こんな本が発売されてしまっていいのか?よく企画が通ったな・・・、と驚かされるばかりの、『人生が整うマウンティング大全 MOUNTFULNESS』を、笑いで腹を抱えながら読了しました。
タイトルからして大爆笑。
前半のリアルかつボリューミーなマウンティングトーク事例の数々に、まずみなさん圧倒されるはずです。
この冗談のような調子が最後まで貫くのか?私は何を読まされているのか?という恐怖にも似た感情に襲われ我を忘れかけましたが、中盤から落ち着いた縦書き筆致に代わり、気づくと内容も極めて真っ当なビジネス書を読んでいる自分に気づきました。
「ユーザーに気持ちよく"マウンティング体験"をさせるビジネスをいかに生み出すかが、日本企業がGAFAMに打ち勝つために必要な、これからの企業の勝負所」
という深い学びが得られる、優れた書籍です。
こうしたマウンティングは、取引先との契約締結のシーンでもよく見かけます。
以下、私が法務担当として身に覚えのある、契約交渉シーンでのリーガルマウンティングの具体例を、初級編・中級編・上級編にわけてご紹介したいと思います。
何十条にもわたる契約書を作成していると、ふと集中力を失って甲・乙を逆に書いてしまうことがあります。条項によっては契約相手方を極端に有利にしてしまう、クリティカルなミスともなりかねません。基本的には、相手方から指摘をしてもらったら素直に感謝すべきなのですが、「私(相手方)が甲・乙を直したWordの修正履歴を返したら、いつもたくさんの文言修正を入れてくる細かい性格のあなたの上司にバレて大変でしょ?あの〇〇部長も今回ばかりは見逃しちゃったんですかね?」という余計なお世話とイヤミをあえてコメントするというマウンティング。
嫌われますね。
免責条項は、契約交渉においてもせめぎ合いが必ず発生する部分です。その書きっぷりについて、民法の定型約款規制や消費者契約法の特有論点を交えながらの、「そんなのこちらは分かってますし、おたくこそ分かってないのでは?」的な、典型的リーガル・マウンティングの応酬。
仕事とはいえ、面倒ですね。
英文契約となると、契約交渉の初級者・中級者には知り得ない独特の慣習や言い回しがつきまといます。社内に実務経験豊富な先輩がいたり、米国資格を有する弁護士に気軽に相談できる環境があればこんな事故も起きないはずですが、すべての会社がそうとは限りません。慌てて購入した英文契約のひな形集と首っぴきになりながら見よう見まねで頑張って英作文した長文を、海外留学マウントを交えながらバッサリとカットされたときの虚無感。
法務って、何年やったら修行期間が終わるんですかね。
コメント欄で、本ブログの読者の皆さんの「リーガルマウンティング・エクスペリエンス」もぜひ共有してください。
タイトルからして大爆笑。
前半のリアルかつボリューミーなマウンティングトーク事例の数々に、まずみなさん圧倒されるはずです。
この冗談のような調子が最後まで貫くのか?私は何を読まされているのか?という恐怖にも似た感情に襲われ我を忘れかけましたが、中盤から落ち着いた縦書き筆致に代わり、気づくと内容も極めて真っ当なビジネス書を読んでいる自分に気づきました。
「ユーザーに気持ちよく"マウンティング体験"をさせるビジネスをいかに生み出すかが、日本企業がGAFAMに打ち勝つために必要な、これからの企業の勝負所」
という深い学びが得られる、優れた書籍です。
こうしたマウンティングは、取引先との契約締結のシーンでもよく見かけます。
以下、私が法務担当として身に覚えのある、契約交渉シーンでのリーガルマウンティングの具体例を、初級編・中級編・上級編にわけてご紹介したいと思います。
初級編 こっそり直しておきましたマウント
「第15条だけ、『甲』と『乙』が入れ子になっていたようにお見受けしましたので、私の方であえて修正履歴を残さずに直しておきました。これまで何通も契約締結させていただいてますが、御社の◯◯法務部長様にいつも厳しいチェックで赤字をたくさん入れて頂いて、弊社も助かっています。」
何十条にもわたる契約書を作成していると、ふと集中力を失って甲・乙を逆に書いてしまうことがあります。条項によっては契約相手方を極端に有利にしてしまう、クリティカルなミスともなりかねません。基本的には、相手方から指摘をしてもらったら素直に感謝すべきなのですが、「私(相手方)が甲・乙を直したWordの修正履歴を返したら、いつもたくさんの文言修正を入れてくる細かい性格のあなたの上司にバレて大変でしょ?あの〇〇部長も今回ばかりは見逃しちゃったんですかね?」という余計なお世話とイヤミをあえてコメントするというマウンティング。
嫌われますね。
中級編 そんな論点当然承知してますよマウント
「御社のクラウドサービスの利用を検討しております。いただいた契約書ひな形を拝見しましたが、第30条の免責条項が貴社に故意・重過失があっても免責される条件となっており、無効と思われますので軽過失の場合のみ免責する条件に修正を希望します。え?これは法人間の取引だから、消費者契約法は適用されず、故意・重過失免責も有効ですって?いや、それはもちろん承知しております。私が申しておりますのは、改正民法548条の2第2項に定める不当条項に該当するのでは、という論点なのですが。」
免責条項は、契約交渉においてもせめぎ合いが必ず発生する部分です。その書きっぷりについて、民法の定型約款規制や消費者契約法の特有論点を交えながらの、「そんなのこちらは分かってますし、おたくこそ分かってないのでは?」的な、典型的リーガル・マウンティングの応酬。
仕事とはいえ、面倒ですね。
上級編 御社は英文契約に不慣れなんですねマウント
「"Whearas Clause"に、本契約締結に至る交渉の過程を詳細に記載していただき、お手数をおかけしました。ところで、米国ロースクールに留学した経験がある小生には、どうしても気になってしまった点があります。英文契約のWhearas Clauseとは、契約を構成する約束に法的拘束力を与える根拠としての『約因』がないと無効になってしまう、という判例に影響されて存在しているパートなのは、貴殿もご存知かと思います。しかし、貴社は日本法を準拠法とすることを希望されていますし、記載いただいた内容も単なる契約交渉過程の事実の記述であって約因にも該当しません。見出しを"Backgrounds"と変更し、これらを残す案も考えましたが、やはり不要な記述であり、削除させていただきました。」
英文契約となると、契約交渉の初級者・中級者には知り得ない独特の慣習や言い回しがつきまといます。社内に実務経験豊富な先輩がいたり、米国資格を有する弁護士に気軽に相談できる環境があればこんな事故も起きないはずですが、すべての会社がそうとは限りません。慌てて購入した英文契約のひな形集と首っぴきになりながら見よう見まねで頑張って英作文した長文を、海外留学マウントを交えながらバッサリとカットされたときの虚無感。
法務って、何年やったら修行期間が終わるんですかね。
コメント欄で、本ブログの読者の皆さんの「リーガルマウンティング・エクスペリエンス」もぜひ共有してください。