企業法務マンサバイバル

ビジネス法務に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きる皆様に貢献するブログ。

【本】『知的財産権としてのブランドとデザイン』― 法務を地味に悩ませる「商標的使用」論

 
キャリアアップのための知財実務のセオリー』の巻末にて、意匠権に関する推薦図書としておすすめされていたのを拝見し、この本の存在を知りました。





「ブランド」「デザイン」を保護する武器としての商標法、意匠法、著作権法さらには不正競争防止法の跨がりを、主要外国法も含めて横断・俯瞰し、解きほぐしてくれる本です。

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意匠権以外も充実しています。特に、「商標的使用」についてのこんな整理・類型化は私のツボ。以下P244より。

以下の事情がある場合には、商標的使用態様を否定する方向で作用する。
  1. 一般に認知されている業界の取引慣行(例:包装容器の目立つ位置には内容物の商品名が表記される)により商標として認識されない(十二支事件、Marlboro事件、巨峰事件、For brother事件、Happy Wedding事件、TASTY事件)
  2. 商標を使用する位置に被告商標が別途使用されている(ポパイ(アンダーシャツ)事件、Marlboro事件、ニンニク写真事件、Happy Wedding事件)
  3. 被告標章が使用される位置が商標の使用される位置ではなく、記述的表示が使用される位置である(巨峰事件、POS実践マニュアル事件、Under The Sun事件)
  4. 被告標章の使用されている商品との関係で(例:通行手形の形をしている)、商標とは認識されない(通行手形事件、Happy Wedding事件)
  5. 他社の商標も並列的に使用されている(Marlboro事件)
  6. 打ち消し表示が使用されている(タカラ本みりん入り事件、For brother事件)
  7. 他の商品分野でも記述的に使用されている(カルゲン事件)
  8. 被告独自の取引慣行(例:キャッチフレーズを利用した広告宣伝を長年行っている)が認知されている(Always Coca-Cola事件)
  9. 書籍の題号として認知されている(三國志武将争覇事件)
  10. 他の文章との関係で商標として認識されない(POS実践マニュアル事件、Always Coca-Cola事件)
  11. 商標権者が不正の目的で商標登録した(ポパイ(アンダーシャツ)事件)

インターネットで何らかのコンテンツを提供するサービスにおいて、最も問題になる頻度が高い知的財産権が著作権であることは異論がないところだと思いますが、その裏で“地味に”法務パーソンを悩ませているのが、この商標の使用と権利侵害の問題、いわゆる「商標的使用」論ではないかと思います。

検索連動型広告での競合他社商標のキーワードバイイングなどは古くからある代表的な論点ですが、それ以外にも、
  • オンラインゲームの主人公の生活描写としてコカ・コーラの赤い缶を片手にカルビーのポテトチップスを食べている絵を書いてしまっていいのか?
  • ユーザー投稿型のレシピサービスで「味の素」と投稿されたレシピを「うま味調味料」と訂正させるべきか?
  • 音の商標が認められる現代においてネット動画の音声にサウンドロゴが入りこんだ場合にはどう考えれば?
etc…、気になりだすととまらなくなってしまうところです。

こういった商標の使用が商標権者の深刻な権利侵害となる事例が少ないからか、大きな問題とはなっていませんが、比較的権利化が容易な商標権だけに、侵害を主張された場合に備えた理論武装は十分にしておくべきところだと思います。
 

【本】『アプリビジネス成功への法務戦略』 ― ついに出た、アプリ対応版『利用規約の作り方』


技術評論社の高屋さま、そして著者のお一人である橘大地先生より、発売前の見本紙をご恵贈いただきました。ありがとうございます。





一言で評するならば、“ついに出た『良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方』のアプリビジネス対応版”。同書と同じ出版社である技術評論社さんでこういう企画があったなら、同書に関わったお前が書けよというツッコミをいただいてしまいそうですが(笑)、浅学かつ遅筆な私には残念ながらこのスピード感では書けませんでした。このスマホ法務の分野でアグレッシブな法律サービスを提供されている、GVA法律事務所さんならではの、タイムリーな価値あるお仕事だと思います。

内容としては、『利用規約の作り方』同様、利用規約/プライバシーポリシーの二大文書のポイント解説がボリュームゾーンとなってはいますが、この本の読みどころは、それらよりも第2章「アプリビジネスを取り巻く法律問題」のパートなのかな、と思います。特に、
・ゲームアプリ
・ソーシャルシェアリング
・クラウドソーシング
・クラウドファンディング
・電子決済サービス
といった、『利用規約の作り方』ではカバーされていない新しいビジネスモデルにつきまとう資金決済法や貸金業法等の問題点について、ある程度まとまった形で言及された文献は、この本がお初になるのではないでしょうか。

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また、景品表示法、COPPAや税法といった海外展開につきまとう法律問題など、アプリビジネスの法務担当者の間ではよく話題になるリスクポイントについても触れてあります。純粋な法律専門書ではなく紙幅も限られているため、ひとつひとつの論点の深掘りにまではいたっていないとはいえ、広範なリーガルリサーチまではなかなか手がまわらないベンチャー経営者にとっては、目から鱗のネタ・ヒントがたくさん詰まっているはずです。


