企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

【雑誌】BUSINESS LAW JOURNAL 2015年 3月号 ― 水野祐先生による連載「法のデザイン」に注目

 
数ある法律雑誌の最近の連載記事の中で、最も新味が感じられ楽しみにしているのが、シティライツ法律事務所の水野祐先生による「法のデザイン ― インターネット社会における契約、アーキテクチャの設計と協働」(@ビジネスロー・ジャーナル)です。





しかも、今回は「ゲームのリーガルデザイン(1)」ということで、現在エンタメ業に従事する私としては見逃せない記事。

本連載における「アーキテクチャ」とは、法律や規範(慣習)とは異なり、人間の行為そのものを技術的、物理的にコントロールする仕組みのことをいう。
インターネットだけでなく、ゲーム内の仮想空間もまたアーキテクチャの設計が妥当する。いや、むしろアーキテクチャの設計という観点からは、ゲームはインターネットに先行している分野といえる。ゲームには、現実世界におけるゲームを取り巻く情報環境というアーキテクチャと、ゲーム内で設計された仮想空間としてのアーキテクチャという二つのアーキテクチャが存在することになる。これが他のコンテンツと比較した、ゲームの特徴であるということも可能であろう。

この一節に、なるほどなー、まさにアーキテクチャと法律・契約が交錯するところだから、自分はオンラインゲームの法的問題を考えるのが好きなんだなー、などと独りごちお茶を飲みながらリラックスモードで読んでいたところで、脚注でそのお茶を吹きました。

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水野先生と先日SNSか何かでおしゃべりした際に、「はっしーさんのアレ参考にさせてもらいましたよ」的なことを言われた記憶はあったのですが、よりによってあの(幼稚な)自説がここで晒されたか・・・と。あとでしらっと修正しようかと思ってたのに、もう直せない(笑)。

さておき、先生がこの連載でも述べられているように、エンタメ業にいるものとしては、法律・契約だけでは解消できないことがらがたくさんある中でも、この二次創作との「戦いと共存」状態はさらに混沌としてきている実感があります。個人的には、エンタメコンテンツについては、(従来の権利者が事後の権利処理の容易さ・有利さから意図的にそうしてきたような)「映画の著作物」として束にして考えるのをあえてやめ、映像(影像)の著作物、BGMの著作物、音声の著作物、文字の著作物、プログラムの著作物、プログラムの特許、パブリシティ権、キャラクター権…といった一つ一つの細かい権利に解体して捉えていくことで、こういった問題とも対峙しやすくなるのかな、といったアイデアを温めているのですが。


次号も、位置情報やVRを活用したゲームの法とデザインについて語っていただけるとのこと。本連載が息の長いものになって、日頃ミステリアスな雰囲気漂う水野先生の頭の中・考えていることが一つでも多くご披露いただけることを楽しみにしてます。
 

【本】著作権法 第2版 ― 差分取り&マーキング読み込み


ついに、重い腰を上げて読了しました・・・。


著作権法 第2版
中山 信弘
有斐閣
2014-10-27



中山先生とその教え子の皆様を除けば、その次ぐらいに読み込んだ人間かもしれません(自分調べ)。なぜそんなに読み込むことになったかと言いますと、



という輪読会企画の存在に加え、所属組織のメンバーにも本書を基本書として、ライセンス契約とその前提となる著作権法をレクチャーすることになったため。


まず、輪読会のお題が「一版と二版の記述差異を指摘した上で」ということで、どうやったら差異を漏れ無く効率的に見つけられるだろうか考え、まずはオーソドックスに目次を比較。してみて、ほとんどその体系・構成に変更がないことに驚かされました。本文を最初に読んでいる時は、フェアユースフェアユース連呼をしているような印象があり、第一版から大幅に書き換わったような印象だったのですが、それはパッと見の印象だけだったよう。もちろん、30条の2の付随対象著作物や、42条の3の公文書管理法等による保存等、第一版が出た後に大々的な法改正が施された権利制限規定は大幅に記述が追加されていますが、第一版時点での本書の完成度がいかに高かったかがわかります。

