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選挙の教育をどうするか

過度な「政治的中立性」が子どもの芽を摘む 日本の主権者教育の現実@毎日新聞2025/1/5より
子どもは練習していないと、自転車に乗れない。
 それと同じようなことが、主権者教育にも言えるそうだ。
 それなのに、日本では文部科学省が求める「政治的中立性」に過度に配慮し、教育現場での主権者教育が形骸化しているとの声がある。
生徒たちがせっかく取り組んだ700人分超の政治意識調査アンケートが、大人の手によってシュレッダーにかけられる
 しかも、ろくな説明もなく。
 そんな出来事が北海道の公立高校で起きた。3年ほど前のことだ。
 「困惑しかありませんでした」
 いまは早稲田大の2年生になった奥山莉里花(りりか)さん(20)はそう振り返る。
 当時、帯広柏葉(はくよう)高校(帯広市)2年生。学校新聞を発行する部活動「新聞局」の編集長を務め、このアンケートを提案した一人だ。


さて上の毎日新聞の記事から主権者教育に関する話が少し盛り上がっているようです。個人的には詳細が分からないので何とも言えないのですが、基本的に部活動で700人規模のアンケートを取ってアウトプットとして出す話と言う解釈の方が自然でその前提で言うならそこまでやる必要はないと考えます。ただその一方で舞台が東大や旧帝大に合格者を出す有力進学校である事を考えると一般的な主権者教育と考えるのも無理があるのではないかとも思います。とは言え主権者教育の話が盛り上がりそうなので少し考えていこうと思います。

帯広柏葉高等学校@みんなの高校情報

若い世代の主権者としての最大の課題:投票率の低さ
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国政選挙の年代別投票率の推移について@総務省より

さて帯広柏葉高校に通えるようなエリートはともかくとして若い世代全体で見ると主権者教育と言う点で考えると一番の課題は何でしょう?それは投票率の低さではないでしょうか?実際総務省の資料を見ると衆議院選挙において20代の投票率は全体よりも20%前後低く、2017年から始まった18.19歳の投票率も20代ほどではないもののやはり12~3%ほど低く30代と比較しても有意に低い、これを考えるとまず考えていく必要があるのは投票率を上げる事ではないかと思います。

あらかじめ投票のやり方を教えて「初めての投票」への抵抗感を下げよう
投票日当日に投票所に行けない場合@横須賀市選挙管理委員会より
投票日当日に、次のような事由が見込まれるときは、期日前投票や不在者投票ができます。
仕事等に従事している場合
レジャーや用務のため、投票区の区域外に滞在中の場合
病気、出産、身体の障害などのため、歩行が困難な場合(一定の条件があります。)
天災または悪天候により投票所に到達することが困難な場合


投票率を上げると言っても色んな手段があると思いますが、宣伝、啓蒙でなくあくまで教育と考えると投票の仕方、特に期日前投票と不在者投票のやり方が重要ではないかと思います。また参院選や衆議院選挙など比例代表があり複数の投票を行うケースもある為、そのルールに関しても同じように重要だと思います。 一見投票の仕方なんてと思われる方もいると思いますが、例えば進学などで地元から離れた人にとっては不在者投票のやり方は重要ですがやったことがない人にとってはやり方は分からないのではないでしょうか?また同様に期日前投票も慣れれば簡単ですが、最初は何を持って行けば良いのか戸惑うのではないでしょうか

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昨年の衆議院選挙の不在者投票用の宣誓書(他の選挙では使えません)

若い人の投票率と考えるといかにも若い人の資質に目が行きがちですが、投票のやり方をあらかじめ教える事で「初めての投票」への抵抗感を下げる事、それは教育で行えることですし、またその中で最も有効な手段ではないでしょうか?そしてこれは新聞部のアンケートが新聞部のない学校では出来ないのに対し、どの学校でもでき、どんな学校でもそれなりに必要とされる事なのではないかなと思います。

投票前に5分間選挙公報を確認しよう~候補者情報の確認の仕方~
衆議院議員総選挙 候補者・名簿届出政党等情報@神奈川県選挙管理委員会より
衆議院議員総選挙の候補者の氏名及び候補者・名簿届出政党等の情報は当ページよりご覧ください。
衆議院議員選挙・最高裁判所裁判官国民審査@神奈川県選挙管理委員会


さて投票の仕方が分かったら、続いてはだれに投票するかの情報となります。ここ最近の選挙ではSNSや動画サイト等での発信が注目されますが、あくまで教育と考えるとまず選挙における公式の情報がどこにあるのかと言うのが良いのではないかと思います。具体的には選挙公報及び候補者・政党の情報が良いのではないかと思います。

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候補者の氏名及び候補者届出政党の名称等

候補者・政党の情報と言ってもどの様なものかわからないかもしれません。昨年の衆議院選挙、神奈川県の場合上記の様なものがありました。これがあれば候補者の公式HPを調べる事も可能です。時間があれば各候補者のHPで詳細な情報を確認するのも良いと思います。またここ最近の流行であるSNSや動画では上手く情報収集しないと情報が偏るという問題に対しても一定の対策になり得るとも思います。

