもしれません。

同じく5位には令和の大きな宿題その15 バス転換と言う贅沢が許されない時代に~赤字鉄道路線廃止問題に思うが入りました。

ローカル鉄道がピンチ 脱線で運休4カ月のいすみ鉄道、再開願う地元@朝日新聞2025/2/3
イベント見聞録2009/2/28いすみ鉄道の大増発で今まで知らなかった房総を巡る~上総中野駅他編~
イベント見聞録2009/2/28いすみ鉄道の大増発で今まで知らなかった房総を巡る~プロローグ~
イベント見聞録2009/2/28いすみ鉄道の大増発で今まで知らなかった房総を巡る~大多喜駅編~
イベント見聞録2009/2/28いすみ鉄道の大増発で今まで知らなかった房総を巡る~国吉駅編~
イベント見聞録2009/2/28いすみ鉄道の大増発で今まで知らなかった房総を巡る~エピローグ~

先月は脱線で運休中のいすみ鉄道が話題になりました。いすみ鉄道と言うと16年も前ですがイベントレポートをやった事もありました。現実問題として大多喜高校をはじめとする通学や養老渓谷を含む観光など様々なニーズへ最小限の労働力で対応する事を考えると1日も早い復旧を臨みます。運転手不足の今は平成時代に比べてバス転換へのハードルは上がり、またバス転換による所要時間増加で子供の進学先が絞られる影響も大きいと思います。また鉄道が無くなる事でアクセス手段が分かりづらくなることでインバウンド景気も受けづらくなることを考えると平成の廃線よりも影響は大きいというのは忘れてはならないと思います。

如何だったでしょうか?今月が読み手であるみなさんにとって私にとって良い1月である事を祈りつつ筆をおきます。


令和の大きな宿題その30 玉木雄一郎は令和の小泉純一郎となってしまうのか~たかまつなな炎上に思う~

「若者代表」が炎上 たかまつなな氏の年金改革発言が波紋を広げる@coki2025/1/20より
厚生労働省の社会保障審議会年金部会委員を務めるタレントのたかまつなな氏が、2027年9月施行予定の厚生年金保険料引き上げ案を支持する意見をSNSで発信し、激しい批判にさらされている
同氏の発言が「現役世代や子育て世代の負担を軽視している」と受け取られ、多くの反発を招いた一方で、議論を促進した功績を評価する声も聞かれる。


少し前の話ですがさて厚生労働省の委員も務めるタレントのたかまつななさんが厚生労働省の厚生年金引き上げ案を支持する事をツイッターで表明して、炎上したそうです。

制度上低く設定されていた高所得者層の保険料率を普通の人に近づける案を支持したタレントが炎上した光景
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https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r6/ippan/r60214kanagawa.pdf より
高所得者の厚生年金保険料上げ、27年9月から 厚労省案@日経新聞2025/1/16より
厚生労働省は、2027年9月をめどに高所得会社員の厚生年金保険料の上限を引き上げる調整に入った。賞与を除く年収798万円以上の人が対象で、保険料収入を増やし年金財政を改善する狙いがある。働く高齢者が年金を満額受け取りやすくする見直しも26年4月で調整する。


ちなみにこの厚生年金の変更内容はと言いますと、最も簡単に言えば所得がいくらでも最大月59475円の年金保険料の最大額をアップするというものです。



炎上している光景を見ると基本的には「若者代表面して現役世代の負担増に賛同するとは何事か」と言う事なのですが、興味深いのは元参院議員の音喜多俊氏が「元の標準報酬月額の仕組みが搾取的で駄目」「年金は積立方式ではなくネズミ講」と書いている事です。

厚生年金保険の保険料@日本年金機構より
2.標準報酬月額
厚生年金保険では、被保険者が受け取る給与(基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与)を一定の幅で区分した報酬月額に当てはめて決定した標準報酬月額を、保険料や年金額の計算に用います。
現在の標準報酬月額は、1等級(8万8千円)から32等級(65万円)までの32等級に分かれています。 報酬月額は、通勤手当等を含めた報酬に加え、事業所が提供する宿舎費や食事代等の現物給与(全国現物給与価額一覧表)の額も含めて決定されます



さて標準報酬月額については年金機構には上記のように書かれています。所得税では対象にならない通勤手当なども含めて負担額が決定されているので負担が高めとなるのはありますが、これを搾取と言うのは微妙です。

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月給額と厚生年金保険料の関係@https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r6/ippan/r60214kanagawa.pdfより作成

また最初のように少し触れたように月給65万円以上であると保険料は59475円のままで変わない事から、高所得者層の負担率が低下し、上のグラフをみると一見高所得者層が低所得者層を搾取しているという構図ならそう言う風に見えなくはないですが、本来保険料であり、この59475円の保険料で公的保険としては十分な給付ができるという考え自体はありですし、そもそもたかまつなな氏が賛同したのはこの上限を緩和し、高所得者層の負担率を低所得者層に近づけるものですからむしろ搾取に見える部分は緩和されるという見方も可能です。

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2023年度の運用状況@年金積立金管理運用独立行政法人より
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予定積立金額との比較(長期的なリスク)@2023年度 業務概況書

また少子化によって保険料を払う現役世代が減るので破綻するというのも一見わかりやすいですが、GPIF年金積立金管理運用独立行政法人の2023年度の運用状況を見ると積立金245兆円、2001~2023年まで、ITバブル崩壊、リーマンショック、コロナ禍を経た年平均収益率4.36%、また長期的な見通しの中間値で2050年段階で積立金600兆円と言った数字を見る限り、絶対はないにせよ少子化の影響を見越しても十分な備えがあると言って良い段階にあるのではと感じます。

https://news.yahoo.co.jp/profile/commentator/nakatadaigo/comments/01d33944-f65b-4872-97dd-1d406acf359fより
この記事は説明が不足しており、誤解を生じさせます。等級表には上限(現行は32等級で65万円)がありますが、この上限額は全加入者の平均標準報酬月額(単純に平均給与と考えてください)の2倍程度に設定するように改定することが法律に明記されています。この数年、平均標準報酬月額の2倍が65万円を上回っており、ルール通りなら新しく33等級を設置すべきだがどうすべきか、という議論が年金部会に諮られたという話です。直近でも、令和2年に32等級がこのルールに基づいて追加されました。


実際専門家による解説を見ると法律上平均標準報酬月額の上限は概ね平均給与の倍に設定する必要があり、その前提で上限を拡大する必要がある為この引き上げ案が出て来たとの事で、その確認のための委員会であるなら、そもそも普通の人の保険料率を上げる話でなく、制度上低く設定されていた高所得者層の保険料率を普通の人に近づけるというものであり、安易に負担増を受け入れるべきではないという姿勢そのものは分かるものの、ここまで炎上させるのはどうかと思います。むしろ逆にこの手のヒステリックな炎上騒動の背景には世代間格差を煽りつつ高所得者層の負担増を是が非でも防ぎたいという意思を感じるのは私だけでしょうか?

