Days

日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。

5

監督:デイヴィット・シントン
劇場:池袋シネマサンシャイン

 邦題では「ザ・ムーン」だが洋題のほうがカッコイイと思う。長すぎて馴染みにくいので短くしたのだろう。daysのほうにも書いたが祝日の水曜日の昼間、しかも公開終了まであと日数もわずかだったので人の入りがすごいすごい。見終わった後にパンフレットをもらおうと列を作ったら俺で丁度終わってしまって「見本でいいですか」と聞かれた。こんなの初めてですね。

 率直に言えば、やってるところではまだやってるし、ミニシアターでも時間差で公開が始まると思うので、ぜひ劇場で見て欲しいなと思える映画だ。NASA蔵出しの映像が綺麗なことの感動だけでなく、ニール・アームストロングが足を踏み降ろす時の感動や、アポロ13号の乗組員が帰還したシーンなどの感動を周りの観客として味わって欲しい。NASAの映像はありえない角度からとってる映像もてんこ盛りで、素晴らしいとしか言えない。そう思うより何より、見とれてしまうあたり意図にはまってるなあと我ながら思ってしまったが。

 映画の構成は元アポロ飛行士12人の証言とNASAの蔵出し映像を元に進む。元に進むも何もそのつぎはぎでしかない。ただその両方が素晴らしすぎる。40年近く前のことを昨日のことのように飛行士は語るし、その口調は誰もが少年のような純粋さを伴っている(特に12号のアラン・ビーンが面白い)アメリカとソ連という冷戦構造下の政治手法の一つとしてロケットの打ち上げがあっただけと言えばそれまでだが、理由はどうあれまだ誰も見たことも行ったこともないところに自分が立つことができる。一瞬にして世界中のヒーローになれる。少年のあこがれというか男のロマンというか。そういうあどけないとこから始まる物語であるからこそより映画としても盛り上がっている。

 時間が進むにつれ証言が月、地球、宇宙について語るシーンが続くが、ここが監督が一番演出したかったことなのだろう。ある者は月の極限のモノクロの世界に畏れを感じ、ある者は宇宙から見る地球のちっぽけさに絶句する。彼らが語る宇宙論がひいてはある種の生命論にまで及ぶとは思わなかった。地球では得られないものがあるという意味では宇宙こそ悟りの境地と言ってもいいのかもしれない。日本の浄土論は実際にそういう方向性だと思うし(ここではないどこかへ、という意味では)それがなんたるかは映像を見てくれればいい。映画であることのいい点は、映像を映すだけではなくストーリーを伴って演出することができる点であろう。ただ茫漠と宇宙の映像を見せられてもなんじゃこりゃ、と思うが、この映画において飛行士の証言とNASAの映像、そして映画の構成が三位一体となってクライマックスへ向かうシークエンスはたまらない。

 本当の世界一のヒーローとなったニール・アームストロングは残念ながら過去の映像のみで証言の場には立ってない。だが、だからこそ11号の他の乗組員が語る彼の像や若々しいころの映像が巧みに組み合わさることであたかもそこにいるかのような、いわば不在の在を感じさせる。監督がどこまで意識したかは分からないが、結果的にそういったイレギュラーな構成を演出していることが魅力の一つだろう。そういうことによってニール・アームストロングは永遠のヒーローになっているようにも思う。

 今この映画を見ることができるというのは不思議な気分だ。語られた歴史でしかない出来事なのにどうしてこれほどまで感きわまるのだろうと。それはまだまだ宇宙という存在が人間には遠く手の及ばない存在であることが一つだし、アポロ計画以後に月に降り立った人はいないということもある。衛星はどんどん遠くに進み映像や画像は定期的に届けられ、近いうちに地球のような惑星が見つかるだろうともいわれる。ヨーロッパでは加速器を使って素粒子を衝突させて宇宙の起源を知ろうという巨大実験が行われていたりもするし、その素粒子理論で昨年日本人がノーベル賞を受賞するにまでいたった。でも、それでも微々たる一歩でしかなくて、月に降り立ったというインパクトにはどうしても劣ってしまうからなのだろう。(もちろん微々たるところから全てが始まるのでありそういったことの功績は認めるべきだと思う。だが、単純にインパクトの鮮烈さでとらえるとアポロ計画には今の時点では及ばないと思う)今年はガリレオが月を見上げて400年の世界天文年ということらしいから、単純にもう一回月って何?宇宙って何?ということを考えようということなのかな。行き過ぎた軍事的な利用の可能性も否定できない現代だし、証言にもあったが宇宙から地球の姿が汚れている現在でもあるので、そういったことを思いながら見つめて欲しいと思う。あんまり好きな言葉じゃないんだが、宇宙に対して純粋だった古き良き時代を。

 そして隣の人のコメントが面白い。「あのラストはいらないね。あれがなければ完璧だった」というラストは平井堅の日本版主題歌でした。うんあれは逆に余韻をそいでると思うよ、残念。思わず笑ってしまったが。あとは、本物の英語だけで最後まで攻めて欲しかったなあと思う。そういう意味では日本語字幕もあるけど聞き取れる範囲は英語のほうが面白いと思う。証言の部分なんかは本当に言葉に気持ちの高まりが表れるので。音楽が引き立てるシーンも多かったので、最後の最後にあれはないよなあと思うしかなかったのでした。
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