現行の選挙運動の規制@総務省より
【選挙運動期間に関する規制】
 選挙運動は、選挙の公示・告示日から選挙期日の前日までしかすることができません(公職選挙法第129条)。
 違反した者は、1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処することとされており(公職選挙法第239条第1項第1号)、選挙権及び被選挙権が停止されます(公職選挙法第252条第1項・第2項)。


また有名な選挙運動は前日までの為SNSでの発信に注意しなくてはいけない事等選挙運動の規制に関しても教えておく必要もあると思います。可能性としては低いとは言え罰金や選挙権・被選挙権の停止と言った厳しい罰則があるので不用意な行為への軛となる事を教えるのは教育の役目と言えます。

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2024年選挙公報@小選挙区神奈川11区

確かにベストを言えばキリはないですが、何もせずに適当に投票するよりも例えば投票前の待ち時間に5分程度でも選挙公報を確認して投票するという習慣があればどんなに忙しく時間が無くても最低限必要な情報を得ての判断となると思います。確かにベストではないかもしれませんが多くの若い人たちが一定レベルの情報を得て投票するという底上げの意味ではまず適切なやり方ではないかと思います。

プラスα~政治家の仕事を知る機会を~


現状の中学・高校教育がどの様なものかは分からないですが、やはり主権者教育と言う教育科目外の教育に関して充てられる時間は多くないと思います。その為多くの中学校・高校では前項目までに書いたことがやれれば御の字ですし基本的には前項目の内容に全力を尽くすべきだと思います。ただその上で余裕があるなら、現役政治家から政治家の仕事や、何を考えて活動しているかに関しての話をしてもらったらよいのではないかと思います。政治家の仕事と言うと、議会で法律や条例を作る事で、不真面目な人は議会で惰眠をむさぼってさぼっているというイメージの方も多いのではないかと思います

走水小PTA 通学の安全「懸念残る」 市教委に要望書提出@タウンニュース2024/7/26より
横須賀市立走水・馬堀小学校の統合を巡り、走水小学校PTA、走水町内会、地元有志の「走水を想う会」は7月16日、通学の安全確保に関する要望書を横須賀市教育委員会に提出した。幹線道路沿いを長距離歩くことになる現走水小児童が安全に通学できるよう、スクールバスの運行や路線バスの増便などを求めたもので、同町内会住民による署名510筆も添えられた


しかし例えば学校の統合で子供の通う学校が遠くなったのでバスの増発やスクールバスの運行などの対応を求めると言ったケースで地域の要望を行政に伝える必要が出てきた時は政治家の協力を得られると有難いと思うケースも多いと思います。理由として政治家は
・平日の昼間に動きやすい
・行政の担当部署に関して一般の人よりは確実に詳しい
・議員の肩書があるので蔑ろにされずらい

といった特性からです。最後の箇所ばかり注目されがちですが、最初の2つは多分こういった事をやった事のある人ならその重要性が分かると思います。政治と言うと行政ばかり浮かびますが、場合によっては路線バス運行事業者など行政以外の存在との交渉も必要でその際に個人ではどうしても限界が出て来ても地域、行政を巻き込むことで出来る事は増えると思います。そう言った意味で学校の授業と言う場で政治家の話を聴けるというのは主権者教育としては大きいのではないでしょうか?
請願・陳情のご案内@横須賀市より
請願・陳情とは
市政についての要望などを、請願・陳情書として市議会に提出することができます。
提出予定の方はお早めに市議会議会局へご相談ください。
請願と陳情の違い
請願は市議会議員1人以上の紹介が必要ですが、陳情は必要ありません。


また当然手続き的な部分もあります。これは場所に寄るかもしれませんが横須賀では上の手続きで議会の陳情・請願が可能です。その際に請願では議員の紹介が必要です。そう言った事もこの議員の話を聞く際に教育しておくとスムースに出来るのではと感じます。実際あくまでプラスαと書いていますが、個人ではなかなかできない事と考えると、学校と言う公的な存在でこういった事をやる意義は大きいと思います。

終わりに~成績上位10%に入れない学生の為の主権者教育~
如何だったでしょうか?確かに帯広柏葉高校の新聞局の学生さんのアンケートのアプローチは素晴らしいです。ただ帯広柏葉高校の様な優秀な学生ばかり集まる学校での話は確かに素晴らしいと思いますが、ただその応用が利くのは所謂偏差値で言えば60以上、言って見れば成績上位10%の学生ではないかと思います。彼らの努力は素晴らしいですがただそれを前提にしたりそればかり話すのはやはりずれたものとなってしまうと思います。その為に成績上位10%に入れない学生の為の主権者教育として大切なものとして
・選挙の投票に必要な基本的な手続き(不在者投票、期日前投票)
・公式が用意する選挙の為の判断情報の存在(選挙公報、候補者情報)
・投票日当日の選挙応援禁止などの選挙ルール
・政治家が何をしているか、どの様に使うかを知るために政治家本人の話を聞く

と言った事を上げました。これが正しいかどうかは分かりませんが、現状分断と言う言葉が大きく言われている中での主権者教育で重要なのは帯広柏葉高校の様な優秀な学校に通っている成績上位10%でなく、それ以外の学生がきちんと主権者としての第一歩目を歩める環境を作る事と言うのは納得してくれる人は多いと思います。この記事がそれをどうするのかを考えるきっかけとなって呉れたら幸いです。