昭和と令和の負担率を比較する
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1983年と2015年の所得税率(左:昭和59年度税制改正の要綱 、右:No.2260 所得税の税率@国税庁

さて昭和の頃と比べて、負担率が上がったと言われます。その中で所得税がどうだったかと言いますと実は税率は基本的に下がっています。上は昭和59年の税制改正前の税率と現在の税率を比較したもの、特に昭和59年と比較して所得400万円~900万円の箇所と1000万円以上の箇所で大きく違いがあるように映ります

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(左:税率・税負担等に関する資料@財務省、右:税率の変遷@大阪府寝屋川市

また住民税も同様で今は10%均一の住民税がかつては累進課税で所得150万円以上でどんどん税率が上がり高所得者層ほど今より税率が高くなっています

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https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/20151019_27zen23kai6.pdfより
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https://www.yamada-partners.jp/hubfs/uploads/2018/04/003.pdf?hsLang=ja-jp より

ただし社会保険料に関してはさすがに今の方が負担率が倍近くになっていて、かつ上限もかつての倍近くになっています。また給与所得控除も平成に入って公職者層に厳しいものに変化しています。言って見れば昭和の頃は今に比べて、所得税は高所得者を中心に高く、社会保険料はその逆、給与控除は高所得者にとって昭和の頃が有利と言った感じでしょうか?



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昭和と令和の負担率比較

さて上記資料などを基にトータルでどうだったかを比較してみました。ちなみに条件を単純化する為、独身、40歳未満での比較としています。1個人の試算なので間違っている個所はあるかもしれませんが大まかな傾向はつかめると思います。概ね年収1000万円を超える高所得者層にとっては令和の方が負担率は低く、年収が低いほど令和の方が負担率が高くなっています。 ちなみに社会保険料の料率は以下の様になっています。
      1983 2025
厚生年金 :5.3% 9.15% (厚生年金保険料率の変遷 参照)
健康保険 :2.47% 5.01%
雇用保険料:0.5% 0.6%  (https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/08/dl/s0824-6i04.pdf 参照)

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所得・住民税率推移@税率・税負担等に関する資料より

さてこのような状況を生み出したのは当然所得税・住民税の高所得者を中心とした減税にあります。その推移を財務省に資料から見ると
1994年:最高税率88→65%(23%引き下げ)
2006年:最高税率65→50%(15%引き下げ)
2015年:最高税率50→55%(5%引き上げ)
こうして見ると1993年に政権交代した事の影響が最も大きく、次いで小泉政権の影響も大きいです。ただし安倍政権で最高税率を引き上げ、平成時代に行われた高所得者に有利な所得・住民税減税路線を転換している事が見て取れます

応援団の大きな声に押されて玉木雄一郎は令和の小泉純一郎になっていくのだろうか?
男性未婚率、所得で4倍の差 賃金底上げに何が必要?@日経新聞2023/9/10より
30代男性の所得と未婚率の関係を分析すると、所得が低いほど未婚率が高い傾向が浮かび上がります。年収100万円台で76.3%、年収800万円以上の層では17.3%と最大4倍超の差が出ました。高所得の女性がさらに年収の高い男性を結婚相手に求める傾向もあります。少子化対策には所得を上げ、結婚のハードルを下げていくことが重要です。


さて近年少子化の主原因は未婚化であり、その背景には男性の所得の低下が言われています。そう考えると高所得者でなく低所得者の手取りを増やす必要があります。そして現在「手取りを増やす」と言う政策で国民民主党の玉木雄一郎に勢いがあります。しかし彼の声の大きな応援団を見ているとどうしても世代間対立を煽って小泉純一郎や細川護熙の様な「高所得者の手取りを増やす」方向にもっていこうと思えてなりません。象徴的な言葉になりますが玉木雄一郎が応援団の大きな声と煽りに負けて令和の小泉純一郎になるのか注目したいところです。


平成の終わりに考える外伝7:20年前の宿題にどう解答するのか~フジテレビ騒動に思う~

フジテレビ会見 異例の10時間超 日枝氏の進退含めた対応焦点@NHK2025/1/28より
フジテレビは27日に臨時の取締役会を開き、港浩一社長と嘉納修治会長が一連の対応をめぐる責任をとって27日付けで辞任しました。
このあとオープンな形で記者会見が開かれましたが、およそ400人の出席者から質問が途切れることがなく、会見は10時間24分と異例の長時間にわたりました。
会見では、長期にわたってフジテレビや親会社の経営トップを務め、今も取締役相談役として経営に強い影響力をもつ日枝氏の経営責任を問う質問が相次ぎました。
フジテレビ、広告収入233億円下振れ 25年3月期赤字に@日経新聞2025/1/30より
フジ・メディア・ホールディングス(HD)は30日、フジテレビジョンの2025年3月期の広告収入が従来計画を233億円下回る1252億円になる見通しと発表した。元タレントの中居正広さんと女性とのトラブルを巡る対応に批判が高まり、CM出稿の見合わせが増えた。フジテレビ単体の最終損益は赤字に転落する見通しだ。
フジ・メディアHDは連結純利益が前期比74%減の98億円、売上高が3%減の5482億円と、従来予想をそれぞれ192億円、501億円下回る見通し。CMは利益率が高く、売り上げ減少が利益に直結する。08年の持ち株会社移行後、フジテレビが赤字となるのは初めて。


さて世の中は元SMAPの中居正広氏の女性問題に端を発するスキャンダルによってフジテレビが大騒ぎになっています。対応のまずさからCM出稿の見合わせが相次ぎ、番組の合間のCMはAC広告機構のものや番宣ばかりとなっているのに驚愕してしまいます。

