先人の築き上げた資産を安易に手放すのか~吾妻線と万座温泉に思う~

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吾妻線の象徴特急草津(現草津・四万)号

“赤字は年間4億円超”JR吾妻線 長野原草津口~大前の今後は 沿線自治体などが初の協議@NHK2024/5/23より
群馬県の渋川と大前を結ぶJR吾妻線。草津温泉や四万温泉などへの観光輸送に加え、地域の生活も支えてきました。しかし、長野原草津口と大前の間は、年間4億円を超える赤字が課題となっています。この区間について、沿線の自治体などが将来のあり方を協議する初めての会議が23日に開かれました。
さて芸備線に続き群馬県の赤字旅客線吾妻線も将来の在り方に関する協議が始まったようです。ここでは吾妻線、特に協議の対象である長野原草津口~大前について少し見ていこうと思います。

芸備線改善策を考える

特急の縮小が長野原草津口~大前の衰退を招いたのか~吾妻線の経緯を見る~
吾妻線草津・四万@Wikipedia、より
1989年(昭和63年)3月11日:107系電車導入[33]。
1991年(平成3年)12月1日:川原湯駅を川原湯温泉駅に、長野原駅を長野原草津口駅に改称[18]。
日時不詳:165系電車全廃。
1992年(平成4年)3月14日:小野上温泉駅が開業[18]。
2002年(平成14年)12月1日:特急「新特急草津」を「草津」に改称[32]。
2012年(平成24年)3月17日:ダイヤ改正で下り1号(上野駅7時20分発)・上り6号(万座・鹿沢口駅16時24分発)が廃止となり、毎日運転の列車は2往復(土休日のみ3往復)となる。また、上野駅 - 新前橋駅間での「水上」との併結運行が廃止となり、全列車が、全区間7両編成での運行となる。
2014年(平成26年)
3月15日:ダイヤ改正で使用車両が651系に置き換えられる。
9月25日:八ッ場ダム建設に伴う新線切り換え工事のため中之条駅 - 大前駅間を運休し、中之条駅 - 大前駅間で30日までバス代行輸送を行う[16]。
9月26日-30日:中之条駅 - 岩島駅間の営業運転が再開[16]。新線区間での乗務員訓練のため岩島駅 - 大前駅間を運休し、同区間で試運転を実施[8]。
10月1日:岩島駅 - 大前駅間の営業運転が再開[16]。岩島駅 - 長野原草津口駅間の新線切り換えに伴い、川原湯温泉駅が新線上に移転し[9]、同時に同区間を改キロ (-0.3 km)[14]。全線が東京近郊区間に指定され、中之条駅、長野原草津口駅、万座・鹿沢口駅の3駅でSuica等のICカード乗車券が使用可能になる
2016年(平成28年)3月26日:ダイヤ改正により区間短縮が行われ、長野原草津口駅 - 万座・鹿沢口駅間の定期運行が廃止となる[5]。なお、ダイヤ改正当日の3月26日は下り「草津83号」が、翌日の3月27日は上り「草津84号」が上野駅 - 万座・鹿沢口駅間で臨時運転された。以後は多客期の特定日のみ延長運転される。
8月22日:211系電車を導入[34]。初日はA28編成を充当して、高崎駅を夜に出発する549Mから[35]。
2017年(平成29年)3月4日:一部列車における上越線内直通区間が高崎駅までから新前橋駅までに短縮。
2019年(令和元年)10月13日:令和元年東日本台風(台風19号)の影響で長野原草津口駅 - 大前駅間で長期間運休となる[36]。
2020年(令和2年)2月21日:長野原草津口駅 - 大前駅間が運転再開[37][38]。
2023年(令和5年)3月18日:特急「草津」を651系からE257系に置き換え、「草津・四万」に改称
2024年(令和6年)3月22日:JR東日本高崎支社が、旅客減少により「鉄道の特性である大量輸送のメリットを発揮できていない」とされる末端区間の長野原草津口駅 - 大前駅間について、群馬県、長野原町および嬬恋村に対し同区間の「沿線地域の総合的な交通体系に関する議論」を申し入れた事を発表した。
さて平成期からの吾妻線の状況を見ていきます。主なものを抜粋すると下記になります。
2012年:特急草津の本数減少3往復→2往復(土休日3往復)
2014年:特急草津をE651系に置き換え、八ッ場ダム建設により新線切り替え
2016年:特急草津区間短縮(長野原草津口~万座・鹿沢口廃止)
2017年:一部列車が高崎発着から新前橋発着に区間短縮
2023年:特急草津をE257系に置き換え草津・四万に改称
特急用車両変更、八ッ場ダム建設をきっかけとした新線切り替えがあるものの特急草津(2023年から草津・四万に改称)の本数削減、区間短縮、一部普通列車の新前橋止まりへの変更等消極策が目立ちます。

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吾妻線利用者数推移(路線別ご利用状況@JR東日本より作成)

続いてJRの公表資料から吾妻線の輸送密度の推移を見ていきます。協議の対象となっている長野原草津口~大前に関しては2012年まではむしろ渋川~長野原草津口よりも利用に関しては健闘していたものの、2012年の特急の減便、2016年の特急の区間短縮で利用者の減少傾向に拍車がかかって逆転し現状に至っていることが分かります。
“赤字は年間4億円超”JR吾妻線 長野原草津口~大前の今後は 沿線自治体などが初の協議@NHK2024/5/23より
きょう(5月23日)は、2つの自治体とJR東日本の担当者などが出席して、初めての会合が、冒頭以外およそ1時間、非公開で行われました。この中では、現在の利用状況などを共有したうえで、今後、この区間の利用客のおよそ8割を占める高校生とその家族などに、利用実態についてアンケートを行う方針などが話し合われたということです。次の会議の日程は未定ですが、今後も協議を続けるとしています。
そしてこの区間の利用客の8割を高校生が占めると言うのは長野原草津口~大前の区間で観光客を失う事で利用客を減らしてきたことを端的に示していると思われます。

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吾妻線沿線自治体の観光入れ込み客数@観光入込客統計調査報告書@群馬県観光魅力創出課 平成30年令和3年度版より作成

観光客に関しても特急の区間短縮の影響が大きい嬬恋村の観光客は2010年代中盤他の地域が増減を繰り返したり増加傾向にあったのに対し低迷し、2010年代草津町に次ぐ観光客を誇っていたのが2021年には5町村の中で4位となりました。特急の本数減、区間短縮の影響だけではないとはいえ、吾妻線沿線では草津町に次ぐ観光集客力を誇る嬬恋村の観光業停滞は単なる鉄道の赤字と言うよりも地域経済をどう活性化するかの問題にも結びついているとも言えます。

高校と通学ダイヤを見る
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大前駅周辺、謎の終着駅扱いされる大前駅だが川向こうの高台には嬬恋村役場や、市街地(?)が広がる agatuma5
沿線の高校・役場と朝時間帯ダイヤ(JTB時刻表2024年3月号参照)

また沿線の高校の立地を見ると渋川市に4校、他の町村に3校となっています。また役場の立地を見ると大前、長野原草津口、群馬原町、中之条に町村役場があり渋川には渋川市役所があり、高校所在地を含めて市街地が広がっています。その上でダイヤを見ると芸備線とは違い大前から渋川方面への通学が難しいものの沿線内の高校への通学、役場への通勤自体は比較的無理なくできそうです。ただ贅沢を言えば嬬恋村から屈指の進学校高崎高校(前橋高校は立地的に難しい)、群馬高専のある高崎・前橋市内への通学と大前駅から高崎・前橋市内に通勤が出来ないというのが改善点として挙がるかもしれません。

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参考:吾妻地域の通学流動(15歳以上、単位:人) @群馬県吾妻地域の高校生の通学交通特性からみた課題 西尾 敏和(群馬県立高崎工業高等学校) 森田 哲夫(前橋工科大学)より引用

ちなみに少し古い2015年のデータですが、地元の高校・大学の共同研究の結果を見ると大学生等も含む数値ですが嬬恋村から高崎市への通学が25人、前橋市への通学が21人と決して小さい人数ではない事が示されています。

昼間のダイヤを見る IMG_5723
現特急「草津・四万」用E257系@上野駅
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吾妻線長野原草津口~大前日中~夜ダイヤ(括弧がついているものは乗換え、赤字は特急、斜め字は臨時列車、〇は土・休日運転、△は特定日運転)

さて朝の時間帯以外のダイヤも見ていきますと以下の特徴があります。
・大前~万座・鹿沢口は日中最大7時間空くくらい本数が少ないが万座・鹿沢口泊まりの列車は1本を除き20分以上あり、何故万座・鹿沢口折り返しになっているか分からない
・臨時特急が走る関係で万座・鹿沢口折り返しも日中は2~3時間空く
・定期の特急は長野原草津口で普通に接続し万座・鹿沢口迄アクセス可能だが、臨時特急には接続する普通がない
・万座・鹿沢口~高崎は普通は100~119分、特急乗換えは78~83分と時間差が意外に大きい。
・特急の運行時間帯は定期列車で下り高崎発11:19~13:33、長野原草津口発13:07~15:43と偏りがある。
万座・鹿沢口基準で考えれば最小限に食い止められているとはいえ、感じるのは線内の通学、草津温泉への観光輸送の優先度が高く、この地域から群馬県の高崎・前橋を中心とした都市部へのアクセスが後回しになっている感がぬぐえないダイヤと感じられます。例えばこの地域から前橋市の群大病院等の大規模医療施設へ通う高齢者や県庁へ出張する役場の職員、また平日だと数は減るかもしれませんが、沿線の温泉などの観光地へ新幹線から乗り継いで来る観光客など掘り起こせそうな気がしますが果たしてどうでしょうか?

