Days

日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。

監督:窪田崇
原作:本多孝好(『Fine Days』収録の同名短編)
脚本:清水友佳子
主演:塚本高史、原田夏希

劇場:シネマート六本木

 原作にはないアイデアや人物も盛り込みながら、2時間という時間を長いとも短いとも思わせない作りよう。原作でそれほど意識しなかったことも時間をかけて表現していたように思う。純粋であること、いられることの意味。夢を見続けることと、引き際。そうした心理的変化はむしろ短編小説で扱うにはやや物足りなさ過ぎるのかもしれない。だからか、原作つきの映画にしては良作だったように思う。それ抜きにしても話の持つ力、派手ではないけどクレッシェンドのように終盤に向けて大きくなるそれに魅入られる。最後はちょっと綺麗すぎるかな、とも思うけれど、タイムパラドックスに反してはいないからそれくらいはいいでしょう。ちなみにタイトルとビートルズは関係ない、と思う。


 柳田聡志は、父である昭彦が癌で入院したことで病院に呼ばれる。症状は末期で、持って数ヶ月の命だという。昭彦の手がけるレストランチェーンの手法や行き違いから子どものころから反発してきた聡志。死期にある昭彦が聡志に最後の願いを託す。曰く、「30年前に別れた女性を捜して欲しい」とのこと。無茶な願いに最初は反発する聡志も、父のスケッチブックを握って興味本位で人捜しを始める。最初に訪れた昔その彼女、真山澪が住んでいたというアパートを訪れると、そこには若き日の父と真山澪がいた。とっさに遭遇した彼らに名前を聞かれた聡志はとっさに山崎(原作によれば友達の名字の拝借らしい)と名乗り、彼らと交流を始めることにする。

 タイムトラベルで人捜しをするという、ある意味ミステリとしてはずるい手法ではあるが、原作にはなかったある工夫が上手い。まあこれはミステリでもなんでもなく純粋な恋愛ものであり、青春ものであるからタイムトラベルという手法は気にはしないが、ある工夫を相まってロマンチックすぎる。

 父親の昔の彼女、真山澪を演じる原田夏希がなかなか好演している。ルックスは黒髪長髪の日本美人という感じだが、第一印象では栗山千明の見せるような圧倒感はない。むしろおっとりと静かにしているという感じが受ける。最初はそうだった。ただ、仕草ひとつひとつ、目線の一つ一つを見ていると内心はかなり強い女性像、というものを演じきっていると感じた。大げさに涙するシーンも、キスをするシーンもある一点をのぞいてはない。そんな近くて遠い、確固とした存在を持ったヒロインと一体化しているように思えた。

 監督曰く、テーマは「決断」とのこと。観る前はそれを知らなくて、最初は現実と夢のギャップを描きたかったのかな、と単純に思ってたんだがもっと別なものに後半急速にシフトしていく様はなかなか面白かった。後半では前半部分をある分では夢を否定しつつ、別な分では夢大きく肯定していく、その過程が心地よかったのかもしれない。それが間接的に、聡志の自分自身に対する「決断」をさせ、父親をどのように見てきたか、見ているかということを気づかせる。

 一番メッセージとして感じたことは、後悔を否定すること、なのかなと。それぞれが映画の中で決断を下していっても、後悔は誰もしていない。未来へ進むということは何かを失いながら生きていくということでもある。そういう風に映画そのものが現実と向き合うことからスタートしているから、終盤の感動が生まれるのだろうと思う。恋愛ものとしてはハッピーエンドではないかもしれないが、映画としては単純なハッピーエンドを軽々超越する感動を持っている。それでこそ面白い。

 で、最後に榎本くるみが書き下ろしたという主題歌がまだいいんだな、これ。最後の余韻が抜けきらないままあの歌を聴かされたらたまったもんじゃありません。隣の女の人はハンカチで顔を覆ってたし。あらすじを知ってるからなんともないと思っていた俺も、ちょっと涙腺がゆるみかけた。ラストシーンは恋愛ものには珍しく男のほうが感動するんじゃないかなと。それくらい昭彦役の國村隼の存在は大きい。ほとんど台詞はないに等しいが、見るたびに思うが表情と存在で語る人だ。塚本高史の涙はあまり似合わない気がしたが。

 いわゆる切ない系や、泣ける映画だとか、流行の映画に見飽きた方に見て欲しい。原作を読んだ人にはもちろん見て欲しい。本多孝好テイストに加え、映像で見るからこそ味わえる体感を十分に感じられると思う。
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