私の相場観

足元の景気指標やマーケットの動きから、株式相場を私がどう読んでいるのかを綴ったものです。

トランプ・ショックが意味すること

昨日、米大統領選で、トランプ氏が勝利しました。
6月の英国のEU離脱に続いての衝撃的なニュースでした。
ただ、どちらも事前の世論調査と投票結果が違っていたというだけの話なので、世論調査でトランプ氏が優勢であったら、別に番狂わせでも衝撃的なニュースにもならなかったに違いありません。
今回のトランプ・ショックが意味することを、歴史的な視点から読み解いてみたいと思います。

まず、英国のEU離脱が歴史的にみてどのような出来事だったのかを理解しておく必要があります。なぜなら、英国のEU離脱と今回のトランプ氏の勝利は、歴史的には一連の出来事として捉えることができるからです。
以下は、英国のEU離脱についての私の見解を、FPの会報誌(FPK研修センター『KMC通信』2016年8月号)に寄稿した文章です。

英国のEU離脱が意味すること

今回の英国のEU離脱により、英国にビジネスの拠点を持つ日本の企業は事業戦略の練り直しを迫られることになります。また、英国がEUという単一の経済圏を離れることで世界経済に与える負の影響は非常に大きいと考えられます。

英国自身にとっても、EUから離脱することで経済成長が下押しされるとみられています。そのような経済的デメリットを受けることがある程度わかっていたにも拘わらず、国民の過半数がなぜEUを離脱するという選択をしたのでしょうか。

一般には、世界経済の成長の原動力となってきた「グローバル化」に反するナショナリズムの台頭であり、「時代に逆行」する動きであると否定的に受け止める向きが多いようです。

しかし、今回英国民がEU離脱に票を投じた理由は、EUそのものへの不満よりもむしろ、自分たちの仕事を奪う移民に対する不安や支配層(エリート層)への不満でした。そして、こうした住民の不安や不満は英国だけではなく、フランスやデンマーク、オランダなど他の加盟国でもEU離脱を主張する勢力が勢いを増していることからもわかるように、EU加盟国が共通に抱える問題でもありました。国境を接する国々の戦争が絶えなかったヨーロッパを統合して「戦争のない共同体をつくる」、という理想がEU設立のもともとの動機であった歴史的な背景をも考え合わせれば、ヨーロッパ大陸と海を隔てた島国である英国が真っ先にEUを離脱するに至ったのは、むしろ自然の成り行きであったとも考えられます。

移民と地域住民の対立は、労働者間の「競争」から生じるものです。また、支配層と経済的弱者である一般市民の対立は、資本家と労働者の「対立」と言い換えることができます。この「競争」と「対立」は、結局のところ資本主義という経済の仕組みに由来しており、それがEUというグローバル化された資本主義社会の中で、より拡大されて表に現れたと言えます。

つまり、今回の英国のEU離脱は、資本主義の仕組みそのものが抱える矛盾が引き起こしたものであり、仮にEUが経済的にも十分に制度が整備された統合体になり得たとしても、資本主義の論理で経済が回っている限り、どこかの加盟国で今後同じように離脱に向けた動きが起こると考えるべきなのです。

 そうすると、今回の英国のEU離脱は、単なるグローバリズムの否定ではなく、グローバル資本主義に対する英国民の「ノー」の意思表示であり、ナショナリズム(国家主義)への回帰というよりも、ローカルリズム(地域主義)への新たな動きが始まったのではないか、と歴史的な観点から眺めることができます。EUの離脱が決まったあとの英国内の分裂、混乱は、そのことを端的に示しているように思われます。


