2013年01月

2013年01月31日

男の初恋映画『建築学概論』

 今年初夏に、1本の韓国映画が公開されます。タイトルは『建築学概論』。先日この作品をひと足早く鑑賞し、非常に素敵な作品だったのでご紹介します。ずばり「男に響く初恋映画」なんです。

 初めてタイトルを聞いた時は「なんじゃそりゃ?」という感じでした。配給会社の人に話を聞くと、いわゆる「純愛もの」といいます。当方、純愛ドラマには全く興味がないので、当初は「あっそう…」程度の印象でした。だって韓国の純愛ものなんて星の数ほどありますもの。

 ところが、よくよく話を聞いてみると、何やら面白そうな匂いがしてきます。なんでも、韓国でこの映画にハマったのは「男性」なんだとか。「これは俺たちの初恋だ!」てな感じで熱狂的な人気を博し、『頭の中の消しゴム』などを抜いて恋愛映画の興行成績を6年ぶりに塗り替えたそうです。

 最初はカップルで映画館に観に来ます。けど彼女がいる手前、男性は泣くことができない。そこで、もう1回1人でこっそり映画館に来て思いっきり泣く…てな流れが出来ていたとか(全部配給担当さんの受け売りですが)。夜の回は、缶ビール片手に鑑賞する男性の姿が目立ったそうです。

 結局、劇中の台詞「どうする、お前」が流行語大賞に選出されたり、この映画で女優デビューした、K‐POPグループ“Miss A”のスジがこれをキッカケに大ブレイクするなど、社会現象を巻き起こしました。

 「ほう…そんなに面白いのか…」というわけでサンプルDVDをもらっていざ鑑賞。いや〜配給担当さんの熱弁も納得の素晴らしい映画でした。

 ざっと作品の説明をしますと、物語の主人公は建築士のスンミンと、ヒロインのソヨン。スンミンの大学の初恋相手だったソヨンが15年後に突然現れ、スンミンに家を建ててほしいと頼むところから始まり、現在の家を建てる過程と、15年前の思い出を回想する構成となっています。

 個人的には、現在パートよりも15年前パートが印象的。冴えないスンミンが、評判の美女であるソヨンに恋い焦がれ、関係を深めていくも、色々あってうまくいかない…。「初恋が大学生って遅くない?」とか「そんな美女がいつまでもフリーでおるわけやろ!」とか、「そんな冴えない男に美女の方から声掛けてくるわけないやろ!」なんてツッコミどころは満載ですが、そこは男子の「美しい妄想・願望」の部分を表現したもの。一方で、彼女とうまくいかずに苦い思いをし、夜中に友人にあーだこーだと相談している姿は、まさに男子の「実体験」ではないでしょうか。懐かしい思いと妄想の部分がうま〜く融合し、「美しい自分の実体験」として観てしまえるのです。

 現在パートでは、すでに綺麗な婚約者がいるにも関わらず、初恋のソヨンの登場で揺れ動くスンミンが描かれます。そして、15年前には互いが不器用だったためにわかり合えなかった部分が、少しずつ紐解かれていく暖かみを感じます。ハッピーエンドでもあり、ちょっと切ないエンディングでもあり、観終えた時にはなかなか良い余韻が漂います。作風は違いますが、初めて『猟奇的な彼女』を観た時のような感覚でした。

 そういえば、『猟奇的な彼女』公開からちょうど10年経ちました。今は、「韓国の純愛映画」というだけでシャットアウトしてしまう人もいるかと思いますが(自分もそうだったので)、まあ試しに観てみてください。10年前、ちょっとでも純愛ブームに乗っかった人は、たぶん楽しめると思います。


bunkatsushin at 09:00|Permalinkclip!平池 由典 

2013年01月29日

コロナが「4DX™」導入を決定

 コロナが、最新劇場上映システム「4DX™(フォーディーエックス)」の国内初導入を決めた。中川コロナシネマワールド(名古屋)に5月メドで導入し、その効果を見定めた上で、他のサイトにも順次導入していく予定だそうだ。

 この4DX™は、韓国のCJグループが開発したシステム。簡単に言えば、映画のシーンに合わせて動く座席と、風やミスト(水)などの演出効果によって、観客が映画を「体感」できる環境づくりをするものだ。

