企業法務マンサバイバル

ビジネス法務に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きる皆様に貢献するブログ。 通称「マンサバ」です。

【本】『プライバシー大論争 あなたのデータ、「お金」に換えてもいいですか?』 ― プライバシー大論争年表を作ってみました


日経BPの浅川さまよりご恵贈いただきました。 ありがとうございます。


プライバシー大論争 あなたのデータ、「お金」に換えてもいいですか?
大豆生田 崇志 (著), 浅川 直輝 (著), 日経コンピュータ (編集)
日経BP社
2015-01-24



煽り系のタイトルに嫌悪感を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、本文はこの分野を追いかけ続けている浅川記者と大豆生田記者の手によるものだけあって、内容はいたって冷静な本。

筆者がこの本を企画した動機は、こうしたデータプライバシーの議論について、日本固有の歴史や事例を発掘し、議論の土台として紹介したかったことである。
本書の執筆に当たっては、プライバシーの専門家に加え、100人を超える企業関係者に取材した。「今は消費者がプライバシーに敏感なので、このテーマでは語りたくない」と取材を断る企業が多かった中、取材を引き受け、率直に語っていただいた企業および担当者の方々に、厚く御礼を申し上げる。今後、日本の企業、政府、消費者がデータプライバシーについて議論する際、本書が互いの共通認識を形作る一助になれば幸いだ。

このような趣旨のもと、ベネッセ名簿漏洩/Suica騒動/CCC(Tカード)&ヤフージャパンによるデータビジネスの3つを中心に、プライバシーが取り沙汰された事件、法改正、活用事例等を丹念に振り返り、世界と日本のプライバシー観の変化を追い、また特に昨年からのパーソナルデータ検討会の議論の過程については細かく描写し、来たる個人情報保護法の大改正を展望しています。プライバシー関連のニュースは意識的に追いかけている私でも、本書で紹介されているもののうち忘れかけていた事件・出来事がいくつかあり、記憶の整理に大変役立ちました。1点、「(現行)個人情報保護法が自己情報コントロール権の考え方を部分的に取り入れたもの」という記述がいくつか見られた(P35など)のは、現行法の法解釈としてはミスリーディングなように思われましたが。

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もう1点、出来事が年月を追って順に紹介されているわけではないのが、資料という意味では惜しいなあ…と。

なので、余計なお世話ついでに、本書で紹介されている全事件・法改正のメモを取り、年表形式に編集してみました。こうしてみてあらためて、本書執筆者の取材の丹念さに感服する次第です。