「フジテレビ・中居問題 記事の訂正について」【編集長より】@週刊文春2025/1/29より
橋下徹氏のご指摘を受けて訂正に至った経緯についてご説明します。
 昨年12月26日発売号では、事件当日の会食について「X子さんはフジ編成幹部A氏に誘われた」としていました。しかし、その後の取材により「Ⅹ子さんは中居氏に誘われた」「A氏がセッティングしている会の“延長”と認識していた」ということが判明したため、1月8日発売号(第2弾)以降は、取材成果を踏まえた内容を報じてきました。


ただしこの問題の根本となった週刊文春の記事ですがフジテレビの関わる1部部分に関しては訂正されていますが、相変わらず騒動は続いています。正直なところいろいろ言われますが、この騒動における中居氏のスキャンダルは単なるきっかけにすぎず、本質は多くの人が抱いている「テレビ、特にフジテレビはヤバい」という共通認識の様な気がします。ここでは少しその背景について考えていきたいと思います。

コロナを経て急激に視聴者を失ったTV
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TVのHUT(世帯視聴率)推移、上全日、下ゴールデンタイム(各局とも凋落続く…主要テレビ局の複数年にわたる視聴率推移(最新)@ガベージニュースより

さて背景を知るためにまずはTV自体どれだけみられるかを見ていきましょう。所謂世帯視聴率を見ますと1997,98年のピークから減少傾向ではあったものの2021年上期までは全日40%、ゴールデンタイムも60%弱のラインを守っていたのが2021年下期から急減し2024年上期は全日32.7%、ゴールデンタイム48.9%と1997,8~2020年の20年に匹敵する落ち込みが3年弱で起こっています。

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メディア接触時間シェア、TV接触時間推移@メディア定点調査2024@メディア環境研究所より作成

続いて博報堂系のメディア環境研究所のメディア定点調査のメディア接触時間を見ると2021年以降のTV接触時間の落ち込みがひどく、2022年にTVとスマホの接触時間が逆転しています。

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上:男女世代別メディア接触時間@メディア定点調査2024@メディア環境研究所より、下:博報堂DYメディアパートナーズ「メディア定点調査2018」時系列分析との比較

また男女世代別の接触時間を見ると、男性40代以下、女性20代以下と言う傾向自体はコロナ前の2018年と変わらないものの、男性では15~19歳と40代の接触時間が30%以上、女性では20代、50代で接触時間が20%以上減少し、男性の4~50代、女性の2~30代と5~60代での段差が大きくなっているのが見て取れます。こうして見るとコロナ前までは新聞に比べてましだったとはいえ、コロナを経て、特に現役世代で「TVを見ない」人が急激に拡大しているのが見て取れます。

フジテレビの失われた20年
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TVのHUT(世帯視聴率)推移、各局ゴールデンタイム(各局とも凋落続く…主要テレビ局の複数年にわたる視聴率推移(最新)@ガベージニュースより

TV全体が落ち込む中で一番その落ち込みの角度が鋭かったのがフジテレビでした。ゴールデンタイムの視聴率推移をみると2005年にはキー局トップの14%あったのが2024年には6%を割り込み最下位のテレビ東京に近い水準と大きく落ち込んでいるのが見て取れます。

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視聴率@2024年3月期決算説明会資料 フジメディアホールディングスより

しかし、フジメディアホールディングスの決算書を見ると意外なことが分かります。こちらは上記の視聴率の資料と違い個人視聴率で世帯視聴率同様民放5局中4位なのは変わりがないのですがコアターゲット層と言われる13~49歳に絞ると全日2位、ゴールデン、プライムタイム3位と健闘しています。逆に全日では日本テレビと同率1位のテレビ朝日はコアターゲット層では4位なのに比べると対照的です。こうして見てみると言い方は良くないですがかつては肩で風を切って歩いていたが落ちぶれつつも「まだまだ若いもんには負けない」と言うスタンスの中高年のように感じるのは私だけでしょうか?

フジテレビは20年前にホリエモンに突き付けられた宿題にどうこたえるのか


かつてフジテレビの買収を仕掛け失敗したホリエモンこと堀江貴文氏がここに来て注目されています。上の動画では「広告依存」がネックであり、その為サブスクを中心にBtoCのビジネスを広げる事で広告に依存しない体制を作るというアプローチが個人的には注目しました。実際20世紀のネットが普及する以前に戻れない以上、広告費に頼らないビジネスモデルを作らなければ、縮小均衡しかなく、企業のCM以外の収益源を作り強化していくのは不可欠です。

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視聴率@2024年3月期決算説明会資料 フジメディアホールディングスより

実際フジメディアホールディングの決算を見ると放送収入で表される広告収入が右肩下がりなのに対し、コンテンツ・ビジネス収入等電波外の収入はコロナでの落ち込みがあった上で右肩上がりなのが象徴的です。

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またコロナ期にYoutube等でバズった松原みきの「真夜中のドア」と言う1980年代の名曲がありますが、これもレコード会社がフジの系列のレコード会社であるポニーキャニオンと考えるとこの好機でどう商売していくかと言うのも重要な視点だと思います。

若き日の日枝久氏

そう考えた時今のフジの首脳陣に対応できるでしょうか?
日枝 久(FMH相談役):労働組合結成、FMH結成
嘉納修治(FMH元会長):元経理局長、元関西テレビ会長
港浩一(元フジテレビ社長):「とんねるずのみなさんのおかげです」プロデューサー
遠藤龍之介(FMH副会長):遠藤周作の息子、「鬼平犯科帳」企画
清水賢治(フジテレビ社長):ドラゴンボールプロデューサー
実際1月27日の記者会見に出てきた主要人物を見ると組織を作った日枝氏、経理としてお金を管理してきた嘉納氏、優れたコンテンツを作って来た港氏、遠藤氏、清水氏、それぞれ1時代を築いた優秀な人物とは言え、作ったものをどうビジネスにするか、言い換えるならどうマネタイズするかをじっくり考えてきた人物がいないのが大きな欠点と言えます。

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フジメディアホールディングス株価チャート@Yahooファイナンス

