企業法務マンサバイバル

企業法務を中心とした法律に関する本・トピックのご紹介を通して、サバイバルな時代を生きるすべてのビジネスパーソンに貢献するブログ。

2014年05月

国際課税ルールの大転換とデジタルコンテンツ取引への影響

 
ジュリスト6月号の特集は「加速する国際課税制度の変容」。税法にはあまり興味関心がなかった法務パーソンも、自社ビジネスに影響がでないか、これを読んでチェックされたほうがよいかも。





「総合主義」から「帰属主義」への転換


一番のポイントは、これまで、国内に恒久的施設(PE)を有する場合にのみ日本源泉の所得に対して内国法人や居住者と同様にその全所得を総合合算する、いわゆる「総合主義」を採用していたところを、これからは
  1. PEの果たす機能や事実関係に従って外部取引・資産・リスク・資本を PEに帰属させ、
  2. PEと本店等との内部取引をも(文書化して)認識し、
  3. その内部取引が独立企業間価格で行われたものとしてPE帰属所得を算定する
というOECD承認アプローチ(Authorised OECD Approach)を採る、いわゆる「帰属主義」へと大きく転換させることが決定したという点。

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こうすることで、国際取引における二重課税や二重非課税をなくし、競争環境を公平にしようというのが世界の潮流となっており、おくればせながら日本においてもその方針が徹底されることになったというわけです。

越境デジタルコンテンツに対する課税の徹底


またこの流れを受け、デジタルコンテンツの越境取引における付加価値税・消費税の徴税について、
  1. BtoB取引においては、仕入事業者が国外からのサービス提供等に関する税を申告(国外事業者に代わって天引き)する「リバースチャージ」方式を採り、
  2. BtoC取引においては、国外のサービス提供者がコンテンツの消費地において課税当局に登録して納税する
という方針で各国が協調して動いているとのこと。

上記1に関連して、先日、EUをサービスの最終提供地と想定したライセンス契約の交渉場面においてロイヤルティ分配の計算式の定め方で先方と会話が咬み合わず、スタックして困った事態がありました。実はこれ、EUにおいてはすでにこのAuthorised OECD Approachが徹底され、付加価値税が決済サービス事業者によって天引きされているという事実を当方が知らなかったのが原因という、お恥ずかしい事態だったわけです。まさに「無知は罪」。先方にはこの場を借りて(こっそり)お詫びします。

また上記2に関連して、あくまで現行法の枠内での議論ではありますが、以下のような記事からも国税当局がすでにこういった国際取引の課税問題に注目していることが伝わってきます。

海外販売までも消費税、スマホアプリの受難(東洋経済)
各社が急きょ集まって情報交換した問題とは、グーグルプレイを通じた販売についての消費税課税問題。国税当局が、本来は消費税が不要であるはずの海外向けの売り上げについても、過去にさかのぼって消費税を課し始めたのだ。
なぜグーグルプレイに限って課税されるのか。国税当局の理屈はこうだ。

アップストアの場合、アプリ会社は地域別に設置された直営代理店(日本の場合はアイチューンズKK)を通してアップルにアプリを納めるという契約形態。そのため、国内向けと海外向けの取引は明確に区別できる。アイチューンズKKとの取引のみが課税対象となり、海外販売については、問題なく消費税法の輸出免税が適用される。

一方、グーグルプレイではアプリ会社がユーザーに直接販売する契約形態。アプリ会社にはグーグルから国別売上高の情報が提供されている。

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ところが、現状の法律では海外ユーザーとの取引に輸出免税が適用されず、全取引が課税対象となってしまう。なぜなら、輸出取引の証明には「販売先の氏名と住所が必要」と消費税法施行規則第5条1項で定められており、国別売上高の情報だけでは足りないのだ。課税を回避するため、あるアプリ会社はグーグルに氏名と住所の情報提供を求めたが、個人情報保護を理由に断られたという。

法務として税務にどこまでタッチすべきか、すべきとしても実務レベルでどこまでキャッチアップできるのかはとても悩ましい問題ですが、このあたりの背景や潮流については早めに理解して影響を想定しておかないとまずそうです。
 

