企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

日本経済新聞夕刊1面「秘密保持 契約書を統一」にコメント

 
本日の日本経済新聞夕刊の1面トップ記事、「秘密保持 契約書を統一」。法務関係者にとってはなかなかインパクトのある見出しです。

その記事の中ほどで、突然「契約実務に詳しい弁護士ドットコムの橋詰卓司氏」として私が登場し、コメントをしております。ご笑覧ください。


秘密保持、契約書を統一 商談迅速に:日本経済新聞

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記事の方は、リーガルテック業界の戦友である早川晋平CEO・酒井智也先生率いるHubbleが仕掛け、私にとっての灯台的存在である水野祐先生がアドバイザーを務める「OneNDA」の取り組みが、具体的に特集されています。

そしてこの記事を書いてくださった記者の◯さん。長年お世話になっている素敵な方ですが、しばしお休みに入られるとのこと。

なかなか陽の当たらないエリアにいる私たちを地道に取材し応援してくださって、いつもありがとうございます。お休み中も色々とお忙しいと思いますが、また帰っていらしてご一緒できることを楽しみにしています。
 

【本】『プラットフォームビジネスの法務』—「仕組み」で稼ぐすべての企業へ

 
森・濱田松本法律事務所の古市啓先生からご恵贈いただきました。ありがとうございます。

多岐に渡り細かい法的論点が散らばるプラットフォームビジネスを徹底的に分析し、「事業軸」と「法律軸」の2面から体系化。運営事業者の立場からはもちろん、ユーザー企業の立場で読んでも役に立つ本です。


プラットフォームビジネスの法務
岡田 淳 (著), 中野 玲也 (著), 古市 啓 (著), 羽深 宏樹 (著)
商事法務
2020-11-12



プラットフォームビジネスを類型化して論じようとしても、「何か」と「何か」にまたがるビジネスが多いため、綺麗に分けられずに挫折しがちです。私が共著した利用規約本でも、ウェブサービスを分類しようと試みて苦労をした記憶があります。

この点、本書2章で採用されている「プラットフォームビジネス11類型」は、解説の読みやすさ・分かりやすさの面から工夫を凝らしたものとなっています。

1 ショッピングモール
2 アプリマーケット
3 サービス予約型プラットフォーム
4 検索サービス
5 コンテンツ配信型プラットフォーム
6 SNS型プラットフォーム
7 シェアリングエコノミー型プラットフォーム
8 マッチング型プラットフォーム
9 ヘルスケア型プラットフォーム
10 FinTech
11 モビリティ(MaaS)プラットフォーム

これらの分類の中で、

  • メジャーではあるが意外にその位置付けに困ってしまう食べログ系サービスを「サービス予約型」に(さらにその小分類を「場貸し型」「取次型」「直営型」に)
  • MakuakeやReadyforなどのクラウドファンディングサイトをFintechではなく「シェアリングエコノミー型」に
  • 一見するとプラットフォームビジネスとは見られにくい検索サイトを(広告サービスではなく)「検索サービス型」に
  • 医療系サービスをいずれの類型からも独立させて「ヘルスケア型」に

それぞれ分類している点などには、違和感を感じる読者も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、実際のリーガルリサーチの場面で本書を使う場面を想定すると、この分類の妙が理解できます。各ビジネスの検討から逆引きしたときに、そこに適用される法令・規制についての解説が読者にとって理解しやすいものとなることを第一に優先したこの分類法こそ、本書の発明だと思います。

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こうした事業軸からの分析を「縦糸」に、全ビジネスに共通して適用される「横糸」に当たる法律軸として第3章で解説されるのが、以下の4法です。

1 透明化法(2020年5月27日可決成立)
2 独占禁止法
3 個人情報保護法
4 プロバイダ責任制限法

この4法は、IT領域でビジネスをするなら常に気に掛かる法令ながら、抽象的な規定ぶりも多くどこまでが規制の対象となるのか、実務上もやもやと不安の霧が晴れない分野でもあります。各法ごとの専門書や行政ガイドラインも、必ずしも自社が企図する新しいビジネスへの当てはめには役立たない中で、プラットフォームビジネスに特化した解説が読める本書はそうした霧を晴らすのに役立ちます。

プラットフォーム上で起こりがちなやらせレビュー(ステマ)を規制する景品表示法や、決済手段に関わる資金決済法など、ここでもっとたくさんの法律を「横糸」としてピックアップし論じることもできたと思いますが、あえてこの4法に絞って厚く論じることにした編集方針は正解だと思いました。