フジメディアホールディングスは今回の騒動で多くの広告主が撤退し、赤字転落が言われています。とは言えこの騒動が起こってから株価は急激に上がっています。本来なら決してあり得ない事ですが、この騒動がここまで注目されたことも含めて言うなれば、ホリエモンが20年前に突き付けた宿題を解決する大きなチャンスであり、解決をすればフジテレビと言う多くの人を楽しませたメディアが新しい時代に大きく躍進する可能性があると多くの人が考えているからではないでしょうか?さてフジテレビがこの宿題に対してどんな回答をするのか楽しみにしている、20年前の騒動も見た人間としてはそう考えざるを得ないところです。


人気記事ランキング202501

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揺さぶられている不動産

さて2025年1月のランキングです。
1.お金の話その5~復活する金利が問うもの~
2.平成の終わりに考える外伝6:「女性」を特別扱いする時代の終わり~兵庫県知事選挙に思う~
3.平成の終わりに考える外伝2:アンペイドワークがペイドワークになったら~逃げ恥婚が語る呪い~
4.平成の終わりに考える外伝5:メディアのラスボスの死が告げる苦く険しい新しい時代
5.令和の大きな宿題その18~中高年独身女性の貧困問題を整理する~

1位には昨年の年間覇者お金の話その5~復活する金利が問うもの~が入りました。

日銀、0.5%に追加利上げ決定 17年ぶり水準@日経新聞2025/1/24
新米出回っても高いまま コメ価格、11月は6割上昇 農水省は静観@朝日新聞2024/12/20

さて先月は日銀の追加利上げが発表されました。実際昨年末のコメ価格の急騰や春闘などでも比較的給与が上がる傾向が見て取れることを考えると仕方ないのかもしれません。

日銀利上げ、住宅ローン返済は平均例で月8000円増@日経新聞2025/1/24
お金の話その6~無造作な利上げが導く負動産から投資への流れ~

とは言え金利復活が本格化する中で住宅ローンへの影響は出て来ると思います。どの程度かは分からないものの特に影響が大きい変動金利でローンを借りている人はある程度余裕がある人が多いと言われている事、返済額の急激な変更は出来ない仕組みだけにすぐに破綻が激増するというのは考えづらいです。

ECB、4会合連続で利下げ決定 停止の議論「時期尚早」@日経新聞2025/1/30
FRB議長「利下げ急がず」 金利維持、トランプ政策見極め@日経新聞2025/1/30

あと注目したいのは欧米に関してはどちらかと言えば利下げを指向している事でしょうか、日銀の発表から1週間ほどたってECBは利下げ決定を発表し、アメリカでは利下げを見送りはしましたが、トランプ大統領は利下げを指向していると言われています。実際政策側も生活側も焦らず落ち着いて状況を見極めていくのが大切なのではなかろうかと思います。

2位には平成の終わりに考える外伝6:「女性」を特別扱いする時代の終わり~兵庫県知事選挙に思う~

が初のランクイン。 2位は昨年話題になった兵庫県知事選挙を取り扱ったこの記事が入りました。

稲村和美はなぜ負けたのか~兵庫県知事選挙雑感~

この知事選挙に関して感想上のリンクをご覧ください。さて当選した斎藤知事、対抗馬である稲村和美双方の政策を見た感想が上の記事のメインですが一言で言えばジェンダーから教育、言い換えるなら若い世代への投資にある種政治的な流行りが移っていくんだろうなと思って書きました。この傾向は今年色んな選挙で実感される方は増えるのではないかと思います。

3位には平成の終わりに考える外伝2:アンペイドワークがペイドワークになったら~逃げ恥婚が語る呪い~が入りました。

逃げ恥は「派遣切りされたけど美人で若いから京大卒の隠キャ男ゲット出来た!」とかいうドラマだろと言ったら全然違うのツッコミ殺到した話@together

正月に「逃げるは恥だが役に立つ」が再放送されたせいかこんな議論が行われたみたいです。原作漫画的には美人を前面に出していないそうなのですが、それを除いてもある意味で理解できる部分ではあります。実際この漫画の主人公が結婚・同棲相手として考えられなければたまに頼む派遣家政婦のおばさんとしてドラマや漫画の物語に展開する物語自体成り立たなかったと思いますし、派遣家政婦さんは貧乏学生に毛が生えた程度の苦しい生活を続けていたというのがこの記事です。正直な所男性版を作れば「なんだこんな男性向けファンタジーが」と言う類の話だなと言うのは感じている人は多いと思います。

4位には平成の終わりに考える外伝5:メディアのラスボスの死が告げる苦く険しい新しい時代が初のランクイン。

フジテレビ会見 異例の10時間超 日枝氏の進退含めた対応焦点@2025/1/28

さて先月は中居正広氏の女性トラブルをきっかけにフジテレビの問題が注目されました。広告出稿企業の撤退によりフジテレビの番組では企業のCMが無くなり、AC広告機構による広告ばかりになったのはなかなかショッキングな光景でした。新聞では2018年以降毎年5%以上の部数減少で厳しい状況になっていますが、今回の件はそんな状況がTVにも映っていくきっかけとなっているのかもしれません。

5位には令和の大きな宿題その18~中高年独身女性の貧困問題を整理する~が入りました。

「女性の地方離れ」がトレンド入り、止まらない一極集中に様々な声「女性の地方離れについて、なかなか辛辣だけど的を射た意見」@together

さてコロナ前から若い女性が地方から離れ大都市に向かう現象が言われています。最近女性の貧困問題はそれほど言われなくなりましたが、ただ近年マンション価格の高騰が言われている東京をはじめとした大都市において、年収3~400万円位で生活は出来るとは思いますが資産形成は難しく極端に言って見れば20代の頃に初めて住んだ1ルーム、1Kに4~50代でも住み続け、かと言って実家暮らしの同僚程豊かに暮らせるわけでもないと言った中で悶々とする人生を過ごす人が増えそうな気がします。この辺は貧困とは言えませんし、男性も同様ですが、もしかしたら何か書くかもしれません。

如何だったでしょうか?興味深いのは当blog的にはあれだけ騒ぎになったフジテレビ騒動よりも金利上昇の話の方が受けた事でしょうか?書きたい話はいっぱいありますがどこまで書けるか、それでは今月が読者の皆様、そして私にとっても良い月でありますように。


