こんにちは。代表の李です。久々の更新となってしまい、申し訳ありません。
この記事では、4月に行われた新歓活動の概要を報告いたします。
なおこれらの活動については、入会していない学生も含む活動であるため、詳細な議事録の公開は致しません。ご了承ください。
…………………………………………
4/9
読書会——泉鏡花『龍潭譚』(主催:板見谷)
部室にて開催。新入生・会員合わせて、参加者20名以上。
短篇小説のため参加しやすかったということもあり、これまで類を見ない大人数での読書会となりました。進行の仕方としては、まず各参加者に「最も好きな章節」を一人一つずつ挙げてもらい、それを踏まえて小説全体のあらすじを確認。その上で、主催者の提示した論点に適宜立ち返りながら議論を進めていくという形式をとりました。
泉鏡花は明治中期以降に活躍し、独自の幻想美を小説という形式で展開した、現代でも人気の高い作家です。中でも「龍潭譚」はその幻想的な作風がいかんなく発揮された名作であり、文語体であるにもかかわらず読みやすい文体も魅力的。純粋に表現の美しさを楽しむ読み方だけでなく、妖女の正体についての考察、精神分析による見方、さらに類似した物語構造を持つ『高野聖』との比較など、議論は多方向に広がりました。
4/16
読書会——カポーティ『ティファニーで朝食を』村上春樹訳(主催:堀内)
部室にて開催。新入生・会員合わせて参加者20名弱。
前回に続いて、大人数での読書会でした。作者の遍歴、および幾つかの主要なテーマについて主催者から説明があったのち、自由に議論を行うという形式で行いました。
カポーティの作品は昨年12月にも扱っていますが、そのときの作品(『遠い声、遠い部屋』)とは作風が異なり、またカポーティの作家遍歴の中でも異色の作品と言えます。O・ヘップバーン主演の翻案映画は原作以上に有名かもしれません。
読みやすい文章である反面、捉えどころのない部分も多い小説であり、議論は複雑に進みました。人格の複数性・多重性を持ったホリーは、安らげる場所を希求しながら絶えず「トラヴェリング」する存在であり、受動的な主人公は彼女の本質に辿り着けません。「まやかし」「空の牧場」「いやったらしいアカ」といった、彼女の性格/価値観を示す詩的な表現の数々も印象的です。その他、兄であるフレッドの存在や、ニューヨークやブラジルといった都市の持つ象徴性についても話し合いました。
4/23
文章会——自由創作
渋谷の会議室にて開催。新入生・会員合わせて参加者18名。
二班に分かれ、新入生の作品を中心に扱いました。18世紀末の海外文学から現代日本文芸まで、各々の関心ある分野からの影響を読み取れる作品が集まり、新入生の文学的素養の豊かさを感じることができました。すでに在籍している会員にとっても無論、大いに刺激になりました。98号以降での活躍が楽しみです。
4/30
読書会——小川洋子『ブラフマンの埋葬』(主催:李)
渋谷の会議室にて開催。新入生・会員合わせて参加者16名。
現代文芸かつ女性作家からの選書となりました。平易な言葉で紡がれる幻想的な作品ですが、決して読解は容易でなく、一人称の語りによって認識に死角が生じているといえます。雑貨屋の娘に対して執着するような視線を浴びせ続けながら、その感情を表出しない主人公に対して、気持ち悪い、という率直な感想もありました。
ブラフマンの愛らしいイメージと、その動物を取り囲む環境の冷たい質感とが対照的に描かれている点も注目に値します。周囲から隔絶された町が抱える閉塞感、死の予感、匿名の登場人物、ブラフマンの「監禁」などからは、小川洋子の他作品(『密やかな結晶』『薬指の標本』など)に共通するテーマも見出せました。
(すべて文責は李)
この記事では、4月に行われた新歓活動の概要を報告いたします。
なおこれらの活動については、入会していない学生も含む活動であるため、詳細な議事録の公開は致しません。ご了承ください。
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読書会——泉鏡花『龍潭譚』(主催:板見谷)
部室にて開催。新入生・会員合わせて、参加者20名以上。
短篇小説のため参加しやすかったということもあり、これまで類を見ない大人数での読書会となりました。進行の仕方としては、まず各参加者に「最も好きな章節」を一人一つずつ挙げてもらい、それを踏まえて小説全体のあらすじを確認。その上で、主催者の提示した論点に適宜立ち返りながら議論を進めていくという形式をとりました。
泉鏡花は明治中期以降に活躍し、独自の幻想美を小説という形式で展開した、現代でも人気の高い作家です。中でも「龍潭譚」はその幻想的な作風がいかんなく発揮された名作であり、文語体であるにもかかわらず読みやすい文体も魅力的。純粋に表現の美しさを楽しむ読み方だけでなく、妖女の正体についての考察、精神分析による見方、さらに類似した物語構造を持つ『高野聖』との比較など、議論は多方向に広がりました。
4/16
読書会——カポーティ『ティファニーで朝食を』村上春樹訳(主催:堀内)
部室にて開催。新入生・会員合わせて参加者20名弱。
前回に続いて、大人数での読書会でした。作者の遍歴、および幾つかの主要なテーマについて主催者から説明があったのち、自由に議論を行うという形式で行いました。
カポーティの作品は昨年12月にも扱っていますが、そのときの作品(『遠い声、遠い部屋』)とは作風が異なり、またカポーティの作家遍歴の中でも異色の作品と言えます。O・ヘップバーン主演の翻案映画は原作以上に有名かもしれません。
読みやすい文章である反面、捉えどころのない部分も多い小説であり、議論は複雑に進みました。人格の複数性・多重性を持ったホリーは、安らげる場所を希求しながら絶えず「トラヴェリング」する存在であり、受動的な主人公は彼女の本質に辿り着けません。「まやかし」「空の牧場」「いやったらしいアカ」といった、彼女の性格/価値観を示す詩的な表現の数々も印象的です。その他、兄であるフレッドの存在や、ニューヨークやブラジルといった都市の持つ象徴性についても話し合いました。
4/23
文章会——自由創作
渋谷の会議室にて開催。新入生・会員合わせて参加者18名。
二班に分かれ、新入生の作品を中心に扱いました。18世紀末の海外文学から現代日本文芸まで、各々の関心ある分野からの影響を読み取れる作品が集まり、新入生の文学的素養の豊かさを感じることができました。すでに在籍している会員にとっても無論、大いに刺激になりました。98号以降での活躍が楽しみです。
4/30
読書会——小川洋子『ブラフマンの埋葬』(主催:李)
渋谷の会議室にて開催。新入生・会員合わせて参加者16名。
現代文芸かつ女性作家からの選書となりました。平易な言葉で紡がれる幻想的な作品ですが、決して読解は容易でなく、一人称の語りによって認識に死角が生じているといえます。雑貨屋の娘に対して執着するような視線を浴びせ続けながら、その感情を表出しない主人公に対して、気持ち悪い、という率直な感想もありました。
ブラフマンの愛らしいイメージと、その動物を取り囲む環境の冷たい質感とが対照的に描かれている点も注目に値します。周囲から隔絶された町が抱える閉塞感、死の予感、匿名の登場人物、ブラフマンの「監禁」などからは、小川洋子の他作品(『密やかな結晶』『薬指の標本』など)に共通するテーマも見出せました。
(すべて文責は李)