著者のお一人である橘先生とは、同業界の法務パーソンとして昨年暮れに接点をもたせていただく機会を頂戴しました。この本を書き終えられた後息つく暇もなくシンガポールに向けて発たれ、今後は日本からアジア展開を図るベンチャー企業を支援する活動に従事されるとのこと。高い理想と行動力の両方を持ち合わせた先生のご活躍に、私も期待しています。
 
また私自身も、そう遠くないうちにこのアプリサービスの分野でみなさんのお役に立てるような文献が出せたらと思っています。そのご紹介が出来る日まで、もう少しお時間をいただければと。
 

やっと出ました個人情報保護法改正案 ― とりあえずはこの3点

 
ようやく、みなさんお待ちかねだった個人情報保護法の改正案が、具体的な条文案のかたちになりました。下記リンク先の新旧対照表P11以降をご覧になると、見やすいと思います。

個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案 新旧対照表

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企業法務に関わる改正ポイントの主だったところを3つだけ、ピックアップしてみます。


1 個人情報の定義の変更

定義規定が変更され、「個人識別符合がふくまれるもの」が個人情報の定義に加わりました(2条1項2号)。では「個人識別符号」とは何か、というと

2 この法律において「個人識別符号」とは、次の各号のいずれかに該当する文字、番号、記号その他の符号のうち、政令で定めるものをいう。

一 特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字、番号、記号その他の符号であって、当該特定の個人を識別することができるもの
二 個人に提供される役務の利用若しくは個人に販売される商品の購入に関し割り当てられ、又は個人に発行されるカードその他の書類に記載され、若しくは電磁的方式により記録された文字、番号、記号その他の符号であって、その利用者若しくは購入者又は発行を受ける者ごとに異なるものとなるように割り当てられ、又は記載され、若しくは記録されることにより、特定の利用者若しくは購入者又は発行を受ける者を識別することができるもの

という定義(2条2項)。

以前当ブログでも言及したとおり、「個人情報の定義は広がらない」としていた事前報道とは異なり、携帯電話番号のようなかなり身近に取り扱われている番号・記号・符合も、政令で指定しさえすれば個人情報となります。

2 匿名加工情報の新設

そして、政府的にはパーソナルデータの利活用を目指すための目玉としている「匿名加工情報」が、以下の定義で新設されました(2条2項)。

この法律において「匿名加工情報」とは、次の各号に掲げる個人情報の区分に応じて当該各号に定める措置を講じて特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元することができないようにしたものをいう。

一 第一項第一号に該当する個人情報 当該個人情報に含まれる記述等の一部を削除すること(当該一部の記述等を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。
二 第一項第二号に該当する個人情報 当該個人情報に含まれる個人識別符号の全部を削除すること(当該個人識別符号を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。

ただし、匿名加工情報であれば自由に取り扱ってよいというものではなく、
・匿名加工情報を作成したとき:そこに含まれる情報の項目
・匿名加工情報を第三者提供するとき:そこに含まれる情報の項目および提供の手段
を、個人情報保護委員会規則に従って公表する義務が設けられ(36・37条)、あわせて他の情報と照合するなどの再識別化も行ってはならないことが法定されました(36・38条)。

3 第三者提供の制限の強化

特にオプトアウト方式で個人データの第三者提供を行う場合について、個人情報保護委員会への届出が新たな義務として法定されました(23条2項)。事業者等から届出があった事実は、個人情報保護委員会が公表することとなります(23条4項)。

2 個人情報取扱事業者は、第三者に提供される個人データ(要配慮個人情報を除く。以下この項において同じ。)について、本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止することとしている場合であって、次に掲げる事項について、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置くとともに、個人情報保護委員会に届け出たときは、前項の規定にかかわらず、当該個人データを第三者に提供することができる。

一・二 (略)
三 第三者への提供の方法
四 (略)
五 本人の求めを受け付ける方法

また、個人データを第三者提供した年月日、相手先等の記録保存義務が追加されたことに加え、第三者提供を受けた(個人データを受領した)側にも、
・誰から取得したのか、およびその個人データの取得の経緯を確認する義務
・そのデータの提供を受けた年月日を記録し保存する義務
が新設されました(26条)。


さらに細かいところを見ていくと、利用目的の特定義務について、現行法の15条2項では「変更前の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて(利用目的の変更を)行ってはならない」とするところ、「相当の」がさりげなく削除されていたり(15条)、正確性確保義務が拡充される形で利用終了後の個人データに関する遅滞なき消去努力義務が追記されていたり(19条)、外国へ個人データを提供する場合には別途その旨の同意を取得する義務がさらっと新設されていたり(24条)、興味深い点もたくさん見つかるのですが。

まずは、上記3点を抑えて、事業者としてやるべきことをリストアップしはじめるのが良いと思います。
 
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