令和の大きな宿題その29 成績上位10%に入れない学生の為の主権者教育を考えてみる

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選挙の教育をどうするか

過度な「政治的中立性」が子どもの芽を摘む 日本の主権者教育の現実@毎日新聞2025/1/5より
子どもは練習していないと、自転車に乗れない。
 それと同じようなことが、主権者教育にも言えるそうだ。
 それなのに、日本では文部科学省が求める「政治的中立性」に過度に配慮し、教育現場での主権者教育が形骸化しているとの声がある。
生徒たちがせっかく取り組んだ700人分超の政治意識調査アンケートが、大人の手によってシュレッダーにかけられる
 しかも、ろくな説明もなく。
 そんな出来事が北海道の公立高校で起きた。3年ほど前のことだ。
 「困惑しかありませんでした」
 いまは早稲田大の2年生になった奥山莉里花(りりか)さん(20)はそう振り返る。
 当時、帯広柏葉(はくよう)高校(帯広市)2年生。学校新聞を発行する部活動「新聞局」の編集長を務め、このアンケートを提案した一人だ。


さて上の毎日新聞の記事から主権者教育に関する話が少し盛り上がっているようです。個人的には詳細が分からないので何とも言えないのですが、基本的に部活動で700人規模のアンケートを取ってアウトプットとして出す話と言う解釈の方が自然でその前提で言うならそこまでやる必要はないと考えます。ただその一方で舞台が東大や旧帝大に合格者を出す有力進学校である事を考えると一般的な主権者教育と考えるのも無理があるのではないかとも思います。とは言え主権者教育の話が盛り上がりそうなので少し考えていこうと思います。

帯広柏葉高等学校@みんなの高校情報

若い世代の主権者としての最大の課題:投票率の低さ
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国政選挙の年代別投票率の推移について@総務省より

さて帯広柏葉高校に通えるようなエリートはともかくとして若い世代全体で見ると主権者教育と言う点で考えると一番の課題は何でしょう?それは投票率の低さではないでしょうか?実際総務省の資料を見ると衆議院選挙において20代の投票率は全体よりも20%前後低く、2017年から始まった18.19歳の投票率も20代ほどではないもののやはり12~3%ほど低く30代と比較しても有意に低い、これを考えるとまず考えていく必要があるのは投票率を上げる事ではないかと思います。

あらかじめ投票のやり方を教えて「初めての投票」への抵抗感を下げよう
投票日当日に投票所に行けない場合@横須賀市選挙管理委員会より
投票日当日に、次のような事由が見込まれるときは、期日前投票や不在者投票ができます。
仕事等に従事している場合
レジャーや用務のため、投票区の区域外に滞在中の場合
病気、出産、身体の障害などのため、歩行が困難な場合(一定の条件があります。)
天災または悪天候により投票所に到達することが困難な場合


投票率を上げると言っても色んな手段があると思いますが、宣伝、啓蒙でなくあくまで教育と考えると投票の仕方、特に期日前投票と不在者投票のやり方が重要ではないかと思います。また参院選や衆議院選挙など比例代表があり複数の投票を行うケースもある為、そのルールに関しても同じように重要だと思います。 一見投票の仕方なんてと思われる方もいると思いますが、例えば進学などで地元から離れた人にとっては不在者投票のやり方は重要ですがやったことがない人にとってはやり方は分からないのではないでしょうか?また同様に期日前投票も慣れれば簡単ですが、最初は何を持って行けば良いのか戸惑うのではないでしょうか

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昨年の衆議院選挙の不在者投票用の宣誓書(他の選挙では使えません)

若い人の投票率と考えるといかにも若い人の資質に目が行きがちですが、投票のやり方をあらかじめ教える事で「初めての投票」への抵抗感を下げる事、それは教育で行えることですし、またその中で最も有効な手段ではないでしょうか?そしてこれは新聞部のアンケートが新聞部のない学校では出来ないのに対し、どの学校でもでき、どんな学校でもそれなりに必要とされる事なのではないかなと思います。

投票前に5分間選挙公報を確認しよう~候補者情報の確認の仕方~
衆議院議員総選挙 候補者・名簿届出政党等情報@神奈川県選挙管理委員会より
衆議院議員総選挙の候補者の氏名及び候補者・名簿届出政党等の情報は当ページよりご覧ください。
衆議院議員選挙・最高裁判所裁判官国民審査@神奈川県選挙管理委員会


さて投票の仕方が分かったら、続いてはだれに投票するかの情報となります。ここ最近の選挙ではSNSや動画サイト等での発信が注目されますが、あくまで教育と考えるとまず選挙における公式の情報がどこにあるのかと言うのが良いのではないかと思います。具体的には選挙公報及び候補者・政党の情報が良いのではないかと思います。

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候補者の氏名及び候補者届出政党の名称等

候補者・政党の情報と言ってもどの様なものかわからないかもしれません。昨年の衆議院選挙、神奈川県の場合上記の様なものがありました。これがあれば候補者の公式HPを調べる事も可能です。時間があれば各候補者のHPで詳細な情報を確認するのも良いと思います。またここ最近の流行であるSNSや動画では上手く情報収集しないと情報が偏るという問題に対しても一定の対策になり得るとも思います。

現行の選挙運動の規制@総務省より
【選挙運動期間に関する規制】
 選挙運動は、選挙の公示・告示日から選挙期日の前日までしかすることができません(公職選挙法第129条)。
 違反した者は、1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処することとされており(公職選挙法第239条第1項第1号)、選挙権及び被選挙権が停止されます(公職選挙法第252条第1項・第2項)。


また有名な選挙運動は前日までの為SNSでの発信に注意しなくてはいけない事等選挙運動の規制に関しても教えておく必要もあると思います。可能性としては低いとは言え罰金や選挙権・被選挙権の停止と言った厳しい罰則があるので不用意な行為への軛となる事を教えるのは教育の役目と言えます。

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2024年選挙公報@小選挙区神奈川11区

確かにベストを言えばキリはないですが、何もせずに適当に投票するよりも例えば投票前の待ち時間に5分程度でも選挙公報を確認して投票するという習慣があればどんなに忙しく時間が無くても最低限必要な情報を得ての判断となると思います。確かにベストではないかもしれませんが多くの若い人たちが一定レベルの情報を得て投票するという底上げの意味ではまず適切なやり方ではないかと思います。