『プライバシー大論争』年表
内容 本書ページ
17世紀 イギリスで住居が部屋で分かれるようになる P27
18世紀 産業革命により職場が家庭から工場・事務所へ P27
1890 アメリカで「放っておいてもらう権利(right to be let alone)」が認められるようになる P28
1961 「宴のあと」事件、プライバシーという言葉が巨人、大鵬、卵焼きとならぶ流行語となる P29
1963 核家族が流行語となる P29
1963 ダイヤル式黒電話「600形電話機」登場 P31
1964 東京地裁がプライバシー権を正面から認める P29
1967 住民基本台帳法施行 P31
1970 政府自治体による統一個人コード導入議論により、自己情報コントロール権の概念が加わる P30
1970 名簿業者が電話帳をコンピュータ入力しはじめる P32
1980 ダイレクトマーケティング理論の本格導入 P32
1980 OECD「プライバシー保護と個人データの国際流通についてガイドライン」採択 P35
1981 警察庁「Nシステム」導入開始 P94
1987 日経社説「情報を伝えるDMが多くて何が悪い」 P33
1989 世論調査「現住所・電話番号は他人に知られたくない」10.9% P34
1990 クーリングオフ制度の強化 P33
1995 EUデータ保護指令採択 P104
1996 民間信用情報機関の個人情報が社員によって引き出され債権回収業者へ P33
1998 早稲田大学江沢民講演会出席者名簿事件 P60
1999 京都宇治市住民票データ流出事件 P34、P60
2000 5 EUと米国によるセーフハーバー合意 P108
2002 5 TBC無料体験応募者名簿流出事件 P61
2003 5 個人情報保護法成立 P10
2003 世論調査「現住所・電話番号は他人に知られたくない」42.9% P34
2004 2 Yahoo!BB加入者記録流出事件 P59
2004 10 APECプライバシーフレームワークに基づく越境執行協力 P143
2005 3 住民基本台帳閲覧による名古屋市強制わいせつ事件 P36
2005 4 個人情報保護法全面施行 P10
2006 11 住民基本台帳法改正法施行 P35
2007 4 経産省「情報大航海プロジェクト」開始 P42
2007 4 ホンダによるGPS情報提供開始 P75
2009 12 警視庁「テロ対策に向けた民間カメラの活用に関する調査研究報告書」公開 P95
2010 2 アン・カブキアンの「プライバシー・バイ・デザイン」がFTCプライバシーレポートに採用 P159
2010 3 経産省「情報大航海プロジェクト」終了 P43
2010 5 総務省「配慮原則」公開 P44
2011 1 世界経済フォーラム報告書「パーソナルデータは新しい原油」 P105
2011 9 カレログ騒動 P69
2011 10 ミログ事件 P41
2012 1 EUデータ保護規則改正案提案 P108
2012 2 アメリカ消費者プライバシー権利章典発表 P108
2012 2 カリフォルニア州司法長官がグーグル・アップル等主要6社とプライバシーポリシー表示について合意 P174
2012 3 アメリカFTC「急変する時代の消費者プライバシー保護」でFTC3条件を提示 P130
2012 7 総務省「スマートフォンプライバシーイニシアティブ」公開 P47
2012 10 アメリカFTC顔認証データのビジネスの応用について勧告 P91
2013 3 NHK「震災ビッグデータ」放映 P71
2013 5 トヨタ自動車「ビッグデータ交通情報サービス」開始 P76
2013 6 アメリカNSAによる職員による私的通信傍受が暴露 P96
2013 7 OECDガイドライン改訂 P109
2013 7 Suica乗降履歴販売騒動 P13、P64、P121
2013 9 政府IT戦略本部(内閣官房)「パーソナルデータに関する検討会」開催 P48、P111
2013 10 NTTドコモ「モバイル空間統計」サービス開始 P74
2013 12 パーソナルデータ検討会の下部組織技術検討WGによる「技術検討WG報告書」が公表される P125
2014 1 行政手続番号法(マイナンバー制度)での「特定個人情報保護委員会」発足 P113
2014 3 EUデータ保護規則が欧州議会で可決 P108
2014 4 IT総合戦略本部事務局がパーソナルデータ検討会において準個人情報の類型を提案 P138
2014 5 経産省がパーソナルデータ検討会において利用目的規制の緩和を要求 P134
2014 5 総務省「位置情報プライバシーレポート」 P72
2014 6 CCCとヤフーが購買履歴・閲覧履歴を共有する提携 P82
2014 6 内閣官房「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」公表 P111
2014 6 購買履歴や健康情報から児童で医薬品をレコメンドする行為が改正薬事法で禁止される P100
2014 6 ヤフーやDeNAによる遺伝子検査サービス参入 P97
2014 6 ソニー電子お薬手帳サービス開始 P101
2014 7 ベネッセ個人情報漏洩事件 P10、P54
2014 10 東京地裁がグーグルに検索結果の一部を削除するよう命じる仮処分 P183
2014 11 CCCがT会員規約を変更 P78、P148
2014 11 情報通信研究機構大阪駅ビル実証実験騒動 P86
2014 11 欧州議会が米グーグルに対して検索事業の分社化を求める決議案を承認 P173
2014 11 欧州委員会作業部会「忘れられる権利」ガイドライン公表 P182
2014 12 CCCとマイクロアドが属性情報突合で提携 P83
2014 12 全国万引犯罪防止機構「防犯画像の取り扱いに関する見解及び提言」公表 P93
2014 12 内閣官房「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱骨子案」公表 P111
2015 個人情報保護法改正(予定) P10ほか多数


保護法の改正については、昨年12月に出された骨子案によって、おぼろげではありますが改正後の姿が見えてきています。一方で、その骨子案に対して、複数の委員からEUの十分性認定やOECDガイドラインへの抵触に懸念が呈されている現状があります。特に、新保先生ら学者筋の方々から批判が集中しているのが、「利用目的変更に関する規制緩和」、いわゆるオプトアウトによる取得後の利用目的の変更を認めることとする規制緩和案です。

