フジテレビ会見 異例の10時間超 日枝氏の進退含めた対応焦点@NHK2025/1/28より
フジテレビは27日に臨時の取締役会を開き、港浩一社長と嘉納修治会長が一連の対応をめぐる責任をとって27日付けで辞任しました。
このあとオープンな形で記者会見が開かれましたが、およそ400人の出席者から質問が途切れることがなく、会見は10時間24分と異例の長時間にわたりました。
会見では、長期にわたってフジテレビや親会社の経営トップを務め、今も取締役相談役として経営に強い影響力をもつ日枝氏の経営責任を問う質問が相次ぎました。
フジテレビ、広告収入233億円下振れ 25年3月期赤字に@日経新聞2025/1/30より
フジ・メディア・ホールディングス(HD)は30日、フジテレビジョンの2025年3月期の広告収入が従来計画を233億円下回る1252億円になる見通しと発表した。元タレントの中居正広さんと女性とのトラブルを巡る対応に批判が高まり、CM出稿の見合わせが増えた。フジテレビ単体の最終損益は赤字に転落する見通しだ。
フジ・メディアHDは連結純利益が前期比74%減の98億円、売上高が3%減の5482億円と、従来予想をそれぞれ192億円、501億円下回る見通し。CMは利益率が高く、売り上げ減少が利益に直結する。08年の持ち株会社移行後、フジテレビが赤字となるのは初めて。


さて世の中は元SMAPの中居正広氏の女性問題に端を発するスキャンダルによってフジテレビが大騒ぎになっています。対応のまずさからCM出稿の見合わせが相次ぎ、番組の合間のCMはAC広告機構のものや番宣ばかりとなっているのに驚愕してしまいます。

「フジテレビ・中居問題 記事の訂正について」【編集長より】@週刊文春2025/1/29より
橋下徹氏のご指摘を受けて訂正に至った経緯についてご説明します。
 昨年12月26日発売号では、事件当日の会食について「X子さんはフジ編成幹部A氏に誘われた」としていました。しかし、その後の取材により「Ⅹ子さんは中居氏に誘われた」「A氏がセッティングしている会の“延長”と認識していた」ということが判明したため、1月8日発売号(第2弾)以降は、取材成果を踏まえた内容を報じてきました。


ただしこの問題の根本となった週刊文春の記事ですがフジテレビの関わる1部部分に関しては訂正されていますが、相変わらず騒動は続いています。正直なところいろいろ言われますが、この騒動における中居氏のスキャンダルは単なるきっかけにすぎず、本質は多くの人が抱いている「テレビ、特にフジテレビはヤバい」という共通認識の様な気がします。ここでは少しその背景について考えていきたいと思います。

コロナを経て急激に視聴者を失ったTV
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TVのHUT(世帯視聴率)推移、上全日、下ゴールデンタイム(各局とも凋落続く…主要テレビ局の複数年にわたる視聴率推移(最新)@ガベージニュースより

さて背景を知るためにまずはTV自体どれだけみられるかを見ていきましょう。所謂世帯視聴率を見ますと1997,98年のピークから減少傾向ではあったものの2021年上期までは全日40%、ゴールデンタイムも60%弱のラインを守っていたのが2021年下期から急減し2024年上期は全日32.7%、ゴールデンタイム48.9%と1997,8~2020年の20年に匹敵する落ち込みが3年弱で起こっています。

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メディア接触時間シェア、TV接触時間推移@メディア定点調査2024@メディア環境研究所より作成

続いて博報堂系のメディア環境研究所のメディア定点調査のメディア接触時間を見ると2021年以降のTV接触時間の落ち込みがひどく、2022年にTVとスマホの接触時間が逆転しています。

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上:男女世代別メディア接触時間@メディア定点調査2024@メディア環境研究所より、下:博報堂DYメディアパートナーズ「メディア定点調査2018」時系列分析との比較

また男女世代別の接触時間を見ると、男性40代以下、女性20代以下と言う傾向自体はコロナ前の2018年と変わらないものの、男性では15~19歳と40代の接触時間が30%以上、女性では20代、50代で接触時間が20%以上減少し、男性の4~50代、女性の2~30代と5~60代での段差が大きくなっているのが見て取れます。こうして見るとコロナ前までは新聞に比べてましだったとはいえ、コロナを経て、特に現役世代で「TVを見ない」人が急激に拡大しているのが見て取れます。