プラスα~政治家の仕事を知る機会を~


現状の中学・高校教育がどの様なものかは分からないですが、やはり主権者教育と言う教育科目外の教育に関して充てられる時間は多くないと思います。その為多くの中学校・高校では前項目までに書いたことがやれれば御の字ですし基本的には前項目の内容に全力を尽くすべきだと思います。ただその上で余裕があるなら、現役政治家から政治家の仕事や、何を考えて活動しているかに関しての話をしてもらったらよいのではないかと思います。政治家の仕事と言うと、議会で法律や条例を作る事で、不真面目な人は議会で惰眠をむさぼってさぼっているというイメージの方も多いのではないかと思います

走水小PTA 通学の安全「懸念残る」 市教委に要望書提出@タウンニュース2024/7/26より
横須賀市立走水・馬堀小学校の統合を巡り、走水小学校PTA、走水町内会、地元有志の「走水を想う会」は7月16日、通学の安全確保に関する要望書を横須賀市教育委員会に提出した。幹線道路沿いを長距離歩くことになる現走水小児童が安全に通学できるよう、スクールバスの運行や路線バスの増便などを求めたもので、同町内会住民による署名510筆も添えられた


しかし例えば学校の統合で子供の通う学校が遠くなったのでバスの増発やスクールバスの運行などの対応を求めると言ったケースで地域の要望を行政に伝える必要が出てきた時は政治家の協力を得られると有難いと思うケースも多いと思います。理由として政治家は
・平日の昼間に動きやすい
・行政の担当部署に関して一般の人よりは確実に詳しい
・議員の肩書があるので蔑ろにされずらい

といった特性からです。最後の箇所ばかり注目されがちですが、最初の2つは多分こういった事をやった事のある人ならその重要性が分かると思います。政治と言うと行政ばかり浮かびますが、場合によっては路線バス運行事業者など行政以外の存在との交渉も必要でその際に個人ではどうしても限界が出て来ても地域、行政を巻き込むことで出来る事は増えると思います。そう言った意味で学校の授業と言う場で政治家の話を聴けるというのは主権者教育としては大きいのではないでしょうか?
請願・陳情のご案内@横須賀市より
請願・陳情とは
市政についての要望などを、請願・陳情書として市議会に提出することができます。
提出予定の方はお早めに市議会議会局へご相談ください。
請願と陳情の違い
請願は市議会議員1人以上の紹介が必要ですが、陳情は必要ありません。


また当然手続き的な部分もあります。これは場所に寄るかもしれませんが横須賀では上の手続きで議会の陳情・請願が可能です。その際に請願では議員の紹介が必要です。そう言った事もこの議員の話を聞く際に教育しておくとスムースに出来るのではと感じます。実際あくまでプラスαと書いていますが、個人ではなかなかできない事と考えると、学校と言う公的な存在でこういった事をやる意義は大きいと思います。

終わりに~成績上位10%に入れない学生の為の主権者教育~
如何だったでしょうか?確かに帯広柏葉高校の新聞局の学生さんのアンケートのアプローチは素晴らしいです。ただ帯広柏葉高校の様な優秀な学生ばかり集まる学校での話は確かに素晴らしいと思いますが、ただその応用が利くのは所謂偏差値で言えば60以上、言って見れば成績上位10%の学生ではないかと思います。彼らの努力は素晴らしいですがただそれを前提にしたりそればかり話すのはやはりずれたものとなってしまうと思います。その為に成績上位10%に入れない学生の為の主権者教育として大切なものとして
・選挙の投票に必要な基本的な手続き(不在者投票、期日前投票)
・公式が用意する選挙の為の判断情報の存在(選挙公報、候補者情報)
・投票日当日の選挙応援禁止などの選挙ルール
・政治家が何をしているか、どの様に使うかを知るために政治家本人の話を聞く

と言った事を上げました。これが正しいかどうかは分かりませんが、現状分断と言う言葉が大きく言われている中での主権者教育で重要なのは帯広柏葉高校の様な優秀な学校に通っている成績上位10%でなく、それ以外の学生がきちんと主権者としての第一歩目を歩める環境を作る事と言うのは納得してくれる人は多いと思います。この記事がそれをどうするのかを考えるきっかけとなって呉れたら幸いです。


人気記事ランキング2024年間



さて2023年12月のランキングです。
1.1993年はもう終わったんだという喝!!~張本・三浦カズ騒動に思う~
2.平成の終わりに考える外伝6:「女性」を特別扱いする時代の終わり~兵庫県知事選挙に思う~
3.高橋しょうごの言葉を思い出す選挙~都知事選2024に思う~
4.男性を結婚と言う投資にいかに引き戻すのか~出生数回復の切り札~
5.令和の大きな宿題その1~親から自立できない中年未婚女性はどれだけいるか~

1位には1993年はもう終わったんだという喝!!~張本・三浦カズ騒動に思う~がなんと記事リリース9年に手初めてトップになりました。2位には兵庫県知事選挙の2候補者の政策を比較した平成の終わりに考える外伝6:「女性」を特別扱いする時代の終わり~兵庫県知事選挙に思う~が月末りるーすなのにもかかわらず2位に滑り込みました。3位には高橋しょうごの言葉を思い出す選挙~都知事選2024に思う~が先月に引き続き入りました。4位には男性を結婚と言う投資にいかに引き戻すのか~出生数回復の切り札~が7月以来のランクインとなりました。5位には令和の大きな宿題その1~親から自立できない中年未婚女性はどれだけいるか~が先月の1位からランクダウンしました。

さて2024年の年間ランキングです。

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韓国プロ野球を作った英雄が投げかけた宿題を放置したJリーグの未来は@マリノススポーツパーク
10位~7位:10年続く問題をどう解決していくのか
10位 コスパと言う言葉が語るもの2015年9月(3月1位、上半期2位)

10位は10年前作成、2024年上半期2位の記事が逃げ切りランクインしました。

「結婚を避け、子供をもたない」ほうが人生のコスパが良い…現代の日本人に起きている"憂慮すべき変化"@President@2024/3/17

さて背景にはこの記事を書くきっかけとなった熊代亨氏のblog記事があったのですがその2024年版と言える記事が出てきたからと思われます。「年貢の納め時」と言う言葉が象徴するように昔にも結婚のコスパを考える人自体はいたものの最終的に様々な状況から今と違い結婚する男性が多かったというのが私なりの論です。

