「論座」12月号に宮内オーナーのインタビューが掲載されました。インタビュー自体は10月15日に行われたもので、この時点ではどちらが参入するか決まっておりません。基本路線は以前東洋経済に掲載されたものと変わりませんが、だんだんエスカレートしているような気がします。なお、長いので要約しています。

「球界改革は頓挫した」

−−今回の再編問題ではメディアも世間も一貫して経営者側に厳しかったようだが。

 「古田はかっこいい」「どこどこのオーナーはけしからん。老害だ」「何で参入させないんだ」という論調ばかりだった。この問題の本質はそうではないのに違う話ばかりしている。

−−本質は何か。

 まず、プロ野球は何なのか、と言うことだ。民間事業だというなら、われわれは資本主義下の経営として否定されることは何もやっていない。もし公共事業だというなら12球団全部撤退すべき。政府から補助金をもらってやればいい。
 プロ野球は経済原則で動いてきた。近鉄がその原則に従った結果「もう続けられない」となったから今度の騒動が始まった。

−−経済原則に従うなら1リーグ制にすべきだということか。

 最初は近鉄が辞めたいという話で、1リーグ制はあとで浮上した。近鉄は何年も見売り先を探して見つからず、命名権売却もだめになった。近鉄が辞めてしまったらパリーグが崩壊するので、同じ関西の球団として統合を考えた。
 プロ野球のビジネスモデルは、12球団個々の経営は別々だが、全体が繁栄しないとそれぞれも成り立たないと言う不思議な構造になっている。アメリカンフットボール、バスケットボールなどアメリカのスポーツビジネスもそう。ただアメリカ大リーグと根本的に違うのは、アメリカにはコミッショナーが強力な胴元役としてメンバーをまとめる力を持っているが、日本はばらばらだということ。

−−実際には巨人が胴元役を果しているのでは。

 代理的にやらざるを得なかったと言うことだろう。コミッショナーがきちんと機能していれば今回ももっといい形の改革ができたはずだ。日本的な「なあなあ」で変化を求めずにやってきたと言うことが現状を招いた大きな原因だ。

−−1988年に阪急ブレーブスを買収したときには気づかなかったのか。

 わかっていた。中に入れば改革できると言う甘い期待もあった。今俎上にある交流戦やドラフト制度などの問題は我々がこれまで球界に提起してきたことばかりだ。

−−他球団の反応は。

 我々には12分の1の発言権しかないので、4分の3以上の賛成を得られず、途中であきらめた。
 その次にとった行動は自分たちでできることを独自でやろうということだった。たとえば「ボールパーク構想」で球場設備を改善したり、ファン開拓など地道な努力を続けた。チームとしてできることは全部やったと言う満足感もある。しかし十分にはお客さんが来てくれない。球場が満員になることもほとんど無い。「赤字のくせにそんなことをやっているのか」となって、真似する球団は出てこない。

−−しかし、赤字でいいという球団はないのでは。

 私は12球団を巨人、巨人を除くセ5チーム、パ6チームの3つに分類している。巨人が強かったからある意味でプロ野球は繁栄できた。セ5チームは巨人とさえ対戦できればいいので巨人の言うとおりやっていればよかった。パリーグは「広告宣伝」「優勝セール」などの呪文を唱えることにより赤字を是認し、セリーグに対し我慢比べをしてきた。
 そういう状態が続いた結果、我慢比べの一角が崩れた。このままなし崩しになれば、野球界はばらばらになる。

−−買い手が無かったわけではなく、ライブドアが名乗りを上げた。

 ライブドアはあとから手をあげた。まず私と近鉄の社長が会って、トップ同士で統合を決めた。しばらくして情報が漏れ、ライブドアが「買いたい。なぜ売らないのか」と言ってきた。

−−宮内さんが参入を阻んだと言うイメージがある。

 冗談ではない。我々の間では話が決まっていた。ライブドアをメディアが持ち上げただけだ。近鉄が売らないと言っているのに場外で騒ぐのはマナー違反もはなはだしい。
 朝日新聞に「規制改革を推進している宮内が神戸でやりたいというのを拒否した」と書いていたが、ライブドアや楽天が「大阪や神戸でやりたい」ということ自体プロ野球のビジネスモデルをわかっていない。これは営業権、知的所有権だ。私企業同士は独自性を作り上げ、参入障壁を作って競争する。官による規制をはずして民の参入を促す規制改革とは違う。(新規参入は、)他人の事業領域や発明をよこせといっているのと同じだ。