 動く座席と言えば、ワーナー・マイカルが大高(名古屋)と港北ニュータウン(横浜)に導入済みのD‐BOXがすぐに思い浮かぶ。大高や港北の導入シアターでは、通常の座席よりもD‐BOXの方が先に売れていくという話も聞くから、需要はあるのだろう。D‐BOXの料金は、鑑賞料金プラス1000円だ。

 それぞれ機能・性能の差はあるだろうが、「動く」という意味では4DX™もD‐BOXも同じと言っていい。だから、4DX™の場合、様々な演出を仕込めるところが重要なポイントになる。資料によると、風やミスト(水)、匂い、光、シャボン玉などの演出が可能だという。実際に体験してみないと分からないが、まさにテーマパークのアトラクション的なノリである。

 4DX™という名前が示すとおり、3Dの先(4D=体感型)をにらんだシステム。上映については、3Dにも2Dにも対応する。そして、料金設定が肝心要。D‐BOXと揃えて割安感を出すのか、逆にプレミアム感を出して上乗せしていくのか。

 映画をよく見る人たちに、どれだけ受け入れられるかは、正直わからない。座席の動きや演出を、好まない人もいるだろう。その傾向は、鑑賞頻度の高い人ほど強いと思われる。しかし、カップルや友人同士などで楽しめるアクションやSFの大作映画などは、効果が表れるのではないだろうか。

 “映画館離れ”という言葉を耳にするが、映画館以外の場(メディア)を通じて映画に触れる人は減ってはいない。だったら、どうやって映画館に足を運んでもらうか。いい作品を上映するのは勿論だが、それだけでは他力本願の色合いが濃い。

 他の興行者も、4DX™については当然ながら知っていた。それを、コロナが導入する決断をした。業界内の評価も気になるが、何よりも一般の観客の反応が知りたい。

bunkatsushin at 09:00|Permalinkclip!松本 貴則 

2013年01月23日

需要拡大施策「大人の音楽」今年中にも節目の10回

▼「今年はパッケージ業界にとって正念場」。2013年はこの言葉を忘れずにレコード業界の動向を注視していきたい。
▼なぜ、正念場なのか。前回の繰り返しになるが、2012年はCDの生産実績が実に14年ぶりに前年を上回る見通し。14年もかかってようやく上向いたものを、わずか1年で再び下降させてはならない。だから、何としても踏み留まらなければならない。そういう意気込みのあらわれなのである。
▼では、具体的に何をすれば踏みとどまれるのか。メーカー、小売り、プロダクション…各社様々に需要拡大施策に取り組んでいる中、日本レコード協会を中心にメーカー各社が協力して取り組んでいるのが「大人の音楽」。昨年で言えば、紅白出場も果たした由紀さおり&ピンク・マルティーニのアルバム「1969」、少し前だと徳永英明のカバーアルバム「VOCALIST」シリーズが代表的なヒット作品だ。
▼こうした大人向けの作品群を一挙にまとめてプッシュする、メーカー合同のキャンペーン「大人の音楽〜Age Free Music〜」はこれまで8回実施されており、今年中には節目の10回目を迎えるとみられている。「大人の音楽」にはAKBのような大ヒットというより、息長く続け、じわじわと購買層の裾野を広げていく役割が期待されている。


bunkatsushin at 19:55|Permalinkclip!中原 卓彦 

2013年01月21日

2012年鑑賞映画回顧(第二部)

 昨年末、山田孝之の“狂気”に痺れて尻切れトンボになってしまっていたので、この辺で2012年に観た映画の中で特に印象に残っている作品を順番に振り返る「2012年鑑賞映画回顧」の続きを駆け足で綴っておきたいと思う(第一部は12年12月10日付)。因に、新作に限らず、未見だった過去作品も含む。

・深川栄洋監督の『ガール』。香里奈、麻生久美子、吉瀬美智子、板谷由夏という豪華4女優を相手に、女性の心理、男女関係、女性同士の機微などを丁寧に描こうとする深川監督の手腕を堪能できる作品。香里奈と麻生が同窓会で並んで座りながら語り合うシーンは秀逸。

・高橋伴明監督の『道〜白磁の人〜』。これまでにも日韓で協力して作られた映画は数多くあるが、なかなか両国で興行的に成功した作品がなく、アジアで国際共同製作が呼びかけられる中で、韓国映画振興委員会(KOFIC)の支援を受けて制作された本作の意義は大きい。歴史的な問題はあっても、人と人として理解し合うことの大切さを教えてくれる作品。

