磐越道事故、営業担当の「知人の知人」が運転 バス手配の会社が説明@朝日新聞2026/5/6より
 福島県郡山市の磐越道で6日朝、北越高校(新潟市)の生徒20人を乗せたマイクロバスがガードレールなどに衝突し、うち1人が死亡した事故で、バスを運転していた男性(68)は、高校側からバスの手配を頼まれた会社の従業員ではなく、同社の営業担当者の「知人の知人」だったことがわかった。同社が取材に対し明らかにした。


少し前ですが、GWに痛ましい事故が起こりました。部活動の遠征で新潟県から福島県に行くマイクロバスがガードレールなどに衝突し、未来ある高校生の命が奪われたとの事です。まずは犠牲になった高校生のご冥福をお祈りしたいと思います。またこのマイクロバスの運転手はバス会社の従業員ではなく、部活側が貸し切りバスの費用負担をある意味ケチった事、あくまで白ナンバーのレンタカーで営利運転を行っていたのではないかと言う事で様々な物議を醸しだしているようです。ここではこの件に関して少し考えていきたいと思います。

長距離運転だけでなく長い拘束時間による高価格~部活送迎故の難しさ~
磐越道事故現場に3.3万円封筒 バス会社側→運転手か 高校説明@朝日新聞2026/5/10より
学校側の説明によると、事故現場に散乱した部員の荷物を回収して学校で精査した際、バス運行会社「蒲原鉄道」(新潟県五泉市)の営業担当者から運転手に渡されたとみられる封筒が見つかったという。中身は3万3千円が入っており、封筒の表にただし書きとして「手当」「高速はカードにて」「ガソリン」と書かれていたという。


さて問題になった白ナンバー運転手問題ですが報道によると運転手への報酬は3万3千円、それにレンタカー代、ガソリン代、高速代などを含むと5万では収まらず6万円前後、結構な額になります。そしてこれは正式なバス会社からの貸し切りバスでなく費用を抑える為に、マイクロバスをレンタルして旅客営業のできるであろう2種免許持ちのプロの運転手ではない事を考えると正式ルートと言える貸切バスではその倍位になるのではないかと思われます。



いくらなんでも高すぎると思われた方はいるかもしれません。しかし実際の部活動の遠征送迎を考えると見えて来るものもあります。上のツイートは実際娘さんの部活動でボランティア送迎の話を聞いた女性の話ですが注目したいのは運転手の宿代が自腹と言う話です。バスでの送迎と言うとバスの運転の事ばかり浮かびがちですが負担と言う意味では拘束時間も無視できません。仮に移動時間そのものが片道2~3時間だったとしても遠征先の活動時間を考えると、拘束時間と言う意味では最低でも1日、1泊2日と言う事も珍しくないと言えるわけです。今回の送迎での運転手の報酬3万3千円を見て大変な仕事とはいえ少し高いのではと感じた方もいると思いますが1泊2日だったらある意味で納得いきます。それを踏まえて考えると宿泊費も込みになるので更に高くなるので仮に1泊2日とすると実際のマイクロバスでは7~8万円、貸切バスでは15万円、今回の事故の件で参加した部員は20人なので貸切バスの場合、バス代だけで1万円近くなるわけです。こういった遠征が年1~2階と言った話でなくそれなりの頻度あり得たとすればやった事は良くないですが、「少しでも負担を抑えたい」と言う保護者の気持ちもわからない訳ではないです。そして多くの地域で貸切バスでなく保護者、部活関係者も含めたアマチュア運転者による部活の送迎が行われているのでしょう



そして夫婦共働き、高齢者雇用の拡大、教師の働き方改革、何よりもなぁなぁと言った言葉に代表される責任のあいまいさが無くなった時代背景を考えると、その在り方にも限界が来ていると言えるのではないでしょうか?

