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写真:今回の投票を左右し、ある意味で象徴した公営交通@大阪市営地下鉄御堂筋線新大阪駅にて

大阪住民投票 反対多数 都構想実現せず@NHKニュース2015/5/18より
いわゆる「大阪都構想」の賛否を問う住民投票は17日に投票が行われ、開票の結果、「反対」が「賛成」を僅かに上回って多数となりました。これによって、大阪市の橋下市長が掲げ5年にわたり議論が行われてきた「大阪都構想」は実現せず、今の大阪市がそのまま存続することになりました。
「大阪都構想」の賛否を問う住民投票の開票結果です。
▽「反対」70万5585票
▽「賛成」69万4844票
>「反対」が「賛成」を1万票余り、得票率にして0.8ポイント上回り、多数となりました。
大阪住民投票 投票率は66.83%@NHKニュース2015/5/17より
大阪市選挙管理委員会によりますと、今回の住民投票の投票率は66.83%となりました。平成に入ってから、大阪市内では平成21年に行われた衆議院選挙の投票率が最も高く65.00%でしたが、今回の住民投票はそれを1ポイント余り上回りました。
 さて注目されていた大阪都構想を巡る大阪市の住民投票ですが、結果的に大阪市内では平成に入ってからの政治関連の投票率では最高の66.83%、そして得票率差はわずか0.8%と相当な激戦となりましたが最終的に橋本市長の提唱した大阪都構想は現段階では否認された形となりました

2014年スコットランド独立住民投票@wikipediaより

2014年9月18日、世論調査では賛成と反対が拮抗した状態で投票が始まったが[19]、賛成票は32あるカウンシルのうち最大都市グラスゴーを始めとする4つのカウンシルで反対を上回ったものの、それ以外のカウンシルでは反対が上回った。最終的に、スコットランド全体では反対票が55%となり、独立は否決された[20]。自治政府のサモンド首相は敗北を認め、「スコットランドの人々は現時点で独立をしない決定をした。それを受け入れる」と述べた[21]。サモンドは首相およびスコットランド国民党党首を辞任し、代わって副首相および副党首のニコラ・スタージョンがその後任となった。

独立は否決されたものの有権者の84.59%が参加するなどスコットランド人の独立問題への関心の高さが示され、また賛成と独立の票差も僅差であった。今後は財政面での権限移譲などの自治拡大策が図られるが、どこまで権限を委譲するかなどの問題が残されている[22]。また、イギリスの他の地域からも同様の要求が出てくる可能性が高まったとも指摘されている[22]ウェールズ独立運動イングランド独立運動)。

 この結果を見て思い出したのは昨年イギリスで大きな動きとなったスコットランドの独立住民投票、こちらも激戦でかつ高投票率・・・、この政治的なエネルギーは今年のイギリス総選挙でスコットランド独立党の躍進と言う形で国政に反映されました。上で現段階と書いたのはその為です。大阪の場合はスコットランドのケースに比べると投票率は大きく劣るものの、スコットランド以上の激戦となったのは大きなポイントではないかと思います。

 男性女性
2067.156.310.8
3071.655.316.3
4066.256.110.1
5057.849.68.2
6051.351.8-0.5
70~38.739.5-0.8
表:世代別男女別賛成表の割合@日テレ選挙速報 大阪都構想の住民投票の否決は高齢者の反対票が多かったから?について考えてみましたlonglowの日記より作成

 またもう1つ重要なのは2~40代の現役世代の特に男性の賛成率が高かったことです。このことに関してシルバー民主主義を揶揄する人もいますが個人的には一線で活躍していたり苦戦していたりする彼らの2/3が大阪都と言う劇薬に賛成している状況と言うのは大阪都構想うんぬん以前に大阪市の体制の現状維持に対して否定的な見方が支配的であることを示していると思われます。また逆に言うと反対票の多い世代・性別=一線から遠くにいて税金を払うよりも税金から受益している人ともいえるかもしれません。