45歳の独身が狂う説を考える@agora2024/12/7

最近では45歳まで独身でいると狂うという説が出て来ていますが、これも個人的には懐疑的です。2020年段階でも50歳の男性の未婚率は30%近く、今後この割合は維持あるいは拡大していく可能性が高いと考えると少なくとも男性に関しては未婚がマジョリティとまではいかないまでも少数派とも言い切れない状況になるのを考えると「狂う」と言うのは違う様な気がします。この手の脅しの論説が出て来るというのはやはり結婚そのものが制度的に行き詰りつつあり、その解消の為には誰かが傷つく形での思い切った改革が求められるのではと感じています

9位 お金の話外伝~ロスジェネ貧困女性の挽回策はあるか~ 2021年11月(4月5位、11月5位、上半期8位)

9位にはロスジェネ貧困女性の生き残り策として介護の様な人手不足の業界で働き、NISA,iDeCo,年金の繰り下げ受給などのお金に関する優遇策を活用していくのが良いのではと書いた記事が入りました。

税制改正で「イデコ改悪」と不満広がる 65歳で受けられた税優遇が70歳に引き上げ@2024/12/26

この記事で取り上げたiDeCoに関して税制改定でiDeCo一時金の支給受け取りから5年間たつと退職金の税制優遇が復活する制度が10年間絶たないと復活しない形となるとの事で話題になっています。改悪と言える改定だと思いますが、一方でこの改定で導こうとする方向性は「70歳まで働いてほしい」と言うのが見て取れそうです。

退職金は「2000万円」! 課税が見直されると「手取り」はどのくらい減る? 老後設計への影響も解説@ファイナンシャルフィールド2023/8/12

また実現こそしていませんが2023年には退職金の控除の拡大が話題になっている事を考えると、退職金にあまり多くを求めると、足元をすくわれる可能性が高いという前提で考えていった方が良さそうです。

8位 令和の大きな宿題その25 即決を避けるべき時代~ポストコロナ・インフレ時代に思う~ 2023年12月(1月3位、2月4位、3月3位、8月1位、上半期6位)

8位には昨年末に書いた今年度の予測に関する記事が入りました。

令和の大きな宿題その28 分断を乗り越える橋~アメリカ大統領選挙に思う~

世界的には今年一番の予想外の事象はトランプ大統領の再選でしょうか?2016年の時とは違い、ロシアとウクライナをはじめ様々な戦争にフォーカスが当たっている状況と言うのは興味深いところです。コロナ後でありロシアウクライナ戦争の激化でインフレが起こった関係で国民・市民に様々なフラストレーションが積み上がり、所謂西側諸国で政治的不安定になっている事を考えると来年も状況を慎重に見極め、即決を避けるべき時期は続いているのではと感じています。

7位 1993年はもう終わったんだという喝!!~張本・三浦カズ騒動に思う~ 2015年4月(6月2位、7月3位、12月1位)

7位にはこれも10年前の記事、張本勲氏が当時J2でプレーしていた三浦カズに対してTV番組で「喝」をして炎上した事件をきっかけに書いた記事が入りました。

今年は「税リーグ」と言うJリーグの蔑称がよく聞かれました。スタジアムや練習場に関して地域の行政の負担が多い事を揶揄したネットスラングですが、このスラングを聴くたびに10年前の張本氏がたんに三浦カズ選手だけでなく、サッカー業界全体に「世界でもTOP10に入るプロ野球リーグを作った男」として「喝」を入れたのではないかと言う思いが強まりました。張本氏の騒動があった10年前でも新規観客が入ってこない事による観客の高齢化、チームの赤字など現在に続く問題が顕在化し、そしてその問題が新型コロナなどもあり解決しないままそれまで陸上競技場を共有しているケースの多かったスタジアムをサッカー専用で建設する際の行政の負担の多さに関する地域との軋轢が昨年目立ってきたというのは相当厳しい状況です。今年は出来ればまたJリーグについても書きたいところですが果たしてどうなるやら。

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イトーヨーカ堂は復活できるのか@ベルモール
6~4位:弱者女性とイトーヨーカ堂の苦境
6位 平成の終わりに考えるその1~女性の社会進出と8050問題~ 2018年3月(9月1位)

6位には札幌で起こった母娘孤立死事件から書いた記事が入りました。これも7年前の記事になります。

ジェンダーギャップ指数の読み解き方(2024年版)

この記事では毎年そのランキングが出るとちょっとした騒ぎになるジェンダーギャップ指数の話も書いているのですが、昨年はジェンダーギャップ指数の低さ=女性の努力不足と言う部分をきちんと綿密に書くblog記事が出てきて少しびっくりしました。本来ならアカデミーポジションの人が1つの理由として挙げる必要のある個所だと考えていたのですが、市井の人が綿密に調べこみアカデミーポジションにいる人と遜色のない論説が出て来るのがだんだんこのジャンルでは習いになっていて今年はアカデミーポジションの人間の責任も含めてより突っ込んだ議論がなされそうな気がします。

5位 令和の大きな宿題その18~中高年独身女性の貧困問題を整理する~ 2022年12月 (6月4位、9月3位、上半期3位)

5位には女性の貧困に関してまとめたこの記事が入りました。

平成の終わりに考える外伝6:「女性」を特別扱いする時代の終わり~兵庫県知事選挙に思う~

この記事が書かれた時期くらいまでは中高年貧困女性の問題は比較的政治的に重要なトピックだったのですが2024年はそれが後景にかすんでいった一年ではなかったかと思います。中高年貧困女性の問題が解決したからと言うよりも、これまで様々な施策を行ったうえでの結果と考えると貧困男性同様の扱いで良いという方向に近づいているのかなと感じます。とは言え貧困男性の問題も含めて解決・緩和は必要ではあると思いますので何かしら情報発信は行っていきたいとは思っています。

4位 令和の大きな宿題その26 イトーヨーカドーの苦境があらわす経済圏の時代 2024年2月 (2月2位、4月3位、10月1位、上半期3位)

