img098img099img104img100








  偕成社版の『名探偵ホームズ全集』は全部で22巻あるが、三人称で書いているのは、野田開作ばかりでなく、久米元一、内田庶などもそうである。ただ、先に述べたように福島正実はきちんと原作に合わせているし、武田武彦も一人称(「ぼく(ワトソン医師)」で書いている。久米元一は『呪いの魔犬』(『バスカヴィル家の犬』)で、武田武彦は『四つの暗号』で、原作にない改作を行っているから、本全集ついて言えば、野田ばかりを「改作」とは呼べない。

  訳者には、野田開作の他、久米元一、武田武彦、福島正実、内田庶、久米譲を揃えているが、訳者によって一人称だったり、三人称だったりすると読んでいる方は混乱する。それに、装丁は沢田弘で統一されてはいるものの、カバー絵は、武部本一郎(写真・7、10巻)、西村保史郎(写真・6、14、22巻)、依光隆(写真・13巻)、石田武雄(写真・16巻)、白井哲、野崎猛が担当、タッチが違うので並べて見ると違和感がある。挿絵もまちまちで、ワトスンにひげがあったり、なかったりするのは、どうもネ。

  この全集を収集する時にこまるのは、奥付の発行日の表記がまちまちなこと。初版・再版の日付が表記されているものもあれば、年月だけで何刷か表記されていないものもある、といった具合。そのため、初版が何時発行されたか分かりにくい。

  例えば。野田開作『運命の指紋』の奥付には、「1967年6月 1刷、1976年5月 12刷」とあるので、初版が昭和42年6月と分かるが、武田武彦『姿なきスパイ』には「昭和46年6月10日」とあるだけ。これでは、昭和46年6月10日が本書の初版と思ってしまう。

 そこで。本全集を集めてみようという方のために、以下にその初版発行日を記す。
 
 偕成社 名探偵ホームズ全集(全22巻)

1.『深夜の謎』:久米元一訳:昭和41年11月25日:232p
2.『まだらの紐』:野田開作訳:昭和41年12月5日:230p
3.『消えた地獄船』:武田武彦訳:昭和41年12月20日:230p
4.『影なき怪盗』:久米元一訳:昭和41年12月20日:234p
5.『四つの暗号』:武田武彦訳:昭和41年12月25日:230p
6.『赤毛連盟の謎』:野田開作訳:昭和42年1月15日:230p
7.『悪魔のダイヤ』:久米元一訳:昭和42年3月5日:236p
8.『白銀号事件』:野田開作訳:昭和42年2月15日:226p
9.『ブナ屋敷の怪』:久米元一訳:昭和42年4月20日:234p
10.『恐怖の谷』:野田開作訳:昭和42年1月15日:226p
11.『姿なきスパイ』:武田武彦訳:昭和42年3月15日:228p
12.『赤い輪の秘密』:野田開作訳:昭和42年3月10日:226p
13.『呪いの魔犬』:久米元一訳:昭和42年7月10日:236p
14.『謎の人間猿』:福島正実訳:昭和42年6月10日:224p
15.『運命の指紋』:野田開作訳:昭和42年6月20日:228p
16.『吸血鬼』:内田庶訳:昭和42年8月1日:230p
17.『踊る人形の秘密』:久米穣訳:昭和42年5月10日:226p
18.『覆面夫人』:福島正実訳:昭和42年8月10日:226p
19.『顔のない男』:野田開作訳:昭和42年9月20日:226p
20.『まぼろしの王妃』:久米穣訳:昭和42年11月5日:228p
21.『恐怖の金庫室』:久米元一訳:昭和46年2月15日:238p
22.『ミイラ館の謎』:久米元一訳:昭和46年3月10日:238p

  以上のリストから分かる通り、本全集は、最初20巻の予定で昭和41年から42年にかけて刊行されるが、昭和46年に2巻が追加され全22巻になったものと思われる。本全集の解説は、鈴木幸夫。

  尚、本全集には長編4編、短編55編、計59編が収録されている。原作は長短合わせて60編――なぜ、一編だけ収録しなかったのか、収録されなかった作品名はなにか?いずれゆっくり調べてみよう。


  さて。次回も、野田開作について――。

img102img103img105img107