現状のバス路線を見ていく
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西武観光バスの万座温泉行@万座・鹿沢口駅
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群馬大津駅~大前間各駅発着の主な路線バス

さて続いて周辺の交通を見ていきましょう。まず並行区間を走るバスとしては草軽交通の北軽井沢~草津温泉間の長野原草津口~応桑堂バス停間とJRバス関東の長野原草津口~堂西バス停がそれぞれ長野原草津口~羽根尾、群馬大津と並行していますが、長野原草津口から嬬恋村の中心である万座・鹿沢口、大前方面へ向かうバスは無い様です。
沿線の主な路線バスを見ると軽井沢~草津温泉、万座温泉と言う広域な観光ルートの中間点にこの吾妻線が位置しているのが分かります。軽井沢周辺の鬼押し出しや北軽井沢地区は、群馬県であり、かつて特急草津が万座・鹿沢口まで乗り入れていたのはこの観光ルートの一端を担う事で草津温泉だけでない多彩な観光客を取り込んでいたことを意味しているのでしょう。そして現状通学客が8割と言うのはこの観光ルートが衰退してしまったという事、そして既存のバス会社が長野原草津口~大前の代替バスを走らせる可能性は低いという事を意味します。

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西武観光バス万座バスターミナル行き、軽井沢駅行バス時刻表@万座・鹿沢口(斜め字は土・休日運休、(赤字)は特急に接続する普通列車)

またかつて特急草津のお客さんを運んだであろう万座・鹿沢口のバスを見ると接続は決して良くいです。特に鬼押し出し→高崎・東京方面の乗り継ぎは実質的に14:45発の1本だけ(鬼押し出し発10:45は鬼押し出し迄の始発でかつ土休日運休)となります。 西武観光バス 草津・軽井沢エリア
草軽交通株式会社
JRバス関東
上田バス

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嬬恋村のスクールバス

また退出したバスの代替交通として走る事の多いコミュニティバスではなく長野原町、嬬恋村のHPを調べるとコミュニティバスは無く行政が走らせるのは福祉バスや小中学校のスクールバス等公共交通と言うよりも目的を絞り込んだ交通機関のようです。

嬬恋村スクールバス
嬬恋村福祉バスについて@嬬恋村
買い物支援バス運行中です@嬬恋村社会福祉協議会
外出支援バスについて@長野原町
福祉バスについて@長野原町
八ッ場地区を巡る周遊バス「八ッ場ぐるりん」の運行が始まります@やんば天明泥流ミュージアム(長野原草津口以東)

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高速バスだけでなく水陸両用バスも走らせる地元企業DTS
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草津温泉発着高速バス一覧

つづいてローカル線との競合がよく言われる高速バスなのですが長野原草津口~大前に関しては草津温泉行ばかり見つかりました。最近では地元企業DTSや2022年に東急バスが横浜発着の路線を走らせている様に、増発傾向にあるようです。一番本数の多いJRの湯めぐり号ですが、経由地に渋川・中之条・群馬原町・河原湯温泉・長野原草津口と渋川~長野原草津口間の主要駅も多く競合の影響が懸念されそうですが2012年~2019年の渋川~長野原草津口の輸送密度は横ばいに近く棲み分けがなされていると言うかともに盛り上がっている様な感じがします。逆に万座温泉を中心とした嬬恋方面への高速バスは無い様です。

上州湯めぐり号時刻表
横浜駅西口・新横浜・たまプラーザ-軽井沢・北軽井沢・草津温泉@東急バス
渋谷・中野坂上-軽井沢・北軽井沢・草津温泉(※二子玉川は休止中)@東急バス
DTS HP
吉祥寺~草津温泉線@関越バス

現状の課題をまとめて見る
さてこれまで見てきた経緯と現状を纏めますと
・現状の長野原草津口~大前の利用者の8割が通学客
・2012年の特急減便、2016年の特急区間短縮で長野原草津口~大前の乗客減少傾向が明確となって来た。
・それに伴い沿線の嬬恋村の入れ込み観光客数は他が増加か、増減を繰り返すのに対し明確に停滞・減少傾向に入った。
・通勤・通学を見ると概ね線内の通学には対応していて、高崎・前橋市内への通勤もある程度対応されている、嬬恋村内から高崎・前橋方面への通学への対応が課題
・日中のダイヤは東京から草津温泉方面への特急は沿線の視点で見ると運行時間が偏ったり、臨時特急の影響で日中の本数が少ないなど、沿線~高崎・前橋方面との双方の行き来が不便なダイヤと言う印象を受ける
・沿線のバスを見ると吾妻線に沿った区間は一部あるものの、基本的には軽井沢~草津温泉・万座温泉の広域観光ルートの一端を担う路線が多い
・万座・鹿沢口発着のバス路線のダイヤを見ると本数が少なく接続も良くない
・自治体はコミバスと言うよりもスクールバスや福祉バス等公共交通と言うよりも特定の目的を最低限フォローする交通機関の手当てが精一杯と言った感じ

と言った感じになります。芸備線が通学客の利用すらないのに比べると通学利用への対応が比較的出来ている反面、特急の減便・区間短縮の影響でJRの観光ルートから外れて長野原草津口~大前の観光利用が減少し、長野原草津口迄の特急により日中のダイヤも便利ではなく高崎や前橋と言った県内の主要都市への移動も抑えきれないと言った所です。また地域としては草津と対照的に嬬恋村の観光客数が停滞・減少傾向にあり、その対策も課題と言えます。

鍵を握る場所、万座温泉を少し歩く
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万座温泉の一番宿プリンスホテル

さて個人的には長野原草津口~大前の活性化を考える際に一番大きなポイントだと思う場所万座温泉に行ってきました。この温泉へのアクセスの為に特急が3往復万座・鹿沢口まで乗り入れた2007年の長野原草津口~大前の輸送密度は657人、2022年が263人ですからおよそ2.5倍、2022年との差分である394人の多くはこの万座温泉へのお客さんだったはずです。

万座温泉@Wikipediaより
草津白根山山麓に位置し、冬はスキーのメッカとして春から秋にかけてはかつては湯治場としてにぎわった。源泉温度が高いことからもうもうと湯けむりを上げ、源泉地は地獄的な様相を見せ、硫黄の匂いが充満している。川床には至る所に源泉が湧出している[1]。中心部の外れにある「空吹」(からぶき)と呼ばれる水蒸気を含んだ硫化水素煙の噴出口は万座温泉の名物となっている(2012年頃から噴出量が減少し以前ほどの迫力はなくなっている)。なだらかな山の斜面に旅館・ホテルが点在し、後背には万座温泉スキー場がある。~中略~
万座温泉が本格的に開けてくるのは、戦後になって西武グループによるリゾート開発が行われ、交通の便が改善されてからである。


この温泉は単なる温泉と言うよりもスキーリゾートも併設されたものであり、アクセスのバスが西武観光バスである事から分かるように西武グループにより開発が行われました。万座・鹿沢口から万座に向かうバスでは嬬恋と万座と言う2つのプリンスホテルがあり、嬬恋の方にはゴルフ場、万座にはスキー場が併設されています。

万座温泉観光協会
嬬恋プリンスホテル
万座プリンスホテル

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万座バスターミナルと硫化水素に関する注意書き

バスに40分ほど乗ると万座バスターミナルにつきます。興味深かったのはターミナルにつくと温泉の各旅館の送迎車が現れ私以外のバスの乗客がみな送迎車に乗り込みホテルに向かった事です。万座温泉は下の注意書きにある様に硫化水素の濃度が濃く、歩くのに注意が必要な個所もあるため最近流行っている温泉街にある様な歩き回る様な温泉街と呼べる場所が少ないのが特徴です。

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万座BTから少し歩くと行ける豊国館、安く外湯が楽しめます。

という事で早速外湯に行ってきました。バスセンターからも近い豊国館です。外湯は500円、近所の銭湯感覚の嬉しいお値段できちんと露天風呂もありました。
久しぶりの温泉を満喫しながら子供連れで来ていたお客さんに聞くと結構常連との事でタオルを買う際に従業員に尋ねてみたところやはり常連さんが多いとの事でした。これまで見てきたようにコロナ禍前に確かに減少はしていても10%以内の減少にとどまって来たと言うのが良く理解できました。実際バスターミナルの光景も私以外の宿泊客はなかなか手馴れていました。

豊国館

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万座温泉の雄大な自然

そして自然は雄大でなかなかの絶景であり、高原と言う自然条件も含めて夏の避暑、冬場のスキー、あるいは温泉につかってのんびり過ごしたい人など、この温泉を魅力に思える人は決して少なくはないのかなと思います。

【ご紹介】温泉むすめ 万座千斗星@万座ホテルジュラク

また常連さん頼みではなく新しい顧客を意識した取り組みも見られます。

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万座・鹿沢駅前にある観光案内書、外にはシェアバイクも用意され、中はアイスクリームやコーヒーなどが飲めるちょっとしたカフェや地域の情報コーナーとなっています。また周りにはコンビニや飲食店、また川向うには高校や銀行、郵便局などもあるちょっとした市街地になっています。嬬恋村の観光は西武と言う大資本に絡む観光開発で発展した面が大きいですが、地域の小さな観光資源も発掘してまた違った魅力も開拓してほしいと思います。

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帰りは211系普通電車で

そして万座・鹿沢口で17:36発の高崎方面への普通電車に乗り長野原草津口方面へ向かったのですが興味深かったのは羽根尾駅で行き違った大前方面への電車、大体4両で20人くらいの乗車、そう書くと少なく感じまる方もいますが、万座・鹿沢口行きだったらもう残り2駅ほど、この駅までには長野原草津口、群馬原町、中之条と利用者の多い駅も通り過ぎた後で、渋川出発時だとそこそこ混んでいたのかなと感じました。良く東京から大前方面へ向かって電車に乗って用事が終わって戻っていく際にガラガラだったという話が出ますが、良く考えれば沿線の人達は電車に乗って高崎や前橋に向かい用事が終わったら帰って来る、旅行者とは逆の動きをするわけです。それを考えると簡単にガラガラと言うのも違うのかなと感じました。 さてここまで見てきました。万座温泉はイメージとしては確かに公共交通よりもクルマ向きであり、また最近の流行とは外れているのも確かです。ただコロナ前の2019年の観光客数は日本でも有数の温泉草津温泉を抱える草津町328万人に対して嬬恋村は200万人、負けてはいても今でも無視はできない規模を誇っているのではと感じます。

嬬恋村観光協会について

熱海を盛り上げた新しいお客さんは鉄道が連れてきた…のか
衰退から一転、「熱海の奇跡」が実現した舞台裏を、再生キーパーソンに聞いてきた ―街づくりと観光の連動から「関係人口」の創出まで@トラベルボイス2020/11/8
静岡県・熱海が最近変わってきたと聞いて、何十年ぶりかに訪れてみた。かつては会社の慰安旅行などの団体が多かったが、今では熱海銀座を歩いているのは女子旅のグループ、カップル、ファミリーが目立つ。「コロナ禍で高齢者が少ないこともありますが、若い個人観光客は確実に増えています」。そう話すのは、熱海で街づくりを手掛けている「machimori」の代表取締役・市来広一郎さん。元気な街には人が訪れ、消費し、さらに街が活性化される。街づくりは観光の素地と言えるが、観光誘致を目的に行うものでもない。街づくりと観光の関係とは。「熱海の奇跡」と言われるV字回復の背景にあるものは。熱海再生に取り組んでいる市来さんに聞いてみた。
さて話が変わりますが、令和の今、成功した温泉と言うと熱海を思い浮かべる方も多いと思います。かつて首都圏に近く、社内旅行等でにぎわっていたもののバブル崩壊以降衰退していたものの積極的なまちづくりで若い世代の個人観光客を掘り起こした事で有名です。