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これだけでも十分な内容ではありますが、本書第4章ではさらにボーナスとして、海外でのプラットフォームビジネス規制動向のまとめもあります。将来の日本における規制強化の風向きを読むのにも役立ちます。


今やビジネスにITを使わない企業はむしろ珍しく、現代のビジネスがITを使った「仕組み」で稼ぐものである以上、最初はどんなに小さくとも成長を続ければいつしかそれは「プラットフォーム」になっていきます。プラットフォームビジネスと聞くと、何かGAFAMのような一握りの企業だけの話のように聞こえるかもしれませんが、他人事としてではなく、永続的な成長を目指す企業で働くすべてのビジネスパーソンが理解しておくべき内容が本書には凝縮されています。


はしがきiiiページの宣言にあるとおり、「国内外の制度改正や事例の蓄積にあわせて、本書も定期的にアップデートしていく」をぜひお願いしつつ、私の法律書マンダラにも収録させていただきます。

【本】『希望の法務 法的三段論法を超えて』—人と人とのつながりを紡ぐ仕事

 
もはや法的三段論法や条文・判例知識だけに頼っていたのでは通用しない、誰もが経験したことがないほどの変化の時代において、法務は今まで以上に「丁寧に人と人とのつながりを紡ぐ」役割を担うべきである。


希望の法務――法的三段論法を超えて
明司 雅宏
商事法務
2020-10-03



本書が述べるこの結論に強い反発は感じなくとも、ピンと来ない人は多いのではないかと思います。

では、これはいかがでしょうか。

企業に限らず、他者と取引をするということは、自社ではできないことを他者にお願いする、つまり他者の力を借りるということが背景にある(P105)

著者の明司雅宏さんのように、常日頃からこういう意識を持って事業部や取引先と対話ができている法務パーソンは、自ずと仕事の姿勢が異なっているはずです。

たとえば、

・ビジネススキームの企画会議に加わるとき
・契約書案をレビューし交渉するとき
・債権回収の場面で督促をするとき

こうした場面で法律知識をひけらかし権利を振りかざすだけの仕事なら、クリエイティビティは必要ありません。事業部に疎まれ、取引先の不興を買い、AIに駆逐されるのも時間の問題です。

力を貸して欲しい相手を尊重し、どうすれば自社との取引で生まれる連帯の力を最大化できるかという視点で解決策を考える。そのために粘り強く事業部や取引相手と対話をするところに、アイデアや革新の種があるのだと思います。

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このコロナ禍で、もう一つわたしたちが学んだことがある。それは「連帯」である。変化の声を上げるのは一人かもしれない。でも連帯して声を上げるとそれは変化を生み出すことも学んだのではないか。(P158)

取引以外でも、この連帯の力が発揮されることがあります。

2020年、押印を主とし電子署名を従としてきた歴史が、内閣府と大臣のリーダーシップによって大きく塗り変えられています。この流れが生まれるまでには、議論を正しい方向に導いた専門家の知見や事業者のロビイングの影響もあったかもしれませんが、それ以上に、法律家たちの押印へのこだわりとそれを支えてきた法解釈に不満と疑問を抱き、新たな合意手法を必要とした企業や個人の声の連帯こそが、ブレイクスルーを生んだ原動力であったと思います。

事業部に任せきりではなく、法務がそうした外部との連帯の力を自社に引っ張ってくる存在となること。そのための具体的行動として、事業部以上に日頃から外に出てさまざまな人と対話し、いざという時に力を貸してもらえる信頼関係を築くこと。

「自ら外に出てつながりを紡ぐ法務」は、これまでの典型的な法務組織像や人材像からはかけ離れているように見えます。だからこそ、それを意識的に行いさえすれば、事業部からも「うちの法務は変わったな」と思ってもらえるのではないでしょうか。

『法のデザイン』とともに、私の法律書マンダラのセンターに置いて読み返したい一冊となりました。
 

日本経済新聞「データの世紀」のプライバシーポリシー分析をお手伝いしました

 
本日の日経新聞5面の特集「データの世紀」のプライバシー規約のわかりやすさに関する記事に、「規約作りの専門家、橋詰卓司氏」として取り上げていただきました。





ユーザーにとって良い利用規約・良いプライバシーポリシーとはどんなものか?という問いに答えるのは難しいことです。そんな中、この日経新聞の連載「データの世紀」を担当されている平本信敬記者から、評価基準をいかに構成すべきかの検討に関し協力依頼をいただき、微力ながらお手伝いした形になります。


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見出しにある「外国企業すごい」という結論ありきの記事なのではと受け取られるかもしれませんが、あくまで、自然言語としてのわかりやすさ・読みやすさを判定するプログラムに調整を入れていただき、文字通り機械的に出力された結果に基づいたものとなります。


