私の相場観

足元の景気指標やマーケットの動きから、株式相場を私がどう読んでいるのかを綴ったものです。

景気ウォッチャーに売りサイン

1月の景気ウォッチャー調査が8日に発表されました。
現状判断DIは前月比1.6ポイント低下の49.8、先行き判断DIは同1.5ポイント低下の49.4でした。
ルールに従い、景気ウォッチャーは1月調査で売りサインを出しました。

現状判断DIを業種別に見ると、家計部門が0.7ポイントの低下に対して、企業部門は2.7ポイントの低下となっており、企業部門の景況感の悪化が目立ちます。
「材料仕入価格の上昇で収益が厳しい」といった製造業の景気ウォッチャーのコメントにも表れているように、景況感が悪化した大きな要因として、原材料価格や仕入れ価格が上がり、企業の収益環境が悪化していることがあげられます。
中小企業景況調査(日本政策金融公庫)などをみても、1月調査の仕入価格DIが急上昇しており、その結果、利益額DIが悪化しています。

きょうの日経新聞には、東証2部指数が11年ぶりに高値を更新したことを伝える記事が掲載されています。
しかし、東証2部指数がこれからさらに上昇していくかは疑問です。
なぜなら、東証2部指数と連動性が高い景気ウォッチャーから売りサインが出たからです(下のグラフ)。
東証2部指数と景気ウォッチャーの関係については、過去のブログ(2014/5/15「景気ウオッチャー調査と東証2部指数」2013/10/27「日本株、ブラックマンデー前夜に酷似?」)に詳しく書きましたので、ご参考にしてください。
11年前に東証2部指数がピークをつけた時には、今回と同じように、やはり1月調査(2006年)で景気ウォッチャーから売りサインが出ました。この時も、原材料価格が上がるなど、企業の収益環境が次第に厳しくなりつつありました。現在とよく似ています。
高値更新と同時に出た今回の売りサインは要注意です。
東証2部指数と現状判断DI

「デッド・サイクル」を迎える日本経済

嶋中雄二さん(三菱UFJモルガンスタンレー証券)によれば、日本経済は2017年からいよいよ「ゴールデン・サイクル」に入るとのことです。

「ゴールデン・サイクル」とは、約50年〜60年周期のコンドラチェフ・サイクル(長期波動)、約20年周期のクズネッツ・サイクル(長期循環)、約7年〜10年周期のジュグラー・サイクル(中期循環)、約3年周期のキチン・サイクル(短期循環)の4つの景気循環の上昇局面が全て重なることで、景気はそれだけ力強い拡大が期待できることになります。

レポートによれば、コンドラチェフ・サイクルはすでに2002年に底を打って上昇に転じており、2011年の東日本大震災直後からはクズネッツ・サイクルも上昇に転じたとされています。
さらに、2013年にはジュグラー・サイクルも底を打って上昇に転じています。それにも拘わらず、2014年〜
2015年の景気が弱かったのは、消費税引き上げの影響でキチン・サイクルが下降していたためで、2017年からはいよいよキチン・サイクルも上昇に転じ、明治以降6回目となる「ゴールデン・サイクル」が2017年から2018年にかけてやってくる、とのことです。

この嶋中さんの見方とはちょうど正反対になりますが、私自身は、日本経済は「ゴールデン・サイクル」とは全く逆の、4つの景気循環の下降局面が全て重なる「デッド・サイクル」(ゴールデンクロスとデッドクロスにひっかけた私の造語です)を2017年から2018年にかけて迎える可能性があると考えています。
日本の景気循環を示したのが下のグラフです。
日本の景気循環
景気循環(拡大)
嶋中さんと私の見方が全く異なる、その理由は、嶋中さんが「バンドパス・フィルター」という純粋に統計的手法を使って4つの景気循環を抽出し、景気循環の局面を機械的に判断しているのに対して、私の場合は、上のグラフからもわかるように、設備投資比率(2016年12月の改訂前のGDPデータを使用)を使って景気循環を抽出し、さらに4つの景気循環の固有の特徴も勘案してそれぞれの局面を判断しているためです。