・熊切和嘉監督の『莫逆家族 バクギャクファミーリア』。豪華キャスト陣に加え、主演の徳井義実(チュートリアル)ほか吉本興業の芸人も多数配し、田中宏原作の人気コミックを映画化したバイオレンス・ドラマ。デビュー作『鬼畜大宴会』(98年)の頃のキレた演出を久々に堪能するも、期待が高すぎた為にあと一歩と消化不良。しかし、東映の本番線作品に挑んだ熊切監督の頑張りは評価したいので、次回作に期待する。

・沢尻エリカ様の『ヘルタースケルター』。結果的にエリカ様のスキャンダルが興行にも好影響を及ぼし、興収21億円を超える大ヒットに。蜷川実花監督のビジュアル世界がマッチし、内容的にも日本映画としてはこれまでにない境界に踏み込んだ作品だと言える。主人公が崩壊していく様など、アメリカ映画であればスタイリッシュなインディ映画として、もっと評価されるような気がするのだが。

・細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』。12年も数多くのアニメ映画が公開され、大ヒット作も連発したが、本作は2つの点で抑えておかなければならない作品。一つは、今回の興収42億円という大ヒットにより、スタジオジブリ作品に匹敵する新たなアニメブランドに細田作品が確立されたこと。もう一つは、おおかみこどもというあり得ない設定ながら、親と子の愛情を描き、オリジナルアニメ映画として昇華させた細田監督の才能は見事のひと言。次回作が待たれる。

・豊田利晃監督の『I'M FLASH!』。過去に本欄でも書いたのでそちらを参照して欲しいが、「復帰」後の作品に物足りなさを感じていただけに、ようやく豊田監督の狂気を感じられた作品。観る側が刺されるような衝撃を次回作にも期待したい。

・昨年、交通事故で急逝してしまったギリシャの巨匠、テオ・アンゲロプロス監督の『霧の中の風景』。追悼の意味を込めて改めて観たが、やはり素晴らしい。フィルム上映で観たのだが、傷ついたフィルムの質感も味わいとなっていたほど。姉弟が警察を抜け出し、外に出た瞬間、雪が舞い降る中、二人以外の世界が止まっているようなシーンは何度見ても涙が止まらない。

と、ここでまた時間切れ。第三部に続く。

bunkatsushin at 09:00|Permalinkclip!

2013年01月19日

2013年イチオシ!こじるり

小島瑠璃子 今年ブレイクしそうなタレント探し。イチオシしたいのは、バラエティを席巻しそうな“こじるり”こと小島瑠璃子です。

 1993年生まれの19歳大学1年生。2009年にホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリに輝き、芸能界入りしました。しばらく目立った活躍はなかったのですが、昨年春からTBSのスポーツニュース番組「S☆1」の進行役に抜てき。この評判がすこぶる良いのです。

 番組に花を添える程度の役割でなく、ニュースを読むキャスター的ポジション。これが本当に上手い。下手な局アナよりよっぽど流暢に原稿を読み、番組を進行するのですから大したものです。かといって、いわゆるセントフォース勢のようなアナウンサーではなく、ノリはバラドルだから新鮮。相手役は爆笑問題の田中裕二、野球評論家・野村克也氏ら大物ばかりとあって、評価はさらに高まります。

 この実力がじわじわ広まり、レギュラー番組も着実に増えてきました。フジテレビ系で秋から始まったクイズ番組「ソモサン・セッパ!」にも、ヒントを出すキャラクター“こじるり”として登場しています。今年、さらにレギュラーが増えるのは間違いないでしょう。

 こじるりには昨年春にインタビューしたことがあります。実はそのころはまだ、ホリプロTSCの子という程度でしか知らなかったのですが、その礼儀正さ、仕事に対する熱意、プロ意識に「この子はすごい!」と驚かされたことを覚えています。こちらの準備不足を恥じるほどでした。

 そのときこう言っていました。「(事務所の大先輩)榊原郁恵さんのようなバラドルになるのが夢なんです」。女優や歌手を目指す若手女性タレントが多いなか、バラエティで活躍したいというその志を応援せずにはいられません。こじるりのような子がいれば、テレビのバラエティの質は確実に上がるでしょう。

bunkatsushin at 09:00|Permalinkclip!高崎 正樹 

2013年01月17日

時代劇『蠢動』、“走る『切腹』”に注目

 15日に、都内で映画『蠢動‐しゅんどう‐』の製作発表会見が行われました。大阪で創業100年の歴史があるメーカーの(元)社長さんが、会社の全株式を売却して、その資金を製作費に充てたという、凄まじい情熱を感じる作品です。映画ファンは要注目でしょう。

