松本 貴則

2013年02月26日

“再考”ブラッド・ピット!

 プレシディオが今年一番力を入れる作品は、ブラッド・ピット主演作『ジャッキー・コーガン』。4月26日(金)から公開される。興収目標は大台の10億円。

 ブラピはこの作品で、凄腕の殺し屋を演じている。『ジェシー・ジェームズの暗殺』のアンドリュー・ドミニク監督を再びタッグを組んだ。


 マスコミ試写で配られるプレスの中で、面白い企画があったので、ここで紹介したい。

 『ジャッキー・コーガン』公開記念特別企画“再考”ブラッド・ピット!、と銘打ち、ブラピの過去の出演作ベスト3を配給会社、宣伝会社、ライター、著名人らが選出している。得点は1位に3点、2位に2点、3位に1点を加算する方法。

 配給会社(プレシディオ)と宣伝会社(パブリシティ=レオ・エンタープライズ、WEB=デジタルプラス)の枠では、3社から33名が参加。その結果、1位に輝いたのは『セブン』(44点)。これに『ファイト・クラブ』(40点)が続く。この2作品が、圧倒的な点数を獲得しているのが、特徴と言えそう。

 一方、映画評論家、ライター、著名人の枠では異なる傾向が見えた。36名が参加。1位は『ファイト・クラブ』で、44点を獲得しダントツ。配給・宣伝会社で1位の『セブン』は21点の3位にとどまり、2位には22点を獲得した『リバー・ランズ・スルー・イット』が入った。

 マスコミ枠では、回答者から『ジャッキー・コーガン』へのコメントが付いている。皆さん鑑賞前に答えているのであろうが、かなりの期待値の高さが見て取れる。ちなみに、この枠では同じ監督・主演コンビによる前作『ジェシー・ジェームズの暗殺』が5位(17点)に入っている。

 ブラピの出演作一覧を眺めるだけでも面白い。本当に多種多様な映画に出ている。ブラピはやはり、並のスターではない。


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2013年02月12日

ブランキー・ジェット・シティの求心力

 1月30日に映連が発表した2012年全国映画概況によれば、昨年のODS全体の興収は47億8900万円を記録した。内訳は、収録ものが27億3900万円、中継ものが20億5000万円。さらに、収録ものの内訳は邦画が25億2000万円、洋画が2億1900万円となった。

 映連では、収録ものの27億3900万円を統計に算入し、2012年の年間興収を1951億9000万円と発表したが、これに中継ものも加算すると1972億4000万円。ODSの興収47億8900万円が全体に占める割合は、2.4%となる。

 この2.4%というシェアを、高いとみるか、低いとみるか、人それぞれだろう。ただ、取材をしていて感じるのは、ODSの本数は確実に増えているが、“成功”と呼べる作品が決して多くはないということ。

 一方で、この“成功”という表現も、曖昧な側面が大きい。単純に動員や興収だけでは計れない。稼働率、物販収入、コンテンツホルダーと配給や興行との関係性、映画人口拡大への寄与、そして、製作費や配給経費が相当額かかる中では、やはり収益性がもっとも肝腎だ。

 そんなことを思いながら、1月のODSの興行状況を調べ、文化通信.proにレポートを掲載した。

 当月に“成功”を強く感じたのは、ブランキー・ジェット・シティのドキュメンタリー『VANISHING POINT』。2000年7月の解散から、はや12年半。どこまで求心力があるのか、正直なところわからなかった。

 フタを開けてみれば、30代後半〜40代後半が中心となる往年のファンは勿論のこと、若年層、特に大学生と思しき男性が、友人同士で来場するケースが非常に多いとのこと。予想を超える好成績となったのは、この若年層の圧倒的支持が大きいといえる。

 解散当時、幼稚園児や保育園児、小学生だったはずの現役大学生たちが、なぜ足を運んだのか。配給サイドは、これから分析をしていく方針だ。周辺情報の一つとして興味深いのは、バンドスコア(楽譜)で最もよく売れるのが、ブランキー・ジェット・シティだということ。

 さて、内容はというと、とても面白い。メンバー間の葛藤が、痛いくらいにリアルに描かれる。長年にわたって苦楽をともにしてきた仲なのに、お互いの気持ちがわからなくなってしまう。大きな溝が生まれ、すれ違って、不安と焦燥がメンバーを襲う。バンドが解散に向かう過程で、ライブの熱狂の陰にあったドラマが、観る者を惹きつける。翁長裕監督、渾身の一作である。


