2005年06月22日

亀田次郎・鹿持雅澄(新潮日本文学大辞典)

678f2d3d.png雅澄 まさずみ 國學者【姓名】鹿持氏。
【業績】雅澄の最も大きた業績は、彼以前の萬葉集研究を大成して.「萬葉集古義」(別項)を完成した點であるが、更に「萬葉集」を中心とする上代國語の研究から.幾多の國語學書を著はしてゐる。いつれも豊富な學殖と獨創的な識見とから生れたもので、その學術的價値は甚だ大なるものがある。即ち動詞古形の研究の如きは、實に前人未發の見であり、延約・手爾乎波・國語音韻等の研究は.宣長・春庭等の研究の上に更に一歩を進めたもので、頗る傾聴に値するものであり、「萬葉集品物解」「同枕詞解」の如きは、一種の萬葉集辭典として.今日もなほ最高の權威を保持してゐるものである。ただ惜しむらくは、雅澄の時代が、幕末の物情騷然としてゐた時であり.又その生涯を土佐で送つた爲めに、その學説は明治の中期に至るまで中央の學者に多く知られなかつた。故に學界に與へた直接的影響は.その研究の深さに比例しなかつた。

〔活用に關する研究〕「用言變格例」一册(別項)動詞の活用は四段活用が根本で.他は四段活用から轉生したものであると説いたもの。

〔手爾波の呼應に關するもの〕
「鍼嚢《はりぶくろ》」(一名「歌詞三格例」)二卷二册(別項)。
「結詞例」一卷一册。「萬葉集」及び「古事記」「日本書紀」等の結辭を蒐集し類別し、奈良朝と平安朝以後との相違を研究したもの(明治二十七年刊)。

〔延約に關する研究〕
「雅言成法」二卷二册(別項)、
「舒言三轉例」一卷一册(別項)。

〔國語の音韻に關する研究〕
「言靈徳用《ことだまのさちはひ》」一卷一册、上代國語の音韻を研究したもので、一音の語は凡て滴音、二音以上の語は初めの音は清音、中の音は濁普になる事がある。下の音は濁音或は半舌音に成る事があるが、それ等は何れも正昔である。而して語の初めの音が濁音又は拗昔に成つてゐるのは不正音であると云つてゐる(明治廿六年刊)。

〔辭書類〕
「古言譯通」本文四卷・目録一卷(天保八年成.明治廿六年刊).「萬葉集」「祝詞」「宣命」等の語を五十音順にして口語譯を附した辭書。
「萬葉集枕詞解」五卷(文政五年成る。明治廿七年刊。爾後數度刊行)。「萬葉集」の枕詞を解釋したものであるが、「古事記」「日本書紀」等に見える枕詞も併せ解いてゐる。
「萬葉集品物解」四卷、目次一卷(別項)。
「萬葉集品物圖繪」三册(別項)

その他、「玉蜻考」一卷(文政六年成。明治廿七年刊)は、「玉蜻」「珠蜻」等を「たまかぎる」と讀むべき事を考證したものである。   〔以上龜田〕

【參考】鹿持雅澄翁傳 井野邊茂雄(國書刊行會本萬葉集古義首卷)
○土佐に於ける萬葉學の源流 佐佐木信綱(史學雜誌二八ノ七)
○鹿持雅澄 尾形祐康

前半部、閲歴等は森銑三。


bunkengaku at 11:19│Comments(0)TrackBack(0)clip!辞典項目 

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