橋下徹氏「既得権益を全部壊す」=大阪市民から住民サービス強奪し「改革利権」「大阪都構想利権」ねらう@Yahoo個人2015/5/17より
きょう(5月17日)実施されている「大阪市における特別区の設置についての住民投票」は、大阪市を廃止・解体して財源を吸い上げ住民サービスを切り捨てた上で、カジノや大型公共事業につぎ込む「改革利権」=「大阪都構想利権」を橋下徹氏が得ようとするものです。その際、橋下徹氏は住民サービスのことを「既得権益を壊す」という詭弁を弄して攻撃します。

・新婚家庭家賃補助廃止
・公立幼稚園・保育園の民営化
・敬老パス有料化
赤バス廃止・市営バスの路線廃止・縮小

etc・・・

 それを反映してか大阪都構想に反対の人の主張を見ると確かに住民サービスの低下を言えないことはないけれど、私の地元に近い大都市、横浜市でも見られる現象も多いような気がします。
 バスに関して言うと確かに敬老パスの有料化や100円バスである赤バスの廃止・縮小は確かにサービスダウンではあると思うのですが、良く考えると敬老パスはあからさまに高齢者向けですし(ただし障がい者向けもあったような気がする)、また赤バスも運行時間帯が短く利用となるとやはり高齢者など一線で働く人やその子供たちとは言いづらいような気がします。これらが悪いとは思わないもの高齢者を中心としたサービスにここまでリソースを集中させるのはやはり不自然な感じがします