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2013年01月29日

コロナが「4DX™」導入を決定

 コロナが、最新劇場上映システム「4DX™(フォーディーエックス)」の国内初導入を決めた。中川コロナシネマワールド(名古屋)に5月メドで導入し、その効果を見定めた上で、他のサイトにも順次導入していく予定だそうだ。

 この4DX™は、韓国のCJグループが開発したシステム。簡単に言えば、映画のシーンに合わせて動く座席と、風やミスト(水)などの演出効果によって、観客が映画を「体感」できる環境づくりをするものだ。

 動く座席と言えば、ワーナー・マイカルが大高(名古屋)と港北ニュータウン(横浜)に導入済みのD‐BOXがすぐに思い浮かぶ。大高や港北の導入シアターでは、通常の座席よりもD‐BOXの方が先に売れていくという話も聞くから、需要はあるのだろう。D‐BOXの料金は、鑑賞料金プラス1000円だ。

 それぞれ機能・性能の差はあるだろうが、「動く」という意味では4DX™もD‐BOXも同じと言っていい。だから、4DX™の場合、様々な演出を仕込めるところが重要なポイントになる。資料によると、風やミスト(水)、匂い、光、シャボン玉などの演出が可能だという。実際に体験してみないと分からないが、まさにテーマパークのアトラクション的なノリである。

 4DX™という名前が示すとおり、3Dの先(4D=体感型)をにらんだシステム。上映については、3Dにも2Dにも対応する。そして、料金設定が肝心要。D‐BOXと揃えて割安感を出すのか、逆にプレミアム感を出して上乗せしていくのか。

 映画をよく見る人たちに、どれだけ受け入れられるかは、正直わからない。座席の動きや演出を、好まない人もいるだろう。その傾向は、鑑賞頻度の高い人ほど強いと思われる。しかし、カップルや友人同士などで楽しめるアクションやSFの大作映画などは、効果が表れるのではないだろうか。

 “映画館離れ”という言葉を耳にするが、映画館以外の場(メディア)を通じて映画に触れる人は減ってはいない。だったら、どうやって映画館に足を運んでもらうか。いい作品を上映するのは勿論だが、それだけでは他力本願の色合いが濃い。

 他の興行者も、4DX™については当然ながら知っていた。それを、コロナが導入する決断をした。業界内の評価も気になるが、何よりも一般の観客の反応が知りたい。

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2013年01月15日

シネコン20年の節目、激動の予感あり

 2012年、全国の映画館数は減少しました。前年2011年は18年ぶりに減少に転じたわけですが、これで2年連続の減少です。昨年11月30日の「映画の日」の発表では、前年比マイナス50スクリーンほどで、年末時点で3290スクリーン前後と予想されています。

 私の業務の一つとして、1年間にオープンした映画館と、閉館した映画館を調べる作業があります。業界数社の方の協力を得ながら、年末年始の時期に、この作業をしています。今回も作業の結果、オープンは25スクリーン、閉館は63スクリーンがリストに挙がりました。差し引き38スクリーンの純減となりますから、映画の日の予想とは「12スクリーン」の誤差が生じています。

 実は、映画の日の数字と、私が調べた数字が合ったことは殆どありません。業界の方からの情報提供や、ネットを駆使して調べても、完全に調べあげるのが、実に難しい。

 正式な数字は、1月30日に映連の記者発表の場で判明します。毎年この時期は、テストの答え合わせをする学生の気分になります。

 翻って、2013年はどうなるでしょうか。シネコンのオープンが昨年は2サイトにとどまり、ワーナー・マイカル・シネマズ海老名がオープンした1993年以来、最も出店が少ない年となりましたが、今年は昨年よりシネコンの出店数は確実に増えます。春にはシネコンが数か所でオープンする予定です。一方で、同じく春までに、閉館を迎える映画館もあります。デジタル化が最終局面に入ったことで、特にローカルで閉館が一気に出てくる可能性もあるでしょう。

 2013年は、国内初のシネコン誕生から、ちょうど20年。何年か過ぎて振り返った時に、今年は「新時代の幕開け」と位置づけられるような年になるかもしれません。昨年は、興行会社の社長交代が多数あり、資本関係をめぐる動きも目立ちました。こうした出来事を、激動の時代に突入する予兆のように感じるのは、私だけではないでしょう。今年も興行会社の動向を、詳しく見ていきます。



