2010年12月20日

“言論の砦”を築く絶妙なバランス

 総務省「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」最終会合が14日に行われ、報告書が取りまとめられました。
 昨年9月に政権を取った民主党の政策集には「通信・放送委員会(日本版FCC)の設置」を明記。つまり、総務省から通信・放送行政を新たな独立行政委員会に移管させる構想を持っていました。これを踏まえて原口前総務相が同年12月に設置したこのフォーラムですが、会合を重ねるに連れ、その組織体にこだわらず、“言論の自由を守る砦”をいかにして創っていくべきかという議論に移行していきました。途中、国会では放送法改正案の中で電波監理審議会の権限を強化して、“砦”を担わせる方向性もありましたが…。
 そうして今回の報告書は“砦”について「何か一つの組織・機関を作れば済むというものではなく、事業者、関係団体、行政、視聴者など様々な主体がそれぞれに取組みを行っていく全体像が言論・表現の自由を確実に守るための枠組みを形成していくもの」と結論付けています。ドラクエの作戦で言えば「みんながんばれ」に落ち着いたというところでしょう。

 それでもフォーラムでは、言論の一翼を担う放送が、行政に直接監督されている現状を脱し、当初の目的通りに独立行政員会に移管すべきだという意見もありました。しかし、実際に導入している海外の現状を見ると、ここぞとばかりに罰金を徴収しまくったり、バンバン放送停止命令を出している現状もあります。それに当初お手本にしていた米国の連邦通信委員会(FCC)は、委員を大統領が任命するなど、見事なまでの官僚組織であると聞きます。

 翻って現在の日本の放送行政を見るとどうでしょう。行政府が直接監督しているが故に、少しでも行政指導を出すと結構な批判が起きます。「注意」程度でそれなのですから、「放送停止命令」なんて出せるはずがありません。
 そうです。確かに言論が直接監督されているという現状はありますが、この構造により絶妙なバランスを保って既に“砦”が築かれているという面があるのです。核保有国のパワーバランスによって世界大戦が起こらないという皮肉な状況にも似ています。フォーラムの議論では、この視点が欠落していたようにも思えます。

 しかし、「日本版FCC構想」が完全に消えたわけではありません。平岡総務副大臣は「淡々と検討を加えるという位置付けになっている」と話しています。この検討スケジュールはほぼ白紙状態のようですが、具体的な議論を進めるときには、改めてこうした現状を評価する視点も入れて頂きたいと思います。

bunkatsushin at 10:00│clip!放送部