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目次で差異が掴みにくいとなると・・・索引か?ということで、索引も第一版と比較してみると、キーワードレベルだけでみてもかなり増量(83件増)していることがわかります。あわせて、判例索引も比較してみたところ、平成18年以降の判例が新たに追加されている(73件増)のは当然として、平成17年以前も14件の判例が追加(4件削除)されていました。

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こうやって差分を追いかけて行くだけでも、私のような浅学な者でも著作権法学の変遷が垣間見えてきます。たとえば、頒布権と消尽の論点について、

しかしながら、この問題は立法時には想定すらできなかった事態を扱っており、<<実質的には>>法が欠缺している分野と見ることもでき、その意味で判決の理論構成が区々に分かれているのはやむを得ぬことである。究極的には立法的解決によるべきかもしれないが、それまでの間は、最高裁判決のような立法的論的解釈論にならざるを得ず、最高裁の結論は、著作権が経済財的要素を強めている現在では妥当なものといえよう。

このような(大変失礼ながら)立法論への逃げとも見える記述が、

しかしながら、映画の頒布権は劇場用映画の特殊性から例外的に認められたものであり、劇場用映画とは全く異なった流通形態をもつゲームソフトのような通常の流通形態の商品にまで同じ論理で規整することには問題がある。この問題は立法時には想定すらできなかった事態を扱っており、<<実質的には>>法が欠缺している分野と見ることもでき、その意味で判決の理論構成が区々に分かれているのはやむを得ぬことである。敢えて言えば、知的財産法における消尽は必ずしも条文に書かれているとは限らず、一部を除いて解釈で認められていることからして、26条では消尽についてなんら規定されておらず、解釈に委ねられていると考えることも可能である。それまでの間は、最高裁判決のような立法的論的解釈論にならざるを得ず、最高裁の結論は、著作権が経済財的要素を強めている現在では妥当なものといえよう。
ただ近年は映画のデジタル化が進み、映画のマスターフィルムからプリントフィルム(複製物)を作成し、それを各映画館に配るというビジネス・モデルは少なくなり、デジタル方式で各映画館に電子配信されることが増えた。そうなると技術的手段の発展により、映画館に映画の複製物の譲渡や貸与(頒布)をするという行為自体がなくなり、映画館としても物理的に映画の複製物を他に譲渡や貸与ができず、26条で規定されている頒布権の出番がなくなる。劇場用映画以外の映画に26条の適用が判例上否定された現在、26条の意義はなくなると言えよう。ただ現在でも旧来の方式であるフィルムの配給も皆無ではなく、その限りでは頒布権の意味が残存している。

と踏み込んでいたり。


さらに、3周目からはメンバー向けレクチャーのために、これまでの私なら絶対にしなかった「マーキング」をしながらの読み込み。覚えるべき定義や判例通説は赤、論点となっているところは紫と塗り分けているのは、某予備校H講師の授業の影響であります。こうやって作業してみると、本書が予備校のテキストなみに論点・通説・自説がくっきりと丁寧に書き分けられていて、初学者の学習用としてもすばらしい本だということをしみじみ感じました。

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一人で著作権法の基本書を読みこむことほどヤル気が起きないことはありませんが、このタイミングでこういうきっかけを頂いてやり終えて、自分のためにも良かったと思っています。
 

振り返れば焼け野原の2014年


2014年が終わります。本年もこのブログをご愛読くださった皆様に、御礼申し上げます。

以下、私自身の一年を振り返りますが、自分の記録のためとは言え暗い話が続きますので、人の不幸が大好きな方以外は、ここでブラウザをそっと閉じてください。


まず、1年前のこの日に立てた抱負を振り返り、自己採点してみますと
「組織の見直しと拡大」  → △ メンバーは育ってくれたが、組織は拡大させきれなかった
「書籍か論文を出す」   → △ 書き上がったが年内出版には間に合わなかった
「契約書のスキルで尖る」 → ☓ 受験勉強をスタートした4月以降トレーニングの手が止まった
ということで30点。みっともないの一言です。