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2012年12月25日

イオンがワーナー・マイカルを完全子会社化

 イオンがワーナー・マイカルを完全子会社化すると、先週発表されました。こうなるだろうと以前から何度も出ていた話でしたが、実際に起きてみると、これから同社が、また業界が一体どうなるのだろうか…と興味津々です。

 現在のワーナー・マイカルの株主は、ワーナー・ブラザーズ・エンタテインメントと、イオングループの小売企業イオンリテールで、50%ずつを持ち合っています。このワーナーの持ち分50%をイオンが買収し、イオンが実質100%を持つことになります。株式売買の時期は、2013年2月か3月を予定。ワーナー・マイカルとイオンの決算期は2月ですから、年度変わりのタイミングということでしょう。

 この数年の間に中国など米国以外の映画館事業から次々に撤退してきたワーナーにとって、日本からの撤退は“既定路線”だった。一方のイオンは、主力のショッピングセンター(SC)事業を強化していく中で、集客効果、共同販促など様々な面で映画館の存在価値が高まった。ちょっと端折りすぎかもしれませんが、こうした両者の思惑が一致したということでしょう。

 イオングループには、こちらも完全子会社でイオンシネマズがあります。今後は、ワーナー・マイカル、イオンシネマズの関係性に対する関心が高まるでしょう。外から見て分かりやすいのは“経営統合”ですが、異なる企業文化にある会社同士の経営を一体化するのが容易ではないことは、過去の例からも明らかです。統合するとしても、すでに部分的には協力関係を敷いている興行2社が、今後どういう道程を歩んでいくのか、注目です。

 イオンは、SCの新規出店を再び積極化していく考えにあります。その中で重要なポイントは、その立地です。イオンは車社会に即した郊外型SCで力を発揮してきましたが、今の日本は、少子高齢化、車離れに伴い、都心回帰の時代となりました。SC事業も、郊外型よりも都心型の店舗開発がより一層求められることになるでしょう。イオンはJR東日本と提携するなど、駅前立地での出店を睨んだ動きもあります。ワーナー・マイカル、イオンシネマズは郊外型SCへの出店が大半でしたが、今後はイオンの出店戦略に足並みを揃えるように、都心型シネコンの開発が必要になるかもしれません。

 ワーナー・マイカルがイオンの完全子会社になるということは、イオンの意向が経営に大きく影響してくるということでもあります。今まではワーナー側、イオン側の双方が合意してワーナー・マイカルの経営の在り方を決めてきました。実際にワーナー・マイカルで働く方々にとっては、双方の顔を立てなければならないので、両株主に挟まれてジレンマに陥ることもあったことでしょうし、裏を返せば、折半出資だったことでバランスの良い経営ができていたという側面もあるでしょう。今後は株主がイオンのみになりますから、ワーナー・マイカルにどういう意思決定を下し、それにワーナー・マイカル側が応えていくのか。

 今回の完全子会社化に伴う影響が、今後どのように表れてくるのか。私は、自らの頭の中で、想像を膨らませています。

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2012年12月11日

中村勘三郎さんの死去と、松竹への影響

 歌舞伎俳優の中村勘三郎さんが、5日に亡くなりました。57歳でした。連日の報道を見るにつけ、いかに偉大な人物であったかが、よくわかります。ご冥福をお祈りします。

 業界紙記者の立場としては、歌舞伎ということで言えば、やはり松竹への影響が気になります。松竹は、建築中の新しい歌舞伎座(第五期)の新開場を、2013年4月2日に控えています。残り4か月を切って、これから一気に盛り上げようという矢先のことでしたから、新開場に向けた告知・宣伝のあり方にも、何かしらの変更が出てくるかもしれません。

 松竹が10月に発表した第2四半期決算では、演劇事業が非常に好調でした。演劇事業は震災の影響のあった前年から急回復し、収益に大きく寄与しました。来期(2013年3月〜14年2月)は、歌舞伎座の新開場がありますから、収益への貢献度はさらに拡大することが期待されています。

