企業法務マンサバイバル

ビジネス法務に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きる皆様に貢献するブログ。

Apple Watchは、カシオのデータバンクが大好きだった私にとって十分過ぎるガジェットだった

 
仕事でスマートフォンビジネスに関わっている以上、そもそも買わないという選択肢は無かったApple Watch。1日付けて過ごしてみました。

結論、(1)iPhoneユーザーで、(2)普段から時計をする習慣があって、(3)資金があるなら購入したほうがいいと思います。

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私が購入したのは、ステンレス仕上げのApple Watch 38mm版 ミラネーゼループ。Apple Storeでひと通り試着してみて、スーツでも問題ないデザインと付け心地から選びました。サイズは42mmと迷いましたが、手首が細いこと、Apple Storeの店員もデザイン性からほとんどの店員が(男性であっても)38mmサイズを選んでいると聞きましたので。


法務パーソンという職業柄、初期設定時に同意を求められる利用規約もコピーを取った上で熟読。なるほどウェアラブルっぽいですね・・・と考えさせられる条文もありました。同意の取り方も、これまでのiOS利用規約よりも厳重に“二重”になってます。

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さて、基本的には物欲というよりも「ウェアラブルデバイスって結局どうなんですかね?ほんとに必要とされるんですかね?」という実体験型リサーチの目的で買ったということもあり、もし失敗したとしても、最悪いつも身につける時計としての機能とメッセージの通知ぐらいが手元で受けられればそれでいいや…ぐらいの期待だったのですが、実際使ってみると、

・寝る前に明日の予定をカレンダーで一覧する
・服を選ぶ前に今日の天気と気温をみる
・乗り物の待ち時間にちょっとしたニュース/株価情報を読む
・メッセージングアプリ/チャット/メールの未読がないか確認する

という、これまでiPhoneでやっていた一連の「チェック行動」が、iPhoneを取り出してアプリを立ち上げなくてもglance(グランス)と呼ばれるちょっとした操作だけでできるっていうのが、予想以上にありがたい。文字で書くとそれだけ?って感じなんですが。
ようは、「時計を見る=時間を把握する」と同等のかるーい情報を取得するツールが、iPhoneよりもよりベターな腕時計という場所とサイズに収まった、ということ。もちろんそれはスマホでも出来ることなのですが、スマホではtoo muchだったということなんでしょうね。

もちろん、ウェアラブルっぽい機能の代名詞であるフィットネス・ヘルスケア機能や決済サービスのこれからにも期待したいですし、iPhoneのカメラ機能をスパイのように遠隔コントロールできるジェームス・ボンド的な(そして悪用されると危険な)機能がさりげなく実装されているのにはわくわくしますし、twitterがチェックできるアプリなんかも次々ではじめていますし、位置情報がより重要になりそうな香りがそこかしこに漂ってますし、ウォッチならではのゲーム(エンターテインメント)も登場しそうだし・・・と、プラスアルファ部分への期待も膨らみます。が、むかーしむかしにカシオが出していたデータバンクシリーズの、タッチスクリーンを実装した名機“HOTBIZ”が大好き過ぎて、電池が切れた今でもいつかまた使いたいなあと取ってあったぐらいの私にとっては、今のApple Watchでも十分過ぎるぐらい十分。スマートフォンとしてiPhoneを使っている限り、このWatchの次世代機や新しいデザインのモデルが出れば、それも購入することでしょう。

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一部インターネット上では発熱してしまって腕に巻けない、というデマが流れているようですが、充電直後でもホッカイロレベルにもなりません。あんな小さな電池容量と熱伝導率の悪いステンレスの組み合わせでそんな熱量が発生するわけがない、と常識で気づきそうなものではありますが。懸念されているバッテリーの持ちについても、iPhoneと比べて満充電までに意外と時間がかかる点は気になるものの、減りの方はほとんど気になりません(そもそもデフォルトの設定では盤面上バッテリー残量が表示されない)。それでも心配な方は、電池容量が豊富な42mmを選ぶとよいでしょう。

なお、あくまでiPhoneの機能と利便性を拡張するためのガジェットであって、冒頭の3条件にもあるとおりそもそもiPhoneを使っていない方にはなんの役にも立たず、万人にお勧めするものではないことは、念のため申し上げておきます。
 

【本】『リーガル・エリートたちの挑戦』― ようこそ先輩


テンションを上げたい法務パーソンにはもってこいの本がこちら。
 




日本育ちのアメリカ人として日本の司法試験に合格されたのち、コロンビア大学のJDを修了されたダグラス・K・フリーマン先生による、アメリカロースクール体験記。弁護士としての先生の存在は共著書『英文契約書の法実務』等で以前から存じ上げていたのですが、先日、自分の出身高校のパンフレットを見ていたところ、フリーマン先生がOBとして寄稿されていて、母校の先輩だったことを初めて知り、勝手に親近感を覚えて遅まきながら本書を古書で購入。

