小樽市で開催の並行在来線廃止「問題提起」セミナー 小樽市長や地元代議士らおよそ40名が参加@Yahoo!ニュース2023/7/12より
 小樽市倫理法人会は、2023年7月8日(土)の経営者モーニングセミナーで、交通コンサルタントの阿部等氏らを講師に招き、長万部―小樽間で廃止の方針が決定された北海道新幹線の並行在来線問題を提起するセミナーを開催。
 セミナーには、小樽市の迫俊哉市長のほか、中村裕之衆議院議員とおおつき紅葉衆議院議員も出席。地元トップが勢揃いし、小樽市のほか余市町や倶知安町などからもおよそ40名が出席した。
 冒頭に登壇した経済ジャーナリストの櫛田泉氏は、並行在来線の廃止の方針が決定されたプロセスについて、密室協議の場で同程度の鉄道路線のおよそ7倍の経費で赤字額が見積もられ廃止の結論が導かれたことを指摘。
 特に、輸送密度が2000人を超えている小樽―余市間については、朝ラッシュ時の乗客をさばくためには10台以上のバスが必要になること。沿線にバス路線網を展開する北海道中央バスがドライバー不足を理由に、鉄道代替バスの引き受けを断り続けていることにも触れられた。
北海道新幹線「並行在来線」代替バス案の理不尽地元バス会社は「話を聞いていない」と憤る@東洋経済2023/3/21
バス転換の留萌本線、「鉄道代替交通」は前途多難@東洋経済2023/7/11より
2023年3月31日の運行をもって、JR北海道の留萌本線留萌―石狩沼田間35.7kmが部分廃止となった。留萌本線の廃止は、2016年12月の増毛―留萌間16.7kmに続くもので、2026年3月末には残る石狩沼田―深川間14.4kmが廃止となり、留萌本線の全線が廃止となる予定だ。
しかし、留萌本線の代替交通を担う沿岸バスは早くも4月28日になり、深川経由で留萌と旭川を結ぶ留萌旭川線について、関係自治体と今後の存廃協議を進めていることを公表。鉄道代替交通の持続可能性については、すでに暗雲が立ち込めている。
留萌旭川線 時刻表@沿岸バスより
■重要なお知らせ  留萌旭川線(留萌十字街~碧水~秩父別役場前~深川十字街~神居古潭~旭川駅前)は、地域間幹線系統として国・北海道から多額の補助を受けていますが、これら補助金をもっても欠損を賄いきれず、著しい赤字が続いています。現在、関係市町と今後の存続について協議を進めています
留萌線(石狩沼田・留萌間)バス転換後の 新しい交通体系について@JR北海道


さていきなり長々と引用しましたが本州のJR旅客線に先行して、赤字旅客線の存続について話し合われ、路線の廃止が決定したり実際廃止になった北海道で鉄道廃止後の交通を担うバスに関する話題が出てきました。前者は北海道新幹線開業を機に並行在来線として鉄道廃止の方針が決まったとされる長万部~小樽間で特に利用者の多い小樽~余市間でこの問題に対し提起する会合に小樽市長や与党自民党の中村裕之衆議院議員を含む複数の衆議院議員が参加した事、そこで「北海道中央バスがドライバー不足を理由に、鉄道代替バスの引き受けを断り続けている」事衝撃的な事実が共有された話、後者は3月に廃線になった留萌本線留萌―石狩沼田間でJR北海道で代替バスとしてプレスリリースが出された留萌と旭川を結ぶ留萌旭川線に関して鉄道廃止から2か月足らずでバスの方も存続に関する協議を進めているという記事です。
どちらもかつて見られなかった光景の様な気がします。廃線代替バスの早期の廃止と言っても2~3年程度は最低でも経っていましたし、そもそも鉄道廃線からわずかな期間でバスの廃線も出るのは沿線自治体及びJRの計画がきちんとしていなかったという事でもないかと思われます。
それ故に小樽市長及び地域の有力政治家たちが情報収集に走ったのでしょう。そして浮かび上がったのはドライバー不足と言う点ではないかと思います。

ドライバーがいない~平成と令和のバス転換事情~
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グラフ:平成2年(1990年)、令和2年(2020年)の現役世代の5歳刻み人口(平成2年、令和2年の国勢調査より作成e-statより作成)

