Google Analyticsで当ブログのアクセスログを分析したところ、意外にも左上メニューの「審査・財務分析」カテゴリの注目度(クリック頻度)が高いことが判明。

せっかく興味を持って頂いているのに、このカテゴリにはあまり記事を投稿できておらず、失礼致しました。審査・与信は今となっては契約法務よりも私の本業になりつつある分野です。お役に立てるノウハウ・本をご紹介できればと思っています。

まずは、この本をご紹介。
後述するように、かなり実戦的な本になっているので、一通りの法知識を持っている中級〜上級者向けです。


三井物産及びその子会社の審査部門で30年に渡る実務経験を積まれ著者が、その実戦的ノウハウを公開してくれています。

この商社マンが著者というところが重要です。
与信・取引審査という分野のノウハウは、一見銀行などの金融機関が一番ありそうに思えます。しかし、前職時代に商社から出向してきた法務マンに育てられた私は、この分野で大手商社の右に出る者は無いのではないかと思っています。

銀行と違い担保もとらず、国内・海外にかかわらず、時にはどこの馬の骨かも分からないベンチャー企業から物資を大量に買いつけ、それをたくさんのチャネルを通して売りまくるというビジネスを通し、“買い”と“売り”の両面の立場で切った張ったのリスク勝負をして生き抜いてきた中で蓄積されたノウハウは、実戦力という面で一味違うのです。

その片鱗は、たとえばこんなところに垣間見ることができます。
実際によく使われている担保は、次のものです。
(1)保証金
(2)定期預金質権
(3)商品譲渡担保
(4)不動産(根抵当権)
(5)債権譲渡登記
(6)有価証券譲渡担保
(7)相殺(担保的効力)
(中略)
実際のケースでは、一番確実な担保は一番差し出したくない担保です。例えば、保証金は自社の資金繰りに即影響しますから、債務者は一番出し渋ります。
では、債務者が保証金を担保として差し入れるときはどんなときかといいますと、自社の資金繰りにまだ余裕があるときです。つまり業績が下降気味にならないときです。
ここでも、取引先の異変や危険兆候を他社に先駆けて察知する与信管理機能が要求されるわけです。
数多ある“実践的でない与信管理指南書”では、「担保で一番確実なのは不動産です。」で終わってしまいがち。
実際に審査業務をやってみればわかりますが、通常の動産取引や役務提供取引において、銀行でもない単なる一取引先に不動産を担保に差し出す債務者などいません(手間と費用を考えると、債権者としても賢い選択肢ではありません)。
そんなときに、営業担当者・債務者に不動産以外の現実的な担保手段を素早く提示・提案できるかどうか、ここが審査担当者の腕の見せ所になります。

また。回収が遅延したときなどには、営業と取立てに同行することもあると思います。
このとき、営業と一緒にバカの一つおぼえのように「いつ支払ってくれるんですか?」と債務者聞いても仕方ありません。
具体的に債務者に何をヒアリングすれば相手にとってプレッシャーになるのか、さらに倒産兆候を嗅ぎ分けられるのか、このノウハウが必要になってきます。これもどこかに書いてありそうなノウハウですが、意外とどの本にも無かったりします。
1)ここ3〜4ヶ月間の業績、資金繰り実績
2)今後半年程度の業績予想と資金繰り予想
3)不足資金の総額
4)資金不足は一過性のものか恒常的のものか
5)金融機関との交渉経緯と金融機関の対応
6)他仕入先の動き
7)支払手形と金融機関からの借入金の内容の把握
特に3)と7)は重要な質問です。
不足資金の総額のうち、自社債権分が何%かによって、回収スタンスはかなり変わってきます。また、資金繰りが苦しい中で、債務者として後回しができない手形と金融機関からの借入金がどのくらいの割合を占めているかは、倒産リスクを察知する上で、債務者に絶対に回答させるべき質問です。

よく銀行系の研修会社が与信管理・債権回収セミナーと称し3万円位取ってやってますが、あんなものに5回行っても得られないような、上記のような微にいり細にいりなノウハウがたくさん詰まって2,700円。
率直に言ってお買い得です。

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