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熱海市の観光客数、熱海駅利用者数、市営駐車場利用状況(令和5年版熱海市の観光より作成、駐車場利用状況は2013~2015年一部駐車場の値が未計上)

当然熱海市の成功は熱海市の人達の努力の賜物ですが、熱海市の努力による新しいお客さんを運んできたのは鉄道だったというのは言い過ぎなのでしょうか?実際駅の利用者数、駐車場の稼働台数の推移は同じような感じです。ただ新しいお客さんを若い世代や外国人観光客と考えると既存のお客さんより鉄道・公共交通への指向は高いと思われます。熱海程ではないですが群馬で成功している草津温泉で新しい高速バス路線が増えているのも見てきたとおりです。

まずは本当に巻き込むべき人たちを巻き込むべきでは
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万座温泉行きの際に使った群馬県のMaasGunMaas
“赤字は年間4億円超”JR吾妻線 長野原草津口~大前の今後は 沿線自治体などが初の協議@NHK2024/5/23より
きょう(5月23日)は、2つの自治体とJR東日本の担当者などが出席して、初めての会合が、冒頭以外およそ1時間、非公開で行われました。この中では、現在の利用状況などを共有したうえで、今後、この区間の利用客のおよそ8割を占める高校生とその家族などに、利用実態についてアンケートを行う方針などが話し合われたということです。次の会議の日程は未定ですが、 今後も協議を続けるとしています。
さてこうして見て見るとJRと群馬県のやっている事がどうしてもずれて見えてきます。例えばこの話し合いの場に西武観光バスや草軽交通はいてしかるべきでしょうし、また高校生だけでなく嬬恋村、長野原町など関係する自治体の観光業に関わる人達、またこの地域から高崎・前橋などと行き来する働く人たちの意見も聞いてしかるべきです。草津温泉が繁栄しているから万座温泉は別にいいと考えていないかもしれませんが、もしそうだとすれば大きな間違いと言う他ありません。どんなに素晴らしい観光地でもいつも繁栄している訳ではなく衰退したり、再生したりを繰り返すのは熱海を見れば明らかで、その最悪い影響を最小限に食い止めるのには他の場所がきちんとしている必要があります。それ以前に過去の人達が投資を行い育て上げた資産を安易に手放すのはもったいないと言うのはこの吾妻線と万座温泉を調べて感じた事です。はたしてこの路線がどんな結論を辿るのか、今後とも注目していきたいと思います。


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如何だったでしょうか?6月が書き手の私にとっても皆さんにとっても良い1月でありますように。


芸備線改善策を考える


若者も盛り上げます。

JR西日本、ローカル線「芸備線」の存廃協議開始 事なかれ主義は捨てた@日経ビジネス2024/3/26より
国土交通省中国運輸局が設置した「芸備線再構築協議会」の第1回協議会が、3月26日に広島市内で開かれる。2023年10月1日に施行された改正地域公共交通活性化再生法に基づき、同月3日にJR西日本が設置を要請。関係する沿線自治体への聴取を踏まえて、24年1月12日に設置が決定された。広島市と岡山県新見市を結ぶ全長159.1キロメートルの芸備線のうち、特に利用客数が少ない備後庄原(広島県庄原市)~備中神代(岡山県新見市)間の68.5キロメートルが対象だ。


さてJRの赤字旅客線問題の西の横綱とも言われている芸備線の備後庄原~備中神代に関して国土交通省が設置した再構築協議会の第一回協議会が行われたようです。ここではその際の資料を参考に芸備線の乗客増加策について考えていきたいと思います。また赤字旅客線問題に関しては下記もどうぞ。

令和の大きな宿題その15 バス転換と言う贅沢が許されない時代に~赤字鉄道路線廃止問題に思う
令和の大きな宿題その12 JR西日本が投げかけたもの

いるべき通学の高校生がいない路線~芸備線概要~
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芸備線各区間の経営状況@芸備線再構築協議会の協議体制について@中国運輸局2024/3/26より

さて、まず芸備線の経営状況を見ていきます。今回協議会で対象となり営業係数の悪い路線として有名になった備後庄原~備中神代ですが、実は赤字額は各区間3.1億円以下とそう大きくないのが分かります。むしろ下深川~三次の赤字額が17.1億円と路線全体の赤字額の過半を占めています。言うなれば備後庄原~備中神代は運行経費を抑える事で赤字を最小限にとどめていると言えます。

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芸備線各区間の輸送人員@芸備線再構築協議会の協議体制について@中国運輸局2024/3/26より

そしてこの区間の利用者を見ると、おかしな事に気付きます。輸送密度11人と非常に利用の少ない備後落合~東城間を含む備後西城~東城間の通学定期利用者が殆どいない事です。俗に人口の少ない地域での旅客鉄道利用者で大きな割合を示すのは高校生の通学と言われ、周辺の備後庄原~備後西城、野馳~備中神代に関しては通学定期利用者が利用の大半を占めている事を考えるとそのおかしさに気付かれる方もいると思います。

高校はあるが通学用の列車もバスも足りない~庄原市の交通事情~
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芸備線各駅半径2㎞の人口@芸備線再構築協議会の協議体制について@中国運輸局2024/3/26より
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備後庄原~新見間に立地する高校・大学

いや、この地域は人口もほとんどいなくて高校もない地域だからではないかと考えた方もいると思いますが、沿線人口は決して多くはないものの東城地域は備後西城の3倍近い人口を抱え、広島県立東城高等学校も立地しています。また備後西城、備後庄原を合わせると庄原市内に公立高校4校、大学1校、新見市内には高校2校、大学1校と一定の学校があります。そう考えると備後西城~東城に関しては高校生・大学生の通学需要はあり得るし、ここまでないというのは不自然に感じます。

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芸備線並行バス路線@芸備線再構築協議会の協議体制について@中国運輸局2024/3/26より
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東城⇔庄原線時刻表@備北交通より

並行して便利なバス路線があるのではと感じる方もいるかもしれません。実際資料でも並行のバス路線に関する記載もあります。ただ庄原市内で言えば実際に通学に使える路線は資料に時刻が掲載されている庄原~西城間の路線と、高速バスのうち東城→庄原の片道位です。他は調べて見た限りでは通学に適した時間帯の運行は確認できませんでした。また並行バス路線のある庄原~西城に関しては鉄道利用も一定数いるのも確かです。

参考
生活交通バス・タクシー@庄原市
路線バス@備北交通

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備後庄原・備後西城・東城・新見各区間の通学時間帯時刻@JTB時刻表2024年3月号調べ

高校があり、人口も多い備後庄原・備後西城・東城・新見各駅間の通学時間帯の時刻を調べると、備後庄原~備後西城、東城~新見間は比較的良い時間帯に列車があるのですが、新見・東城→備後西城・備後庄原は5時台発と時間が早すぎ、備後庄原・備後西城→東城・新見は通学に適切な列車がない事が見て取れます。纏めると備後庄原、備後西城地区から東城高校及び新見市内への学校へは現状通学に使える公共交通が確保できていないと言えます。

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高速バス学割定期券@備北交通より

また東城→備後庄原の通学の足を芸備線と共に担う高速バスなのですが1月の学割定期券33600円と芸備線が11,970円なのに比べて値段が高いのも頭に置いておく必要があります。月3万円と言うのはお金持ちの家はともかく、家計にとっては大きな負担になると思います。

路線バス廃止457・19キロ 中国地方2023年度 運転手不足も要因@中国新聞2024/4/22より
中国地方で2023年度に廃止となった路線バスが457・19キロに上ることが中国運輸局のまとめで分かった。広島市から愛知県豊橋市の直線距離に相当する。3月末での廃止は282・69キロと6割を占めた。


2024年問題で言われるように、バスの運転手不足が深刻で、バス路線を新しく増やすよりどんどん廃止の方向に向かっています。高校の通学時間と言う人の集まりづらい時間帯に運転手を集めてバスでフォローするのは難しいと思われます。現状備後庄原→東城の高速バスが運行されていないのはそれが理由でしょう。

つながりの薄い地域内で孤立し学生が集まらない地方の高校と寄宿舎を備える都会の進学校
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西城紫水高校 荻野寮の紹介より
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広島県立庄原実業高等学校2024年一次選抜の志願状況より
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広島県立庄原格致高等学校2024年度一次選抜志願状況より

実際この状況は各高校にも影響を与えているように思います。上は庄原市の4つの公立高校のうち東城高校を除く各校のHPから引用したものです。庄原実業高校・庄原格致高校では志願者募集に苦戦し、西城紫水高校では全国から学生を募集するための寮の案内がなされています。東城高校に関してはHP上にそういった案内がないですが、他の学校の状況を見ると苦戦していると推察できます。

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広島県立広島中学校高等学校寄宿舎凌雲塾HPより

その一方で都市部の高校では寮を設置して公共交通でのアクセスが悪い地域からの学生の募集も行っています。上は広島市の郊外である東広島市に立地する県立広島中学校高等学校の寄宿舎のHPからの引用です。進学実績を見ると広島大学に40名、九州大学に12名、東京大学・京都大学5名と有力な進学校である事が読み取れます。庄原市からどれだけ進学しているかまでは分かりませんが、地域の公共交通が良くない事で高校の段階で地域から若い人が都市部に流出し、地元の高校・大学が厳しい状況に置かれている面もあるというのは頭にとめておいても良いと思います。

改善策を考える
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芸備線ダイヤ@芸備線再構築協議会の協議体制について@中国運輸局2024/3/26より

という事で改善策を考えていきます。まずは増発となります。上の図で赤丸がついている部分、現状備後落合発6:41の新見行きの列車を備後庄原発にすれば現状備後庄原・備後西城から東城・新見地区の高校への通学が可能となり、かつ新見着8:08、東城7:31着と時間帯も悪くないです。また現状備後西城7:01、備後庄原7:29着となっている列車は三次市内の高校への通学を意識した為か庄原市内への到着が早くなっていますがこの列車の3~40分後に到着する列車があるとより通学利用を促進する事が可能となると思われます。

