出版社がASCIIであることと「知って得する〜」のタイトルから、かるーいタッチの法律入門書と思いきや、相当本格的な実務者向け知財本。

特許権と著作権という2つの権利の間でエアポケットに陥りがちな「ソフトウェア」というテーマを取り上げて1冊の本に仕上げるだけでも難易度が高いと思うのですが、この本ではさらに商標権までカバーした上で
本書の目的は、ソフトウェアの知的財産権を開発者や経営者に活用してもらうことにあります。
という巻頭言にもあるとおり、素人でもわかる平易な言葉でまとめるという、まことに殊勝な1冊となっております。


著者の面々は、大阪にある古谷国際特許事務所に所属の弁理士の皆様。

この本の良さをご理解いただくには、文字量は多いもののまずは目次を見てもらうのが手っ取り早いかと。
序章 ソフトウェアと知的財産権

第1章 ソフトウェアと特許権
1-1 ソフトウェア特許
1-2 ソフトウェア特許の歴史と変遷
1-3 ソフトウェアの特許権とは
1-4 ビジネスモデル特許
1-5 権利を取得するために(調査から登録まで)
1-6 外国における権利取得

第2章 ソフトウェアと著作権
2-1 著作権は何のためにあるのか
2-2 著作権とはどんな権利か
2-3 だれが権利を持つのか
2-4 他人の著作物を利用した著作物について
2-5 申請
2-6 権利はいつ消滅するか
2-7 外国での保護

第3章 ソフトウェアと商標権
3-1 商標権とはどのような権利か
3-2 権利を取得するために(調査から登録まで)
3-3 外国における権利取得

第4章 特許権を有効に活用する
4-1 模倣品を排除するための基本的な考え方
4-2 模倣品や模倣サービス排除の概略
4-3 模倣品や模倣サービス排除の詳細な手順
4-4 ソフトウェア特許の戦略と活用
4-5 ソフトウェア特許・ビジネスモデル特許の問題点

第5章 著作権を有効に活用する
5-1 模倣品を排除するには
5-2 著作権が発生しているか
5-3 相手方にどのように働きかけるのか
5-4 著作権を有効に活用するために

第6章 商標権を有効に活用する
6-1 模倣品排除の概略
6-2 模倣品排除の詳細な手順
6-3 商標権を有効に活用する方法

第7章 侵害警告がきたら
7-1 どこに相談に行くか
7-2 特許の場合
7-3 著作権の場合
7-4 商標の場合
7-5 裁判外紛争解決(ADR)

第8章 社内制度の整備
8-1 社内制度を整備するために
8-2 特許について
8-3 著作権について
8-4 商標について

1)特許・著作権・商標という、同じ知的財産ではあるものの説明の仕方を誤ると頭の中がごちゃごちゃになりがちなテーマについて、そうならないよう丁寧に整理して説明してくれている点、

2)外国での権利取得を含めた、出願から権利化までの流れが丁寧に抑えてある点、

3)権利の法的な中身を説明するだけでなく、活用の方法や、侵害に対してどこにどうやって相談しに行けばよいかというアクションにまで噛み砕いてくれている点、

以上のようなこの本の良さが、目次を見ただけでも十分伝わるのではないかと。

目次では伝わらないところでは、図表・フローチャート・スクリーンショットが多めなのもわかりやすさの理由の一つ。
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さらに、読んでいて飽きさせない工夫として、ところどころに親しみやすい“知財ネタ”がコラムとして挟まれており、その数の充実ぶりも特筆すべき点。
COLUMN一覧
特許権者だけが得をする?
ソフトウェアが完成していなければ特許はとれない?
リバースエンジニアリングとは
電子マネー特許
“とくがん”“とっかい”“とっこう”とは?
特許調査の手法
権利者が自分で権利範囲を決める?
フェアプレーが求められる米国特許
特許審査ハイウェイ
所有権と著作権との関係
デジタル化権
インターネット上でのファイル交換
映画はだれのものか?
立体商標と意匠との関係
画像デザインの保護(意匠法改正)
分離譲渡の注意点
特許権がなくても排除できる場合
手段を用いた表現
特許権の技術的範囲
知的財産権高等裁判所
実用新案法の改正
電子透かし技術
模倣品の解析行為は許されるか
デジタル化された著作物について
海賊版ソフトウェアの取締り
コピープロテクト解除機器の規制
ダウンロード販売と補償金
プログラムの特異性
自由利用マークとは
クリックオン契約
プロバイダ責任制限法
インターネット上でのファイル交換
ハウジングサービスについて
商標の類似判断(称呼の類否)
越境侵害への対処法(特に、商標に関して)
他社特許のウォッチング
一太郎事件
不正使用の取消審判
知的財産の価値評価

加えて、(失礼ながら)そんなにたくさん売れる本でもないはずなのに、法改正のたびにこの第5版まできちんと改版を重ねているところも素敵。

特許法も著作権法も商標法も、ここしばらく改正続きでしたから、さぞご苦労されたこととお察しします。

著者と出版社を拝みたくなるような一冊です。

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