特に仕事については、労働に費やした時間は目に見えて増え社畜度も上がった割には、結果はまったく振るいませんでした。年初に発生した大きな火事はうまく消火できずに延焼し、春には人材の採用に失敗し、夏には複数件のプロジェクトを良い方向にリードできず不調に終わらせ、秋には「キミの対応案センスなし」とダメだしを食らい、今月も別案件の忙しさで目配りができなかった会議でステークホルダーの皆様・社外の偉い方からお叱りを受けるなど、四季折々の駄目っぷり。年末には心身のストレスで身体にも異変が起きました。とにかく前を向いて戦場を走り抜けて命は無事だったものの、振り返れば焼け野原しか残っていなかったといった状況です。

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どうやら、今年は数年に一度くる“底”の年だったように思われます。4年前の2010年の自分を彷彿とさせます。今までどおりの生き方・働き方では成果も稼ぎも思ったようには上がらないという、法務パーソンおよびサラリーマンとしての自分の伸びしろの限界も感じるようになってきました。当時はそういう予感めいたものはありませんでしたが、ふと思い立って春から試験勉強を始めたのは、お前もこのままではダメだぞという虫の知らせであったのかもしれません。

かろうじて良かったのは、情報法・消費者法・契約法といった自分が強みとしたい法分野に携わりつつ、特許法・音楽著作権・金商法・マニアックな各業法など、今まで関わりが薄かった法分野の経験がこの歳になっても積めている点でしょうか。家族が大過なく元気で過ごしてくれたことにも感謝しています。


来たる2015年は、冒頭述べた今年の積み残しをできるだけ早く片付けながら、焼け野原からの復興を目指し、
「実体法の基礎を固める」
「新しい働き方・カネの稼ぎ方を見つける」
「体力作り」
この3つに絞って生きていきます。
 

【本】はじめの1冊! ロックで学ぶリーガルマインド ― ロック・パンクミュージックは法務パーソンにとっての精神安定剤

 
TMI総合法律事務所から独立し、北海道でアンビシャス総合法律事務所を開業されご活躍中の奥山倫行先生が、「ロックが好きな一般の方」に、リーガルマインドを広めようという思惑で書かれた本書。

ですが、「リーガルな仕事に就いているロック好きな方」が読んでも楽しめるのではないかと思ったので、弊ブログを御覧の法務パーソンのみなさまにも、年末年始用のエンタメ本としてご紹介させていただきたいと思います。





実際にロックミュージシャンが遭遇したトラブル、例えば
Guns N' Roses 対 Dr Pepperの「アルバムが予定通り出たら全米国民に1本ずつプレゼント」事件
Johnny Rotten(Sex Pistols) のTV番組 “Bodog Battle Of The Bands” 暴行・セクハラ事件
Jim Morrison(The Doors)のコンサート公然わいせつ事件
COLDPLAY 対Joe Satriani の“Viva La Vida"パクリ疑惑
などをもとに、憲法・民法・刑法・著作権法の入り口部分を紹介します。私もバンドマンでしたのでバンドの歴史系の話は知ってるほうなんですが、よくぞここまで初学者向けの法律論に絡めたなあと感心させられました。それでいて、全17章中わざわざ債務不履行に3章も割いて説明をしているあたりなどは、本当に一般の方にこの本で法律を理解させてあげたい、という情熱をもって書いていらっしゃるんだなぁということも伝わってきます。

しかしよく考えてみると、外タレが外国で遭遇した事件(3章のマイケル・シェンカーを除く)を、日本法で解説・当てはめしているという時点で、だいぶおかしいことに気付きます(笑)。本文中はその点には一切触れられず、淡々と・軽妙に進んでいきます。もちろん、この本に書かれた法律論が実務で役立つといった類の本ではありませんから、そういうところをあげつらってdisるのはお門違い。ここは笑うところ、エンターテインメントです。

挿絵の方もこの本全体に漂う軽妙さ・シュールさと相俟って、いい味がでてます。たとえばこれとか。

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えーと、私ツェッペリンは好きなのでロバート・プラントだって分かりましたけど、なんか違う(笑)。