「南海・泉北連絡普通旅客運賃」および「泉北線内通学定期旅客運賃」の値下げを実施します~平成27年3月1 日(日)開始に決定~@泉北高速鉄道プレスリリース
2.値下げ内容等
(1)南海・泉北連絡普通旅客運賃の値下げ
イ、現行運賃からの値下げ額
大人 80円(乗継割引額を現行の20円から100円に拡大)
小児 40円(乗継割引額を現行の10円から 50円に拡大)
※( )内の金額は普通旅客運賃からの割引額合計で、南海と泉北がそれぞれ半額ずつ割引します。
(3)泉北線内の通学定期旅客運賃の値下げ
ア、値下げ内容
泉北線内各駅相互間(全区間)において、通学定期旅客運賃から約25%を値下げ
(現行割引率:約60% → 変更後割引率:約70%)
※通学定期乗車券の南海線区間および通勤定期乗車券は、対象外です。
 そんな中で対照的だったのは上の泉北高速鉄道の民営化による値下げ、橋下氏が府知事時代に打ち出した施策で様々な経緯を経て実現しています。
以下橋本府知事期
2008年4月、当時の大阪府知事橋下徹が大阪外環状鉄道とともに大阪府都市開発の大阪府の保有する株を放出する意向を明らかにした。~中略~大阪府都市開発は府に対して年間1億2000万円の配当を出す黒字企業であることから、府議会から異論が出ていた。~中略~
以下松井知事期
2013年6月6日、大阪府は大阪府が保有する株式一括売却の公募を発表。
2013年11月、アメリカ合衆国の投資ファンド、ローンスターが優先交渉権を獲得し、781億400万円で売却されることになった[11][12]。
しかし、売却先が外資系企業だったということもあり、この動きについては、沿線住民から異論が出た
2013年12月4日 堺市議会では開かれる本会議で「市民の利便性を考慮していない」という理由で、大阪府に対して株式売却の白紙撤回を求める決議を公明党、自民党など4会派が共同提案する方針を示した。また、橋下が代表を務める大阪維新の会の堺市議団もこれに同調した[13][14]。~中略~
そうした中、泉北高速鉄道の沿線にキャンパスがある帝塚山学院大学、プール学院大学、桃山学院大学の3大学が、南海電鉄の他の路線と均衡の取れた運賃設定とし、通学定期券の大幅値下げの実現を求める松井一郎知事宛ての要望書を大阪府に提出[16]する形でローンスター側への売却の動きに対する不快感を示した。~中略~
2013年12月5日には、堺市と同じく泉北高速鉄道の沿線自治体である和泉市でも、大阪府に向けて堺市議会と同様の趣旨の決議を出すことに市議会の各会派が同意[17]。
12月11日の市議会本会議では、「ローンスターへの売却は、鉄道事業の安定的な経営や安全輸送に危惧がある」として、交渉相手の再検討を視野に鉄道利用者の利便性向上(大幅な運賃値下げ)を求める決議案を全会一致で可決した[18]。
そもそも今回の問題では、株式の売却先を公募することで始まり、最終候補として南海電鉄とローンスターの2者が残り[15]株式の買い取り価格が南海電鉄よりも60億円高いという理由で、ローンスターが選ばれたという。ローンスターは泉北高速鉄道との乗り継ぎ運賃を10円値下げするとしていたが、南海電鉄は乗り継ぎ運賃を80円値下げする提案をしていた[14]。仮に2013年12月時点の運賃から80円値下げされれば、難波 - 和泉中央間 (27.1km) は540円になる。ちなみに、難波 - 和泉中央間とほぼ同程度の距離である難波 - 河内長野間 (27.5km) の運賃は540円(2013年12月当時)である。
2013年12月16日大阪維新の会所属の議員が(欠員をのぞいて)過半数(55名)を占める大阪府議会では、同年12月16日の都市住宅常任委員会および本会議で、大阪府都市開発の株式売却に関する議案の採決を実施。午前中に開催の都市住宅常任委員会では、大阪維新の会から沿線地域(堺市南区)選出の密城(みつぎ)浩明府議が反対に回ったことから、この議案は反対多数で否決された[19]。午後に開かれた本会議では、大阪維新の会所属議員のうち、密城、西恵司(堺市中区選出)、奥田康司(高石市選出)、中野雅司(大阪市住吉区選出)の4名が議案に反対。その結果、反対票53、賛成票51の反対多数で否決された[20]。~中略~
2014年2月21日開催の大阪府議会・2月定例議会で、大阪府都市開発が発行する株式を随意契約によって750億円(全株式数800万株、1株9375円、大阪府保有分367.5億円、その他の企業保有分382.5億円)で南海電鉄及び子会社・関連会社7社に売却する方針を表明し[22][23]、同年5月15日に売却契約が締結され、7月にも売却される見通しとなった[24][25][2]。その後、2014年6月6日に大阪府議会で出されていた売払いに関する議案が可決されたため、2014年7月1日にその他企業保有分を含め全株式が譲渡されることになった[26]。これにより、同日から第三セクターでなくなるため自治体名を含まない「泉北高速鉄道株式会社」に社名を変更し、同時に南海グループの一員となった[3]。 泉北高速鉄道@wikipediaより作成した泉北高速鉄道の経緯
 上はWikipediaで書かれていた泉北高速鉄道売却までの経緯、この結果に至るまで以下の経緯があります。
・橋本知事による黒字化した3セクである泉北高速鉄道売却への提案
→この際には府議会は年間1.2億円の配当を理由に当初反対したが最終的に売却そのものは行われることとなった
・松井知事による公募売却
→10円の値下げを約束した外資系ファンドが80円の値下げを約束した南海電鉄に売却額で60億円上回って競り勝って優先交渉権を獲得
・外資売却に反発した地元・議会の反発により売却が白紙に戻る
→最終的に南海電鉄へ当初よりも30億円程度額を上積みし値下げ額は変わらない形で任意売却する形となった

 さてこの経緯を皆様はどうみられるでしょうか?「市民の公共財産である鉄道を儲け至上主義の外資ファンドに売りつけそうになった愚策」とみられる方もいるでしょう。ただこの外資系ファンドがいなかったらこれほど大きな運賃値下げは実現できたでしょうか?多分難しかったと思います。実際経営状態に大きな差があるのは確かですが千葉県が公団鉄道を京成電鉄に売却した際には全くと言っていいほど値下げは行っていません。同じように売却したら南海電鉄も同じように足元を見たでしょう。売却金額は安く、値下げはなく、また泉北高速鉄道がそのまま経営した際も同様です。府はわずかな配当で満足し何も変わらなかったでしょう
 この施策は今回の大阪都構想に関して色々な事を示唆しています。1つは橋本氏の仕事の本質、南海電鉄、外資系ファンド、松井知事、大阪府議会、堺・和泉両市議会、そして議員たちを動かした住民、帝塚山学院大学をはじめとする沿線の学校などいろんな関係者がいますが何より橋本氏がこの黒字の3セクの売却を提案し流れを作ったことがやはり大きかったのだと思います。