以上が、私の「英国のEU離脱」に対する見方です。
要するに、グローバルな経済発展が、保護主義や内向きな政策、あるいはポピュリズムによって後退を余儀なくされた、と一般には受け止められているわけですが、決してそうではなく、起こるべくして起こったことだと考えられるわけです。歴史が後戻りしたのではなく、前に進んでいるからこそ、このようなことが起こっているのだ、という見方です。
そのように見る背景には、「資本主義はやがて崩壊して、新しい時代にふさわしい経済システムに変わっていく」という私自身の歴史観があります。
英国のEU離脱を引き起こしたのは、経営者(資本家)と労働者の「対立」、そして労働者間の「対立(競争)」です。この「対立」というのは資本主義そのものが抱えている矛盾であり、この矛盾がいずれ資本主義の生産力の足かせとなって、資本主義は崩壊して社会主義に代わる。そのように考えたのがマルクスでした。
マルクスの唯物史観は間違っていると私は考えています。でも、少なくともマルクスは資本主義の仕組みをはじめて明らかにしました。そして、矛盾を抱えた資本主義はやがて崩壊せざるを得ない、と考えました。そのような目で見た時に、はじめて「英国のEU離脱」の意味が歴史的にどのような意味を持っているのかがわかるのだと私は考えています。
このように「英国のEU離脱」の意味がわかれば、トランプ氏の勝利も全く同じ構図であることがわかってきます。特に何もつけ加える必要がないくらいです。
大事なことは、歴史は後戻りしているのではなく、前に進んでいる、と認識することです。米国は一見ナショナリズムに回帰したように見えますが(実際にトランプ氏自らそのように発言しています)、「米国の国民が一丸になって」というのはあくまでも表面上のことであって、根底にあるのは、階層間の対立、資本家と労働者の対立です。資本主義が成立するまえに市民革命(ブルジョワ革命)が起こったように、歴史はおそらくこのような形で、徐々に支配階級(資本家層)による支配を突き崩そうとしているのだと思います。
マルクスがもし今生きていれば、「今年世界で静かなプロレタリア革命が起こった」、とおそらく言ったでしょう。

もちろん、英国と米国で静かなプロレタリア革命が起こったからと言って、すぐに資本主義が崩壊するわけではありません。ブルジョワ革命は資本主義が成立するために必要な一つの段階に過ぎなかったように、静かなプロレタリア革命も資本主義が崩壊に至る一歩に過ぎません。産業革命が資本主義の成長に大きな役割を果たしたように、資本主義はやはり経済という土台の上に成り立っているものです。従って、資本主義の先行きを見極めるためには、経済の動きを見ていく必要があります。
ここで私が声を大にして言いたいのは、「新たな時代を開くのは日本だ」、「日本人しかいない」、ということです。
これは別に、最近よく見かける『日本が世界で一番〇〇〇』にあやかっているわけではありません。歴史的・経済的事実としてそうだろうと私は考えています。そのことを示しているのが、下のグラフです。
日本に10年遅れる米国
このグラフは、ちょうど10年間だけ時間をずらして、日本と米国の住宅着工と政策金利の動きを重ねたものです。ほぼピッタリと重なることがわかります。つまり、「米国は10年遅れて日本の後を追っている」、ということです。このグラフは、米国の利上げがもしあったとしてもこの12月で終わりである、ということを教えています。
日本に10年遅れる米国(GDP)
日本に10年遅れる米国(10年債)

上の2つのグラフは、日本のGDPと長期金利を10年先行させて米国のそれと重ねたものです。いずれも、米国が10年遅れて日本の後を追っていることがわかります。
そのことを頭に置けば、「インフラの整備が最重要課題」だと昨日の勝利宣言で述べたトランプ氏の政策が、かつて日本が昔、力を入れてやってきたことであったということがわかります。「経済成長率を2倍に」も、かつての日銀総裁の「2倍」発言と重なります。法人税率を35%から15%に引き下げて税収が減るにも拘わらず、インフラ整備をやろうとすれば、財政赤字が一気に膨張することは目に見えています。これもかつて日本が犯した過(あやま)ちです。安倍政権が誕生した時のスローガンは「日本を取り戻す」でした。今トランプ氏は、「アメリカンドリームを実現する」、と叫んでいます。
つまり、何から何まで、米国はこのように日本の後を追いかけているのです。
その理由は、すでに見たように、日本が米国に経済で10年先行しているからです。日本は世界で最も資本主義が進んでいる国です。つまり、日本が手本になる国は世界のどこを探してもありません。自分で道を切り開くしかないのです。『僕の前に道はない、僕の後ろに道はできる』 そんな高村光太郎の詩の言葉が思い出されます。