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ご説明資料@JR西日本2023/8/2より

また現状落石への対応で25㎞/h徐行となっている区間も予算を立てて対策すれば徐行解除できるかもしれません。そうすれば特に備後庄原~東城でスピードアップが可能になります。

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芸備線徐行解除後の所要時間想定(姫新線津山~新見間の評定速度を参照)

仮に同じ山間部のローカル線姫新線の津山~新見間の評定速度を参考に徐行解除後の所要時間を想定すると東城~備後庄原の所要時間は30分以上短縮されます。そうすれば単純な所要時間短縮だけでなく、東城・新見、備後西城・備後庄原への通学需要を1本の列車でフォローする芸備線庄原市内の通学輸送にとってより良い時間帯での列車設定は可能になると思われます。

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改善時のダイヤと効果

実際改善を想定したダイヤを見ると大きく改善されることが見て取れます。しかしこの改善策にはコストがかかるのも事実です。
徐行解除:落石対策費用、三次あるいは備後庄原~備後落合間増発の運行費用(運転手・燃料費等) 増発:備後落合~東城間の行き違い設備増設、増発列車の運行費用(運転手・燃料費等)
現状を見ると、これらのコストを負担しないから赤字額が抑えられ曲がりなりにも鉄道を維持できたとも言えます。

地方鉄道の活性化に向けて@国土交通省資料より
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JR只見線(只見~会津川口)の鉄道事業許可~豪雨被害からの運転再開に向けて、運行と施設保有を分離します~@国土交通省2021/11/29より
 この区間は、「平成23 年7月新潟・福島豪雨」で橋りょう流失等の甚大な被害を受けましたが、 沿線自治体の強い意思を踏まえ、平成29 年6月、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)と福島県は、運行と鉄道施設等の保有を分離する上下分離方式を導入し、鉄道により復旧することで合意し、 現在、令和4年中の運転再開を目指して復旧工事が進められています。
 今回の許可は、上下分離方式の導入に必要な鉄道事業法上の手続として行われたJR東日本からの 第二種鉄道事業(運行)の許可申請、福島県からの第三種鉄道事業(鉄道施設等の保有)の許可申請 に対して、それぞれ行うものです。
 なお、許可書の交付については、下記のとおり行います。 〔参考〕 この区間の復旧工事については、平成3 0 年6月成立の改正鉄道軌道整備法により新たに対象となった黒字事業者の赤字路線の事例として、国の災害復旧補助制度が適用されており、上下分離方式の導入などの事業構造の変更等の要件を満たすことによる補助率の嵩上げ(通常4分の1→3 分の1)が行われている最初の事例になります。


多分この改善を行うのには福島県の只見線の様な上下分離でインフラコストを福島県がある程度引き受けたような形が必要となるのではないかと思います。実際備後庄原~備中神代間の線路保存費3.5億円、電路保存費1.2億円、保守管理費0.3億円にプラス落石対策等を広島県、岡山県、庄原市、新見市を纏め国の補助制度などを活用し、実現していくのは非常に難しい道です。

新見・庄原・三次の3市を結び付けて生き残れる地域となれるか

岡山県福山市で働きたいという剛の者はいなかった…

しかしそれをやる理由もあるのではないでしょうか?芸備線の走る広島県は近年人口流出が全国1位で問題となっています。その問題を報じる報道では「電車が5分毎に走るなら」と言う女子大生の話が印象に残りました。何故かと言えば県庁所在地の広島市では文字通り広島電鉄の「5分毎に走る電車」は簡単に見れるからです。言うなれば彼女の言葉は広島市の様な都会以外で鉄道が不便で市内の通学手段すらままならなかったり、三江線や可部線末端部の様に廃止される路線すらあるような状況に対する懸念の言葉なのではないでしょうか?

日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」@源田新書編集部2022/12/6より
しかし、地方移住にも希望はあると河合氏は言う。
現状の移住政策では一極集中を是正できていないが、「地方集住」という形であれば可能性があるのではないか、と。
人が住む地域と住まない地域を明確に分けることができれば、そこには民間事業を残すことができるという。最低10万人の商圏を維持できれば、そのエリアは持続可能と言われている


近年消滅可能性自治体と言った言葉が飛び交い、地方都市は存続の不安に悩まされています。その際に人口10万人と言うラインが注目されています。庄原市も新見市も人口は3万人前後と程遠い水準です。ただ三次市も合わせた3つの市が1つの圏として機能したらどうでしょうか?
三次市 47676人 高校3校
庄原市 30975人 高校4校、大学1校
新見市 25787人 高校2校、大学1校
合計  104438人 高校9校、大学2校 
人口は10万人を超え、高校9校、大学2校と学校の選択肢も決して少なくはないです。ただ今の芸備線ではこの3市を繋ぐ路線としての機能は弱いです。廃線となれば猶更でしょう。この3つの市がそれぞれ単独で人口減少による地方衰退の激しい波に立ち向かっていけるとは思えないです。ただ3つの市の結びつきを深めて疑似的な10万都市であればやれることは増えるはずで、それだけ生き残れる可能性は高まるはずです。その為に芸備線と言う通学を担う公共交通の軸を維持、投資を行う意味は大きいと思います。

聖地巡礼で都会の観光客を取り込もう
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3.これまでの利用促進と実績@芸備線再構築協議会の協議体制について@中国運輸局2024/3/26より

さてここまで高校生・大学生の通学をメインに考えていきましたが、多分芸備線の様なJR地方路線で通勤・通学の様なローカル輸送だけで成り立つのでなく複合的な需要によって成り立っています。その為芸備線でも様々な努力をしています。例えば備後庄原~広島の直通列車の運行や三次~新見間の増便実験など、バス&レールどっちも乗り放題パス等の企画乗車券など特にバスとの連携が目立ちます。

「ちょこっとパス+」「ちょこっとパス」@備北交通
バス&レール どっちも乗り放題パス 2デイ@JR西日本
ひろしま1デイきっぷ@JR西日本
setowa広島ワイドパス
setowa岡山ワイドパス
芸備線通学支援・モニタリング事業@庄原市

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現状の庄原市内から各地へのアクセス@JTB時刻表2024年3月号調べ

ただし、どうしても広島県、岡山県と2つの県にまたがっているので県を跨ぐアプローチが弱い事、多分大阪・東京などの大都市からの顧客誘致が弱い印象があります。上は現状ダイヤでの庄原市内から広島・岡山へのアクセスをまとめたものです。これを見ると東城からだと岡山、備後庄原からは広島へのアクセスが良い反面、備後落合~東城の本数が少ない為この地区で分断しているのが分かります。極端に言えば東城からだと新見~岡山経由で広島に行った方が便利ですらあるのです。とは言え、落石対策を行って普通の速度で走ると、東京や大阪からであれば新見経由でも実は広島経由とそれほど所要時間は変わらなくなります。



朝霧の巫女×広島県 三次市@アニメ聖地88

東京や大阪など大都市からの需要掘り起こしを考えて見ましょう。例えば芸備線沿線の三次市はアニメ聖地88にも選ばれているアニメ朝霧の巫女の舞台、庄原市はアニメ君のいる町の舞台であると共に原作者瀬尾公治の出身地でもあります。どちらも10年以上前の作品ですが、それでも朝霧の巫女はアニメ聖地88に選ばれている事、瀬尾公治氏は昨年女神のカフェテラスがアニメ化されている事等を考えるとラッピング車両の導入など盛り上げる手はあるのではないかと思います。

君のいる町x庄原市
三次市観光PRポスター完成発表会及び 「訪れてみたい日本のアニメ聖地88(2018-19年度版)」認定プレート贈呈式 開催について@三次市
君のいる町の聖地巡礼・ロケ地!アニメロケツーリズム巡りの場所や方法を徹底紹介!【君町】@旅する亜人ちゃん

災害多発路線山陽本線のバイパスと位置付けられないか
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JR貨物グループ中期経営計画2026@JR貨物より

また2024年問題でモーダルシフトが課題になる中、災害の多い山陽本線のBCP対策が課題になっています。それを考えると伯備線や姫新線と接続している芸備線を災害時のバイパス路線として整備するという発想があっても良いかもしれません。また旅客列車を使っての小口の貨物輸送での増収策の試行錯誤も考えてみても良いと思います。

如何だったでしょうか?芸備線再構築協議会はこれから進んで行くのですが、書いていて思うのは所謂ローカル線問題と言われる問題は営業係数が独り歩きしがちですが、その背景にある地域をじっくり見ていく必要があるのかなと感じました。願わくは庄原・新見・三次と言った沿線の市町村、路線を抱える広島県・岡山県、そして日本全体にとって納得いく良い結論が出る事を祈ります。


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こんなものも書いています。よろしかったらご覧になってください。

クルマを1台減らして豊かな生活を手に入れよう
クルマを1台減らす方法を考えよう@クルマを1台減らして豊かな生活を手に入れようその1
クルマ通勤から脱却しよう@クルマを1台減らして豊かな生活を手に入れようその2

さて2024年4月のランキングです。
1.お金の話その5~復活する金利が問うもの~
2.令和の大きな宿題その18~中高年独身女性の貧困問題を整理する~
3.令和の大きな宿題その26 イトーヨーカドーの苦境があらわす経済圏の時代
4.令和の大きな宿題その10~少子化政策は地に足ついたものに転換できるか~
5.お金の話外伝~ロスジェネ貧困女性の挽回策はあるか~

1位にはお金の話その5~復活する金利が問うもの~が入りました。

1ドル158円台に【記者解説】NYで円安加速なぜ 来週の注目は@NHK2024/4/27

4月は円安が加速し一時期1ドル160円まで行きました。個人的にはこれでまた利上げが煽られるのだろうなと感じます。ここまで来ると状況を丁寧に把握しつつ対応をする必要があるのかなと思います。

2位には令和の大きな宿題その18~中高年独身女性の貧困問題を整理する~が入りました。

なぜオジサンよりオバサンのほうが元気なのか…60代以降の女性が「やりたい放題」に向いている理由@2024/4/24

こういった論は多いですが個人的には60代以降と言うのは高齢者と言うより1964年以前生まれと言う印象です。逆に言うと今の50代以下は男女雇用機会均等法施行以降で段々「男女不平等故に守られる」部分が減って変ってくるのかなと思っています。

3位には令和の大きな宿題その26 イトーヨーカドーの苦境があらわす経済圏の時代が入りました。

セブン、イトーヨーカ堂株を一部売却へ 外部資本を活用@2024/4/9

セブン&アイはとうとう祖業でもあるイトーヨーカドーすら株の一部とはいえ売却するようです。本当にコンビニ専業になっていくのかなとため息が出てきます。

イオングループは「悪しき資本主義の象徴」みたいに扱われているが、やっと黒字という状態でもはや田舎の公共事業みたいなものだった@together

その中で粘り強く地方の商業施設を運営するイオンの評価が一部で上がっているようです。実際イトーヨーカドーや西友がどんどん閉鎖されていく中で評価が上がっていくのは何となくわかる様な気がします。

4位には令和の大きな宿題その10~少子化政策は地に足ついたものに転換できるか~が入りました。

Xで「九州滅亡しろ」など九州ヘイトが流行る。しかも反差別活動家が地域差別にならないと言い出す@together
九州擁護をしようとした九州の人、かえって九州の男尊女卑ぶりを見せつけてしまう「大勢の時は男を居間の座卓で酒盛りさせて女同士は台所横のテーブルで、おこげや中落ちという実は一番美味しいとこを食べながら笑い転げてるのがデフォっすが?」@together

最近男尊女卑と言うイメージのある九州へのヘイトがツイッタランドで溢れています。

ローカルハッピネス No.04 | issue+design 社会の課題に

しかしよく考えてみれば、九州地区は出生率が高く、女性の幸福度も概ね高いという調査もあります。少子化が大きな関心を集めている今人種が違う欧州よりも九州に学ぶ時代に入っているのは私だけでしょうか?