さて平成期にはなかなか見られなかった光景が令和になって見られるようになった背景、それは少子化による労働人口、特に若い世代の人口の減少が挙げられます。上は平成2(1990年)と令和2(2020)年の15~69歳の5歳刻みの人口を並べたものです。平成2年を見るとこれから社会に出るであろう学生を含む15~24歳の人口が25歳以降の人口より多く、バス転換を図るとしてバス会社が新たにドライバーを雇用するのに地域に若い人がいないという事は無かったのではと感じます。その一方令和2年を見ると世代が若くなるほど人数が減っていき、地域の若い人がどんどん減っていて新しくバス転換をするにしても若いドライバーの確保が難しくなっているであろうことが見て取れます

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表:バス運転者不足問題とその改善の方向性について 近畿大学経営学部 後藤 孝夫@2018年3月6日(火)開催地域バス交通活性化セミナー 「路線バス運転手確保とバス交通の活性化」報告資料 より
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年齢別大型2種免許保有者 運転免許統計令和4年度版より作成
※グラフ作成時の計算ミスがあったため差し替えました。失礼しました。(2023/8/4)

それだけではありません。バスの運転手に必要な大型2種免許保有者を見ると更に絶望的になります。比較的若い30代以下はわずか5.1%、企業で言えば定年退職者にあたる60代以上で約60%を占めています。現役世代でも50代が24%で40代以下が16.7%と50代が過半数を占め、普通に考えればこの50代のドライバーの引退をどう補っていくかと言うのが大きな課題で、このドライバーが5年後10年後完全にドライバーを引退しているとは思えませんが、それでも一般的には第一線を引いている年齢と言えます。。

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表:バス運転者の有効求人倍率@統計からみるバス運転者の仕事@厚生労働省より

その為他の業種に比べても倍近い有効求人倍率となり、ドライバー不足が顕在化しています。このドライバー不足の中で新しく鉄道を廃止してそれをバスで補おうにも現状の路線を維持するので手一杯となるのではないでしょうか?

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表:タクシー運転者(男性)の年齢別構成比率の推移@タクシー事業の現状について 国土交通省より

またバスがダメなら乗り合いタクシーと言うのはよく聞きますが、そちらもも厳しいです。10年近く前の統計ですが2014年段階でもタクシー運転手の60歳以上の比率は50%以上となっています。2001年14.1%だった事を考えると急激に高齢化しています。実際コミバスで運営しているタクシー会社の倒産によって運行停止(ただし現時点では別会社で復活)したケースもあります。

Choose or Loose~ポストコロナ時代の統一地方選挙~その3あるコミバスの運行停止が語る令和の新しい常識

こうして見るとこれから労働市場に入ってくる若い人の多かった平成期に比べて若い労働力が少子化で激減した現在は相当厳しくなっている、赤字鉄道路線のバス転換に関してはこの事を意識せざるを得ないと言えるのではないかと思います。

2010年と言う転換点~若者のクルマ離れと免許返上が導く緩やかな脱クルマ社会~
9割以上の人が「今後さらにクルマ離れは加速する」@DIME2023/5/13より
まずは、自分自身や、自分自身より若い世代などを見て「車離れ」を感じたことがあるか聞いてみた。
60代以上の半数以上である63%の方が、自分自身や、自分自身より若い世代などを見て車離れを感じたことが「ある」と回答した。50代の方は57%、40代の方は52%と、年代が下がるにつれて車離れを感じたことが「ある」比率が減っているのが印象的。~中略~
「維持費の問題」や「物価は上がったが賃金は上がらないため」といった理由が多く挙げられていた。ほかにも「車を持たずとも生活に困らないくらいには交通の便が発達しているから」といった意見もあった。~中略~
続いて、今後車離れはさらに加速していくと思うかを聞いてみた。60代では98.4%と、ほとんどの方が今後「車離れ」はさらに加速していくと「思う」と回答した