4位にはイトーヨーカ堂の地方店舗の大規模な閉店をきっかけに書いた記事が入りました。

京急電車乗車ポイントについて少しまとめて見る

他サイトの記事ですが京急をはじめ2024年は大手私鉄の多くが乗車ポイントを導入しました。これは鉄道乗車時運賃の一定割合を私鉄各社のスーパー百貨店などで使えるポイントとして付与したり、逆に私鉄各社のポイントをPASMOにチャージできるようにするといった施策で、ある意味で鉄道から小売りその他がポイントで一気通貫でつながる事でシナジーを目指す施策なのですが、イトーヨーカ堂に関してはスーパーをはじめとする個々の業種の収益性は悪くないものの、ポイントやカード、銀行などを軸としたグループ全体で収益を上げていく体制が弱い事で現状に繋がっているのではと言うのがこの記事の趣旨です。比較対象のイオンはこの辺の金融を中心としたグループ化が上手かったのが個々の収益性で決して上回っていない中でも大規模な閉店と言う事象に繋がっていないのではと分析しています。

【2024年問題】スーパーで品切れが増える? 配送業者の働き方改革 「特売の頻度が減る」可能性も@カンテレ2024/4/17

昨年もそうですが、今年も引き続きインフレや物流の問題を考えると規模による供給力の重要性も増してきます。少なくとも現段階で日本最大の流通グループであるセブン&アイに挽回のチャンスは十分にあるとは感じますが、昨年同様閉店が続くとそれも危なくなってくるのも確かで今後も注目したいところです。

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3位:選挙の一年
3位 高橋しょうごの言葉を思い出す選挙~都知事選2024に思う~2024年7月 (7月1位、11,12月3位)

今年、特に下半期は注目される選挙が多い1年でした。衆議院選挙、東京都知事選挙、兵庫県知事選挙など大規模な選挙で予想外の結果が出て注目されました。

石丸伸二は劣化版蓮舫なのかもしれない

特に2つの首長選挙は都知事選挙では野党第一党である民進党党首経験者の蓮舫候補が前安芸高田市長の石丸伸二氏の後塵を拝し、兵庫県知事選挙では所謂パワハラ疑惑があり、県議会で全会一致で不信任された斎藤知事が再選されました。その中でx等のSNSやYoutubeの切り抜き動画などのネットの影響の大きさが注目されました。

稲村和美はなぜ負けたのか~兵庫県知事選挙雑感~

個人的にはネットの影響がなかったとは思いませんがそれに加え2つの点がこの2つの選挙に影響を与えたのではと思います。1つはリベラルの女性候補バブルが崩壊した事、これは都知事選挙の蓮舫氏、兵庫県知事選の稲村和美氏を見るとわかります。彼女たちは確かにリベラル系の固定層の支持は得られたかもしれませんが、その外の支持を得る事に関して適切な行動をとれず石丸、斎藤両候補の後塵を拝した訳です。一方女性だからダメではないというのは都知事選で女性候補である小池百合子知事が当選している事からも見て取れます。

石丸伸二が奏でる令和日本のヒルビリーエレジー
平成の終わりに考える外伝6:「女性」を特別扱いする時代の終わり~兵庫県知事選挙に思う~

そしてもう1つは政策の重点を置く対象が女性から若い世代に移った事、この事はネット戦略と連動して石丸、斎藤両候補は30代以下の若い世代を中心とした支持層をつかむことに成功しました。そして重要なのは兵庫県知事選挙では対立候補の稲村和美氏も同じ方向の政策を打ち出している事です。2025年の首長選挙では若い世代の教育を重視した政策を出す候補が増える反面、ジェンダー系の政策は後退していくのではと感じます

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中高年独身女性が実家を出る日
2位 貧困女性予備軍200万人の時代
2位 令和の大きな宿題その1~親から自立できない中年未婚女性はどれだけいるか~ 2020年1月 (5月1位、6月3位、7月4位、8月5位、9月2位、10月5位、11月1位、12月5位、上半期5位)

2位には実家から出られない貧困女性予備軍とも言える中高年女性の人数を試算した記事が入りました。

「男性中心社会」が生んだ高齢単身女性の貧困 自己責任ではない問題@朝日新聞2024/3/11

5位の記事にも共通する問題ですが、これまでの高齢者は男女雇用機会均等法以前でさすがに自己責任とは言いづらいものの、均等法世代以降、政治的にも経済的にも様々な投資がなされた世代を同じように扱うのは難しくなってくるでしょう。

平成の終わりに考える外伝6:「女性」を特別扱いする時代の終わり~兵庫県知事選挙に思う~

実際政治的には女性向けの政策を縮小する志向が出て来ています。9位の記事はある意味でそう言った時代での彼女たちへの処方箋のつもりで書いていますが、政治が彼女たちへのスタンスをドライにしていく時代こういったアプローチをどれだけ増やせるかは大きなポイントになってくると思います。



1位 フローからストックが重要になる時代
1位 お金の話その5~復活する金利が問うもの~ 2023年10月 (1月2位、2月1位、3月2位、4月1位、5月3位、6月1位、7月2位、上半期1位)

1位は一昨年後半に金利復活の傾向が出てきた際に書かれた記事が入りました。下半期は伸び悩んだん感がありますが上半期の貯金で逃げ切ったという感じでしょうか?

所得税は働く人の給与からの税金と言えない時代を迎えつつある

さて記事の内容は金利が復活する事で住宅ローンの負担が重くなり、政治は財政を重視し、極端に言えば「地方から一生懸命勉強して都会の名門大学を卒業して大企業の就職し、通勤圏に新築不動産を購入する」ような人に逆風となる反面、実家暮らしなど家やクルマの費用を抑えて資産、特に現金を持つ人に有利な社会となるというものです。加えて注目したいのは2010年代末には源泉所得税の内訳の4割が株の配当などからの分離課税によるものとなっていて、国としてもかつてよりも稼ぐ人を重視する理由が減じている面も注目したいところです。言って見れば今起こっている変化はフロー強者からストック強者に経済的な主役が移ってきている事なのかもしれません

如何だったでしょうか?2024年はnoteでの記事が増えた1年でもありました。2025年の年間ランキングではもしかしたらnote,blogの混合ランキングとなっているかもしれません。それでは本年も本blogおよびnoteをよろしくお願いします。


謹賀新年2025

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