5位にはお金の話外伝~ロスジェネ貧困女性の挽回策はあるか~が入りました。
2位の記事が女性の貧困に関するものであれば、こちらは貧困予備軍に陥っている女性達への処方箋と言った所です。



直接は関係ないですが「努力するのには環境が重要」と言う認識が共有されて来たのですが、なんと言うのかある種の努力アレルギーが出て来ているように感じます。私も努力と言う言葉はそれほど好きではないですが、ただそれが「今を良くしていく為の一歩」を遠ざけているのであればもったいないなとも感じます。

クルマを1台減らして豊かな生活を手に入れよう

このサイトを作ったきっかけの1つは「地方はクルマ社会」と言う言葉で「クルマを1台減らして家計の固定費を減らし、家計を改善する」為の試行錯誤が放棄されているのではないかと言う危機感があっての事です。もしよろしかったらこちらもご覧になってください。

如何だったでしょうか?皆様にとっても私にとっても今月が良い1月でありますように


お金の話その6~無造作な利上げが導く負動産から投資への流れ~

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写真:駅前一等地

戦争が起こした円安と株価下落が導く更なる金利上昇
円安加速 一時154円台半ばに 約34年ぶりの円安ドル高水準@NHK2024/4/15より
15日のニューヨーク外国為替市場ではアメリカの経済指標の発表を受けて円安が一段と加速し、円相場は一時、1ドル=154円台半ばまで値下がりしました。1990年6月以来、およそ34年ぶりの円安ドル高水準です。~中略~
イランによるイスラエルへの攻撃によって中東情勢が一段と緊迫化し、原油価格の上昇が続けばアメリカのインフレが長引き、さらに利下げが遅れるという観測が出ていることも円安につながっています。


さて年初には円安が落ちつつあったのですが、気づいたら34年ぶりの円安1ドル154円台と言うニュースが入ってきました。イランによるイスラエルの攻撃により中東情勢がさらに悪化したことも原因だそうです。

株価 一時1300円以上の急落 中東情勢の緊迫化懸念で全面安に@NHK2024/4/19より
19日の東京株式市場は、半導体市場の先行きに慎重な見方が広がったことに加え、中東情勢の一段の緊迫化への懸念が強まったことで全面安の展開となり、日経平均株価は一時1300円以上の急落となりました。
19日の東京市場では、台湾の半導体受託生産大手のTSMCが、ことしの半導体市場の先行きに慎重な見方を示したことを受けて取り引き開始直後から、半導体関連の銘柄を中心に売り注文が広がりました。
さらに午前中、イラン中部で爆発音が聞こえたというニュースが伝わると、中東情勢が一段と緊迫化することへの懸念から売り注文が膨らんで全面安の展開となり、日経平均株価の下げ幅は、一時1300円を超えました。


また週末には中東情勢の更なる緊迫化で日経平均が1000円以上の下げ幅を記録しました。

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2020年基準消費者物価指数全国 2024年(令和6年)3月分@総務省統計局

ちなみに物価に関しては前年比でみれば先月よりは落ち着いているものの高止まり感が見て取れます。

日銀、1%利上げ「家計収支全体ではプラス」 試算公表@日経新聞2024/4/18より
日銀は18日、金融システムの安定性を評価する金融システムリポートを公表した。短期金利が1%上昇した場合、預金などの利息が増えて家計の金利収支が改善するとの見通しを示した。一方で住宅ローン債務を抱える世帯では金利収支が可処分所得対比で約1%悪化する可能性があるという。
植田日銀総裁、円安で物価高なら「政策変更ありうる」@日経新聞2024/4/19より
【ワシントン=新井惇太郎】日銀の植田和男総裁は18日の記者会見で、円安進行で基調的な物価が上がって「無視できない大きさの影響になれば、金融政策の変更もありえる」と述べた。輸入価格の上昇を通じて物価全体が上がれば、場合によっては追加利上げにつながるとの認識を示した。
米ワシントンで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議が閉幕した後の記者会見で語った。


そんな中日銀からは「短期金利が1%上昇したら」と言うレポートが公表され、日銀総裁は「無視できない大きさの影響になれば、金融政策の変更もありえる」と記者会見で答えています。

金利上昇が意識される負動産への重い負担
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これらは当然いきなり短期金利を上げるという事ではないと思いますが、それでも今後0.1%等少しずつ上げるのではなく1~2年で1%上げるという可能性はあり得ると見ておくとよいかもしれません。上は令和の大きな宿題その27 マイナス金利緩和が攻める選択肢~皆を取るか、余裕ある住宅ローン保有者を取るか~と言う記事で作った住宅ローンの表に金利が1%上がった1.35%を追加したものですが、さすがに1%上がると大きいです。3500万円のローンで月額で1.6万円、年間で20万円ほど、増加率は16%程となります。

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住宅ローン利用者調査@住宅金融支援機構より

ただし変動金利でローンを組む人の多くは返済負担率が15~20%程度なので比較的余裕はある、とすれば多分余裕があるうちは金利が上がりやすい状況が続くのではと思います。

地価高騰で子育て世代「脱・東京」近郊へ 転出超過1万7000人余@NHK2024/3/26より
地価の上昇などに伴う住宅価格の高騰が続くなか、東京の子育て世代が神奈川、埼玉、千葉に転出する「脱・東京」の動きが続いています。去年1年間で転出超過は1万7000人余りに上り、内閣府は「子育て世代が住宅価格が安い首都圏近郊に向かっていることを示唆している」と指摘しています。
総務省が公表する「人口移動報告」をもとに、東京と神奈川、埼玉、千葉の人口移動を年齢別に分析したところ、20代は、すべての県で東京への転入超過だった一方、子育て世代にあたる30代と40代、そして、その子ども世代にあたる14歳以下は、それぞれ転出超過となり、合わせて1万7102人に上りました。
高齢化率50%「横浜のニュータウン」に変化の波@東洋経済2019/12/14より 神奈川県横浜市栄区に「上郷ネオポリス」というニュータウンがある。1970年に大和ハウス工業が開発を始めた戸建て団地だ。鎌倉市との境にあり、大変緑豊かな立地である。現在は868戸に約2000人(2019年9月現在、上郷ネオポリス自治会調べ)が居住している。 注目すべきは約50%(2017年9月現在、横浜市政策局統計情報課調べ)という高齢化率だ。全国の高齢化率は平均27.7%、横浜市では平均24.0%(いずれも2017年)であることを考えると、上郷ネオポリスは超高齢地域といっていい。


一方で東京の住宅価格が上昇した事で東京都心からファミリー層が流出している状況が報道されています。その一方で郊外のニュータウンでは高齢化が進み、負動産化が進行しています。分かりやすく大都市の横浜で例えれば駅前のタワマンを夫婦限界まで共働きし、一生ローンの返済に苦しむ中少し離れた郊外のニュータウンでは高齢者達が孤立し、子供世代と同様一生かけて買った家が粗大ごみのように扱われつつある、今起こっている状況はそれがだんだん可視化されているのかもしれません。

GPIFと金利上昇が意識させる運用(利回り)の時代
GPIF 去年10月~12月の運用実績 5兆7000億円余の黒字に@NHK2024/2/2より
公的年金の積立金を運用しているGPIF=年金積立金管理運用独立行政法人の、去年10月から12月までの運用実績は、国内外の株価の上昇などを背景に、5兆7000億円余りの黒字となりました。
GPIF250兆円 株高→国民に恩恵@後藤達也note2024/4/7より
もっといえば、「投資をしていない人には関係ないんでしょ?」という国民の声も映しているんだと思います。
GPIFは国民への将来の年金給付の原資となるお金です。そのお金は日本株や外国株などで運用されています。
つまり、株高でGPIFの収益があがれば、将来の年金給付の備えが充実します。たとえば物価高で年金の給付額をあげる必要性が高まっても、持続的に年金を給付できる余裕が高まるわけです。
株に一切投資していない国民にとっても、株高は恩恵があるということですね。


その一方で最近円安・株高の影響でGPIFの運用成績が良くその状況が報道され、当たり前の話ですが、その影響で年金給付に対する良い影響が解説されています。

ニッポンを社会保障で滅びた最初の国にしないために@Wedge2023/7/12より
 これは、給付は高齢期に、負担は現役期に集中させて世界最悪水準の世代間格差を生む日本の社会保障制度を、高齢期の給付を削り現役期の負担を削減して解消するのではなく、高齢期の給付をそのままに現役期の給付を積み増す全世代型社会保障への転換によって解消を目指す政府の立場からは容易に想像できる結果である。筆者が常々「全世代型社会保障の構築は全世代型大増税とならざるを得ない」と主張する所以である。
 まさにこの全世代社会保障こそが、最近、国民負担率が再び俄かにクローズアップされ、五公五民と騒がれる元凶に他ならない


それはここ最近言われて来た、五公五民の様な税金・社会保険料の重さの問題を緩和するのにも使えるだろうと考えます。負担の重い年金保険料をGPIFの運用利益で緩和出来たら大きいと思います。