パーソナルデータ検討会後半では匿名化のあり方に議論が集中していた中、青天の霹靂のように出てきたこの論点、いつ上がっていたのだろうと改めて振り返ってみると、決して土壇場で突然ねじ込まれたわけではなく、2014年5月時点で経産省がこれを提案していたことが分かります。検討会のメンバーにはあれだけの論客が揃っていたにもかかわらず、経産省の意見がこうして事務局案にスッと入ってしまうあたりに、コンプガチャ騒動後に消費者庁が動いた際にも感じた日本の「行政立法の闇」が垣間見えるような気もします。実際に、この5月のタイミングで経産省に働きかけた事業者が具体的に存在したのかどうかは不明ですが、こういった役人へのロビイング活動が与える影響はやはり大きいのだろうなと感じざるをえません。

本書では、検討会以外に個人情報保護法制の今後に影響を与えるであろう存在として、OpenIDファウンデーション、モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)、インターネット広告推進協議会(JIAA)といった業界団体とその活動も紹介されています。この辺りキーパーソンを掴まえてきっちりと取材されている点も、本書の素晴らしいところです。我々ビジネスサイドが事実上の立法権を握る行政に影響力を有していくためには、検討会に参加されているような一部の有識者任せではなく、こういった業界団体を巻き込んでの議論をしていくことがますます大切になってくると、私も強く感じています。


法改正までの残り時間も少なくなってきました。事業者としては、骨子案の線で改正・施行されてもビジネスが停滞しないよう、法改正が見込まれるポイントについては先取りで自主規制の強化やビジネスの変更を進めるなど、やれることを粛々とやっていくのみです。
 

【本】『本棚にもルールがある』 ― 蔵書・積ん読との正しい付き合い方

 
自宅の蔵書用本棚をもう一本増やそうか増やすまいか。そんなことを考えていたときに丁度出会った本。


本棚にもルールがある
成毛 眞
ダイヤモンド社
2014-12-15



本棚をどう扱うのが良いのかあれこれ試した結果 、得られた 「私の理想の本棚 」の条件はこうだ。
・見やすいこと
・2割の余白があること
その2割は、自分の成長の余白の象徴だ。自分の中に 2割も成長の余白があると気づくと、それだけで今後の人生が変わってくるはずだ。その余白にどんなものを入れていこうかと 、知的好奇心が湧くに違いない 。人間には成長の伸びしろがあるべきなのと同じように、本棚には、新しい本が入る余地があるべきなのだ 。
読む本が新しくならず、本棚の中身が例えば 1年前と代わり映えしないようであれば、自分自身が過去1年間まるで成長していないことを意味する。

ここ数ヶ月、買った本を貯めこんでばかりで、新陳代謝をすっかり忘れていた私。読んでいる本が入れ替わっていないのなら自分も変化≒成長していない、という成毛さんの言葉がグッサリと刺さってしまいました。本棚を追加するのではなく、早速整理し、参照頻度の低い数十冊を廃棄&スキャン送りにしてスッキリ。


もう一つ参考になったのが、本好きの悩みの一つでもある「積ん読」との付き合い方です。

社会人は3つの本棚を持つべきだ。その本棚は以下の3つだ。それぞれ、大きさもタイプも違う。
(1)新鮮な本棚 ……買ったばかりの本、これから読む本を置いておくスペース。そこにあるのは、これからの自分の教養だ。
(2)メインの本棚 ……読み終えた本を効率良く並べて置いておく場所。 3つの本棚のうち、最も収容量が多い。一般家庭にある本棚が、この本棚に近い。
(3)タワーの本棚 ……ふとしたときに参照したくなる本を積んでおく本棚で、辞典やハンドブックで構成される。知識を層にして積み上げるイメージだ。
「新鮮な本棚 」とは 、これから読む本、今読んでいる本を置く場所である。設置場所はリビングのような、家にいるときに長く過ごす、リラックスできるところがいい。人によってはテレビを見るソファの前かもしれないし、パソコンの近くということもあるだろう。この本棚は「棚」を必要としない。買ってきた新しい本をそのまま置けば、そこが「新鮮な本棚」となる。「新鮮な本棚」は、新しい知を迎え入れる入り口である。間口を狭くしてはならない。どんな内容の本も迎え入れる態勢を取ろう。
ここでのポイントは本を寝かせたまま並べることである。そして、背のタイトルが見えるようにして積んでいく。重要なのは、積む際にサイズをそれぞれ揃えること。そうすると雑多に見えない。