そしてこれ・・・

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これ、レッチリの章の挿絵なんですけども。
レ、レッチリのはずなんですけど?
こういうのも含めてすごく面白い。好きですね〜。

どうも茶化してばかりいるように聞こえてしまうかもしれないのでちゃんとフォローしておきますと、法律のことを知らない人向けの本といいつつ、締めるところは締めています。一例を挙げますと、本書冒頭に出てくるこの見開き2ページのまとめ「法律が身につく7つの手さばき」には、実務家の心得として大切なことが漏れ無く書かれています。


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特に、「7 ケースにあった解決策を考える」に書かれた解決策の判断基準3つ

)‥観点:法的に見て責任があるか否か
道義的観点:法的に責任はないが、人として対応した方が良いか否か
戦略的観点:法的にには責任が無いし、人としても対応する必要は無いが、それでも評判や名声や今後の関係性を考えると対応をした方が良いか否か

は、企業コンプライアンスを語る際に「レピュテーションリスク」という曖昧な一言で片付けられがちなところ、「道義」と「戦略」に細分化している点キャッチーなフレームワークと思います。早速いただきます。
 

ところで、法律実務家に限って、ロック・パンクミュージック好きな人本当に多いですよね。カタくて小難しい仕事を選んでいる人に限って、ロックやパンクで破壊衝動を発散させながら心のバランスを取ろうとするものなのでしょうか。少なくとも私に関しては、そういった精神安定剤としての機能はあるように思います。バンドでロック・パンクを思い切りやってきた経験のおかげで、多少ストレスのある仕事が降ってきても心の平静がコントロールできるようになったのかもしれません。
 

広告・キャンペーン規制の学び方 ― 景品表示法の規制強化に備えて

 

商品・サービス販売促進のための広告やキャンペーンを実施しない企業は、ほとんど存在しません。そのわりには、景表法を始めとする法令・規制の理解に自信がないという方、法務パーソンを含め結構多くないでしょうか?

公正競争規約があるような業界ですと、決まった型みたいなものができているのかもしれませんが、比較的新しいIT系やウェブサービス業界に身を置いていますと、苦手、もしくはほとんど意識や対策をしてない方も少なからずお見受けします。

そんな中、ご存知の通り景表法改正により規制・取り締まりが強化されようとしています。しょうがない、じゃあ勉強しようかと重い腰を上げようにも、なかなか良い書籍・テキストが見当たりませんし、定評あるセミナーにもお目にかかったことがありません。そこで今回は、こういう順番・フレームワークで捉えると理解しやすいんじゃないかな?と私が考える学び方と、それをサポートしてくれる情報源をメモしたいと思います。


1 商売の流れを意識して当てはめを考える


広告・キャンペーン規制を学ぶ際の入り口のコツとして、商売の流れを意識して適用される規制を検討するとよいと思います。

たとえば、景品表示法を例に上げると、同法は3条で過大な景品類を提供することを、そして4条で不当な表示をすることを規制する法律となっています。一方で、実際の商売の流れは法律の建て付けとは順序が逆で、商売の前半フェーズでは言葉巧みに新規顧客を誘引しようとする点、不当表示規制を検討するウェイトが高く、後半フェーズでは商品・サービスまで辿り着いてはいるものの購入を迷う人の背中を+αでもうひと押しようとする点、景品規制や値引きの妥当性を検討するウェイトが高くなります。真ん中のフェーズでは、その両方を意識する必要があり、その分危ない場面や規制の見落としの可能性も増えがちになる、というわけです。

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このように、商売の流れの中での現在地を意識して法令・規制の当てはめを考えると、必要な情報の検索もしやすくなります。

2 体系を捉えてから各論を深堀りする


さて上記1のように大きな枠で規制の焦点を合わせた上で、具体的な中身を学習していきます。ここで、景表法の書籍を1冊でも読んだことのある方は、次々に飛びだす景表法用語とその複雑な構造に面食らった覚えがあるはずです。面食らったまま終わらないために重要なのは、各規制の体系を把握した上で、それぞれの各論を深堀りすること。あらゆる勉強法の鉄則ですね。

