紙に書き出し、期限をつける

忙しくても、いつまでに、何を、どうしたらいいのか、はっきりとわかっている場合には、人はあまり不安を感じない。反対に、忙しいのかどうかもよく自覚できていず、いつまでに、何を、どうしたらいいのか、わかっていない場合には、人はものすごく不安になってくる。このような不安から脱出するためにも、スケジューリングはたいへん重要なことである。

 まず初めに、何でもいいから、やるべきことを、思いつくままに紙に書き出してゆく。大きな課題も小さな課題も、長期的な課題も短期的な課題も、自分ひとりでできる課題も他人の力を借りなければできない課題も、とにかく無差別に紙に書き出すのだ。それから、それらの課題に何月何日……と具体的に解決の期限をつけてゆく。期限をつけながら、その課題をどのように解決してゆくかという方法も考える。そうするとまた、その解決方法のための別の課題が見えてくる。そして、その新たに出てきた課題にもまた解決の期限をつける。単純にこのような作業を繰り返していると、それまで頭の中で、混沌とし、絡み合っていたさまざまな課題の糸が徐々にほぐれてくる。ほぐれてきて、次第に整理整頓されてくる。もちろん、紙の上、カレンダーの上に、整理整頓されてくるということだ。頭の中で考えているだけでは、絶対に明確になることはない。ペンを持たずに整理整頓など出来るはずがない。ペンを持って課題解決の期限を確定していってこそ、ぼんやりとしていた目標地点が見えてくる。そしてそこに辿(たど)り着くためのプロセスもはっきりと認識できるようになる。これがスケジューリングだ。

金曜日には来週のスケジューリングをする

 土日が休日の人には、金曜日の夕方には、来週の仕事について、是非このようにスケジューリングすることをおすすめする。次週の仕事について、スケジューリングすることなく金曜日の仕事を終わってはいけない。決して、誰かとの楽しい約束の時間を優先してはいけない。次週の仕事を見渡さずに、いそいそとファイルを閉じ、ペンケースにペンをしまうような人は現実から逃避しようとする人だ。そんな人は、おそらく金曜の夜は楽しめても、土曜の夜にはもう不安に陥ることになる。日曜日の午後ともなると、イライラして何をしても楽しくなくなる。物憂い昼下がりを過ごさなければならないのだ。そして月曜日の出勤のことを考えると、恐ろしくさえなってくる。なんと精神衛生上、良くないことか。こんな人は不幸だ。本人だけでなく家族や恋人も不幸だろう。一緒に過ごす人が、土曜日も、日曜日も心から楽しむことができないのだから当たり前だ。

 金曜日の夕方には、来週一週間のスケジューリングをしよう。はやる気持ちを抑えてオフィスのデスクに向かおう。これを実行すれば、あなたの仕事の能率は大いに上がる。そして、何よりも良いことは、仕事に対する意味不明な不安が払拭(ふっしょく)されることだ。これが実現できれば、土曜・日曜というプライベートな時間が本当に楽しくなる。あなたとともに過ごす家族や恋人も、心からその時間を楽しめるようになる。このように、スケジューリングをすることは、自らの心を安定させ、同時に周囲の人々の気持ちも安定させる効果を持つ。スケジューリングは、言わば“精神安定剤”なのだ。それも、極めて効き目のある“精神安定剤”と言えるだろう。この処方箋にはまず間違いはない。大いに試してみて頂きたい。

拙著「勝ち上がる仕事術」より (幻冬舎ルネッサンス)