ゆうちょ銀行 通常貯金 金利引き上げへ 年0.001%を年0.02%に@NHK2024/4/5より
日銀がマイナス金利政策を解除したことを受けて、ゆうちょ銀行は今月8日から、普通預金にあたる貯金の金利を引き上げることを決めました。
発表によりますと、ゆうちょ銀行は、今月8日から普通預金にあたる「通常貯金」の金利を現在の年0.001%から20倍の年0.02%に引き上げます
日銀が先月、マイナス金利政策の解除を決めたことを受けた対応で、通常貯金の金利の引き上げは、2007年3月以来、およそ17年ぶりです。
また、定期預金にあたる「定期貯金」の金利も今月8日から引き上げることを決め、預け入れの期間が5年の場合、現在の年0.07%から年0.2%になります


そして個人の資産にとっても借金して家を買うよりも運用と言うよりも金利が上がるなら、定期預金でも利子が無視できなくなってくるのではないかと思われます。そして復活した金利は否応なく利回りと言う言葉を多くの人につきつけそうです。言って見れば無造作に上がっていく金利は負動産から運用(利回り)へと資産形成の手段を変えていくのではと感じます。


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さて2024年3月のランキングです。

1.コスパと言う言葉が語るもの
2.お金の話その5~復活する金利が問うもの~
3.令和の大きな宿題その25 即決を避けるべき時代~ポストコロナ・インフレ時代に思う~
3.令和の大きな宿題その10~少子化政策は地に足ついたものに転換できるか~
5.お金の話外伝その3 都会の独身女性と言うお客様~スープストック騒動に思う~



1位にはコスパと言う言葉が語るものが入りました。

「結婚を避け、子供をもたない」ほうが人生のコスパが良い…現代の日本人に起きている"憂慮すべき変化"@President2024/3/17

先月ブロガー・精神科医の熊代 亨氏の上の記事が話題になったのですが、結婚・子供に対してコスパで語るというのは一見最近の話の様で「年貢の納め時」と言う言葉があったように昭和の頃でも似たような考えがあるのではないかという事、何よりこの記事が書かれたころには熊代 亨氏自身も同じことを書いていたというのが面白かったのが読まれた理由ではないかなと思います。

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年齢別の未婚率の推移@社会実情データ図録より

また重要なのはここ20年くらいで言えば30~34歳の男性の未婚率は変化はなく、ここ20年で言えば多かれ少なかれコスパに近い事がいわれる中で結婚したりしなかったりと言う状況は変わっていない事なのかもしれません。

2位にはお金の話その5~復活する金利が問うもの~が入りました。

令和の大きな宿題外伝その9 まさかの大台突破が語る悪くなさと言う意味でのジャパンアズNo1の時代
令和の大きな宿題その27 マイナス金利緩和が攻める選択肢~皆を取るか、余裕ある住宅ローン保有者を取るか~

先月は日経平均が大台の4万円突破と日銀のマイナス金利解除と言う2つの大きなイベントが起こりました。株価に関しては3月末の権利落ち後大台を前後し、マイナス金利解除に関しても金利の変化そのものは0.1%程度ですが、金利に関しては次の緩和の話題が出る等2010年代のお金環境から徐々に切り替わり、資産に関する利回りが意識される場面、住宅・自動車ローンの金利が気になる時代に徐々に向かっていくのではと考えています。

3位には令和の大きな宿題その25 即決を避けるべき時代~ポストコロナ・インフレ時代に思う~が入りました。2位の記事が新しい時代の訪れを考えたものなら、こちらは新しい時代の心がけかなと思います。バブル崩壊やリーマンショックを目の当たりにした世代だからかもしれませんが、やはりどこかしら暴落のリスクが頭の片隅に浮かんできます。
ただ現段階でレバレッジをかけた不動産投資と言う話はそこまで聞かないので大丈夫だと思いますが、変動金利主体で融資率90%以上が多い現状の住宅ローンの状態は薄く広まったレバレッジ投資の様にも思います。お金に関しては最終的にここで決めていくところですが、個人的には慎重に判断してやっていこうとは思っています。

同率3位には令和の大きな宿題その10~少子化政策は地に足ついたものに転換できるか~が入りました。

2023年の出生数、過去最少 75万8631人 推計より12年早い少子化@毎日新聞2024/2/27

2月末に出生数の発表があった為、3月に少子化の話題が盛り上がってきたという事から見られたようです。

「フィンランドの出生率1.26へ激減」子育て支援では子どもは生まれなくなった大きな潮目の変化@2024/2/20

ただこれまでと大きく変化したのはこれまで「欧州を学べ」、「子育て支援」と言った「正しい」やり方一辺倒だったのが段々こういった「正しい」施策に関して綿密な検証がなされてきているように感じます。背景には少子化対策に対する負担が可視化される機会が増えた事が大きいと思われますが、それこそ1位の記事のキーワードである「コスパ」が政策への視線にも注がれてきているというのは健全な事ではないかと思います。

5位にはお金の話外伝その3 都会の独身女性と言うお客様~スープストック騒動に思う~が入りました。



先月こんなツイートが話題になったようです。投資家(笑)としての私が投資しない業種としては「女性向けの商売」があるのですが、これは私が持てない男性で女性の細かい趣向が分からないのが大きいのですが、女性向けの商売と言うのは男性へウィングを広げづらいというのも理由にあります。実際既存客の趣向で中高年男性など巻き込めない属性が多い商売は今後少子化で縮小均衡に向かうしかないのではと感じます。

如何だったでしょうか4月が皆様にとって私にとって良い月でありますように

令和の大きな宿題その27 マイナス金利緩和が攻める選択肢~皆を取るか、余裕ある住宅ローン保有者を取るか~

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日銀、マイナス金利解除を決定 政策金利0〜0.1%に@2024/3/19より
日銀は19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決めた。マイナス0.1%としていた政策金利を0〜0.1%程度(無担保コール翌日物レート)に引き上げた。長期金利を低く抑え込むための長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)や上場投資信託(ETF)などリスク資産の買い入れ終了も決めた。日銀の大規模緩和は大きな転換点を迎えた。


さて日銀のマイナス金利が解除されました。ついでに長短金利操作、リスク資産の買い入れも終了するそうです。

マイナス金利終了の影響~さしあたりは大きくないか~
三菱UFJ銀行 普通預金の金利引き上げへ 年0.001%を年0.02%に@NHK2024/3/19より
日銀がマイナス金利政策の解除を決めたことを受けて、三菱UFJ銀行は普通預金の金利を引き上げると発表しました。この銀行が普通預金の金利を引き上げるのは日銀が最後に利上げを行った2007年以来、およそ17年ぶりです。
発表によりますと、「三菱UFJ銀行」は21日から、現在の年0.001%の普通預金の金利を20倍の年0.02%に引き上げます。
これは19日、日銀がマイナス金利政策の解除を決めたためで、普通預金の金利の引き上げは日銀が最後に利上げを行った2007年2月以来、およそ17年ぶりです。
また、円の定期預金の金利も引き上げ、10年の場合、現在の0.2%から0.3%に引き上げます


マイナス金利解消がきっかけではないでしょうが三菱UFJ銀行などの大手金融機関の普通・定期預金の利率の引き上げの発表されています。普通預金は実に20倍・・・と言いたいところですが、100万円預けて10円→200円となっただけで雀の涙には変わりないようですが。

日銀マイナス金利解除で住宅ローンはどうなる?変動金利予想を解説(2024.3アップデート)@モゲチェック2024/3/21より
では、住宅ローン変動金利は今後どうなるのでしょうか。マイナス金利解除発表後の会見では植田総裁が「当面緩和的な金融環境が継続する。金融機関の貸出金利が大幅に上がる事態は想定していない」という主旨の発言をしたことも踏まえ、モゲチェックでは「ゼロ金利が続くため、変動金利は低い金利が続く」と考えています
まず変動金利の仕組みからおさらいすると、変動金利は「適用金利 = 基準金利 - 引き下げ幅(優遇幅)」の計算式で成り立ち、このうち引き下げ幅は住宅ローン契約書で定められていて完済まで変わらないため、基準金利が上がらない限り、いま住宅ローンを借りている人の変動金利は上がりません。


逆に気になる住宅ローンですが、専門家によると変動金利の住宅ローンに関しては現段階ではいきなり金利の大きな変動はないとの見方です。

変動金利

実際返済額3500万円、金利0.35%を基準に考えると仮に今回の日銀の金利変動幅である0.1%を当てはめると月額で1600円、年額2万円ほどで本当にぎりぎりと言うのでない限り何とかなりそうな状況に思えます。こうして見ると現段階では直接的には大きな変化はないように思われます。

インフレ緩和の縮小が招く追加利上げ
2月の消費者物価指数 前年同月比 2.8%上昇@NHK2024/3/22より
家庭で消費するモノやサービスの値動きをみる2月の消費者物価指数は天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が去年の同じ月より2.8%上昇しました。政府によるエネルギーの負担軽減策が上昇率を押し下げる効果が一巡したことなどが影響し、前の月から0.8ポイント拡大しました。
総務省によりますと、2月の消費者物価指数は生鮮食品を除いた指数が2020年の平均を100として去年2月の103.6から106.5に上昇し、上昇率は2.8%でした。
上昇率は前の月から0.8ポイント上がり4か月ぶりに拡大しました
2020年基準 消費者物価指数 全国 2024年(令和6年)2月分(2024年3月22日公表)@総務省統計局より
 (1)  総合指数は2020年を100として106.9、前年同月比は2.8%の上昇
    (2)  生鮮食品を除く総合指数は106.5、前年同月比は2.8%の上昇
   (3)  生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は105.9、前年同月比は3.2%の上昇
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2020年基準消費者物価指数全国 2024年(令和6年)2月分@総務省統計局


ただマイナス金利解除タイミングの前ですが2月の消費者物価指数は対前年で2.8%上昇と上昇率が4か月ぶりに拡大しました。

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2020年基準 消費者物価指数 全国 2024年(令和6年)2月分(2024年3月22日公表)@総務省統計局より