そして体系を理解するには、本当は自分で手を動かして図を書くと良いのですが、今回は参考に、私が作ったものを貼っておきます(まとめ方はこれに限らずいろいろあると思います)。

(1)広告(表示)規制の体系

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体系図で見ると分かる通り、広告(表示)規制の奥深さは、景表法だけでなく他の法律にもまたがっているところにあります。景表法は禁止義務のみを規定しますが、特商法や資金決済法には逆に表示を義務付ける規定もあります。さらに、商品・サービスによっては、食品表示法や薬事法や宅建業法などの業法に定められた規制・義務もチェックしなければなりません。

この広範さが、広告(表示)規制の面倒なところなわけですが、体系を抑えておくことでリスクのアンテナは立つようになるはずです。

(2)キャンペーン規制の体系

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景品・値引き・アフターサービス・付属品といった、+αのメリットを訴える販促手法は、意識しないと表示規制に気を取られて見落としてしまいがちなところ。冒頭タテ1で述べたように、広告(表示)規制とキャンペーン規制を二分する意識をもちながら、重なりがあるところでは見落としがないようにするのも大事です。

その上で、景品キャンペーン規制を深掘っていきます。図をみてわかるとおり、景品キャンペーンにはかなり細かな規制の枝分かれがあるのが特徴。ですが体系を先に把握すると、細かな規制を記憶するスピードもアップするはず。具体的には、景品類の提供には「懸賞による提供」/「懸賞によらない提供」の大きく2つの方法しかないことを知っていると、その下にそれぞれぶら下がっているいくつかの例外(カード合わせ、オープン懸賞、試供品等の総付適用除外)も、理解と記憶がラクになります。

3 苦手意識を抱きやすい3つのポイントをあらかじめ知っておく


本稿はあくまで「学び方」を解説するものですので、あまり各論について解説するつもりはなかったのですが、景表法で初学者がよくつまずくポイントに3点だけふれておきます。すでに苦手意識を感じてしまった方は、この3点をクリアするだけでも、視界がかなり変わるんじゃないでしょうか。

(1)混同しがちな「優良誤認」と「有利誤認」を区別するコツ

優良誤認:商品・サービスの内容を実際よりも著しく優良であると示す表示
有利誤認:商品・サービスの取引条件(価格等)を実際よりも著しく有利であると示す表示

「優良」と「有利」という言葉が似ているため、慣れないとどっちがどっちかわからなくなります。ここでは下線部の「内容」「取引条件」をセットで覚えるのがコツ。そこを意識すると、たとえば不実証広告規制ってどっちに及ぶんだっけ?と考える際にも、「商品の内容に関してウソをついてないか」が試されるから優良誤認に及ぶ、というように有機的に覚えられます。

(2)「懸賞」と「総付」、それぞれに定められた限度額はとにかく記憶

商品・サービスの購入者の一部に抽選や競争の結果で景品を与えるのが懸賞。
商品・サービスの購入者全員に漏れ無く景品を与えるのが総付。

そこまでは誰もがカンタンに覚えられるのですが、景品提供方法それぞれの景品最高額・限度額が頭に入らない人がいます。これに関しては覚えるか覚えないかの問題で、この2つの表を頭にいれるしかありません(消費者庁ウェブサイトより)。いつかは覚えなきゃいけないので、観念して早めに覚えてしまいましょう。

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(3)「値引き」は原則自由だが、「二重価格規制」の落とし穴に注意

有効な販促手法の一つである「値引き」は、みなさんの身近にあるスーパーマーケットなどでも行われているとおり、正常な商慣習に照らして認められるレベルであれば、規制はかかりません(割引券としての配布方法によっては景品規制に抵触したり、独禁法上不当廉売にあたる場合あり)。