 元社長さんの名前は三上康雄氏。三上氏は、学生時代に自主映画を製作しており、最後に撮ったのが『蠢動』でした。今回製作発表された『蠢動』は、この作品のリメイクです。

 内容は時代劇。三上氏は『切腹』『上意討ち 拝領妻始末』などの昭和の時代劇を好んでいるそうですが、最近は観たいと思える時代劇がなく、「それなら自分で作ってしまおう」と考えたのがことの発端。旧作『蠢動』から33年を経て、再び映画の製作に乗り出したわけです。監督も三上氏が務めています。

 享保年間。山陰のとある藩を舞台に、藩の存続を貫こうとする城代家老、藩の命令を貫こうとする剣術師範、正義を全うしようとする若き藩士、藩士への想いを貫こうとする藩士の妹。それぞれの正義と正義の激突が始まる―というのがあらすじ。前半は藩の内情を描くサスペンス、後半は雪中での「走る」「斬る」の活劇が描かれます。

 三上監督は会見で、「『切腹』には及ばないが、気持ちは負けないようにしたい。作品を説明する時は“走る『切腹』です”と言っている」と話しているように、『切腹』を意識した作りになる模様。オマージュを捧げるシーンも入れ込むようです。

 キャストは脇坂智史、平岳大、若林豪、目黒祐樹、中原丈雄、栗塚旭、さとう珠緒の各氏。また、監督自らオーディションを重ねて選び抜いた13人の殺陣集団「チーム激動」も作品を盛り上げます。

 会見で印象的だったのは若林さんのコメント。「時代劇は、最近は変化球ばかり。この作品はど真ん中。脚本を読んで『すごい作品だ』と思い、ぜひやらせてほしいと頼んだ」と熱く語っていました。

 撮影はまさに本日から。クライマックスの雪中での殺陣は、鳥取砂丘で撮影を行うそうですが、ここ3年くらいは2月の3〜5日に雪が積もっているらしく、今回はその日程を狙って鳥取に行く予定となっています。えらいギャンブルですが、何とかその日程で大雪が降ることを願っています。


bunkatsushin at 09:00|Permalinkclip!平池 由典 

2013年01月15日

シネコン20年の節目、激動の予感あり

 2012年、全国の映画館数は減少しました。前年2011年は18年ぶりに減少に転じたわけですが、これで2年連続の減少です。昨年11月30日の「映画の日」の発表では、前年比マイナス50スクリーンほどで、年末時点で3290スクリーン前後と予想されています。

 私の業務の一つとして、1年間にオープンした映画館と、閉館した映画館を調べる作業があります。業界数社の方の協力を得ながら、年末年始の時期に、この作業をしています。今回も作業の結果、オープンは25スクリーン、閉館は63スクリーンがリストに挙がりました。差し引き38スクリーンの純減となりますから、映画の日の予想とは「12スクリーン」の誤差が生じています。

 実は、映画の日の数字と、私が調べた数字が合ったことは殆どありません。業界の方からの情報提供や、ネットを駆使して調べても、完全に調べあげるのが、実に難しい。

 正式な数字は、1月30日に映連の記者発表の場で判明します。毎年この時期は、テストの答え合わせをする学生の気分になります。

 翻って、2013年はどうなるでしょうか。シネコンのオープンが昨年は2サイトにとどまり、ワーナー・マイカル・シネマズ海老名がオープンした1993年以来、最も出店が少ない年となりましたが、今年は昨年よりシネコンの出店数は確実に増えます。春にはシネコンが数か所でオープンする予定です。一方で、同じく春までに、閉館を迎える映画館もあります。デジタル化が最終局面に入ったことで、特にローカルで閉館が一気に出てくる可能性もあるでしょう。

 2013年は、国内初のシネコン誕生から、ちょうど20年。何年か過ぎて振り返った時に、今年は「新時代の幕開け」と位置づけられるような年になるかもしれません。昨年は、興行会社の社長交代が多数あり、資本関係をめぐる動きも目立ちました。こうした出来事を、激動の時代に突入する予兆のように感じるのは、私だけではないでしょう。今年も興行会社の動向を、詳しく見ていきます。



bunkatsushin at 09:00|Permalinkclip!松本 貴則