私の相場観

足元の景気指標やマーケットの動きから、株式相場を私がどう読んでいるのかを綴ったものです。

4月の景気ウォッチャー調査〜景気は依然下向き

4月の景気ウォッチャー調査が発表されました。

季節調整値をみると、現状判断DIは前月比1.6ポイント低下の40.0、先行き判断DIは前月比2.4ポイント低下の42.9で、現状は4ヵ月連続、先行きは5ヵ月連続でマイナスとなりました。

今回の調査は熊本地震の影響が大きく、地域別の九州をみると、現状判断DI(原指数)が前月比13.4ポイント低下(全国は1.9ポイント低下)、先行き判断DI(原指数)が前月比6.9ポイント低下(全国は1.2ポイント低下)となっています。
九州地域の景気ウォッチャーの人数は210人で全体(2050人)の約1割を占めています。九州を除いた全国を算出してみると、現状判断DIは前月比0.7ポイント低下、先行き判断DIは0.5ポイント低下となり、もし熊本地震がなければ、4月の景況感の悪化は比較的小幅にとどまっていたことになります。
ただし、以上は原指数なので、これを季節調整値にあてはめると、九州を除く全国の現状判断DIは前月比0.2ポイント程度の低下、先行き判断DIは前月比1.6ポイント程度の低下であったと推測されます。
熊本地震の影響を除くと、4月の現状判断DIの低下は小幅であったと言えますが、現状判断DIは直近3ヵ月(1月〜3月)で累計8.9ポイントも低下していることを考えれば、下げが一服といった感じだと思います。
一方、先行き判断DIは熊本地震の影響を除いてもそこそこ低下しており、景気ウォッチャーの景気の先行きについての見方は依然厳しいことがわかります。

このところ、火災や地震の影響が自動車の生産のかく乱要因となっており、景気の実態がやや見えにくくなっているようです。鉱工業生産指数をみると、2月は前月比5.2%低下と大きく落ち込んだあと、3月は同3.6%上昇とかなり戻り、生産予測指数は4月が同2.6%上昇、5月が同2.3%低下と一進一退が続く見通しとなっています。
ただ、生産の先行きは引き続き慎重にみておいた方がいいと思います。
輸送機械工業(2016年5月)
上のグラフは、輸送機械工業の生産指数(水準)と在庫率(前年比の変化率)の推移です。在庫率の軸は逆目盛りになっており、グラフ上で在庫率が上に伸びている期間は在庫が減少して生産が強く、在庫率が下がっている期間は在庫が増えて生産が弱い局面にあたります。
グラフをみると、2008年以降、自動車の生産が強い時期と弱い時期が1年交代でやってきたことがわかります。
そして、景気の方もほぼこれに連動して景気の強い年と弱い年が交互にやってきました。東日本大震災や消費増税の影響はありましたが、2008年はリーマン不況、2010年は景気が弱く、2012年は景気後退、
2014年は消費増税後に景気が落ち込みました。昨年(2015年)は生産が盛り上がらず景気も足踏み状態でしたが、それでは2016年に生産が回復に転じるかというと、上のグラフからもわかるように、自動車の生産は循環的に弱い年にあたっており、それだけ景気の回復もあまり期待できないように思われます。
実際に、輸送機械工業の生産予測指数は4月が前月比9.6%上昇の後、5月は同12.4%低下となっています。予測指数に今回の熊本地震の影響は反映されていないので、実際にはこの数字以上に落ち込む可能性が高そうです。
円高がまだ続きそうなことも考え合せれば、景気は年末にかけてさらに厳しくなっていくのではないかとみています。

最後に、セミナーの案内をさせて頂きます。
5月25日(木)に東京商工会議所新宿支部で、「歴史から読み解く日本経済の行方」というテーマでセミナ―を開催します。また、6月6日(月)には東京商工会議所板橋支部で、「ゼロ成長時代に求められる経営の潮流を読む!」というテーマで話しをします。もし、ご都合がつく方でご関心がありましたら、ぜひご参加ください。
ただ、足元の景気やマーケットの話はほとんど出てきませんので、投資家の方には少し物足りないかもしれません。まだ案内は出ていませんが、7月14日(木)に東京商工会議所渋谷支部で、参院選後の景気動向をテーマに講演させて頂く予定になっているので、そちらの方で投資家の方にもご参考になる話ができればと思っています。1か月前に渋谷支部のHPに案内が掲載される予定です。

景気後退は回避されるのか

3月の景気ウォッチャー調査が発表されました。
季節調整値は現状判断DIが前月から3.0ポイント低下、先行き判断DIも0.4ポイント低下でした。
部門別の季節調整値をみると、現状判断は家計部門が3.5ポイント低下、企業部門が1.4ポイント低下と家計部門が大きく落ち込んでいます。景気ウォッチャーの類似指標である消費動向調査の方は、3月の消費者態度指数(季節調整値)が前月比1.6ポイント上昇でしたが、景気ウォッチャーの方は足元の消費者のマインドが悪化していることを示しています。
一方、先行き判断は家計部門が0.6ポイント低下に対して企業部門は0.2ポイント上昇と企業部門がわずかに上向いています。ただ、3月調査が実施された3月末の為替は1ドル=112円台で、4月に入ってから円高が急速に進んでおり、現状水準が続けば4月調査では企業部門の景況感に影響する可能性が高そうです。

