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日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。



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 原作は2001年のものといまから見るとやや古いが、2012年に京アニによってアニメ化されたことで知名度が増したタイトルを実写映画化、という試みはいささか予想外ではあった。古典部シリーズは米澤穂信の代表作としても十分に数えられるほどのものとなっているが、その一作目だけを映画化してもどれほどの反響があるかは知れない。この映画が当たったとは到底思えないし、各サイトの評価もさほど高くはない(むしろ低いと言ってよい)が、個人的にはいくつかの変更を踏まえたうえでオーソドックスに原作を焼き直したんだな、と見た。

 まず折木姉が異国を旅している情景から始まる、というのもアニメにはほとんどなかった点である。映画でも姉が登場してくることはなく、あくまで声と手紙から印象づけるしかないわけだけど、それでもこの物語において遠くにいるはずの姉が重要な役割を果たす、ということだけは明確なメッセージになっている。その後のいくつかの謎解きや展開(たとえば壁新聞部への言及がほとんどないことなど)、そして関谷純の「名前の読み方」などに若干の変更を加えながらも、京アニが現代を舞台としたのに対し、実写版は原作に準拠される2000年を舞台としているところも、原作の焼き直しへの意識を強くした。

 これにどういう意味があるかというと、京アニ版のように古典部のメンバーがスマートフォンで連絡を取り合うことはないし(まあそもそもアニメでも少なかったが)1967年への言及が、33年前(という形で原作と同じだけの距離感を持っていたことだ。これはわりと大事なことかなと思っていて、2012年と2000年ではちょうど12年分、干支でいうと一巡するくらいの距離があり、2012年から1967年へは45年間という、ほぼ半世紀の時間が横たわる。これは主観的なものでしかないかもしれないが、33年間と45年間とを同列に扱うことは少なくともできないだろうし、後者はずっと昔のように思えても、前者なら少し昔、くらいになるかもしれない。ちなみにいまから振り替える33年前はプラザ合意のあった1985年であるわけだから、やはり遠い昔とは言えない程度の距離感だと思う。

 まあそれはそれとして、実写版が京アニ版を意識したかというと、そこまで強く意識しておらず、むしろ原作を映像化することに意識が向いたのではないか、ということだ。それは淡々と小さな事件を解決しながら(鍵のかかった部室の謎、学校史の謎など)少しずつ関谷純と氷菓の謎に接近していく。ここまでならいい。そして映画の特徴的なところは、関谷純と氷菓の謎を、よりリアルな、生々しいものとして奉太郎たちの生きる2000年に持ってきているあたりだろう。

 アニメでは影でしかなかった関谷純に、映画では本郷奏多という役者が与えられているし、彼の「同志」たる学友や、「敵」である教職員たちも、それぞれの役者がリアルに演じている。アニメでは影として描くことで、それはあったかもしれないしなかったかもしれない、(推理から構成される)一種の想像的な産物として描いていた節もあったが、映画では33年前の闘争や関谷純の存在は、それはおそらくあったのだろう、というものとして描かれている。ここのスタンスはアニメと大きく異なるところであり、もしかしたら原作ともかなり違うところと言えるかもしれない。(原作の場合、アニメ版、映画版のどちらの解釈でもとれるだろうと思っている)

 いずれにせよ、「氷菓」と題したこの映画はあくまで古典部シリーズの一つ目というよりは、米澤穂信のデビュー作『氷菓』を2017年に映画化すること、にこだわっていた気がするのだ。「氷菓」の謎をメインに仕立てるための前座としてのいくつかの小さな謎の配置、そして糸魚川養子の新しい解釈。これらは確かに、氷菓の謎を中心に据えるためには、重要なこだわりだったように思う。

 その意味では、細かな改変も含めて、オーソドックスに原作を再構成して映像化したものだ、と個人としては受け止めた。シリーズ作品を映像化しようというアニメ版とは、だから自然とスタンスが異なる。それがアニメで古典部を知った多くの人たちにウケなかったのもよくわかるし、映画として当たらなかったのも、少なくともマーケティング的には致し方ない。

 けれどまあ、元々の原作読者からしてみれば、これはこれで一つの解釈としてはアリなのかなと、千反田えるを演じる広瀬アリスの大きく美しい目を見て思ったのだった。あと伊原摩耶花役の小島藤子さんがよかったと思います。


氷菓
山賢人
2018-03-07



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