 9月26日に行われた記者会見で、新しい歌舞伎座の収益への貢献度を問われ、迫本淳一社長は「(こけら落としの)演目がまだ決まっていないので計りかねるが、通常の興行より数十億円以上は寄与する見込み」と述べたことが思い出されます。

 こうした上げ潮ムードが、萎んでしまわないといいのですが・・・。


 もう一つ、「シネマ歌舞伎」についてです。シネマ歌舞伎では、来期はアンコール上映に力を入れていくことを表明しています。、新しい歌舞伎座のブームに乗って、シネマ歌舞伎のさらなる認知度アップを図っていくことが狙いです。その上映する旧作タイトルに改めて目を通してみると、勘三郎さんの主演作品がとても多いことに気がつきます。

 シネマ歌舞伎がスタートしたのは、2005年1月公開の『野田版 鼠小僧』から。この作品の主演は、勘三郎さんでした。歌舞伎の舞台を映像化して、映画館で上映するというシネマ歌舞伎は、映画館のデジタル化の進展とともに生まれた新しいビジネスの形であり、新しい歌舞伎の見せ方です。その根底には、歌舞伎ファンを新規開拓したいという願いがあります。とはいえ、シネマ歌舞伎を製作するにあたり、歌舞伎俳優からの許諾を得るのが簡単ではない中で、勘三郎さんは、シネマ歌舞伎の良き理解者であったのだろうと想像できます。

 シネマ歌舞伎の新作が作られ、公開されていくスピードが今後、減速しないといいのですが・・・。


 観客動員や売上といった目に見える影響だけでなく、あれだけ大きな存在でしたから、目に見えない影響、精神的な影響もあろうかと思います。復帰がかなわず若くしてこの世を去った故人の遺志を、どういう形で引き継いでいくのか。松竹には、厳しさと優しさが相半ばした視線が注がれているように感じます。


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2012年11月27日

映画『引き出しの中のラブレター』が舞台化

 先週、舞台「引き出しの中のラブレター」を見てきました。

 言わずもがな、映画『引き出しの中のラブレター』を原案に舞台化したものです。映画は常盤貴子主演で、2009年10月に公開されました。3年の時を経て舞台化され、11月17日〜25日に下北沢駅前劇場で上演されました。

 私は平日の夜の回にお邪魔したのですが、かなりの盛況ぶりでした。満席ではありませんでしたが、それでも9割方は埋まっていたように見えました。案の定、お客の入りは上々だったようで、初日は完売し、その後も完売する回が出たそうです。私の知る関係者の方は「十分に成功した」と興奮ぎみに話してくれました。

 中身はどうかと言えば、率直なところ、とても良かった。劇場を後にした時、私の心はとても幸せな気分で満たされていました。

 映画の主演は常盤貴子でしたが、今回は常盤が演じたラジオパーソナリティの後任者が主人公。女優・モデルの梅宮万紗子が主演しました。彼女のキリッとした美しさ、凛とした佇まい、自分の意見をスパッと言い切る力強さなど、主人公のキャラクターにピッタリでした。そのキャラクター故に、時には周囲から反発を招いてしまうこともあり、そのあたりの葛藤も上手く表現できていたと感じました。

 彼女を取り巻く他の俳優たちも、絶妙でした。何度も笑わせられ、ところどころで涙を誘われ、気がつけば終幕。観劇しながら、自分の実生活に、思いを巡らさずにはいられませんでした。舞台化を手掛けたのは、俳優兼演出家の矢島弘一がプロデュースする演劇ユニット「東京マハロ」。今回の公演は、東京マハロの第10回公演として行われました。作・演出は、その矢島弘一です。

 心に残る台詞は色々とありましたが、父親が主人公に対して言う「お前の言葉は、相手に届いているのか?」といった主旨の台詞が、ググッと来ました。普段口数が少なく、言いたいこともグッと堪えてきた父親の言葉だからこそ、心にとても強く響いてきました。

 東京公演は終了しましたが、それ以外での土地での公演も視野に入れているようです。次なる展開に注目しています。

 映画版を製作した松竹が、今回の舞台化でも動いています。映画版は、内容は高く評価されていながら、興行的には成功しませんでした。しかし今回、新たな形で収益をもたらすことができそうです。松竹は長い歴史の中で数々の名作を手掛けてきましたが、現在、過去作から新たなビジネスチャンスを生み出すような取り組みを粛々と進めているとも聞きました。継続して、ウォッチしていきます。

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