詳細を見ると電気・ガス代の緩和措置の効果が薄れて来た事が大きな要因となっています。

電気・ガス価格激変緩和対策事業@資源エネルギー庁より
値引き期間
2024年4月使用分まで
2024年5月は激変緩和の幅を縮小
燃料油価格激変緩和補助金@資源エネルギー庁より
料油価格激変緩和措置の期間
令和6年4月末まで ガソリン補助金など、政府・与党内に延長論=関係筋@ロイター2024/2/16より
岸田文雄首相は昨年10月に、年末に終了する予定だったガソリン・電力・ガス補助金を春まで延長する方針を打ち出した。電力・ガスについては5月以降、補助金が減額される方針となっているが、ガソリンについては5月以降の取り扱いが示されていない。昨年末の時点で、ガソリン課税を減税するトリガー条項の発動を主張する国民民主党の意向に岸田政権として配慮を示した格好だ。しかし今月6日に首相がトリガー条項の発動に慎重姿勢を改めて示したことから、補助金延長が議論の主流となっている。
ガソリン・電力・ガス補助金の延長について、現時点では「全く本格的な議論は始まっていない」(経産省・財務省・内閣府)という。ガソリン補助金はすでに6兆円以上が投じられ、自民党内にも「脱化石燃料の観点から疑問」(閣僚経験者)との声がある。「延長と同時に出口戦略も描けるのが望ましい」(自民中堅)との指摘もあり、補助金を打ち切るなら電力需要が少ない秋が最適だとして、「最低限夏まで延長する可能性はある」(政府関係者)という。


そしてガソリンを含む補助金による物価上昇率緩和措置ですが現段階では5月以降減額や打ち切りとなっていて今後に関してどうするかの議論が始まっているようです。衆議院選挙まで最大1年半と選挙がちらつく時期の為、その為現状内容の継続の可能性がある反面さすがに暫定措置が長くなり出口戦略を考える時期と言う意見もあり、いきなり補助が0になる可能性は低くてもどうなるかと言えば不透明と言った所です。

日銀追加利上げ「10月」「7月」観測 円安進行が左右@日経新聞2024/3/20より
日銀のマイナス金利政策の解除を受けて、市場では日銀が年内にも追加利上げするとの観測が広がる。植田和男総裁は19日の金融政策決定会合後の記者会見で「緩和的な環境が続く」と強調したものの、追加利上げは否定しなかった。利上げしても反転しなかった円安で物価高が再燃すれば、早期の政策変更を迫られる可能性がある。


そうなってくると物価上昇率を抑えると言う日銀本来の業務の意味で追加利上げと言う可能性が高まるように感じます。少なくとも現段階では追加利上げは否定されず、新聞報道では7,10月観測と言う見出しも踊っている訳ですから。

余裕ある住宅ローン契約者と皆どちらを選ぶのか?
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住宅ローン利用者調査@住宅金融支援機構より

さてそんな住宅ローン契約者の特徴を見ると
・変動金利の比率が75%近くと非常に高くなっている
・変動金利契約者は年収が高く、融資率が高く、返済比率は比較的低い

こうして見ると、変動金利契約者には余裕があるのが見て取れます。

住宅ローン控除が縮小?これからローンを借りる人にどんな影響がある?@SUUMO2024/2/10より
最も大きな変更は、控除率が1.0%から0.7%に引き下げられること。住宅ローン控除は、年末時点の住宅ローン残高に控除率をかけて控除額を求めます。


そうすると余裕のある住宅ローン保有者への優遇を縮小しようという動きが大きくなるのではないかと思います。実際現状住宅ローン控除の縮小が進んでいますが、今後は加速すると思われます。住宅価格が下落する事でもインフレは縮小するわけですし。少なくとも経済的に厳しい層に有難い電気・ガス・ガソリンよりもある程度裕福な層向けの優遇措置である住宅ローン控除、どちらが政治的優先度が高いでしょうか?

とうとうマイナス金利が終わりました。一方でさしあたり大きな影響が出てない、その中で進むのは何か今後とも注目していきたいと思います。

令和の大きな宿題外伝その9 まさかの大台突破が語る悪くなさと言う意味でのジャパンアズNo1の時代

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日経平均株価、終値も4万円台 史上初@日経新聞2024/3/4より
4日の東京株式市場で日経平均株価が続伸し、終値は前週末比198円41銭(0.5%)高の4万0109円23銭で終え、史上初の4万円台に乗せた。午前には上げ幅が400円を超え一時4万0300円台をつけた。前週末の米ハイテク株高を背景に、東京市場でも生成AI(人工知能)ブームに乗る半導体関連の銘柄が上昇をけん引した。


さて平成不況の時代を生きてきた人間としてはある意味で半信半疑に感じる部分がどうしてもぬぐえませんが日経平均が最高値を更新しバブル期でも到達できなかった4万円台を達成しました。

証券関係者「論理的に考えたら買えない」 半導体株はバブルなのか@朝日新聞2024/3/4より

 史上初めて4万円台の大台を突破した日経平均株価は年初から約7千円も急騰した。AI(人工知能)ブームと、日米の金融政策への期待が相まって半導体関連株に買いが集中している。ただ、一部の大型株が主導する相場は危うさもはらむ


当然のことながらある種の懸念を報じるメディアもあります。確かにここ1月バブル期最高値を超えるという事でバブルの時代を思い出し、その崩壊後の経済的な苦境を思い出す人も多いと思いますし、私自身も懸念が全くないとは言い切れないです。

失業率と物価上昇率から見るネガティブな側面の小さいジャパンアズNo1の時代
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完全失業率(月次、季節調整済)(新型コロナウイルス感染症関連情報:新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響国際比較統計:完全失業率@労働政策研究・研修機構より)
労働力調査(基本集計) 2024年(令和6年)1月分結果@総務省統計局2024/3/1より
(1) 就業者数
   就業者数は6714万人。前年同月に比べ25万人の増加。18か月連続の増加
(2) 完全失業者数
   完全失業者数は163万人。前年同月に比べ1万人の減少。2か月連続の減少
(3) 完全失業率
   完全失業率(季節調整値)は2.4%。前月に比べ0.1ポイントの低下


ただ欧米各国を中心とした諸外国と比べて見ると面白い部分が見えてきます。まずは失業率、比較各国の中で一番低い値で推移し、安定しています。至近の値も低くなっていてかつ就業者数も増加しています。

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日米欧の消費者物価前年比(2019年以降、四半期)@インフレ動向の日米欧比較みずほリサーチ&テクノロジーズより
2020年基準消費者物価指数 全国 2024年(令和6年)1月分@総務省より
(1) 総合指数は2020年を100として106.9
前年同月比は2.2%の上昇 前月と同水準(季節調整値)
(2) 生鮮食品を除く総合指数は106.4
前年同月比は2.0%の上昇 前月比(季節調整値)は0.1%の上昇
(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は105.8
前年同月比は3.5%の上昇 前月比(季節調整値)は0.2%の上昇


また物価上昇率も同様で安定し、ロシアウクライナ戦争をきっかけに急上昇した時期でも他国に比べてマイルドである事が見て取れます。そして至近の総合指数もピークの4前後から2.0程度まで落ち着いてきています。こうして見るとバブルの頃の様な熱気あふれる成長は半導体など一部なものの、失業率や物価上昇率などの普通の人達の生活に近い指標は安定して望ましい状態にある事が見て取れます。言って見ればバブルの頃がポジティブな面が大きいジャパンアズNo1の時代だったとするなら、今はネガティブな側面の小さいジャパンアズNo1の時代と言えるのかもしれません。

ポジティブなニュースが招く政策転換?
日本は景気後退入り回避へ、GDPプラス転換予想相次ぐ-10~12月期@Bloomberg2024/3/4より
2023年10-12月期の法人企業統計で設備投資が大幅に増加したことを受け、日本は2四半期連続で経済が縮小するテクニカル・リセッション(景気後退)入りを回避するとの見方が強まっている。金融政策の正常化をうかがう日本銀行にとっても、内需の一角を占める設備投資の回復は追い風となる。
  エコノミストからは、10-12月の実質国内総生産(GDP)が法人企業統計などを反映する改定値でプラスに転換するとの見方が相次いでいる。2月15日公表の速報値では前期比0.1%減、前期比年率0.4%減と市場予想に反して減少。設備投資は0.1%減と、GDPの5割以上を占める個人消費とともに3期連続のマイナスだった。


またリセッション入りがささやかれていたのが速報値に比べて企業の設備投資が増えている事でリセッション入りが避けられるという見方も見えてきました。

「金融緩和のギアシフト検討」 日銀・高田審議委員、正常化に前向き@朝日新聞2024/2/29より
 日本銀行の高田創(はじめ)審議委員は29日、大津市で講演し、物価上昇率2%の目標実現が見通せる状況になってきたとした上で、「極めて強い金融緩和からのギアシフト(速度の切り替え)に向けた検討が必要」と述べた。マイナス金利政策を柱とする金融緩和策からの早期の転換に、前向きな姿勢を示した
政府「デフレ脱却」表明を検討 賃上げや物価見極め判断@共同通信2024/3/4より
 政府が物価の上昇傾向を受け「デフレ脱却」を表明する検討に入ったことが2日、複数の関係者への取材で分かった。今春闘で物価高に見合う賃上げが実現するかどうかや物価の見通しなどを見極めて判断する。政府は日本経済がデフレにあるとの見解を2001年に初めて示しており、脱却を表明すれば、23年にわたり安定成長を妨げてきた足かせが外れたと認めることになる。


しかしマイナスが減ると逆にそんなネガティブな側面を小さくしてきた金融政策をはじめとした各種経済政策の転換の話も出てきそうです。果たしてどうなっていくのか注目したいところです。


人気記事ランキング202402




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写真:お金をかき集めたいところです。

さて2024年2月のランキングです。

1.お金の話その5~復活する金利が問うもの~
2.令和の大きな宿題その26 イトーヨーカドーの苦境があらわす経済圏の時代
3.令和の大きな宿題外伝その8~冷静になれ「日本の最も訳の分からない1日」2024年2月15日報道に思う~
4.令和の大きな宿題その25 即決を避けるべき時代~ポストコロナ・インフレ時代に思う~
5.Choose or Loose課題多き参院選2022その1平成女子に見る少子化対策の曲がり角

1位にはお金の話その5~復活する金利が問うもの~が1月ぶりに入りました。

日銀総裁 “今後も物価上昇続く デフレでなくインフレ状態”@NHK2024/2/22

先月には日銀植田総裁が衆議院予算委員会にてインフレを認める発言を行い注目されました。年初から続く円安も含めて考えると、金利復活の日は近づいているのかもしれません。金利が復活した後は「現在お金のある人」が有利になる時代になると予測したのがこの記事です。個人的にはインフレを望む声と物価・為替の沈静化を望む人のどちらが多いかで左右されると思うのですが、果たしてどうなるのか注目したいと思います。

2位には令和の大きな宿題その26 イトーヨーカドーの苦境があらわす経済圏の時代が当月リリース記事として入りました。ちなみに1位の記事とは最後までデッドヒートを繰り広げ本当に僅差で届きませんでした。