−−「本質」の話に戻るが、現状維持が本質的な解決で無いとすれば、新規参入が認められても構造問題は残ることになる。

 そのとおりだ。

−−所得分配制度や贅沢税の導入などの改革案をもう一度提起する考えはあるか。

 だから改革しようとした。改革の一歩の踏み込んだ。ところが、「変えることには反対だ」と。変えないともう持たないところまで来ているのに、結局変えないほうがいいということで決着してしまった。

−−巨人は変えることに反対しているのでは。

 今回のことでもっとも危機感を持っているのは巨人だろう。視聴率の低下が理由だ。地上波の放送がなくなれば他の球団と巨人の差はなくなる。よってものすごい変化を起こさないといけないと言う意識になってきている。

−−今回の巨人の言動にそのような意識は感じられなかったが。

 いや、明らかだった。むしろ動きたくなかったのは他のセ5球団だろう。一つが動き始めると次も動く。やっと巨人が動き出した。それが改革だ。渡辺オーナーが動かなければ球界再編はできない。

−−その渡辺オーナーの辞任で改革に弾みがつくか。

 いっぺんには無理で、何段階かステップを踏む必要がある。まずは赤字の縮小だ。12球団を連結決算すると年間160億円程度の赤字になる。しかもパリーグは全部沈んでいる。この偏在を直すこと、つまり沈んでいる部分を減らすことができれば経営的には成功となる。
 そこで近鉄が撤退すれば赤字が40億円減って120億円になる。これは経営として改善したことになる。さらに堤さんが「もうひとつあるかもしれない」というものだから、「もう40億円減るかも。そうしたらものすごく良くなる」。これはビジネスとして当たり前の話だ。まず赤字を減らす。そうすれば第二ステップに入れる。最後は放送権の問題まで行くかもしれないが、巨人が数十年かけて築いてきた放送権をいきなり「全部よこせ」と言うのは安易すぎる。無理だ。

−−赤字を減らさなくても、全体の底上げ、つまり市場の拡大で対応する手もあるはずだ。

 160億円の赤字を埋めるためには入場料2千円としてあと800万人球場に足を運んでもらう必要がある。現実問題としてそれは不可能だ。

−−たとえばアジアへ裾野を広げるとか、新しい市場拡大の方向を視野に入れれば批判も少ないのでは。

 私もそれはやるべきだとは思うが、まず経営基盤がしっかりしていなければ手は打てない。

−−ほかに手はないということか。

対案はもうひとつある。選手の給料を半分にすればいっぺんに解決する。

−−アメリカに比べ日本の選手の給与水準が高いわけでもないが。

 そんなことはない。大リーガーは世界最高のプレーを見せている。球団数が減ればプレーのレベルが上がる。もっと高度な野球を見せるためにはもう少しチーム数が少ないほうがいい。メジャーも16球団が30球団に増えたことでレベルが下がってしまった。
 選手の給料を減らすのが無理なら、事業再生モデルとしてはとりあえず身を縮めて生き延びるしかない。そういう意味では、なぜ新たに参入しようとするところが出てくるのかわからない。赤字が出るのになぜだろうと。

−−宮内さんもかつて入ってきた一人だったはず。オリックスと言う名前を一般の人に知ってもらうためだった。

あの頃の経費は年間10億円ぐらい。ここ7,8年で急騰してしまった。

−−選手の年俸か。

そうだ。表向きだけでも大変大きな額。裏金まで含めたらどうなっているのか。オリックスは(裏金を)出せない。だから、凄い選手はなかなか獲得できない。

−−なぜ選手の年俸が高騰したのか。

 大リーグに引きずられたと言うことだろう。それと、選手会が非常に強い交渉力を持ってきたことだ。

−−今回、選手会の行動は「球界の為」と受け止められた。年俸についても柔軟に考える姿勢を見せた。

 そんなことは無い。正式な場では、何一つ年俸についての対案は出てきていない。

−−サラリーキャップ制を導入するとか。

 すると1年ぐらいストを打つのではないか。あの勢いなら。かつて大リーグもそれで大騒ぎになった。選手会に譲歩しすぎた結果過半数のチームが赤字になった。

−−そんなにまでして、球団を保有するのはそれこそビジネスの論理に反するのでは。

 このままだったら球団を持つ意味はほとんどない。野球をスポーツ事業にしたい、いいビジネスにしたいと言う人たちはどんどんいなくなる。残るのはタニマチ的な人。メディアは元気のいい企業が次々に出てきてお金を出したらいいというが、それはビジネスではない。これではそのうちしっかりとしたビジネスモデルを持つスポーツに負けてしまう。少なくとも、サッカーには完全にやられるだろう。
 我々の提案がだめだと言うなら対案を出してほしい。私はこのような状況が続く赤字事業にいつまで付き合うか、しばらく考える。