コロンビアのロースクール、実は私も入ったことがあります。
ええ、観光で・・・。

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本書では、入学に必要となるLSAT対策から、入学してからの友達・教授との付き合い、テスト対策、ローレビューの編集委員、就職活動のそれぞれの場面で、どのようにフリーマン先生が苦労されていたかについて、具体的で細かなディティールを伴って描かれており、まるで小説を読んでいるかのように感情移入して読みいってしまいます。特に法務パーソンがこの本を読むと、いかに自分が法律の勉強という分野で自分自身に天井を作ってしまっていたのか、と反省させられるのではないでしょうか。そして読み終わったころには、自分もこのぐらい死に物狂いで勉強するぞ、という気にさせてくれるはずです。それでいて、読んでいても「意識高い系」と揶揄したくなるような嫌味を感じることが一切ないのは、著者の人格のなせる業かと。


また、日本法弁護士のフィルタを通して観察されるコモンローのエッセンスが語られているところも、本書の読みどころでしょう。

以前の判例が打ち出した「ルール」を適用するうえで不都合な事実状況に遭遇した場合、判例は新たな「修正ルール」を生み出して対応していく。かくして、コモンローにおけるルールは、新しい事実状況に複雑に対応しながら発展していくのである。もっとも、究極的には、コモンローにおける「法」は「XならばYである」という抽象的な法命題としては存在しない。「Aという事実のもとでは、Bと判断される」「A2という事実のもとでは、B2と判断される」「A3という事実のもとでは、B3と判断される」という無数の積み重ねがあるばかりである。
こうなってくると、「ルール」といっっても、確固とした法命題を記載した日本民法の条文などとは違う、はかない存在であるとわかってくる。日本の民法では、たとえば九十六条に「詐欺又は脅迫に因る意思表示は之を取消すことを得」と書いてあれば、この条文に記載された抽象的なルール自体は不動のものであり、その有効性に疑いをはさむ余地はない、ところが、コモンローにおいては、判例が生み出すルールはそれ自体刻々と変貌していくばかりでなく、そもそも抽象的なルールとしてはきわめて脆弱な存在なのである。
結局、厳密な意味で後続の判例を拘束すると確信をもって言えるのは、ホールディングと呼ばれる当該事件の事実関係をもとに下された結論のみである。
このようなルールおよびその適用のあり方のアナロジーを日本法の世界に求めるとすれば、若干突拍子もないが、刑事事件の量刑と比較できるように思う。かつて私が東京地裁の刑事部で司法修習した際、私の指導を担当された裁判官が、「刑事被告人に対する犯罪の軽重、事件の性質等に応じた妥当な量刑の判断は、星空に『正しく』星を並べるような作業である」と話されたのを記憶している。当時の私は、たとえば傷害事件で被害者が全治一か月の重症を負った事件の判決起案をさせてもらったとき、どの程度の量刑が妥当かさっぱりわからなかった。だが、四か月間の修習の中で様々な事件を経験するうちに、少しずつではあるが、裁判官が「量刑感覚」と称するセンスのようなものが少しずつわかってきた。アメリカのコモンローの適用・判断過程は、量刑よりやや基準が明確ではあろうが、経験と感覚が重きをなす点において、量刑作業と共通する要素を有しているように思う。
このように説明してくると、ブラック教授が一言一句漏らさず判例を読むように口がすっぱくなるほど指導する理由も理解できよう。ある法分野をきわめた者の頭のなかには、判例の流れを築いた重要な判決のイメージの数々が満天の星座のごとく刻まれているのだろう。あらたな状況を前にした場合、「AのケースではBの結果で、A2のケースではB2の結果だからこのケースはおそらくこのように判断されるだろう」と、なかば直感的に分かるのだと思う。判例の重要な事実が一つ違ってくれば、ルールと考えられていたものが適用されなくなり、まったく異なる結論になりかねない。判例を一つずつ細かい事実状況を踏まえ以前の判例と比較しつつ学んでいくことによってのみ、判例中のどの事実が結論を導くうえで不可欠であるかを見極める、有能なロイヤーには欠かせないセンスが身についてくるのである。

ちょうど先週、入って来たばかりの新入社員総合職10数名を相手に丸3日間、契約と利用規約に関する研修の講師を担当した際、そこで教える立場であるはずの自分が、新人に繰り返し説きながら自分にも言い聞かせていたのが、「ビジネスにおいては、契約や利用規約の条文解釈をどうこうする前に、事実がどうであったかを正確に把握することがまず大事」という点。コモンローどころか成文法についてもプロではない私に法律論を語る資格はないかもしれませんが、上記引用のフリーマン先生の言葉によれば、その点だけはどうやら間違いではないようです。


