さて前に取り上げたフランス大統領選挙、大方の予想通りでアン・マルシェ!所属のマクロン氏が比較的大差をつけて国民戦線のルペン氏を破り当選しました。マクロン氏勝利、東証急騰 2万円台迫る 今年最高値@朝日新聞2017/5/9より
仏大統領選の決選投票で親欧州連合(EU)を訴えたマクロン氏が勝利したことが好感され、8日の東京株式市場では日経平均株価が今年の最高値を更新した。
マクロン氏、大恋愛の末に 25歳年上の既婚高校教師と@朝日新聞2017/5/8よりそのマクロン大統領、奥さんが24歳年上で、マクロン氏が高校時代、先生であり、夫も子供もいる夫人と付き合い始めた事に対して、美談として報じるメディアとマクロン氏が夫を持つ女性と付き合った事、夫人は18歳未満のマクロン氏と交際した事は小児性愛者であり所謂淫行罪で2重の犯罪行為ではないかと言うネットの論調がメインに展開されています。個人的には確かにかつて罪を犯した人間がその罪を償い社会的な信用を築き上げその国のトップになったと言うのは本人の努力と、罪は罪、人は人ときちんと切り分ける国民性に関して言えばある種の美談としても良いかもしれませんが、その罪を美談として語るのは違うような気がします。あえて言うなら野村監督夫妻のなれそめを美談として語れるメディアならその資格もあるかもしれませんが・・・。
仏大統領選で当選したエマニュエル・マクロン氏(39)のファーストレディーとして注目を浴びているのが、25歳年上の妻ブリジットさん(64)だ。政治集会にも付き添い、スピーチなどにもアドバイスを与えるなどして、二人三脚で大統領選を勝ち上がった。欧州メディアによると、ブリジットさんはチョコレート会社を営む裕福な家に生まれた。2人の出会いは、マクロン氏が15歳の高校生だったときにさかのぼる。仏北部アミアンのカトリック系私立高校で、2人は教師と教え子だった。演劇部の顧問を務め、そこに小説家を目指していたマクロン氏が入部した。
当時ブリジットさんは40歳で既婚。3人の子どもがおり、娘はマクロン氏と同じクラスにいたという。ブリジットさんは仏雑誌に、「彼は17歳の時に、『あなたが何をしようと、私はあなたと結婚する』」と宣言したと語っている。2人の仲はうわさとなり、周囲の大反対に遭った。マクロン氏の両親は2人を引き離すため、マクロン氏をパリの高校へ転校させたという。
マクロン仏大統領と配偶者の物語は、美談か?倫理的(或いは法的)問題か? @togetherより
名無しガブリエルハウンド @b503yukikaze 2017-04-04 18:30:17>ブリジットさんは1990年代半ば、北部アミアンの高校で国語教師、演劇部顧問を務め、高校生だったマクロン氏と恋に落ちた ←淫行>当時は銀行幹部の妻で、3人の子供がいた ←不倫
国民戦線 | 1,986 | 1988 | 1993 | 1997 | 2002 | 2007 | 2012 |
得票率 | 9.65% | 9.65% | 12.41% | 14.94% | 11.34% | 4.29% | 13.60% |
議席数 | 35 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 |
総議席 | 577 | 575 | 577 | 577 | 577 | 577 | 577 |
議席率 | 6.07% | 0.17% | 0.00% | 0.17% | 0.00% | 0.00% | 0.35% |
議席/得票 | 62.86% | 1.80% | 0.00% | 1.16% | 0.00% | 0.00% | 2.55% |
さて個人的に注目したいのは対立候補であるマリーヌルペン氏の所属していた国民戦線の状況、その前に国民戦線の日本の国会における国民議会選挙での1回目投票での得票率と議席獲得率の推移をグラフ化したものです。9.65%の得票率で6.07%の議席を得た1986年以外では1988年9.65%、2007年に4.29%だったのを除くと10%以上の得票率を得ながら議席獲得率は0~0.35%と言う異常状況が続いているのがわかります。
得票率 | 獲得議席 | 議席率 | |
維新の党 | 15.72% | 41 | 8.63% |
公明党 | 13.71% | 35 | 7.37% |
共産党 | 11.37% | 21 | 4.42% |
国民戦線 | 13.6% | 2 | 0.35% |
ちなみに日本の状況と比較するとこの状況がいかに異常かがわかると思います。上の表は2014年に行われた衆議院選挙で10~16%の得票を得た維新・公明・共産の3党の議席獲得率と2012年の国民戦線の得票率・議席獲得率を比較したもの、これを見ると大阪と言う強固な地盤を持つ維新の党、自民党と言う強力なパートナーを持つ公明党に比べて共産党の議席獲得率は低いですが、それでもフランスの国民戦線の議席獲得率に比べ10倍以上の議席獲得率を誇っている事がわかります。
