November 14, 2008

『長い長い殺人』 宮部みゆき 【by ぶんこや】4

長い長い殺人 (光文社文庫)
長い長い殺人 (光文社文庫)


(ぶんこや再読シリーズ)

 これを読んだ当時は、わたしはまだ駆け出しのミステリー読者で(笑)、ミステリーが何たるものかはほとんどわかっていなかった。だから、これを初めて読んだときも「ふうん。おもしろいな」程度の感想しか持たなかったのではないかと思う。それもそのはず。この頃にはまだ『理由』も『模倣犯』も書かれていなかったのだから。
 改めてじっくり再読してみて、この作品は、構成・手法の点で『理由』の、キャラクター設定(つまり犯人像)の点で『模倣犯』の下地となっているものだと強く感じた。『理由』のルポ的な第三者的な書き方を、この作品では「財布」の口を借りて行っている。それぞれの人物にもっとも近い場所にいつも一緒にいる財布。しかし人物の心の動きを読み取ることはもちろんできない、モノでしかない財布に語らせることにより、人物の行動を客観的に語っていく。なるほど、この距離感が『理由』で昇華されたんだ。犯人のキャラクター設定も、まだこの作品の時点ではしっかり練られていない部分が、『模倣犯』のピースで完結されている。そういう視点で読むと、『理由』『模倣犯』をこの世に生み出す下地になったこの作品は、非常に貴重に思えてならない。
 初めて読む人のために内容を少々。
 事件はある若い男がひき逃げされたところから始まる。容疑者として若い男の妻、そして妻の愛人が浮かび上がり、保険金殺人容疑がかかる。刑事の財布からはじまり、目撃者の財布、探偵の財布、死人の財布など、事件に関係する人物たちの財布のそれぞれの視点から事件の断片が語られ、最後は犯人の財布で幕を閉じる。財布に語らせるなんて子供っぽい手法だ、などと思ってしまった人、子供っぽいかどうかは読んで確認するべし(笑) 今さらとりたてて言う必要もないけれど、やはり宮部さんは常人ではない。


【最近こういう宮部ミステリーが出てない気が・・・】
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bunkoya at 23:06│Comments(2)TrackBack(0)clip!宮部みゆき 

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この記事へのコメント

1. Posted by yori   November 15, 2008 22:01
ぶんこやさん こんばんは
読んだような気がしていましたが、この本は未読でしたねえ〜 ということに記事を読んで思い至りました 苦笑 なるほど、子供っぽいかどうか、私も確認しなければいけませんね!! 
2. Posted by ぶんこや   November 17, 2008 01:21
 そう。
 yoriさんのところでTBしようと思って記事さがしたら、ないんだもん!(笑)
 読んでくださいな。この後の代表作から比べると、まだまだ練られていない部分も少し感じられますが、おもしろかったですよ。

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