2005年06月14日

亀田次郎・音韻考証(新潮日本文学大辞典)

d89d19b9.png音韻考證 おんゐんかうしょう 語學書 巻数不定
【別名】「皇國釋音」「皇國譯音」
【著者】黒川春村
【成立】文久二年頃
【諸本・内容】赤堀氏の「國語學書目解題」に出て居るのは、二十二卷本であるが、他に一卷本が二種ある。一は序も跋もなく、内容は、
(一)大意、
(二)古音、
(三)二音讀.
(四)清濁、
(五)三内聲、
(六)連聲、
(七)唇舌通用、
(八)轉音、
(九)んむ字、
(一〇)韻鏡、
(一一)悉談
の十一章に分け、日本古代に用ひた漢字の音韻を研究したものである。
一は、白井寛蔭の序(文久二年九月)があり、凡例の終りに、文久二年五月とある。
「音韻考證凡例」と標して「字音は一字に衆音あり、其衆音ある事を.豫メ意得たらねば、目馴たる常呼轉音等に拘泥《なづみ》て、却て漢呉の正音を、轉音にやなど惑ふ事あり(中略)、まづ漢音あり呉音あり、漢呉に拗直疾音あり、上略中略下略音あり、古音あり今音あり、轉音あり轉韻あり、郷音あり唐音あり、俗音あり訛音あり、(中略)但如此標せるは、其大較の目にして、古音即郷音なる、郷音即唐音なる、唐音即轉音なる、轉音即俗音なる類、互に通じて一定しがたく、判然とは決め難きものあり」と云ひ、また反切の法を等閑にすべからずと云つて居る。
次に、「皇國釋音音韻考證凡例」と標して「皇國の古典をおろおろ讀解むには、古音をも普く索《さぐ》りて、其|易《やす》らかに讀得べき限は、異《こと》やうならずよまゝほしき業なり。さるを假令日本書紀に、茂羅玖毛《モラクモ》と見ゆるは聚雲《ムラクモ》なるを.モラクモとよみ、(中略)萬葉の眞祖鏡《マスカヾミ》をもマソカ丶ミとのみ呼なれたる類、古書どもに許多《そこばく》見ゆるは、ただ後世の常呼に目馴れて【常呼或は通音との云ふべし】故人の字音に密なりし事をば、さる所以ありとも思ひたどらず、古言は今と異なるものなど、なほざりに思ひ過せる、先輩の失にぞありける」と云ひ、自分は古言の音韻の事を研究すること三十餘年になつた。その間の藁案をこゝに整理したのである。
さて音韻の書は數部あるが、漢呉音圖(別項)が最上である。それは喉舌唇の三内の韻を分ち縱横貫通の發明を規矩とし、假字遣も正しいからである。この漢呉音圖を基とし諸書を參酌して音韻を研究したものが、本書であると云つてゐる。本文は、蓬・蒙・風・楓等から、勠・戎・肉等まで、約百四十の字について諸書を考證して音韻を研究してゐる。附録として支那・日本に於ける韻鏡の來歴を記し、享祿本以下「韻鏡發輝」まで三十六種の韻鏡を解題し、(但この解題は岡本保孝の研究を春村が増訂したもの)、次に十六通攝攷、古音傳來辨、尾音ノ説.拾遺集物名紅梅假字辨、英人艾約瑟が音韻の説等について記して居る。
なほ「音韻考證緊要鈔」と題する一冊がある。「享祿本韻鏡」「磨光韻鏡」(別項)「韻鏡易解」(盛典著)「字音假字用格」(別項)「漢呉音圖」(別項)等の異同を比較し.正誤を論じたものである。本書は草稿のまゝで傳はつたものらしく、前記一册本の如き.「緊要鈔」の如きはその一部分であると思はれる。
【價値】本書は前記の如く「漢呉音圖」を初め.音韻に關する諸書を比較研究し、その結果を以て、我が上代の漢字音假名遣に資したので、研究としては「漢呉音圖」よりも一歩を進めたものと云ふ事が出來る。      〔龜田〕


bunkengaku at 23:14│Comments(0)TrackBack(0)clip!辞典項目 

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