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単純ではありますが、具体的で実践的なアドバイス。早速この「新鮮な本棚」のアイデアを実践してみました。

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読み終わってはいても、消化しきれずもう少し読み返したい本も含めると、こんな感じに(※現在進行形の仕事の参考文献については差し障りあり、撮影から外しています)。左側の法律系書籍には、Ceongsuさんからご紹介があった本がいくつか入ってたり、学会論文集があったり、昨年ある勉強会で名著と聞いた『会社法の経済学』が永遠の積ん読状態だったり、『クロスレファレンス民事実務講義』などはあまりに積ん読が長すぎて先日第二版が出てしまったり・・・(苦笑)。一方で、右側にはこのブログではご紹介しない類の、脳みそ系あり、ライトな知財系読み物あり、新人教育の影響から経理・会計関連あり、アドテクの基礎ありと、かなりのごった煮状態です。本当は書籍サイズごとにもっと厳密に分けて置いたほうが見栄えがいいのでしょうけど、スペースの都合もありましてとりあえず。


たしかに、こうやって敢えて身近な場所に平置きしてみると、書斎やその本棚に入れこんでしまうのと違って視界に入る回数も増え、気になったらすっと手に取って読み進めることができ、精神衛生上よい感じがしますね。
 

【雑誌】BUSINESS LAW JOURNAL 2015年 3月号 ― 水野祐先生による連載「法のデザイン」に注目

 
数ある法律雑誌の最近の連載記事の中で、最も新味が感じられ楽しみにしているのが、シティライツ法律事務所の水野祐先生による「法のデザイン ― インターネット社会における契約、アーキテクチャの設計と協働」(@ビジネスロー・ジャーナル)です。





しかも、今回は「ゲームのリーガルデザイン(1)」ということで、現在エンタメ業に従事する私としては見逃せない記事。

本連載における「アーキテクチャ」とは、法律や規範(慣習)とは異なり、人間の行為そのものを技術的、物理的にコントロールする仕組みのことをいう。
インターネットだけでなく、ゲーム内の仮想空間もまたアーキテクチャの設計が妥当する。いや、むしろアーキテクチャの設計という観点からは、ゲームはインターネットに先行している分野といえる。ゲームには、現実世界におけるゲームを取り巻く情報環境というアーキテクチャと、ゲーム内で設計された仮想空間としてのアーキテクチャという二つのアーキテクチャが存在することになる。これが他のコンテンツと比較した、ゲームの特徴であるということも可能であろう。

この一節に、なるほどなー、まさにアーキテクチャと法律・契約が交錯するところだから、自分はオンラインゲームの法的問題を考えるのが好きなんだなー、などと独りごちお茶を飲みながらリラックスモードで読んでいたところで、脚注でそのお茶を吹きました。

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水野先生と先日SNSか何かでおしゃべりした際に、「はっしーさんのアレ参考にさせてもらいましたよ」的なことを言われた記憶はあったのですが、よりによってあの(幼稚な)自説がここで晒されたか・・・と。あとでしらっと修正しようかと思ってたのに、もう直せない(笑)。

さておき、先生がこの連載でも述べられているように、エンタメ業にいるものとしては、法律・契約だけでは解消できないことがらがたくさんある中でも、この二次創作との「戦いと共存」状態はさらに混沌としてきている実感があります。個人的には、エンタメコンテンツについては、(従来の権利者が事後の権利処理の容易さ・有利さから意図的にそうしてきたような)「映画の著作物」として束にして考えるのをあえてやめ、映像(影像)の著作物、BGMの著作物、音声の著作物、文字の著作物、プログラムの著作物、プログラムの特許、パブリシティ権、キャラクター権…といった一つ一つの細かい権利に解体して捉えていくことで、こういった問題とも対峙しやすくなるのかな、といったアイデアを温めているのですが。


次号も、位置情報やVRを活用したゲームの法とデザインについて語っていただけるとのこと。本連載が息の長いものになって、日頃ミステリアスな雰囲気漂う水野先生の頭の中・考えていることが一つでも多くご披露いただけることを楽しみにしてます。
 
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