最も長いコンドラチェフ・サイクルは、嶋中説のようにすでに底を打って足元で上昇に転じているとみるのは無理があるように思います。
コンドラチェフ・サイクルは簡単に言えば「物価の波」です。日本をはじめとして各国の物価上昇率の下落基調が続いており、長期的なデフレ傾向がむしろ強まりつつある現状を見れば、コンドラチェフ・サイクルは依然として下降が続いていると見るのが自然です。
コンドラチェフ・サイクルは技術革新とも関連付けてみることができます。
下のグラフは、コンドラチェフ・サイクルの4つの波と技術革新の関係を示したものです。(山谷の設定は、
1920年まではコンドラチェフ、1949年と1973年はNHメイガ―による)

コンドラチェフ・サイクル
第4波がまだ底をつけていないとすると、第4波の周期はすでに67年を超えています。これまでの周期に比較するとかなり長く、コンドラチェフ・サイクルが変容した可能性もうかがえます。
これについて私自身は、コンドラチェフ・サイクルよりもさらに周期の長い「資本主義のサイクル」の影響を受けているのではないかと考えていますが、いずれにしても、コンドラチェフ・サイクルは下降が続いているとみられます。

一方、クズネッツ・サイクルは、設備投資比率のグラフからもわかるように、直近のピークである2006年から下降に転じており、足元でも依然下降が続いているとみられます。
リーマン・ショック以降、景気が大きく崩れることなく曲がりなりにも回復を続けてきたのは、ジュグラー・サイクルが上昇局面にあったためです。これは設備投資のサイクルであると同時に雇用のサイクルでもあり、キチン・サイクルよりも景気の様相に強い影響を与える傾向があります。
嶋中説では、このジュグラー・サイクルは2013年に底を打って上昇に転じたとされていますが、上のグラフを見ると、設備投資比率は2010年に底を打って上昇に転じており、すでに2016年までの6年間にわたって上昇が続いています。周期から見ても、2017年に下降に転じて何らおかしくありません。
実際に、大企業に先行する中小企業(製造業)の設備投資の伸び率の推移をみると年々鈍化しており、
2016年度の計画は前年比横ばいで、2017年度にはマイナス圏に入るようにも見えます(下のグラフ)。
設備投資
前回のブログでも述べたように、在庫循環であるキチン・サイクルも2017年は下向きとなる可能性が高いとみられます。
このように、4つの景気循環の下降局面が全て重なる「デッド・サイクル」を2017年から2018年に迎える可能性が高く、やはり「デッド・サイクル」の中で起こったリーマン・ショックの時と同様に非常に厳しい不況がやってくる可能性がある、というのが景気循環の視点から見た景気見通しです。

12月の景気ウォッチャー調査〜今年の景気はどうなる?

本日、内閣府から昨年12月分の景気ウオッチャー調査が発表されました。
久しぶりにブログを更新します。

まず、昨年の景気と株価の動きについて簡単に振り返ってみたいと思います。
昨年は、中国景気への懸念などを背景に年初から2月にかけて円高・株安が進みました。
景気や株価の先行きに不透明感が払拭されない中で、6月には英国がEUを離脱することが決まり、円相場は一時100円を割れ、日経平均も15000円割れとなりました。
その後も株価は低迷が続き、11月には米大統領選でのトランプ候補の勝利を受けて再び株価は急落しました。しかし、大統領選直後から円安・株高が急速に進み、年末にかけてこれも大方の予想していなかった「トランプ」相場となりました。