【磐越道バス事故】「事故を起こす前も運転に異常あった」北越高校が再び記者会見 《新潟》@日本テレビ2026/5/11より
21人が死傷したバス事故で北越高校が10日、会見を開き、事故を起こす前もバスがトンネルにぶつかるなどして運転に異常があったことを明らかにしました。~中略~
寺尾宏治顧問 「保護者によると、事故を事故を起こす前もトンネルにぶつかってこすっていた。休憩した時に車の片側がぶつかって」


しかし結果的には技量的あるいは体調的な問題があると思われる運転手による運転で悲惨な事故に繋がってしまった訳です。

20年前の正月、村の駅で見た不思議な光景が語る部活送迎問題をややこしくするもう1つの問題 IMG_8046
20年以上前の正月に見た少し驚いた光景とは@北総鉄道印旛日本医大駅

一見高い負担を我慢してちゃんとした貸切バスを使えば問題解決する問題に見えそうですが、そう簡単な問題ではないです。話が逸れますが少し昔話をしたいと思います。20年以上前のお正月、鉄ヲタの私は北総鉄道と言う千葉の鉄道会社に絡んだ3社(柴又帝釈天、松虫姫神社、成田山新勝寺)参りをしようと松虫姫神社から成田山新勝寺に向かおうと当時印旛村だった北総鉄道の印旛日本医大駅で成田線小林駅へ向かうコミュニティバスを待っていました。しかしバス停には何故かタクシーが1台あるもののいくら待ってもバスは来ない、そして気付いたらタクシーの運転手が手招きしてきます。どうやら単なるタクシーと思っていたこの車両がコミュニティバスの便だったという落ちで、最終的には小林駅で300円支払っており成田線で成田に向かいました。
何故こんな事態になったかと言えば印旛村にキャンパスのある順天堂大学が箱根駅伝に出場しその応援の輸送の為、コミュニティバスを走る小さなタクシー会社にあるバスが出払ったからだったようです。実際バス(?)の乗客は私だけでお客さんが多くて運びきれないという事も無かったのでこういう形になったのではと思います。一方で今は印西市になっていますが東京通勤圏とは言え印旛村と言う小さな村ではこういったちょっとしたことですぐバスや運転手のやりくりが出来なくなるというのもはまだ運転手不足が問題化する前の2000年代初頭でも見られうる光景だったのでしょう。

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年齢別大型2種免許保有者 運転免許統計令和4年度版より作成

そして20年以上経った今バスの運転手不足と高齢化が深刻な問題になっています。上は大型2種免許保持者の世代別の割合、実に保持者の80%以上が50代以上と言う絶望的な状態です。定員29人以下のマイクロバスでは大型2種はいらないと言われそうですが普通2種で運転できるタクシーの運転手も大半が高齢者とやはり厳しい状態です。今回の件は大都市新潟市の高校であったせいか、繁忙期のGWであっても貸切バスを確保するという選択肢もあった訳で、それ故に「バス代をケチって」と言う批判が多かったのですが、現実的には大都市以外の少なくない地域では20年以上前の正月に見た光景の様に「部活の輸送の為に地域のバスが無くなる」あるいはその逆に地域の輸送の為に部活の為のバスが用意できないという場所は少なくない様な気がします。


追加の運転手を雇う必要も活動時の拘束を考える必要もない鉄道利用への誘導を


当事者ではないですが、北海道が早速今回の件で動いたようです。確かに自家用バスからプロが運転する公共交通や貸切バスに移行させれば安全性は上がりますし、校長のチェックが入る事で今回の様な無茶なやり方への牽制にはなると思います。ただどうしても「なにもフォローせずに現場に負担を押し付けるだけ」の施策に思いますし、具体的な手段や知識なども無いのでいきなり言われても戸惑いだけで何もできない可能性が高いです。

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富山県のローカル線城端線、わずか2両編成のディーゼルカーの定員は200名以上、急に2~30人の団体客が来ても対応しやすい

もし私なら最優先事項として鉄道利用への誘導を考えます。理由としては単純で仮に2~30人の団体利用が増えてもリソースの追加投入しなくて済む可能性が高いという点です。
・貸切バス:希少化している運転手を最低一日下手をすれば1泊2日以上拘束
・路線・高速バス:2~30人お客さんが増えるとすれば運転手・車両を投入して臨時便を運航する可能性が高い
・鉄道:最悪立席利用も可能で、運転手・車両の追加投入の可能性は低い
言って見ればバスで対応する場合は少なからず希少リソースの運転手の投入が必要になるのですが鉄道の場合は2~30人程度なら少なくとも運転手に関しては気にしなくてよい。そう考えると部活の様な2~30人の小団体輸送に関して意外に適正は高いのではないでしょうか?