2012年フランス議会総選挙@Wikipediaよりさてこの異常な状況はいかに生み出されたのでしょうか?それはフランス国民議会の選挙制度、いみじくも国民戦線が国民議会で35議席を獲得した僅か2年後の1988年に戻った小選挙区単記2回投票制にあります。と言うのは日本の衆議院選挙も小選挙区主体で大政党優位と呼ばれるのですが、フランスはそれ以上で一言でいえば1回の投票でトップになるのではなく1回の投票で50%以上の得票を得られなければ決選投票で50%以上の得票を得なければ当選できない仕組みであり、その事が2014年衆議院選挙における日本の共産党の様に強固な地盤も有力なパートナーも持たない国民戦線にとって不利な状況を生み出したと言えます。言うなれば国民戦線と言うフランス国民の10~15%くらいの支持率を得る国民戦線の支持者の声ははこの選挙制度によって無かった事にされてしまったわけです。
選挙制度:小選挙区制(単記二回投票制)
- 第1回投票:有効投票のうち、過半数かつ有権者数の25%以上を得た候補者が当選。いない場合は1週間後に決選投票を実施。
- 第2回投票:第1回投票において、12.5%以上の得票を得た候補が立候補。12.5%以上の得票を得た候補者が1人のみ、もしくは1人もいない場合は上位2名が立候補。最多得票を得た候補が当選。
2017年大統領選挙 | 1回目得票率 | 決選得票率 | 1回目投票比 | |
エマニュエル・マクロン | アン・マルシェ! | 24.01% | 66.10% | 275.3% |
マリーヌ・ル・ペン | 国民戦線 | 21.30% | 33.90% | 159.2% |
2002年大統領選挙 | ||||
ジャック・シラク | 共和国連合 | 19.88% | 82.21% | 413.5% |
ジャン=マリー・ルペン | 国民戦線 | 16.86% | 17.79% | 105.5% |
表:2017年、2002年の大統領選挙の得票率(2017年フランス大統領選挙@Wikipedia他より作成)
さてマクロン大統領と争ったルペン候補が所属した国民戦線が大統領選挙の決選投票に進んだのは2002年以降2回目なのですが、その2002年に比べて大きく変化しているのはその得票率です。2002年の大統領選挙では1回目に比べてわずか0.93%しか得票率の上積みが無いのに対し今回の大統領選挙では立ち上がれ!共和国のニコラ・デュポン=エニャンを首相にするとして共闘した関係もあり12.6%もの得票の上積みに成功しています。そして、今回大統領に当選したマクロン氏の所属するアン・マルシェ!は所属する国会議員がいなく1から候補者を掘り起こさなくてはならない手探りの状態、そして第1回投票でルペン氏と同じくEU離脱を表明する左翼党のメランション候補が20%近い得票を得た事を考えると、来月行われる国民議会選挙ではこれまで同様国民戦線を「無かった事」にはもはやできなくなる可能性は高くなってくると考えられます。
仏、表現の自由 限界は 「宗教批判、線引き難しく」 マス倫研究会@一般社団法人日本新聞協会よりフランスと言う国はヘイトスピーチや児童ポルノ等厳しく規制する国としても知られているようで日本の報道の自由の砦を自称する新聞業界でも研究が進んでいるようです。しかしこういったものを「間違った事」、「あってはならないもの」として「無かった事」とするのは正しいのでしょうか?私の恩師の言葉で最も印象に残っているものとしてこんな言葉があります。「頭の良い人と言うのは人の言葉を聞く人である。聡明と言う言葉は耳偏がついているだろう」そういった意味で私はフランスと言う国は非常に聡明と言う言葉からほど遠い事をしてきたようにしか見えないのですが、当のフランス人はどう考えているのでしょうか?そしてその答えをこの大統領選挙と来月に行われる国民議会選挙で実感するように感じるのですが如何でしょうか?
フランスでは、「プレスの自由に関する1881年7月29日法」で表現や報道の自由が確立された一方、名誉毀損(きそん)などについての条項を設けるなど、表現の自由を制限しているという。日本で適法な表現でも、ヘイトスピーチや児童ポルノに抵触するとして規制の対象になるものもある。フランスでヘイトスピーチは厳しく規制されている。法規定されたのは1972年。当初は出生や、特定の民族・人種が規制対象だったが、性別や性的指向などにも広がったという。また、フランスでは名誉毀損や侮辱だけでなく、差別・暴力の扇動行為も処罰となるとの特徴があるという。曽我部氏は「ヘイトスピーチは厳しく規制されているが、宗教批判に対する規制はない。ヘイトスピーチと宗教批判の線引きが難しいところだ」と強調した。