フジテレビの失われた20年
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TVのHUT(世帯視聴率)推移、各局ゴールデンタイム(各局とも凋落続く…主要テレビ局の複数年にわたる視聴率推移(最新)@ガベージニュースより

TV全体が落ち込む中で一番その落ち込みの角度が鋭かったのがフジテレビでした。ゴールデンタイムの視聴率推移をみると2005年にはキー局トップの14%あったのが2024年には6%を割り込み最下位のテレビ東京に近い水準と大きく落ち込んでいるのが見て取れます。

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視聴率@2024年3月期決算説明会資料 フジメディアホールディングスより

しかし、フジメディアホールディングスの決算書を見ると意外なことが分かります。こちらは上記の視聴率の資料と違い個人視聴率で世帯視聴率同様民放5局中4位なのは変わりがないのですがコアターゲット層と言われる13~49歳に絞ると全日2位、ゴールデン、プライムタイム3位と健闘しています。逆に全日では日本テレビと同率1位のテレビ朝日はコアターゲット層では4位なのに比べると対照的です。こうして見てみると言い方は良くないですがかつては肩で風を切って歩いていたが落ちぶれつつも「まだまだ若いもんには負けない」と言うスタンスの中高年のように感じるのは私だけでしょうか?

フジテレビは20年前にホリエモンに突き付けられた宿題にどうこたえるのか


かつてフジテレビの買収を仕掛け失敗したホリエモンこと堀江貴文氏がここに来て注目されています。上の動画では「広告依存」がネックであり、その為サブスクを中心にBtoCのビジネスを広げる事で広告に依存しない体制を作るというアプローチが個人的には注目しました。実際20世紀のネットが普及する以前に戻れない以上、広告費に頼らないビジネスモデルを作らなければ、縮小均衡しかなく、企業のCM以外の収益源を作り強化していくのは不可欠です。

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視聴率@2024年3月期決算説明会資料 フジメディアホールディングスより

実際フジメディアホールディングの決算を見ると放送収入で表される広告収入が右肩下がりなのに対し、コンテンツ・ビジネス収入等電波外の収入はコロナでの落ち込みがあった上で右肩上がりなのが象徴的です。

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またコロナ期にYoutube等でバズった松原みきの「真夜中のドア」と言う1980年代の名曲がありますが、これもレコード会社がフジの系列のレコード会社であるポニーキャニオンと考えるとこの好機でどう商売していくかと言うのも重要な視点だと思います。

若き日の日枝久氏

そう考えた時今のフジの首脳陣に対応できるでしょうか?
日枝 久(FMH相談役):労働組合結成、FMH結成
嘉納修治(FMH元会長):元経理局長、元関西テレビ会長
港浩一(元フジテレビ社長):「とんねるずのみなさんのおかげです」プロデューサー
遠藤龍之介(FMH副会長):遠藤周作の息子、「鬼平犯科帳」企画
清水賢治(フジテレビ社長):ドラゴンボールプロデューサー
実際1月27日の記者会見に出てきた主要人物を見ると組織を作った日枝氏、経理としてお金を管理してきた嘉納氏、優れたコンテンツを作って来た港氏、遠藤氏、清水氏、それぞれ1時代を築いた優秀な人物とは言え、作ったものをどうビジネスにするか、言い換えるならどうマネタイズするかをじっくり考えてきた人物がいないのが大きな欠点と言えます。

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フジメディアホールディングス株価チャート@Yahooファイナンス

フジメディアホールディングスは今回の騒動で多くの広告主が撤退し、赤字転落が言われています。とは言えこの騒動が起こってから株価は急激に上がっています。本来なら決してあり得ない事ですが、この騒動がここまで注目されたことも含めて言うなれば、ホリエモンが20年前に突き付けた宿題を解決する大きなチャンスであり、解決をすればフジテレビと言う多くの人を楽しませたメディアが新しい時代に大きく躍進する可能性があると多くの人が考えているからではないでしょうか?さてフジテレビがこの宿題に対してどんな回答をするのか楽しみにしている、20年前の騒動も見た人間としてはそう考えざるを得ないところです。