しかし、過去の販売価格や虚偽の定価等と比較した値引き額を表示して販売すると、今度は表示規制である「二重価格規制」に抵触するケースがでてきます。値引きすること自体は悪いことではないが、比較対照している価格が適切でないと不当表示として問題となる、というわけです。ここで、景品規制→値引き→表示規制と、体系のスキマをまたいで規制を考えなければならないところが、思考回路ができるまではちょっと混乱するかもしれないところです。

さらに、過去の販売価格と比較する場合、その比較対象となる値引き前の表示金額は「最近相当期間にわたって販売されていた価格」でなければなりません。この「最近相当期間」と認められるための条件が難しい。ガイドラインに文字で書いてあるものの、読んでいても普通の人はわからないはず。そんなときはこのフローチャートが頼りになります(後掲『景品表示法〔第3版〕』P92より)。

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補:新しいマーケティング手法に対する規制


広告・キャンペーン規制の奥深さは、新しい手法がどんどん開発されるのに対し、法律がそれに追い付ききれてないところにもあります。本稿では触れませんでしたが、
・検索連動広告
・アフィリエイト広告
・リワード広告
・フリーライドマーケティング
・ステルスマーケティング
と、次々生まれるマーケティング手法に、法務としてどう対応していくかも重要なテーマとなっていくでしょう。この話は、またどこかでご披露できればと思います。

情報源


最後に、情報源として、参考文献、ウェブサイト、告示・ガイドラインのリンク集を置いておきます。

◯参考文献
冒頭述べたように、広告・キャンペーン規制はこれ一冊でわかる!という文献がないのですが、私が読み漁った本の中からいくつかピックアップしてみました。

▼『景品表示法〔第3版〕』


これは持ってないとお話にならないです。消費者庁編著で、一見告示やガイドラインを踏襲しているだけのように見えるのですが、ところどころ二版→三版で書き加えられたところや、消費者庁見解より踏み込んだ記述があります。その記述の存在が見抜けるようになれば、中級レベルは卒業と言えるでしょう。

▼『広告表示規制法』


この本はご存知ない方も多いかもしれません。750ページを越える厚みをもち、不当表示規制の分野についての網羅性はピカイチです。業法における広告表示規制の一覧が掲載されているのが貴重。さらに外国の表示規制までも紹介されています。

▼『その表示・キャンペーンは違反です』


特に景品規制について、規制の背景や趣旨、そして実務での景品のバリエーションに深い理解のある実務家が平易な言葉で解説。ポイント制・値引きとのすみわけもよくわかります。ただし出版後かなりの時間が経過しているため、改正部分は自分で補完しながら読む必要があります。

▼『広告法務Q&A』
広告法務Q&A
公益社団法人 日本広告審査機構(JARO)
宣伝会議
2014-09-29


先月弊ブログでも紹介しました。最新の景品および広告表示の両面のネタが取り上げられています。

◯ウェブサイト
上記の本が改訂されるまでは、以下で最新の情報をアップデートしましょう。

消費者庁ウェブサイト 景品表示法
弁護士植村幸也公式ブログ: みんなの独禁法。

◯告示・ガイドライン
景品表示法は、告示・ガイドラインが複数存在しており、どれがどの規制のガイドラインか覚えるまで大変ですが、条文にないルールがすべてこちらに書かれていますので、面倒でも都度これらに当たって確認する必要があります。

不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件
景品類等の指定の告示の運用基準について
景品類の価額の算定基準について
懸賞による景品類の提供に関する事項の制限
「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準
一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限
「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準について
インターネット上で行われる懸賞企画の取扱いについて
不当景品類及び不当表示防止法第4条第2項の運用指針 ―不実証広告規制に関する指針
不当な価格表示についての景品表示法上の考え方
比較広告に関する景品表示法上の考え方
見にくい表示に関する実態調査報告書(打ち消し表示の在り方を中心に)
No.1表示に関する実態調査報告書
インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項
オンラインゲームの「コンプガチャ」と景品表示法の景品規制について
インターネット上の取引と「カード合わせ」に関する Q&A


以上、私自身手探りで学んできたところをつらつらと書いてみましたが、同じような境遇でお悩みやお困りを抱えた方に、ちょっとだけでもお役に立てれば幸いです。
 
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