私たちは資本主義の下で経済成長を追い求めてきましたが、もう限界が来ています。それにも拘わらず、古い価値観にしがみついて、経済成長をどこまでも追い求めています。
でも、もうそろそろ気が付くべき時です。どんなにモノがあふれても、私たちが幸せになるわけではありません。むしろ、モノを増やせば増やすほど、不幸せになっていく現実があります。
今、AI(人工知能)が注目されています。第4次産業革命などと言われています。しかし、作業効率を上げるために、AIから、「右の肩をもっと上げてください」と支持されながら作業をすることが、本当に良いことなのでしょうか。人間が完全な機械(ロボット)になってしまうことに他なりません。マルクスは、「資本主義の下では人間疎外、労働疎外が進む」、と考えましたが、AIの出現はまさしくマルクスが指摘した通りの現実を生んでいます。

終戦直後や東日本大震災の時のように、モノを全て失ってはじめて本当の価値を見出すことができる、今そんな時代に私たちは生きているのかもしれません。
その新しい価値を見つけて世界に広めていき、新しい時代をつくることができるのは日本人しかいないと思います。新しい価値は「経済」の中にはもはやないと思います。経済成長しなければいけないのはなぜなのか?格差さえなくせば、1億2700万人の日本人全てが物質的には十分に豊かな暮らしができるはずです。これ以上モノが増えても幸せにはならないばかりか、幸せからますます遠ざかるのだとすれば、なぜまだ経済成長を追い求めているのか?
おそらく、資本主義が崩壊に至るまでに、これから色々なことが起こってくると思います。
でも、それらは全て私たち日本人に、「本当の幸せとな何か」を問いかけるために起きるのだと私は考えています。それに答えることができるのはおそらく日本人しかいないからです

景気ウォッチャー調査〜公表様式の変更

本日、内閣府から10月分の景気ウォッチャー調査が発表されました。
これまで、原数値が主要指標として発表され、季節調整値が参考指標の扱いでしたが、今回から季節調整値が主要な指標として発表され、原数値が参考指標に変わります。
また、家計動向関連の小売り、飲食、サービス、住宅、企業動向関連の製造業、非製造業、雇用関連の各季節調整値が公表されることになりました。
季節要因による変動を取り除いた季節調整値の方が原数値よりも景気の実態をより正確に表しているので、景気ウォッチャー調査の公表もようやくあるべき姿になりました。

注意しなければいけないのは、全体の現状判断DIと先行き判断DIの季節調整値の算出方法が今回から少し変わったため、過去の季節調整値が遡って改訂されています。ただ、景気ウォッチャー投資法の過去に出た売買サインはこれによって変わることはなく、今年7月調査で買いサインが出たままです。
きょう発表された現状判断DIは前月比3.0ポイント上昇、先行き判断DIは1.5ポイント上昇でした。予想以上に強い印象です。
一方、株価の方は、トランプ・ショックで大幅に下げました。
英国に続いて米国でも、労働者がグローバル資本主義に「ノー」の意思表示をしました。
世界では今静かなプロレタリア革命が起こっています。

日経平均は来年1万円を目指す?