ただ赤字鉄道路線の問題に関して、「自動車が便利だから」と思われる方が多いかもしれません。しかし2023年の今それが当てはまらなくなりつつあるのではと感じます。上の引用は若者のクルマ離れに関して30代以上にアンケートしたものなのですが興味深いのは就職氷河期以前の世代が特に「若者がクルマ離れしている」と感じている事、そして就職氷河期以降の世代も含めて過半数が「若者がクルマ離れ」していて90%以上の人が「維持費の負担」など経済的理由から今後その傾向が加速すると認識している事です。ある意味団塊の世代~所謂バブル世代と言う「クルマ社会を推進してきた」世代が就職氷河期以降の世代全体で「クルマ離れ」の定着を感じ、そして全世代で今後「クルマ離れ」が進むと思っているというのが現状ではないかと思います。

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運転免許の申請取消(自主返納)件数と運転経歴証明書交付件数の推移@警察庁

そしてクルマ社会を推進してきた世代がいつまでも車に乗り続けるかと言われたらこれも潮目が変わって来ています。何かといえば免許返納が定着してきたのです。平成中期の2002年には1万人未満だったのが2017年以降6年連続で返納者が年40万人を超えています。コロナ禍で減少はしていますがこれが2002年の1万人未満に戻ることは無いと思われます。言って見れば「クルマに最も熱心だった世代」も高齢化で「クルマを手放す」時期に入ってきたわけです。 大型2種
表:乗り合いバスの輸送人員@統計からみるバス運転者の仕事@厚生労働省より

その結果平成期2010年くらいまで減り続けてきたバスの利用者は2010年代コロナ禍に入る前まで人口減少下に関わらずわずかながら増加トレンドに入った訳です。言って見れば平成時代に進んだクルマ社会化が2010年前後を機にその拡大を止め、むしろ令和は緩やかな脱クルマ社会になってきているとすらいえるのかもしれません。確かに「地方の人はクルマを手放さない」と言う見方もできるのですが、単純に地方とだけ言えないのは赤字旅客線で問題になっている路線には県庁市クラスの都市への乗り入れ路線もあり、また5万人クラスの都市が沿線にない路線はさすがに少数と考えると単純にそうも言えなくなります。そうなってくるとバス運営者にとっては50代が主力となっているドライバーの世代交代の為にドライバーを確保する必要があり、廃線となった鉄道の代替バスの為にドライバーが確保できる保証はどこにもないわけです

転換バスの運転手をどこから連れて来るか
市自ら選んだ「攻めの鉄道廃止」 JR石勝線夕張支線、代替バスはどう「進化」したのか@のりものニュース2019/4/21より 2019年3月31日(土)をもって127年の歴史に幕を閉じたJR石勝線の夕張支線(新夕張~夕張間16.1km)。この鉄路に代わり運行を開始したのが、夕張市に本社を置く夕張鉄道(夕鉄バス)が運行する路線バス「夕張市内線」です。鈴木直道前夕張市長(現北海道知事)による「攻めの廃線提案」から3年弱かけて運行実現に至ったこのバスには、これまでの鉄道代替バスの事例にとらわれない、持続可能な交通体系への実現を成しとげようとする夕張市の姿勢が見えてきます。~中略~ その後、JR北海道は社内に夕張市内の交通体系見直しなどに協力するプロジェクトチームを設置し、課長級の社員1名を夕張市へ派遣します。さらに、2018年3月23日、夕張市とJR北海道は、新夕張~夕張間の鉄道事業廃止について、次のような条件で最終合意に至ります。 ・鉄道事業廃止日を2019年4月1日とすること。 ・JR北海道は、夕張市に対して、持続可能な交通体系を再構築するための費用として7億5000万円を拠出すること。 ・JR北海道は、夕張市が南清水沢地区に整備を進めている拠点複合施設に必要となる用地を一部譲渡すること。


そう言った厳しい環境の中ある程度長く続く転換バスを走らせるとしたらどうしたらよいのでしょうか?それを考えるのに面白そうな例があります。鈴木北海道知事が夕張市長だった時期に行った石勝線夕張支線の「攻めの廃線」です。このバス転換の特徴として
・JR北海道との協力による綿密な計画
・JR北海道による用地一部譲渡や7.5億円もの経済的負担

夕鉄バス 夕張営業所時刻表より
新夕張駅~新札幌 普通 3 158分
リスタ~新札幌 急行 3~4 103分
新夕張駅~夕張市石炭博物館 7~8 47~8分
新夕張駅~リスタ 0~1 14分
夕張本社ターミナル~夕張市石炭博物館 2~4 13分