このように、マーケットの動きだけをみれば、昨年は予想外の政治イベントの結果に振り回された1年でした。まさに申(さる)年だった昨年の相場は、「申酉騒ぐ」という相場格言通りの、めまぐるしく動く先が読めない1年だった印象があります。
ただ、あらためて株価の動きを景気(生産)の動きと重ねて眺めてみると、下のグラフのように、株価は6月に英国のEU離脱で下振れたものの、年間を通してみると概ね鉱工業生産の動きを反映して動いていたことがわかります。
昨年の生産は、2月に大幅に落ち込みました。ただ、底割れはせず、年前半にかけてほぼ横ばいで推移しました。景気は足踏み状態だったと言えます。そして、年の後半から回復に転じ、11月の生産は前月比
1.5%上昇と、回復への動きが明確となりました。11月の大統領選以降に円安・株高が進んだのは、このような実体経済の回復を反映していたことがわかります。
予測指数は12月が2.0%上昇、今年1月が2.2%上昇となっており、足元ではこうした景況感の改善が株価を支えているとみられます。

鉱工業生産と日経平均
このような中で、景気ウォッチャー調査は昨年7月調査(8/8発表)で現状判断DIが3.3ポイント改善し、先行き判断DIも6.9ポイント改善して「買いサイン」を出しました。(景気ウォッチャー投資法のルールでは、季節調整値の現状判断DIが前月から1.0ポイント以上改善し、かつ先行き判断DIも改善すれば「買いサイン」が出ます。また、現状判断DIが前月から1.0ポイント以上悪化し、かつ先行き判断DIも悪化すれば「売りサイン」が出ます。)
私自身は、この「買いサイン」が出た時に、現状も先行きも改善幅が非常に大きかったので、景気の実態を反映していないのではないかと考え、そのようにブログにも書いたわけですが(2016/9/20「日銀の買い支え効果が株高を演出?」)、今振り返ってみれば、実は年後半の景気(生産)の回復を景気ウォッチャーが先取りしていたのだということがわかります(下のグラフ)。因みに、8/8の日経平均株価は16651円でした。
株価は景気の動きを必ず反映しており、景気ウォッチャー調査は景気の方向性を的確に教えてくれる。だからこそ、景気ウォッチャー調査は投資判断に有効である、ということを私自身があらためて再確認しました。

鉱工業生産と現状判断DI
昨年の今頃と異なり、今年の景気と株価の見通しについては、楽観的な見方が一般的です。
米国のトランプ新大統領が大幅減税と大規模なインフラ投資を掲げていることから、米景気は堅調が見込まれており、国内の景気も回復が続くとの見方が多いようです。
しかし、足元の景気や株価が回復していれば、先行きの見通しは大抵楽観的になるものであり、あまりあてにできません。

むしろ、今年の景気は下振れる可能性が高そうです

景気循環の視点からみると、ここ数年の景気(生産)は強い年と弱い年が1年交代でやってきています。
2012年は景気後退、2013年は生産回復基調、2014年は消費税引き上げで年前半落ち込み、年後半回復、2015年は生産下降、2016年は生産回復基調、というように、消費税引き上げで変則的だった2014年を除いて、生産の上昇と下降が1年交代となっていることが上のグラフから確認できます。順番では、今年は生産調整の年に当たります。

また、毎年1月に生産がピークをつける傾向も顕著にみられます。
今年1月の予測指数は、消費税引き上げ前の駆け込み需要で押し上げられた2014年1月の生産のピークを上回るほど強い生産計画となっています。果たして計画通りの生産が行われるほど需要が強いのか疑問ですが、いずれにしても、例年通り、今年も1月にピークをつけて調整に入る可能性が高いのではないかとみています。

本日発表された昨年12月の景気ウォッチャー調査では、現状判断DIが前月比横ばい、先行き判断DIが前月比0.4ポイント低下でした。(今回の12月調査では、季節調整値がさかのぼって改訂されているので注意してください。)現状判断DIは改善が止まり、先行き判断DIは小幅ながら6か月ぶりに悪化しており、景気が先行き弱くなることを示唆しているように見えます。そのような中では、株価の上昇余地も限られるとみるべきかもしれません。
先述した生産の見通しも併せて考えると、景気ウォッチャーは12月にピークアウトした可能性がうかがえます。2014年〜2016年は1月〜3月に「売りサイン」が出ましたが、今年も同様のパターンになるかもしれません

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