中百舌鳥駅
南海電鉄乗り継ぎ利用者数71415人/日(@2013年)
定期客補正              75%(定期客50%割引率50%で推計)
子供運賃補正             95%(小学生以下人口10%で推計)
割引額                 80円
年間割引額        1485789075円            
 80円の運賃割引による利用者還元額推計 

 もう1つは組織改編による利益の還元、売却により生まれた750億円と言うキャッシュや80円の値下げと言うのは何もしなかった時の配当1.2億円よりはるかに大きいでしょう。上の試算は大まかな推計でしかないですが大きく外れるものではないと思われます。おおよそ年間15億円となります。考えようによっては府に1.2億円配当されていたものが住民に年齢などに関係なく15億円配当されるようになったとも考えられるわけです。

 橋本氏の大阪都構想がこれだけ現役世代に受け入れられたのは結局の所今の大阪市には泉北高速鉄道の様な存在が多くあり、それが組織改編によって掘り起こされることを期待できると考えての事ではないかと思います。

 面積人口人口密度
大阪市225.21268.711930 
横浜市437.49371.18480 
名古屋市326.44227.76980 
表:大阪・横浜・名古屋3市の人口関連の指標

 あともう1つ考えなくてはならないのは大阪都構想が起こった背景ともいうべき点でしょう。上の表は大阪市と比較的規模の近い横浜市及び名古屋市との比較ですが比べてみて浮かんでくる大阪市の特徴は
・面積が狭い
・人口密度が高い

 こんな感じでしょうか?これらから導き出せる1つの答えは「市域の中での投資適格地域が非常に少ない」という事ではないでしょうか?今これらの都市では都心部や主要駅前で大規模なマンション開発が多いのは多分共通してみられることだと思います。しかし横浜市の場合郊外でも港北NTや多摩田園都市の様な開発も並行しています。また名古屋の場合有名なNTこそありませんが人口密度から考えるとより一層の開発の余地があると言えるでしょう。逆に大阪の場合は郊外的な地域が殆どないと言えるのではないでしょうか?これは横浜近辺のNTが横浜市内にあるのに対し大阪近辺の大規模NTである千里・泉北・和泉の各NTが大阪の市外にある事からもうかがえます。NTや住宅開発での視点が中心ですが人口は商業などの経済にも大きな影響を与得るのは言うまでもありません。
 逆に言えば大阪市の場合その経済的な浮沈は豊中・堺・和泉など周辺地域の状況に左右される部分が大きいと言えるのではないでしょうか?横浜の場合は周辺地域は東京へのベッドタウンと言う側面を持ちますし、名古屋は県レベルでみると豊田・岡崎・安城・豊橋を中心とした三河地域はトヨタ自動車の影響が大きく自立した地域と言う側面も大きいのが違いです。 
 大阪都と言う枠組みは言うなれば大阪市と大阪府と言う2つの地域投資主体を一体化し、行政的な投資効果が決して大きくない大阪市域から大阪府と言う大きな枠組みの周辺地域への投資を促すことで大阪と言う街の発展に結び付けようと太田元知事の元で発想が生まれ、橋本市長の下で大きな政治課題として多くの人達を考えさせるテーマとなったのではないでしょうか?

 さてあっちこっち言って分かりづらくなりましたがまとめに入りましょう。確かに大阪都構想は住民投票で否決されました。しかし僅差の激戦の上、2~40代の男性と言う第一線で働き大阪市を経済的に支えている層の多くが支持している状況、そこで問われているのは泉北高速鉄道の様に経営的に問題はないが市民への配当の少ない存在へ市民への十分かつ平等な配当の提供できる存在に変われるかと言う点、大阪と言う街の発展を支える大阪市街の地域への十分な投資と言う点、この2点ではないでしょうか?大阪都構想そのものは当分凍結となりそうでしょうが、大阪都構想に込められた期待にいかに応えていくか、それが大阪の行政と大阪都構想に反対していた人たちに今後求められていくことではないでしょうか?