−−ダイエー本体が産業再生機構入り、球団も売却される可能性が濃厚だ。買収に前向きなIT企業もいる。楽天やライブドアもビジネス界で新しいモデルを展開している産業であり、球界でも新しい手法を構築する、あるいは改革派となって球界を変えていく原動力になるのでは。

 楽天やライブドアが現在示しているビジネスモデルで赤字を許容範囲に収められるとは思えない。

−−スポーツビジネスは難しいと言うことか。

 ファンが反対していると言うが、ファンが少なすぎるからこうなった。「ファンの言うとおりにしろ」とメディアは言うが、ファンとは誰か。合併反対の署名は150万人集まったと言うが、合併反対で大阪ドームにどれだけ近鉄ファンが来たのか?ずっとがら空きだったではないか。

−−宮内さん自身、野球は好きか。

 大好きだ。学校帰りによく見に行った。だからこそ今のプロ野球の現状が情けない。野球をビジネスとして成り立つものにしたい。サッカーに負けたくない。

−−縮小が先決と言うが、裾野を広げる構想をもっと打ち出さなければ魅力に欠けるのでは。

 独立リーグの設立やファームの活用はいいことだ。彼らの試合が興行として成り立つようにやっていく必要がある。
 しかし問題はやはり年俸。日本は最低440万円なんて決めているからコストの高いチームになってしまう。アメリカでは1日15ドルの給与で試合をしている。

−−もう少し悪くなるまで、プロ野球は変わらないか。

今のままではそうだ。ファンと選手会が反対するようなことはできない。ストをやられたら何もできない。これからは退出参入があるたびにメディアの好餌になりながら、その存在が軽んじられる方向に進んでいくしかないだろう。

−−来年は12球団で行くしかない。

 やるしかない。何とかいい方向に改革していきたいとは思う。しかしこれ以上悪い方向に向かうなら、球団を持っていることを考え直さないといけない。




 「論座」と言えば朝日新聞の論壇誌です。そりゃもうどのページを開いても朝日イズム全開です。そして宮内氏の理想は朝日イズムとは相容れないはずです。しかも次のページからはオリックスがアメリカに売り飛ばしたイチローの礼賛記事。朝日もなかなか味なことをします。

 それはともかく、どうしてもわからないのは1球団退出すれば赤字40億円減と言うくだりです。確かに全体の赤字は減りますが、球団単体の赤字を減らす方法を語るわけでもない。彼の論理なら赤字を出す球団がすべて撤退しなければ球界全体の赤字はなくならないということになります。球界の収支を連結することは机上の空論ではないでしょうか。

 もうひとつ、レベル云々についてはホークスに公開処刑されるようなチームを作った宮内さんが言うのはどうなのかと。
で、そのホークスに勝ち越したマリーンズについては何なんでしょう。マリーンズもFA補強をまったくしないにもかかわらず、5割キープと観客増を達成しているわけですから、両チームの差は宮内さん自らもたらした、と言ってもいいでしょうね。といっても、いろいろ動いたオリックスに比べ、ロッテは何もしてないわけですが。

 ファンが少なすぎる云々についてはコメントする気も起こりません。そりゃマリンのレフトスタンドにオリファンが数十人しかいないのを目の当たりにすればそう思うかもしれませんけど、でもそんな不人気球団を作り上げたのはほかならぬ宮内さん自身です。果たして宮内さんは自分たちを客観的に見る能力があるのでしょうか。はなはだ疑問です。

年俸についてのくだりには同意できる部分もあります。物価が上昇したわけでもないのにこの高騰は異常です。今後を考えるなら下げるべきでしょう。残念なのはスト以降年俸の話が選手会側から表立って出てこなくなったこと。逆にFA宣言などで年俸をつり上げようとする選手が出ています。ダイエーの斉藤和もニッカン九州の記事で銭戦宣言してましたけど、お前親会社の状況と自分の防御率を考えろと。あのストは経営側、選手、ファンがそれぞれ痛みを追う三方一両損の形で収束したと思っていたのですが、選手の側でその意識を共有できていないような気もします。
 少なくとも宮内さんは選手会に対し相当な不信感をお持ちのようですから、選手会としてはきちんとしたスポークスマンを立てて話し合いを積極的に行うべきではないでしょうか。1増1減の決着に納得されては我々の立場がありません。

なんというか、球界再編は銀行の再編とは違い、ちょうど定食屋が新メニューを考えるようなものなんじゃないかと最近思うようになりました。どんなにシェフがおいしいものを作ったと胸を張っても、お客が「そんなまずそうなものは食べない」と言えば店はつぶれます。シェフが独りよがりでは、どんなにおいしい店でも利益は上がらない、と思うのですが。

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