このところのブログで、円相場は来年にかけて1ドル80円〜90円、米国株は今まさに天井圏を形成しつつあり、株価下落で米国の景気は厳しくなりそう、来年2017年は10年周期で金融危機がやってくる10年目に当たり、中国が危機の震源地になるのではないか、といった先行き厳しい見通しについて述べてきました。
今回は、おそらくブログの読者が最も関心があると思われる日本株の見通しについて述べてみたいと思います。
株価と名目GDP

株価をミクロ面から眺めれば企業業績を織り込んで変動するわけですが、これをマクロからみれば景気(GDP)を織り込んで動くことになります。GDPは大雑把にいえば、企業利益と雇用所得の合計なので、企業の利益を反映して動く株価がGDPと密接な関係にあるのは当然ということになります。
上のグラフからはそのことが確認できます。
グラフを見ると、戦後の株価(TOPIX)が概ね名目GDPを中心に、名目GDPの2倍のラインを上限、名目GDPの1/2のラインを下限としたレンジの中を推移してきたことがわかります。
株価と名目GDP(バブル崩壊以降)
バブル崩壊後の1990年代以降を拡大したのが上のグラフです。
90年代以降は名目GDPのラインと名目GDPの1/2のラインの間で上下動を繰り返してきました。
景気循環との関係を見ると、景気が底を打って回復に転じると、株価はGDPの下限ラインから上昇に転じて、上限ラインに向かって上昇していきます。そして、上限のラインにぶつかると天井をつけて反転し、下限のラインに向かって下落していきます。そして、景気後退期間に下限ラインにぶつかって底を打つ、という形で景気循環に連動して株価が循環していることがわかります。
為替は購買力平価を基準に循環していたわけですが、株価はGDPを基準に循環しているわけです。
安倍政権が誕生した2012年12月から株価が上昇を始めたので、「アベノミクスへの期待や日銀の異次元緩和で円安・株高になった」と一般には見られていますが、本当は2012年11月に景気が底を打って拡大局面に移行したので、円安・株高が始まった、と考えるのが正しいと思います。

株価は昨年夏に上限ラインにぶつかって反転しました。名目GDPのラインにぶつかったところで跳ね返されるという、これまでと同じパターンを繰り返しているように見えます

米国の著名投資家であるウォーレン・バフェット氏は、株式時価総額の増加率と名目GDP成長率は長期的に収斂するとの考え方に基づいて、両者の比率である「バフェット指標」に注目していると言われています。名目GDPを基準にして株価を見ている点では共通しています。その「バフェット指標」も、昨年の時点で日本株が割高であるとのシグナルを出していたようです。

これまでのパターンから今後の株価を予想すると、株価のトレンドは現在下向きであり、下限ラインに向かって下落している途中の段階にあるとみられます。そして最終的には、下限ラインまで下がっていくと予想されます。
名目GDPの現在の水準までTOPIXが下がるとすると、TOPIXの底値はおよそ840ポイントで、日経平均に直すとおよそ1万円の水準です。今後、景気が後退局面に入れば名目GDPが減少していくので、下限ラインは現状の水準からもっと下がっていくと予想されることから、日経平均は最終的に1万円を割れるとみておいた方がいいかもしれません。

ドル円レートが1ドル=80円〜90円の予想と日経平均1万円の予想は整合しているかを確認するため、安倍政権発足後(2012年12月以降)の回帰分析から求められるドル円レートと株価の関係式、「日経平均=(円の実勢レートー45円)×250」に当てはめてみると、ドル円レートが1ドル=85円の時に日経平均の理論価格は1万円となり、為替と株価の予想はほぼ整合がとれていることがわかります。

第二次安倍政権がスタートした2012年12/26の日経平均は10230円、ドル円レートは1ドル=85円だったので、来年にかけて、マーケットは安倍政権が誕生した時の水準に戻っていくことが予想されます。
第一次安倍政権(2006年9月〜2007年9月)の時も、マーケットは円安・株高が続いた後、サブプライム危機で円高・株安に転じ、結局「行ってこい」の展開で終わりました。今回も同じような展開になるのではないかとみています。安倍政権もまた循環しているように見えます。

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