新幹線などの乗車券が2割引!学生割引乗車券|きっぷの買い方・使い方もご案内@JREメディアより
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学生の方が、新幹線や在来線を利用するときに、運賃が2割引きになる「学生割引乗車券」。 対象は、JR東日本の指定学校である中学・高校・大学・専修・各種学校の学生・生徒であること。さらに「学生割引乗車券」の適用には、乗車距離の条件があり、ご利用区間の片道の営業キロが101キロ以上あること。 「学生割引乗車券」の購入時には、学校が発行する「学校学生生徒旅客運賃割引証」が必要になります。 こちらの記事では、「学生割引乗車券」の解説と、「学生割引乗車券」の買い方、利用方法を解説します!


その為には改めて鉄道に誘導する仕組みが必要と思います。考えられるのは
・学割や各種企画切符などお得に利用できる制度の情報を学校と鉄道会社で共有する
・その上で更に行政かの教育予算から鉄道やバスの利用に関して補助を出すことで更に廉価化する
行政の補助はやりすぎかもしれませんが、それでも誘導させるとすれば一定の経済的な負担は不可欠ではないでしょうか?

どうしてもボランティア輸送が必要な場合は登録ボランティアと言う仕組みが考えられるのでは
福祉有償運送運転者講習・セダン等運転者講習・交通空白地有償運送運転者講習@福祉送迎研修センターより
自治体、非営利法人・団体などが自家用自動車を用いて有料で送迎を行う場合(自家用有償旅客運送“公共ライドシェア”)には、国土交通大臣認定の福祉有償運送運転者講習の修了などが義務付けられています。訪問・居宅介護事業所などのヘルパーが運転して送迎業務を行い、通院等乗降介助や移動支援などの報酬を算定し、有償運送を行う場合も同様です。


そして少なくない遠征時の交通が路線バス・高速バス、貸切バス等の「プロが運転するバス」の利用に移ると思いますが、先に話を出した旧印旛村の様にプロが確保できるか怪しい場所も多いはずです。
そうすると2種免許を持たないアマチュアボランティアによる送迎が必要となると思います。それに対しては一定の検証を行ったボランティアを登録する形での対応はどうかと思います。
上は公共ライドシェアとも呼ばれる福祉有償運送運転者講習・交通空白地有償運送運転者向けの講習からのものですが「準公共ライドシェア」のような形でボランティアを登録する形は考えられてよいと思います。その際には
・あくまでプロの運転手が使えなかった時のみ
・研修等の費用負担は学校側
・実際のバス会社とまではいかないものの運転手の運行管理を行う
・一定レベルの報酬を支払う
といったルールを作成し、その中で実施するのが良いかと思います。

まとめ~送迎の安全性と言う視点から考えると既存の部活は残すべきではないか~


さて最後に部活そのものの話を少し、今回の事故に関して、これまで書いてきたことにもありますが共働き、高齢者雇用の増加、先生の働き方改革などこれまで部活を支えてきた様々な存在の変化ゆえに高校を中心とした部活動の在り方が問われていて、「部活そのものをやめてしまえ」のような強硬な意見も多いです。しかし今回の事故で問われる送迎の安全性と言う側面で言えば学校の部活を縮小するのは愚策でしかないのではと考えています。理由としては
・曲がりなりにも行政と直接の結びつきのある学校と言う組織だから問題化したが対応策も伝わりやすい
・学校と言う組織にいる事で学校を取り巻く間接部門のリソースを活用しやすい
・学校と言う地域で存在感ある組織故に外部とのつながりを作りやすい
仮に部活動から学校外のスポーツクラブなどに移管した場合、ある程度基準は作られるとは言え、行政の対応策が伝わるのは遅れるでしょうし、研修などをやるのも一苦労、また補助金申請なども苦労するでしょうし、バス会社、鉄道会社が営業に訪れる事もないと思います。確かに下手な部活以上にきちんとした組織がないとは言いませんが、それは限られると思います。
結局の所やはり今「学校」と言う組織の存在の大きさを凌駕する存在を作るのは非常に困難であり、それを無視して安全を語る意味はないのではと思います。
最後に改めて今回の事故で亡くなられた方のご冥福をお祈りしたいと思います。