Kindle版「利用規約の作り方」出ました ― で、結局どれを買うのが正解なのか

書籍版の出版から一年越しではありますが、雨宮美季先生と@kataxさんと私の3人で共著した拙書「良いウェブサービスを支える『利用規約』の作り方」(通称:利用規約本)のKindle版が出ましたので、早速購入して読んでみました。





書籍とはまったく異なる組版となっており、見た目非常に新鮮です。もちろんフォントや文字サイズ等もKindleの設定で自分の好きなように変更できます。本書中でご紹介している参考URLや書籍中の参照ページにクリック一発で飛べるのも便利です。さらに、書籍版よりも安いお値段設定となっています。

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書籍版と比べて欠点もあります。利用規約のひな形を載せた第3章が顕著なのですが、書籍のような「見開き2ページ」を前提としていないレイアウトに変更されているという点です。


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書籍だとこうなっているのが…

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こんな感じに。


こちらのほうが読みやすいという方もいらっしゃるかもしれませんが、書籍のイメージでそのままKindleで読めるというものではありませんので、その点ご留意ください。


「書籍同等のイメージでも読みたいが、デジタルでどこでも閲覧したり、(Kindleではできない)コピペもしながらガンガン使い込みたいよ」というヘビーユーザーの方には、ちょっと渋い選択肢ではありますが、技術評論社さんのGihyo Digital Publishingサービスでお買い求めいただくと、1冊分の料金で、EPUB/PDF版の両方がDLできちゃったりします。EPUB版は機能的にはKindle同等で、さらにコピペもできますし、見開きで読みたければ別途書籍と同じ組版のPDF版もご覧いただけるというわけです。Kindleと違い購入までにちょっと一手間かかりますが、それを補って余りあるメリットがある選択肢かも。

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というわけで、どれを買えばいいかはあなた次第(笑)。でも、スマートデバイスにAmazonアカウントさえあればいつでもどこでも1-Click(TM)で買えるのは、やっぱり正義ですよね。

利用規約で困っている方がお近くにいらっしゃれば、ぜひぜひオススメください。
 

【本】天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。 ― ポイントは「反復」「外圧」「計量」

 
外で発生したスキマ時間にKindleで購入して読了。こういうときにKindleは便利です。

著者は、司法試験・国家公務員一種に在学中合格、財務省を経て、今はNOTに所属されながらメディアでも活躍されているという山口真由弁護士。日頃の自分の勉強法を省み、発射角が正しいのかを確かめるために読みました。「努力」という極めてあいまいなことばを丁寧に定義・具体化していくその過程が、とても気持ちのよい本です。





努力とはすなわち「反復」である


「努力」というのは、抽象的な「才能」ではなくて、具体的な「技術」の集積だという確信がありました。

冒頭のまえがきでそう語る著者は、資格試験の勉強を題材にしながら、具体的な努力の定義とその奮い方について語りはじめます。わからないことを分かるようになるための山口流「努力の方法」論は、至ってシンプルです。

私が基本書として選んだのはじつは予備校の教科書です。なぜなら、学者の書物は網羅的ではなかったからです。というのも、「通説」を取る学者はほぼ皆無だからです。
基本書は1冊と、ここで繰り返すのは、努力をするということには反復・継続が欠かせないからです。この反復をするには、同じものを読み続ける必要があります。
「同じ内容でも、違うものを読んだほうが別の角度からの情報も入れられるのではないか」
こういう反論もあるかと思いますが、別の角度からの情報があると、かえって基本がわからなくなってしまいます。基本がずれてしまうのです。応用は試験のなかだけで十分です。
できるだけ早く、知っていることが8割、知らないことが2割の状態に持って行くのが重要です。だからこそ、前に書いたように、本を読み始めるときにはできるだけ抵抗の少ない方法で始めるほうがいいのです。覚えようと思わずに、ただ単にページをめくり続ける、聞き続けるということをすればいい。それを何度も繰り返すことから始めるべきです。
私は苦手な数学の問題は、すぐに解答を見ます。そして、その解答に従って解いてみます。それからもう一回解きます。その繰り返しです。そのうち解答を見なくても解けるようになり、だんだん8割の問題は解けるようになります。これは本当です。

まさに、数多くの文献にあたるリサーチ型法務で問題解決をはかってきた私がすでに誘惑に駆られている、基本書マニア化の罠。これにはまらないように注意して、一つの教材・講義を何度も(著者によればまず7回だそうです)回す=「反復」する。これは予備校からも口酸っぱく言われているところ。

