January 11, 2008

『誰か Somebody』 宮部みゆき 【by ぶんこや】3

誰か (文春文庫 み 17-6)


 宮部みゆきさんの作品は、「犯人をさがす」というよりも「誰かをさがす」ものが多くあるように思える。『火車』『理由』などがわかりやすい例だろう。事件を起こした犯人というかたちに焦点をあてるのではなく、その人物は誰なのか、どんな人間なのかをじわじわと追っていくような感があり、そこが普通の謎解きミステリーとひと味ちがうところでもある(と思う)。
 『誰か』はまさにたくさんの誰かを追う物語だ。ひき逃げ事件の犯人は誰か。幼かった被害者の姉娘を拉致した人物とは誰か。被害者のもう一つの顔、過去のその人は誰か(どんな人間だったのか)。聞き覚えのある着音の携帯を鳴らしたのは誰か、妹を脅迫したのは誰か、非通知の電話の主は誰か、被害者が事件の日に訪ねていったのは誰か、事件を目撃して具合が悪くなってしまったのは誰か、誰か誰かだれかだれかダレカ・・・・・・(笑)
 パズルが全部組み合わさってその「誰か」がわかれば、実になんてことのない事件(まさに「この世に不思議なことなどないのだよ」ってやつでしょうか 笑)であるのだが、その「誰か」がわからないゆえに、たくさんの憶測が飛ぶ。疑惑が起こる。轢き逃げされた被害者の娘たちに依頼されて謎を解き明かす、さる大会社の会長の娘婿である、いわゆる逆玉の杉村三郎は、冷静に堅実に真実に近づいていく。
 今回の探偵役主人公である杉村は、非常に地味なキャラでありながら、魅力的だ。彼は「幸せのありか」をきちんと知っている。立場や状況として、さまざまなものに流されてもおかしくないのに、自分と自分の大切なものがちゃんとわかっている。
 このストーリーは、犯人をさがす、誰かをさがすミステリーではなく、幸せのありかをさがす物語だ。


【かなり地味だけどやっぱり"宮部作品"でした★ ぶんこや】
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bunkoya at 21:56│Comments(7)TrackBack(1)clip!宮部みゆき 

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1. 心に巣くう悪意  [ 活字の砂漠で溺れたい ]   January 12, 2008 16:36
人は一人では生きていけない。 いや、むろん一人で生きていけない ということは無いのだろうけれど、 それはやっぱり、人が生きていく上に置いては、 とても辛いことなのではないだろうか。 かといって、 いつでも多くの人に囲まれて暮らしたり、 多くの人をはべら....

この記事へのコメント

1. Posted by HANA   January 12, 2008 00:17
「犯人」や「動機」をさがすのではなくて「幸せのありか」をさがすのね。奥が深いわー。
2. Posted by JRTパパ   January 12, 2008 00:29
ぶんこやさん、こんばんは♪

相変わらずすばらしいレビューですね。
なんかもう一回読んでみようかって気になります。これからも参考にさせてもらいますのでヨロシクです^^
3. Posted by ぶんこや   January 12, 2008 04:49
>HANA
 ほとんど思いつきでかいた言葉に反応されては焦るわー。って、思いつきとかインチキとかそんなんばっかり書くなってか?(汗)

>パパさん
 >なんかもう一回読んでみようかって気になります
 もーどうしようって感じです。おおかみうそつき少年ピーターになった気分。あんまりテキトーなことかけないですね・・・(汗)
4. Posted by yori   January 12, 2008 16:42
ぶんこやさん こんにちは
>幸せのありかをさがす物語だ
ああ〜 そうかもしれませんね。何気ない、とても小さな事件と事件の狭間で、私達は生きているわけですから。生きることはさがすことなのかもしれませんね!!
5. Posted by ぶんこや   January 13, 2008 22:13
yoriさん。
ミステリーって結局はみんなそうなのかもしれないんですけどね。
みんな己の幸せを追求するがあまり、犯罪を犯してしまったり、人を傷つけてしまったり・・・もちろんそうじゃないこともありますけど。
この作品は、そのへんのことがすごくわかりやすかったような気がしたんですよ。
6. Posted by 樽井   January 15, 2008 23:37
はじめまして、yoriさんのところから経由してやってきました。この本、自分も最近読んだのですが、後味が悪い状態でした。それが、「幸せのありかをさがす物語」という言葉で少し救われた思いです。
 これからもときどき顔を出すかと思いますがよろしくお願い致します。
7. Posted by ぶんこや   January 18, 2008 11:23
樽井さん、はじめまして。
私もyoriさんのところでいつもお名前をお見かけしていたので、いらしていただいて嬉しいです!
「幸せのありかをさがす物語」ということばに反響が多くて少々焦っていますが(笑)、この主人公の生き方はまさにそんなかんじだと思いませんか? 事件の後味の悪さも、幸せと己の欲との区別がつかなくなったことからくると思うんですよね。
いずれにしても、樽井さんのようなコメントはとてもうれしいです! ありがとうございました。

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