そして廃線から4年経った現在でも夕張支線の代替区間と言える新夕張駅~夕張市石炭博物館で7~8往復、新札幌方面への路線と接続する区間便を合わせれば10往復以上、夕張支線廃線1年前の本数が9往復でしたからその時期以上の利便性を確保できています。

夕鉄バス、札幌~夕張間など3路線を廃止。JR夕張支線廃止から4年で@タビリス2023/3/14より
夕鉄バスを運行する夕張鉄道は、新札幌駅前を発着する3路線について、2023年10月1日に廃止することを明らかにしました。
廃止となるのは、以下の3路線です。
・新夕張駅前~栗山駅前~新札幌駅前(3往復)
・りすた~由仁駅前~新札幌駅前(急行、5往復)
・栗山駅前~南幌ビューロー~新札幌駅前(4往復)
夕鉄バスは、夕張市、栗山町、由仁町、長沼町、南幌町から北広島市、江別市を経由し札幌市までの地域をまたぐ路線を4路線運行していて、そのうちの3路線を廃止することになります。南幌東町~新札幌駅前の路線については、運行を継続します。
夕鉄バスは、廃止の理由として、運転士不足の慢性化や、新型コロナウイルス感染症の影響による利用者の減少、原油価格の高騰を挙げ、「さまざまな要因が重なり、大変厳しい経営状況が続いており、バス路線の運行を維持することが困難な状況」と説明しています。
バス路線の廃止について@夕張鉄道2023/3/13


そしてそんな夕張鉄道にも新型コロナをはじめ運転手不足、燃料価格高騰などの苦境が訪れました。そしてその中夕張鉄道が選んだのは夕張~札幌市内の長距離バス路線の廃止でした。高速バスを中心とした長距離バスは一般的にバス会社のドル箱と言うイメージですが一方で夕張鉄道夕張営業所のバス路線では夕張市内完結の路線は急行便で103分、普通便に至っては158分と所要時間が長く、運転手の負担が高く、また人繰りも難しくなっているのが大きいです。
逆に市内バス路線は最大50分弱、区間便なら20分以内と短距離で運転手の負担が小さく、また高齢の運転手が増えていく中でもその活用をしやすいメリットは現状大きいのではないかと思います。

高速はこだて号の乗客ら5人死亡、正面衝突のトラックが対向車線にはみ出したか@読売新聞2023/6/19より
 18日正午頃、北海道八雲町の国道5号で、札幌と函館を結ぶ長距離バス「高速はこだて号」とトラックが正面衝突した。道警によると、双方の男性運転手と、バスの乗客の男女3人の計5人が死亡。乗客12人がけがをした。
 発表によると、亡くなったのはバスを運転していた札幌市清田区、興膳孝幸さん(64)、トラック運転手の北海道森町港町、梶谷誠さん(65)、乗客の函館市旭町、地方公務員若崎友哉さん(33)、鹿部町本別、パート従業員高清水忍さん(57)、札幌市清田区、高橋裕美さん(55)。


現状の高速バスでは札幌~函館と言う長距離の幹線でも60代の運転手が運転しています。当然安全面での配慮があり、単純に高齢の運転手が危険とは言いませんが、ただ5年後70を過ぎた運転手が可能かと言われたら相当難しいと思います。そう考えると経済的なバックアップがされていて運転手の負担の少ない短距離便の設定も可能な代替バスと高速バスどちらをとるかと言われたら高齢ドライバーが増える今代替バスを取り高速バスを廃止するバス会社は少なくないと思われます

まとめ~もし赤字旅客鉄道線をバス転換するなら~ さて鉄道好きとしてあまり考えたくない話ですが、赤字旅客鉄道線をバス転換するなら以下が必要なのではないかと考えます。
1,一定期間のバス路線を維持するための経済的な計画
2、団塊ジュニアが70代に入り、間違いなく一線からは引く時期までの20年程度のドライバー確保の見通し
3、2に伴いドライバー確保の為廃止が出るであろう高速バスの影響をフォローするための鉄道路線の計画とその為の設備投資の為の負担の分担


そしてそれは濃淡はあるとはいえ、鉄道を廃止しないにしても少なからず地方の交通、その受益者と言える大都市(交通機関が地方から人を運んできてくれるという意味で)にも言える事ではなかろうかと思います。