反復とあわせて大事なのが、実際に手を動かして「解いてみる」ということでしょう。LECの柴田孝之先生が最近出版された本にも、初学者はすぐに択一対策に走ってしまうがそうではなく、模範解答を見ながらで構わないから、入門講座のうちから終わった単元の論文を書くoutputのトレーニングをすぐに始めるべきと、同じ方法論が語られていました。

努力の継続に必要なのはスケジューリング作業でも手帳でもなく、「外圧」


次に、努力を継続するための技術について。継続と聞くとすぐに計画とかスケジュールという言葉が頭に浮かびますが、それは間違った努力であり、模擬試験や仕事の始業時間などの「外圧」を利用すべきだと、著者は言います。

スケジュールを立てること自体が目的ではないのであれば、即刻そのような厳格なスケジュール管理をみずからしようとすることは、やめるべきです。
はっきりいって、無駄な作業です。
手帳を買って、そこに書き込むことが続く人は、手帳に書くことが好きな人だけです。
外圧を利用しようとする場合は、勉強に取りかかる前に、試験前に開催される模試を調べることから始めます。そして、受けられるものすべてに申し込んでしまいます。これで終わりです。
あとは、「今日はここまで」とか「今週・今月はここの範囲を」といったような具体的なスケジュールを立てずに、その日に進められる分だけ進めます。
私の場合、努力は極力、得意な「読む」ことに集中させたいので、ひたすらテキストを読み続け、読み終わったところにしおりを入れて、次の日に再びそこから読み始めます。
そして、模試を受けて、結果を見る。すると、どこに穴があるかが一目でわかります。これが外圧の力です。
「朝型」人間になることで、じつはもうひとつメリットがあります。
先ほど、「夜は唯一長く時間がとれる時間帯」といいましたが、朝は勝手にタイムリミットが設定されます。これが時間の概念を変えてくれるのです。

途中途中に強制的なリミットさえ(数多く)立ててしまえば、スケジューリングなどに時間を費やしたり悩んだりしなくても、そこに向かって本気になるのが人間であるということ。確かにそうかもしれません。

それにしても、手帳をはじめとするスケジュール管理ツールに対するダメ出しのくだりには、著者の相当なS性が垣間見えました(笑)。

努力は「計量」によって完遂する


最後の4章では、一番むずかしい「努力の完遂」の仕方とコツについて述べています。それは一言で言えば、自分が費やした努力の量を目に見えるようにする=「計量」、でした。

肝心なのは、ハードルを定性的なものではなく、定量的なものにすることです。
「3時間で、集中してこのテキストを精読する」
こういった目標を立ててはいけません。この目標の駄目なところは「集中」「精読」というワードです。これは評価が入るので、ここの加減を自分の主観で変えることができてしまいます。きつくなってきたら、自然とハードルを下げてしまうのが人間というものです。
ボールペンはあらかじめインクが入っており、安いものであれば、それを使い切ったら捨てるようにできています。インクが減った分、自分が努力したことがわかります。
この点、シャープペンや万年筆ではどうでしょうか。どちらも詰め替え可能で、減った実感がいまいち湧きません。
経済的にはシャープペンや万年筆は優れているかもしれませんが、努力の「見える化」をするうえでは、努力をしたことが実感できるボールペンのほうが適切なのです。
努力を続けられない人には、ここで挙げた筆記用具やメモ帳をたくさん持って同時にいくつも使っているという特徴があります。

この章は、ダメ事例への自分自身の該当項目が多すぎて、読んでていちばん耳が痛かった部分です。私がチャレンジを中途半端にフェードアウトしていたときは、この完遂したかどうかをハカる行動が足りなかったケースがほとんどだったな・・・と。

この本を読了後、自分の実学習時間を科目ごとにinput/outputに分けて記録しハカってみました。思った以上の少なさに自分が恥ずかしくなります。合格している先輩方によれば、この2.5倍は時間を費やしていないと合格ラインにのらないことだけははっきりしているので、その時間確保の方法論を必死になって考えよう、いや考えているヒマがあったら勉強しようと、実際追い込まれています。

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努力を続けるための具体的方法論を、これ以上ないほどの努力を続けてきた著者から様々教えてもらいました。精一杯マネさせていただきたいと思います。
 
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