セブン、そごう・西武に続きヨーカ堂売却を検討@東洋経済2024/2/29

さて記事の対象となったイトーヨーカ堂ですが、とうとう売却話まで出てきました。確かに利益率は低いですが、正直な所ここまで売ってしまうとセブン&アイは実質コンビニ運営企業となってしまい、コンビニがこけたら一巻の終わりだし、仕入れなどでのバイイングパワーも落ちるのが怖い所です。

日本郵政グループとJR東日本グループとの 「社会課題の解決に向けた連携強化」に関する協定締結について@JR東日本2024/2/21 記事ではイオンとの対比で金融事業の失敗が大きいのではと書いたのですが、最近興味深いのはJR東日本が日本郵政グループとの連携強化を発表した事です。例えば閑散線の沿線ででゆうちょ銀行のATMを利用する事でSuicaへのチャージなどが可能になる事で、これまでSuica経済圏に巻き込むのが難しかった閑散路線が単なる運賃で稼げない路線からSuica経済圏の入口と言う意味で存在意義が増すのではないかと注目しています。

3位にはこれも当月リリース記事、令和の大きな宿題外伝その8~冷静になれ「日本の最も訳の分からない1日」2024年2月15日報道に思う~が入りました。
日独のGDP逆転、日経平均が34年ぶりに3万8000円台突入、名目成長率の日中逆転と様々な大きなニュースが相次いで報道された2024年2月15日に圧倒されて落ち着こうと思い書いた記事です。

日経平均株価 4万円の大台に迫る 終値として史上最高値を更新@NHK2024/3/1

そしてその後日経平均はバブルも含めた最高値を更新し、今後史上初の40000万円台も迫る展開となりました。投資家としてはうれしい限りですが、一方でバブル崩壊後の経済の低迷を知っている身としては怖さも感じています。

4位には令和の大きな宿題その25 即決を避けるべき時代~ポストコロナ・インフレ時代に思う~が入りました。

ウクライナ戦争開始2年、勝つのはどちらか 米陸軍退役大将に聞く@CNN2024/2/25
「ロシア勝利」濃厚か 欧米の力は低下し、世界は新たな多極化時代に突入 矢野義昭@週刊フジ2024/2/3

経済指標を見ると、インフレは落ち着きつつあり、円安は更に進むという感じですが、ウクライナ戦争の状況は複雑化しているみたいです。すでに開戦から2年経ち、一進一退の中でロシア勝利と言う言葉すら出始めています。単純にどちらかが明確な勝利者がすぐ現れるとは思えないというのが個人的な見立てでアメリカ大統領選挙などをきっかけに何らかのアクションが起こるのではと思いますが果たしてどうなるでしょうか?

5位にはChoose or Loose課題多き参院選2022その1平成女子に見る少子化対策の曲がり角が入りました。

去年の出生数75万人余で過去最少を更新 「今後さらに減少か」@NHK2024/2/27
「結婚氷河期」見えぬ未来 婚姻数90年ぶり50万組割れへ@日経新聞2024/2/16

さて2023年も出生数過去最少を更新しました。ただ興味深いのは婚姻数が50万組割れした事で婚姻数も注目されている事でしょうか?少子化対策では子育て支援が主で婚姻に関しては完成婚活くらいしか見られないですが、子育て支援をいくらやっても出生数が減少を続けている事を考えると、何らかの方向転換が行われるか注目されます。

如何だったでしょうか?今月が書き手である私にとっても読者の皆様にとっても良い月でありますように

令和の大きな宿題外伝その8~冷静になれ「日本の最も訳の分からない1日」2024年2月15日報道に思う~

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写真:経済は廻るのか?@横浜

2024年2月15日は様々な経済報道がなされ、その様そうに頭を抱えるという意味で日本近代経済史上もっとも「訳の分からない1日」だったのではないかと思います。
名目GDPは591兆円で世界4位に 実質は2期連続のマイナス成長@朝日新聞@2024/2/15より
2023年の国内総生産(GDP)は、物価の影響をふくめた名目GDPが前年より5・7%増え、591・4兆円だった。米ドルに換算すると1・1%減の4・2兆ドルで、ドイツ(4・4兆ドル)に抜かれて世界4位に転落した。1968年に西ドイツ(当時)を追い越して以来、55年ぶりに日独が逆転した。


さて昨年末からささやかれ予兆はあったのですが、日本のGDPがドイツを下回り世界第4位に落ち込みました。

日独GDP逆転「喜べない」 ドイツのエコノミストが嘆くわけとは@朝日新聞@2024/2/15より
 ――日独のGDP逆転をどう受け止めていますか。
 「全く重要だとは受け止めていません。ドイツでも逆転はほとんど話題になっていません。(比較される)名目GDPはドル建てです。日本の名目GDPは日本銀行の金融緩和によって円安になり、為替レートに左右されている面が大きいです。一方、ドイツの名目GDPは高いインフレ率に押し上げられました」
 「ドイツの物価の動きを示す『GDPデフレーター』は22年は5.3%で、23年は6%以上と見込まれます。これはインフレの高止まりを意味します。物価が2年以上にわたってコントロールされていないことを示すものです。GDPで3位になったところで、この国の問題が解決されたということでは一切なく、逆にこの国の問題を示しているとも言えます」


GDPの世界順位逆転は大きなニュースのはずですが、意外に穏やかな状況に見えます。それは背景が日本が日欧米の金利差によりGDPが減少して見えるのに対し、ドイツのGDPが日本の倍近いインフレによって水膨れした状況と言うのが簡単に浮かび上がるからです。ドイツのGDPを再逆転をするためによりインフレ率を挙げたいと思う人はさすがにほとんどいないでしょう。

中国の23年名目成長率、日本を下回る デフレが影響@日経新聞2024/2/15より
内閣府が15日発表した2023年の国内総生産(GDP)速報によると、名目成長率で1977年以来46年ぶりに日中が逆転した。日本はプラス5.7%となり、中国のプラス4.6%を上回った。デフレに沈む中国と、インフレに転じつつある日本の違いを印象づけた。


一方同時期にこんな記事も流れてきました。デフレの中国は当然実質成長率は日本より高いはずですが、ただ2000年代以降多くの人が感じていたであろう「成長する中国と停滞する日本」と言う構図が解消しつつある状況と考えると、逆転を喜ぶというよりもある種の警戒の必要性を感じます。

日経平均株価、終値3万8157円 34年ぶり高値@日経新聞2024/2/15より
15日の東京株式市場で日経平均株価は大幅反発し、終値は前日比454円(1.2%)高の3万8157円だった。1990年1月11日以来、およそ34年1カ月ぶりに終値で3万8000円台に乗せた。前日の米株式市場で主要株価指数がそろって上昇した流れを引き継ぎ、東京市場でも値がさの半導体関連株を中心に幅広い銘柄に買いが波及した。
日本、2023年10~12月期はマイナス成長 リセッション入り@CNN2024/2/15より
香港/東京(CNN) 内閣府が15日に発表した2023年10~12月期の国内総生産(GDP)は年率換算で前期比0.4%減だった。国内消費が弱く、予想外のマイナス成長となった。
マイナス成長は2四半期連続で、日本経済はリセッション(景気後退)入りした。
リセッションは通常、2四半期連続で経済が縮小することを指す。


一方日本国内を見ると株式市場ではバブル後最高値を記録し、一方2半期連続でマイナス成長でリセッション入りが報道されました。

これらの報道を眺めて見て思う感想は最初に書いた様に「訳が分からない」と言うしかないです。

米消費に失速兆候 1月小売り0.8%減、迫る値上げの限界@2024/2/16より
【ニューヨーク=朝田賢治、弓真名】米商務省が15日発表した1月の小売売上高(速報値、季節調整済み)は前月比0.8%減と、市場予想(0.3%減)を大きく下回った。相次ぐ値上げが消費者の購買意欲を冷やしており、消費が失速する恐れが出てきた。客離れを恐れる企業は値上げを抑える代わりにリストラを迫られている。景気の軟着陸に向け米経済は難しい局面を迎えている。


また15日の翌日16日にはGDP世界第1位のアメリカでも消費失速を予感されるニュースが出てきて「訳の分からなさ」に拍車をかけてきました。
振り向けば韓国…日本のGDP「4位に転落」だけじゃない 実はすでに「G7で最下位」の体たらく@東京新聞2024/2/16より
 内閣府が15日に発表した2023年の名目国内総生産(GDP、季節調整済み)の速報値は、ドル換算で4兆2106億ドルとなり、ドイツに抜かれて世界3位から4位に後退した。日本の1人当たりの名目GDPは、2022年の時点ですでに先進7カ国(G7)最下位に転落している。本紙の試算では、23年は前年より240ドルほど目減りしており、経済協力開発機構(OECD)加盟国中21位だった22年よりも順位を下げる可能性がある。
内閣府が公表しているOECD加盟国の比較によると、日本は12年には10位とドイツ(16位)よりも上だったが、アベノミクスによる円安などで13年から18~20位に沈下。1人当たりGDPではこの時から既にドイツに抜かれていた。
 歴史的な円安水準となった22年には、前年より6000ドルほど減少して3万4064ドルに。順位もG7で最下位だったイタリア(3万4733ドル)に抜かれて21位となり、比較可能な1980年以降で過去最低となった。
労働力調査(基本集計) 2023年(令和5年)12月分結果@総務省統計局より
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2020年基準消費者物価指数@総務省統計局2024/1/19より
cpi202212


こういった時に考えたいのは報道に一喜一憂するよりも足元を見つめて冷静になる事なのかなと思います。足元の失業率は株価同様バブル後最も優良な部類にあり、日本の現状を冷静に見れば、ドイツほどひどいインフレになく、2023年初頭4%だったのが2.6%まで落ち、CPIは落ち着いてきていて、中国の様に若者がひどい失業にあえぐデフレにもないという状況です。

シティ、日経平均の高値予想を4万5000円に引き上げ-日銀は緩和維持@Bloomberg2024/2/15より
シティグループ証券は、米国の経済や株式市場の堅調が続く上、日本銀行が緩和的な金融政策を維持する可能性が高まったことなどから、日経平均株価の2024年の高値予想を従来の3万9000円から4万5000円に引き上げた。


一方バブル後最高値の株価に関しては当然史上最高を更新する可能性もありますが、一方でリセッションと言う報道もある様に当然懸念材料もあります。もし上昇基調の株価を過剰に信じて資産を大きくかけてその後リーマンショックのような状況に陥ったら目も当てられません。

冷静になれ、これは読者と言うよりも筆者自身に言い聞かせている様に書いていますが、読者の皆様も心の片隅においていただけると幸いです。


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