記事に現れていない部分で私の考えを補足するとすれば、規約の言語としてのわかりやすさもさることながら、

・同意の強制スタンス
・自己情報の把握・持ち出しへの対応

などの点で、多数のユーザーを対等な契約の相手方と捉えているか否かが、近年の各社の規約・プラポリの変更内容に現れはじめているように思いました。


仕事でさまざまなメディアの記者の方々とやりとりをさせていただくと、記事としてたどりつきたい結論をサポートする専門家の言質を取りたいだけの方も多い中、最近の日経新聞の真摯な取材姿勢には目を見張るものがあります。
 

「法の余白」の広げ方

2017年10月より、クラウドサインという電子契約サービスをお客様に広めていくことに集中してきましたが、本日4月1日付人事異動をもって、BUSINESS LAWYERS LIBRARY等の新事業も担当していくことになりました。

2020年4月、この記事を書いている最中、世界中が新型コロナウイルスと戦っています。この敵への打ち勝ち方はまだわかっていません。しかし、一つ確実にわかっているのは、デジタルの世界には人の命を奪うウイルスは立ち入れない、という事実です。

そうであるならば、「リアル・アナログが一番安全で確実」といったこれまでの常識を捨て、完全なデジタルシフトをかけていく必要があります。この1年、まずはそうしたお客様のデジタルシフトの支援に注力することになります。

その先に私がイメージするのは、「法の余白」を見つけ、広げるためのサービスづくりです。
ご紹介するのは二度目になりますが、シティライツ法律事務所 水野祐先生の本から引用させていただきます。





弁護士資格を取得し、実務で実際に法律や契約に対峙してみると、法に存在する「余白」に不思議と自由さを感じるようになった。同時代を生きるイノベーターたちとの刺激的な対話と実践のなかで、プロジェクトを法的に支援し、場合によっては加速することができるのではないかという手応えを得るようになった。(P7)
社会のルールたる法は、私たちの生活において欠かせないものである。ルールを意識するということは、メタな視点から物事を俯瞰することでもある。私はこれが「リーガルマインド」の真髄だと考えているが、それはあらゆる物事がネットワークでつながるアフターインターネット時代においてとりわけ重要な視点となってきている感覚がある。
大切なことは、ルールは時代とともに変わっていく/変わっていくべきという認識と、ルールを「超えて」いくというマインドである。ルールを超えていくことは、ルールを破ることを意味にしない。ルールがどうあるべきかということを主体的に考えて、ルールに関わり続けていくことを意味する。ルールを最大限自分寄りに活かすことは知性の証明に他ならない。(P7)
高度情報化社会は、「法の遅れ」を前提として、有史以来もっとも現実と法律の乖離が大きい時代であり、また、私たちが日々交わす利用規約を含む契約が大量化・複雑化している。そのようななかで、創造性やイノベーションの源泉である「余白」=コモンズをいかに法やアーキテクチャの設計や協働を通じて確保することが重要なのかについて述べてきた。(P46)
このような情報化社会において、法律や契約を私たち私人の側から主体的にデザイン(設計)するという視点が重要になる。「リーガルデザイン(法のデザイン)」とは、法の機能を単に規制として捉えるのではなく、物事や社会を促進・ドライブしていくための「潤滑油」のようなものとして捉える考え方である。(P47)


世の中には、
・法律の条文や判例を調べるサービス
・法律の改正情報をお知らせするサービス
・法律文献をオンラインで閲覧できるサービス
・法律・契約上のリスクを分析するサービス
は数多存在します。

しかし、「法の余白」を広げてくれるサービスはありません。


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それにもかかわらず、世の若者たちは、柔軟な発想で「法の余白」を探し・見つけ・自らリスクをとって起業をし、広げるチャレンジをしてくれています。たまに残念な事故を起こし、法律の制約によってサービスが停止・終了してしまうこともあります。

翻ってみると、先ほど挙げたような既存の法律サービスには、そうした法的ブレーキを強めるだけのものが腐るほどあります。一方で、自由で柔軟な発想を誘発するような、アクセル型のサービスは皆無です。

この閉塞感しかない世の中に、これ以上、ブレーキを踏むためだけのサービスを作る必要があるのでしょうか?


正しい法律理解を起点として、起業家的アイデアを生んでいくようなポジティブなサービスを、完全デジタルシフトの支援業務に携わりながら、作っていけたらと考えています。

ご賛同いただける方がいらっしゃれば、ご連絡いただけるとうれしいです。

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