仕事の忙しさに自分を見失いそうになったときに、何度も読み直したい一冊です。
 

【本】『コンテンツビジネスと著作権法の実務』― 判例ときどき産業別典型論点、のち発展的実務


次回のビジネスロー・ジャーナルのブックガイドで、著作権法部門の人気を総ナメするんじゃないでしょうか。


コンテンツビジネスと著作権法の実務
井奈波 朋子 (著), 石井 美緒 (著), 松嶋 隆弘 (著), 棚橋 祐治 (監修)
三協法規出版
2015-04-10



「実務」書を名乗る本の品質は、「当たればホームラン、しかし大振りなスイングが災いして空振り三振」な本も多く、玉石混交です。最近も「ライセンス◯◯◯◯の◎◎と実務」という中身が相当にアレな「実務」書を買ってしまい、苦虫を噛み潰していたところ。そのトラウマでドキドキしながら読み始めたのですが、大当たりの場外ホームランな本書。


第1部は、条文の建て付けに沿って著作権法をひと通り解説するところから始まるのですが、うざい「実務」書にありがちな経験談や自説の押し売りオンパレードもなく、むしろ、基本書以上に丁寧に判例を引用して現状の法解釈を確認した上で、各論点に突っ込んでいくスタイル。続く第2部は、出版/音楽/映画/放送/ゲーム/舞台芸術/商品化ビジネス/レンタルビジネスと、産業ごとに分解しながら、近時の論点をピンポイントに解説します。

想定読者レベルを高めに設定した解説となっていて、「当然、中山『著作権法』は十分に読み込んだ上でこれ読んでるよね?」という前提で読者層を足切りしている感があります。従って、そのレベルにある方にとっては、まわりくどい初心者向け教科書風解説にイライラすることなく、知りたいことだけがポンポン目に飛び込んで来る感覚。逆に、中山著作権法をまったく読んだことのない方には、ちょっと厳しいかも。
※中山『著作権法』の読者を意識していることは間違いないのに、本書で参照・引用しているのが初版という点は、もったいなさを感じるポイントではありました。


その発展的実務として取り上げている論点は、(本書のタイトルからすれば当然ではあるわけですが)コンテンツビジネスに関わる私のような者のストライクゾーンをズバズバと突いてくる感じ。私が付箋を貼ったところとそこで取り上げられているキーワードを、ちょっとピックアップしてみました。

・P32-39 二次的著作物 …複製・二次的著作・別個の著作物の境界
・P72ー85 同一性保持権 …プログラム著作物とゲーム
・P105ー119 パロディ …適法性をめぐる争点の整理
・P125ー131 未知の利用方法に関する契約解釈 …法61条2項の類推適用
・P131ー141 ライセンス契約 …OSSを契約とみるか単独行為によるライセンスとみるか
・P145ー159 著作隣接権 …シチュエーション別での実演家権影響範囲
・P198-219 侵害論 …制限規定の整理・カラオケ法理・メディアの注意義務
・P250-264 音楽産業と著作権 …サンプリングと原盤権
・P298ー322 放送業と著作権 …放送番組の二次利用の困難性
・P323ー331 ゲーム産業と著作権 …ゲームはプログラムか映画かその他か・組込み著作物
・P339ー348 商品化ビジネスと著作権 …キャラクターの著作物性
・P385ー392 プログラムの著作物 …プログラムの具体的記述と創作性判断基準

いずれも、著作権法に興味がある方にとっては興味津々なキーワードが並びます。かといって新しいキーワードばかりをつまみ食いするのではなく、プログラムの著作物やカラオケ法理といった典型論点も、最新の判例や視点も踏まえてしっかりと論じているところが、とても頼もしい本書です。


書籍の体裁としては、そんなに図表が多い本ではないこともあり、見た目取っ付きにくい感じもあるのですが、その中でキラリと光っていた2ページをご紹介。

1つめが、P107のパロディの適法性をめぐる争点を整理したチャート。文章では何度か読んだはずなのになかなか頭に入ってこなかった論点が、この図でようやくスッキリと。

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2つめが、著作権制限規定を一覧したP201の脚注。もちろん条文を丹念に追っていけば分かることではありますが、こう一覧化したものって、なにげに今まで無かったのでは。渋い。

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出版社の三協法規出版さんはあまり目にしない名前でしたので、ほかにどんな本を出していらっしゃるのだろうと調べてところ、2年前に弊ブログで絶賛した『ブランド管理の法実務』を出されている出版社でした。恐るべし。
 
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