三菱FFJの嶋中さんは、直近のレポートで、「生産の底は2月で、景気後退はしぶとく回避した」と書いています。景気の局面を判定するヒストリカルDIが2月時点で50%を維持していること、3月以降生産が持ち直すことをその理由にあげています。
鉱工業生産をみると、確かに2月は前月比6.2%減でしたが予測指数は3月3.9%上昇、4月5.3%上昇と持ち直す見通しとなっています。業種別にみると、嶋中さんが指摘しているようなトヨタで大幅な増産を計画している輸送機械だけではなく、電機や設備投資関連の生産指数も4月は大幅な上昇となっています。
ただ、以下のいくつかの理由から、景気の先行きはやはり慎重にみておくべきだと思います。

まず、生産に関して言えば、ここまでの生産の低迷は、1月の愛知製鋼の事故による自動車の減産という単発的な要因によるものではなく、海外景気(特に中国景気)の減速の影響が大きいとみられるためです。つまり、今後生産が持続的に持ち直すためには中国を始めとした世界景気が上向きに転じる必要がありますが、まだその道筋が見えていないように感じられます。
実際に、生産の動きに先行する中小企業の売上げ見通し(中小企業景況調査)も3月は前月比4.2ポイント低下と大きく落ちており、鉱工業生産の予測指数が示す生産の回復に疑念が持たれます。

生産以外の景気指標も概ね弱く、景気後退を回避するどころか、そのリスクが一段と高まっていることを示唆しています。
中でも注目すべきは景気の先行指標の動きです。
景気ウォッチャー調査は、現状判断DIが3か月連続、先行きDIが4か月連続で下がり続けており、景気の方向性は依然として下向きであるとみられます。
また、景気動向指数の先行指数も2月に前月比2.0ポイント低下とやはり景気の先行きが弱いことを示しています。

景気の先行きの弱さはマーケットの動きにも現れています。景気の先行指標でもある株価の動きが弱いほか、為替もここにきて一段と円高が進んでいます。以前にブログにも書いたように、為替は購買力平価の水準である1ドル=90円に回帰しつつあるようにみえます。

私自身は、景気循環的な観点から、現在の局面を眺めています。
リーマン・ショック以降、景気やマーケットは回復過程にありましたが、今それが終息に向かいつつあるのではないかとみています。どのような形で終息を迎えるのか、それともまだしばらく続くのか、といったところに注目しています。

1月が景気の山?

きょう内閣府から2月の景気ウォッチャー調査が発表されました。
季節調整値は現状判断DIが前月比3.9ポイント低下の44.6、先行き判断DIが前月比3.7ポイント低下の
45.7といずれも大幅に悪化しました。
部門別の季節調整値をみると、現状判断DIは家計部門が4.5ポイント低下、企業部門が2.3ポイント低下、先行き判断DIは家計部門が3.8ポイント低下、企業部門が2.7ポイント低下となっており、現状、先行きとも企業部門よりも家計部門の悪化幅が大きくなっています。

他の景気指標をみると、鉱工業生産は1月が前月比3.7%上昇しましたが、予測指数は2月が同5.2%低下、3月が同3.1%上昇となっており、1月の実現率がマイナス2.9%、2月の予測修正率がマイナス4.0%といずれも生産計画を大幅に下回っていることからみて、生産は1月にピークアウトした可能性が高そうです。
景気一致指数を構成する有効求人倍率は1月に1.28倍と24年ぶりの水準をつけていますが、1月の新規求人数は昨年12月から減少しており、前年比がすでに3ヵ月連続で低下してきていることや、生産との関係などから判断して、有効求人倍率も1月にピークをつけた可能性が高いのではないかとみています。
景気一致指数の動きの趨勢を握っている鉱工業生産に加えて、有効求人倍率も1月にピークアウトすることになると、景気はこの1月に景気基準日付の山をつけて後退局面に入ることになりそうです。
景気の山に対する株価のピークの先行期間は戦後平均8ヵ月ですが、TOPIXの直近ピークが昨年6月(月中平均)だったので、株価との関係から言っても1月はちょうど景気が山をつけるタイミングに重なります。
新規求人数2016年2月
先日、立教大学経済学部の山口義行教授のセミナーに参加しました。
もともと中小企業の経営に詳しい方ですが、経済見通しにも明るい方で、もなかなか的を射た話をされていました。

たとえば、景気一致指数とTOPIX(説明では日経平均)を重ねた下のグラフを使い、景気は消費税引き上げ後の2014年以降、ほぼ横ばいであったにも拘わらず、株価は2015年前半まで上昇したが、これは2014年10月にGPIFが国内株式の組み入れ比率を12%から25%に引き上げたためで、15年前半に上限まで組み入れたために買い支えられなくなったので、昨年8月の時点でもうこれ以上株価は上がらないと考えていたそうです。
従って、昨年後半からの株価の急落は売られ過ぎなのではなく、実体経済以上に上がりすぎた株価の調整が起きていると考えるべきであるとの説明に、なるほどと思いました。
実体経済と乖離する株価
また、世界経済はこれまでどこかの国がけん引してきたが、リーマン・ショックで米国がけん引役から降り、次にけん引役となった中国がもはやけん引力を失った。生産過剰を解消するには、設備の廃棄、人員の整理、企業の倒産の3つが不可避だが、これらは一気にはできず最低5年はかかる。このため、経済は昨年8月から停滞期に入ったと考えるべきである、とのことでした。
リーマン・ショックの時に、米国の景気悪化が日本の景気に予想以上に大きな影響を与えたように、今回は中国の景気が日本の景気に予想以上に大きな影響を与えることに警鐘を鳴らしていました。
確かに、新規求人数のグラフのトレンドラインを見ると、勾配が前回(2002年〜2007年)の景気回復期間の時よりも緩やかで、これは、マイナス圏での滞留時間が長くなり、景気後退が長期化することを暗示しているようにも見えます。
調整がどの程度になるのか、いずれにしても中国景気が大きなカギを握っているのかもしれません。

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